ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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宇宙渡し

「ふぅ……よし!机と椅子の設置完了!」

「ユウちゃーん!そっち終わったらこっちも手伝ってー!ステージの照明のセッティングしたいのー!」

「はーい!今行くよアユムー!」

 

念願のフォースネストを手に入れたフォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の13人は、フォースネストを快適に使えるようにするために模様替えにいそしんでいた。

GBNなので埃などは出ず、掃除の必要は無い為、基本的にはショップで購入した家具などをお好みで配置するだけなのだが、何分部屋数が多くてかなり大変な作業ではある。

 

「オーライ!オーライ!しおってぃー、もうちょい左!あ、行き過ぎ行き過ぎ!」

『こ、この辺りでしょうか……アイさん?』

「うん!いい感じいい感じ!じゃあお願いね!」

『はい!』

 

アイがしおこの操縦するデスティニーフリーダムガンダムを誘導しつつ、しおこはアイの指示通りに位置を微調整。

そして、指定された位置に、自分たちのフォースのエンブレムが描かれた巨大な旗を立掛けた。

その見た目はまさに小さい虹ヶ咲学園そのもの。

 

 

「おぉー!カッコよくなりましたね!!」

「どうですかセツナ先輩!かすみんのアイデア!」

「ありがとうございますかすみんさん!フォースネストに私達のエンブレムを掲げるだなんてナイスアイデアです!」

「うふふ~ん♪もっと褒めてくれていいんですよぉ~♡」

「それじゃあ、休憩にしましょう!アイさーん!しおこさーん!部室に集合でーす!」

「OK!お疲れさんしおってぃー、アイさん達もいこっか!」

『わかりました!』

 

 

なんとか作業もひと段落して、部室(っぽく改造したメインルーム)に集合した一同。

すでに全員クタクタだったが、かなりニジガクを再現出来て来たと思う。

 

「ランジュとミアでレッスンルームを作ったわ!」

「GBNだし、筋トレは必要ないから鏡張るだけで済んだから楽だったよ。」

「私としずこちゃんは部室の模様替えをしたよ。」

「ユウ先輩本当に手際が良いので、凄く助かっちゃいました!」

「その後は私とカナタさんのライブステージ作りも手伝ってくれたよね。」

「中々捗ったぜ~!」

「私とアイさん、しおこちゃんで格納庫の整備をした。皆のガンプラのチェックはばっちり。りなこちゃんボード『むんっ!』」

「最終チェックはりなりーに任せて、アタシとしおってぃーでエンブレムを付けたよね。」

「かすみんさんのアイデアのおかげです。」

「えへへ~♪」

「かすみんさんと私はフォースネストの周りにたくさんお花を植えてきました。綺麗なお花があれば心も安らかになりますから。」

「それにしても、これだけの物をそろえるのも結構お金かかっちゃったよね。」

「ウフフ、心配ご無用よ♪」

「そうそう!」

 

何故フォースネストを買ったばかりで金欠になっているニジガクがこれだけの家具をすぐ用意できたのか。

その秘密は、エマとカリンにあった。

彼女たちはコンソールパネルを開くと、貯まりに貯まりまくったダイバーポイントを全員に見せつけてきた。

 

 

「私とエマがコインとポイントを稼ぐために、イベントを片っ端から荒らしまわってるからね。」

「言い方~。」

「いいんだよカナタちゃん。GBNの世界は非情なの。戦場での油断は命取りなんだよ!」

 

 

エマとカリンという、ニジガクが誇る最強のコンビ。

この2人は出場条件を満たしているイベントや大会に片っ端から参加し、キュベレイ・ビューティーとヴェルデブラストガンダムの抜群のコンビネーションで、その全てで優勝をさらった。

そのおかげで家具を買えるほどの賞金は簡単に集まり、今に至る。

 

 

「もう少し片付いたら、皆を呼んでパーティーしようよ!ほら、リアルだとさすがにイベントの時じゃないと学外の人を入れられないけど、GBNなら気軽に呼べるでしょ?」

「アイ、それ凄く良いアイデアだわ!ランジュ、マリナの事招待してあげたいの!」

「リクくん達は多分呼んだら来てくれるよね。隊長達は来てくれるかなぁ……。」

「じゃあカナタちゃんからヒナタちゃん達の事誘っておくね~。」

「ヒロトくん達、本当に来れるのかしら……?」

「そう言えば最近、ヒロトくん達の事あんまり見かけないよね。」

「この前にフォースバトルの時もいなかったし……忙しいのかな?」

「そう言えば以前、私がガンダムベースでバイトをしている時にカザミさんとお会いしました。武者丸のプラモデルを購入していましたが、なんでも『サプライズ』に使うとかなんとか……。」

「武者丸でサプライズ?わかんない……りなこちゃんボード『ぐるぐる~』」

「忙しい割に、バイトでヒナタちゃんを見た時は凄く楽しそうなんだよねぇ。心配はいらないと思うんだけど、気になるよね~。」

 

 

 

~~

 

 

「お、揃ってるじゃねーかお前ら!」

「お前が一番最後だ、カザミ。」

「わりぃわりぃ、ちょいと寝坊しちまって……。」

「でも、これで全員そろいましたね!」

「よし、行こう皆。」

 

その頃、BUILD DiVERSのヒロト、メイ、カザミ、パル、ヒナタの5人は、GBNの中心街の人気のない路地裏へと来ていた。

全員が揃った事を確認すると、彼らの前にコンソールパネルが出現し、そこにはミッションへの参加を問いかける『DO YOU ACEEPT THIS MISSION?』と表示されている。

代表してカザミが『YES』のボタンをタッチすると、全員の体が光に包まれ、その場から姿を消した。

 

 

 

~~

 

 

そうして彼らが次に姿を現したのは、古代遺跡の祭壇の様な場所だった。

祭壇の両脇にはBUILD DiVERSのフォースエンブレムが書かれた旗が置かれており、更に出現したBUILD DiVERSの背後にはそれぞれの愛機のガンプラが。

ヒロトの後ろにはアースリィガンダム、メイの後ろにはウォドムポット+、カザミの後ろにはガンダムイージスナイト、パルの後ろにはエクスヴァルキランダー、そしてヒナタの後ろにはRX-78-2ガンダム。

そして、そんな彼らの登場を心待ちにしていた少年が一人。

少年……と言っても、その姿は人間では無く、パルの様な獣人型……というより、完全に二足歩行の犬そのもの。

ヒロト達が姿を現すと、彼は自慢の尻尾をブンブンと振りながら、歓喜の声を上げた。

 

 

 

「お待ちしてました皆さん!!」

「フレディ、いつも迎えに来てくれてありがとう。」

「当たり前じゃないですか!ボクだって、BUILD DiVERSの一員ですから!」

 

 

 

彼の名はフレディ。

BUILD DiVERSの、六人目のメンバー。

加入順で言えばヒナタよりも先の為、正式には五人目のメンバーに当たる少年。

そして、彼らの登場をもう一人……巨大な影が出迎えてくれた。

 

 

『良く来たな、ガンプラの民。』

「クアドルンさん、こんにちわ。今日はお世話になります!」

『それはこちらのセリフだ。エルドラの民の為に、尽力してくれているお前たちには、感謝しかない。』

 

 

その巨大な影の名は、『聖獣クアドルン』

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』に登場するモビルスーツ『ペーネロペー』と似たシルエットを持つ、黒いドラゴンの姿を持つ聖獣。

何故このGBNに、モビルスーツでもモビルアーマーでも無い、『聖獣』というものが存在するのか。

それは、ここがGBNでは無いから。

 

 

この世界の名は『エルドラ』

GBNと偶然繋がった、地球ともGBNとも異なる、別の世界……別の惑星。

この世界にはフレディたちの様な獣型の人種『新しき民』が住んでおり、それを聖獣であるクアドルンが見守っている。

この場所に来る際には、ヒロト達の様なGBNのダイバー達はデータがこの祭壇へと転送され、この遺跡内にある砂『エルドリウム鏡砂』が人間やガンプラの形をとり、この世界に召喚される。

GBNを経由して来る場所ではあるが、このエルドラは間違いなく、現実に存在する、リアルな惑星だ。

 

 

「感謝などするなクアドルン。私達が好き好んでやっている事だ。」

「そーそー!気にすんなって聖獣さん!一年前の祭りは素直に楽しめてねーからな。」

『そうか……ならば、楽しんで行ってくれ。』

「はい、そうさせてもらいます。」

 

 

何故BUILD DiVERSがしばらくの間、GBNの表舞台に姿を見せていた無かったのか。

それは、このエルドラで一年に一回開催されるお祭り『宇宙(そら)渡し』の準備をするためだった。

宇宙渡しとは、願いを込めた灯篭を空へと飛ばし、自分たちの先祖と聖獣への感謝を込めるというエルドラ最大のお祭り。

去年の宇宙渡しの時は、エルドラは『ヒトツメ』と呼ばれた敵ロボットたちとの戦争の真っただ中だった。

しかし今年はエルドラには平和が訪れ、しかもクアドルンという聖獣本人が実際にいるお祭り。

フレディの提案で過去最大規模にしたいという事もあり、準備には時間がかかった。

 

 

「♪」

「ご機嫌だな、ヒナタ。」

「ヒロト達からお話を聞いてから、ずっと楽しみにしてたから!」

「そうか、楽しんでくれると、俺も嬉しい。」

「うん!あ、私、マイヤさんとお料理の準備してこなきゃ!フレディ、何か食べたいものある?」

「え!?り、リクエストしてしまっていいんですか!?」

「もちろん!クアドルンさんは何か食べたいものありますか?」

『…………。』

「クアドルンさん?」

『……ンガの実のから揚げを頼む。』

「わかりました!」

 

 

 

~~

 

 

「皆!今年は戦争が終わってから最初の宇宙渡しの祭りだ!盛大に楽しもう!!」

「「「「おーーーーー!!」」」」

 

 

全ての準備が終わり、そう音頭を取るのはフレディの幼馴染の少年 ストラ。

彼はフレディの兄であり、レジスタンスのリーダーでもあった男 ジェドに憧れていたが、戦争中は彼にレジスタンスへの入隊を許可されずにふてくされていた。

しかし憧れのジェドが、今年の宇宙渡しの会場でもある水上都市セグリへのレーザー攻撃で戦死して以降は、率先して仲間たちを助けるなど、彼の様に心まで強い男へと成長した。

今では数少ない若者の男と言う事もあり、村のリーダーの様な存在へとなりつつある。

そんなストラはンガの実ジュースを手に、カザミを呼ぶと、彼を少し高い台へと立たせた。

 

 

「それじゃあ、そんな平和を作ってくれた、我らがBUILD DiVERSのリーダー、カザミさんから一言!」

「はぁ!?お、おいストラ!そんな話聞いてねぇぞ!!」

「いいからいいから!ほら、皆期待してるぞ!」

「お、覚えとけよ~……!」

 

 

ストラと同じジュースを手に、カザミは自分へ集まる視線に少し圧倒される。

少し遠くの方を見ると、そこではヒロト達と、フレディの姉であるマイヤが小さく手を振っているのが見えた。

 

 

「えーっと……まぁ、その、なんだ……。去年は色々あったけど、こうやって平和な祭りを出来るのは、エルドラの皆のおかげでもあるっつーか……あぁ、もう面倒くせぇ!!平和最高!!乾杯!!!」

「「「「かんぱーーーーーい!!!」」」」

 

 

何とも間抜けな乾杯の音頭で、今年の宇宙渡しの祭りが幕を開けた。

去年の会場はフレディたちの村だったが、今年の会場は水上都市セグリという街。

ここは元々エルドラで一番栄えた街であったが、以前の戦いのレーザー攻撃によりほぼ全壊してしまった。

そこにクアドルンが住んでいた空中神殿が降りてきて、セグリ跡地と統合された事で、再びセグリは活気のある街へとよみがえりつつある。

今年は過去最大規模と言う事もあり、去年も設置していた巨大ブランコはもちろん、巨大滑り台や巨大ジャングルジムなども建設されており、子供たちに大人気。

 

 

「「「おー!すっげーーー!!」」」

「アハハ、喜んでもらえてよかった。」

 

 

村の最年少組である活発な少女のアシャ、腕白な少年トワナ、村の村長ジリクの孫のフルンが、その巨大な遊具に目を輝かせていた。

この巨大な遊具は、去年はカザミが作っていたが、今年はパルがガンプラのパーツを使って製造。

特にランナーを組み合わせて作ったジャングルジムは自信作だ。

 

「ねぇねぇ、パルも一緒に遊ぼう!」

「え、ぼ、僕も?」

「うん!ほらほら!」

「うわっ!?わ、わかった!わかったから!あんまり強く引っ張らないでよアシャ~!」

 

パルも、ダイバールック自体は小さな少年ではあるが、実年齢は中学生ぐらいなのでこういった遊具で遊ぶのは少し恥ずかしい。

しかし、アシャ、トワナ、フルンからお願いされたら断りきれないという、多人数兄弟の末っ子にありがちな『自分もお兄ちゃんやってみたい』欲には勝てず、結局一緒に遊ぶことに。

最初こそ恥ずかしがっていたが、だんだん楽しくなってきて、結局4人で一緒にクタクタになるまで遊具で遊んでしまった。

 

 

 

~~

 

 

「あれ?どこ行ったんだろう……?」

「マイヤ姉ちゃん、どうしたの?」

「あぁ、ストラ。ねぇ、あのバカ見てない?」

「バカって……カザミさんなら、あそこに。」

「え?」

 

 

フレディの姉 マイヤがお皿を持ってウロウロしていると、ストラから指差された方向に視線を向けた。

するとそこには人だかりが出来ており、見て見ると、そこには額に鉢巻を撒いたカザミが、『武者○伝』に登場する主役機である『武者丸』とそのパワーアップ形態『武者○秘将軍』の鎧を改造した屋台を構えていた。

そちらへ行くと、カザミもマイヤに気付いたのか、彼の方から声を掛けて来てくれた。

 

「ようマイヤ!お前も食ってくか!」

「あんた、何やってんのよ……。」

「何って……へへ、サプライズってやつだよ!俺、こう見えても親父に教わってちょっとは料理出来んだぜ!ほらよ!」

「……なにこれ?」

「いいから食ってみろって!」

 

 

そう言ってカザミが渡してきたのは、丸い謎の食べ物と、魚の形をした茶色い物体。

丸い方は武者丸の、魚の方は○秘将軍のバックパックで焼かれていた物だ。

得体のしれない物だったが、恐る恐る丸い物を口へと運ぶマイヤ。

すると……、

 

 

「あふっ!?あ、あっふい!!熱いじゃない!」

「そりゃ焼き立てだしな。で、どうだ?」

「ハフハフ……モグモグ……ゴクンッ。あ、美味しい……。こっちの魚の方は……ん~♡甘~い♪」

「へへ、美味いだろ!俺達の世界の、『たこ焼き』と『たい焼き』って食べ物なんだよ。」

「たこやき?たいやき?変な名前。」

「それより、お前何持ってんだよ?」

「え?あぁ……。」

 

 

カザミがマイヤの持つお皿に気が付いた。

そこにはカザミの好物でもあるマイヤ特製、ンガの実のから揚げが。

ちなみにンガの実とはエルドラにしか存在しない果物の様な物で、野菜料理としても肉料理としても、なんならジュースにする事も出来るエルドラでは大人気の謎の実だ。

 

 

「もしかして、俺に持ってきてくれたのか!?」

「だ、だってアンタ、食べられなかったら絶対文句言うじゃない!だから無くなる前にと思って、それで……、」

「ありがてぇ!丁度腹減ってたんだよ!そろそろ休憩にすっか~。」

「……ねぇ。」

「ん?」

「私にも今度、そのたいやきっていうのの作り方教えてよ。」

「おう!」

 

 

 

~~

 

 

「「ワハハハハ!!!」」

 

笑いながら酒をがぶ飲みする男が2人。

この2人はカリコとザブンといい、戦死したジェドの仲間だったレジスタンスの数少ない生き残り。

彼らはレジスタンスに入隊してから宇宙渡しに祭りには参加していなかったため、今回は久しぶりの参加となる。

すでにジョッキ3杯目と、かなり速いペースで酒を飲んでいるため、食事を運んできたヒナタは2人を心配して声を掛けた。

 

「カリコさんザブンさん!さすがに飲み過ぎですよ!」

「ワハハハ!!大丈夫大丈夫!!」

「そうそう!!ほら、ヒナタちゃんも飲もう飲もう!!」

「私、未成年ですから飲めませんよ。」

「おいおいザブン、あんまヒナタちゃん苛めるとヒロトから怒られるぞ!」

「おっと、そうだったそうだった!!ワハハハ!!」

「めんどくさい絡みしてんなよおっさん達。」

 

そう言いながら、ストラもやって来た。

どうやらカリコとザブンに絡まれて困っているヒナタを見て助けに来てくれたようだ。

 

 

「ストラ!お前もこっち来て飲め飲め!!」

「俺はアンタ達みたいに祭りでもめ事起こすような連中がいないかパトロールする仕事があるんですよ!」

「かてぇなぁ。もっと楽しめストラ!折角の祭りなんだから!」

「だ~か~ら~!」

 

 

『………!』

 

 

「ん?」

 

 

その時、ストラの服の袖を何者かが引っ張った。

振り向くと、そこにいたのはエルドラの住民でも、GBNのダイバーでも無い、黒い丸い機械。

かつてエルドラの民が戦っていた『アルス』の尖兵……『ヒトツメ』だ。

しかし、そのヒトツメに敵意は無く、被っているトレードマークの帽子がずり落ちないように手で押さえながら、カリコとザブンに怒るストラを止めている。

 

『……!』

「フフッ、大丈夫だよ。ストラは2人の事が嫌いで怒ってるんじゃないよ。2人の事が心配だから、ちょっと大きな声出しちゃっただけだから。ね?」

「わ、悪い!怖がらせるつもりじゃなかったんだけど……。」

 

 

このヒトツメは、主を失って彷徨っている所を、カリコとザブンによって助けられて、それ以降は2人に懐いて村の手伝いも積極的にやってくれている。

だからカリコとザブンがストラに苛められていると思って、2人を助ける為に駆けつけてきたのだ。

 

「いや、悪いのは俺らだ。ごめんな、2人とも。」

「久しぶりの平和な祭りで、ついはしゃいぢまった。」

「はしゃぐのはいいけど、あんまり飲み過ぎると身体によくないですから、食べ物もちゃんと食べてくださいね。はい、コレ、お料理持ってきました!」

「ありがとう、ヒナタちゃん。」

「………すいません、俺、2人の気持ちを考えずに……そうだよな、2人とも、俺達の為にずっと戦ってくれていたのに……。」

「だからそういうしんみりしたの無しにしようぜ、ストラ!今日は祭りだ!楽しまなきゃ損だぜ!」

「……はい!」

 

ヒナタから食べ物を受け取り、カリコとザブン、それとストラとヒトツメはコップを合わせて乾杯。

夜風に当てられながら、ザブンは空を見上げて呟いた。

 

 

「見てるかジェド。エルドラは、こんなに平和になったぞ。」

 

 

 

 

~~

 

 

その頃、ジェドの戦友でもあり、レジスタンスの小隊長でもあった男 ムランは、平和になった街を眺めながら感傷に浸っていた。

彼は当初、とある事情からBUILD DiVERSに懐疑的な立場であったものの、彼らが自分たちの為にヒトツメと戦う姿を見て考えを改め、今では彼らに対して絶大な信頼を置いてくれている。

クアドルンが腹を割って話す事の出来る数少ない人物でもあり、エルドラ再興の立役者。

そんな彼ではあるが、一つだけこの祭りに思う所があった。

 

「ムラン。」

「! メイさんか。」

「隣、いいか。」

「あぁ。……それは?」

「カザミが向こうの屋台で、たこ焼きとたい焼きという物を作っていたから貰って来たんだ。食べるか?」

「変わった料理だな……いただこう。」

 

メイからたこ焼きを受け取り、口へと運ぶ。

そのあまりの美味さに感動したムランは、勢いよく残りを頬張るが、そのせいで口の中を火傷してしまい、冷やすために酒をがぶ飲みした。

 

 

「ゲホッ!ゲホッ!こ、これは美味い!!」

「それは良かった。ところで、何か悩み事か?」

「何故そう思う?」

「そういう顔をしていた。」

 

 

メイに心中を悟られ、俯くムラン。

すると、彼は彼女になら……と、悩みを口にした。

 

 

「今回の祭り、マサキは来ていないんだな。」

「あぁ。彼は、まだ自分は許されるべきでは無いと思っている。」

「そうか……やはり、そうだったのか……。」

 

 

実質BUILD DiVERS7人目のメンバーでもあるシドー・マサキは、かつてクアドルンに召喚され、ムラン達と共にこの世界の為に戦った。

だが彼は戦いに敗れ、アルスによって洗脳されてしまい、愛機であるガンダムテルティウムは邪悪なガンダムゼルトザームへと改造された。

それにより多くの命を奪った彼は、その罪悪感から、誤解が解けた今でもエルドラの民とは積極的に関わろうとしない。

 

 

「実は、私は来月結婚をするんだ。」

「結婚……?」

「あぁ。セグリの再興の時に出会った女性でな。先日プロポーズをして、来月式を挙げる。」

「めでたいな。」

「私は……その式を、マサキに見てもらいたいんだ。彼は生き残った数少ない戦友の一人だ。最も心を許せた友だ。そのマサキに、私の式に立ち会ってもらいたい。」

「…………。」

 

 

難しいかもしれない。

義理堅いマサキだが、頭の固さも人一倍だ。

祭りにも参加しなかった彼が、果たしてムランの結婚式に参列してくれるものかどうか……。

だが、メイはそう思いながらも、ムランの言葉にうなずいた。

 

 

「私に任せろ。」

「メイさん?」

「私がヤツを何としてでも式に参列させる。お前たちへの恩義は私も感じている。約束しよう。」

「それでも頷かなかったら……、」

「安心しろ。私は強い。」

 

 

そう言って、メイはフッと笑って見せた。

その顔を見て、ムランも笑うと、2人はエルドラの夜景を楽しんだ。

 

 

 

 

~~

 

 

『皆が思い思いの時を過ごしている……この様な時代が来るとは、夢にも思わなかった。』

 

 

神殿の外へと出てきたクアドルンと、その隣に佇むアースリィガンダムとヒロト。

クアドルンは宇宙渡しの祭りの様子を眺めながら、平和の訪れたこの世界に思いを馳せていた。

アースリィのコックピットからクアドルンの話を聞いていたヒロトは、彼に言った。

 

 

「この平和は、アナタが最後まで世界を諦めなかったから掴めた平和だ。」

『……そうか、お前はそう言ってくれるのか……。』

 

 

目を細め、空を見上げるクアドルン。

いつもと様子の異なる彼に、ヒロトは嫌な予感を覚えた。

そして、直後にその不安は的中する事となった。

 

 

『……おそらく、私はそう長くは無いだろう……。』

「!!」

『驚くでない。私は、アルスと共に、エルドラの古き民が作りし創造物。アルスが消えた今、私の命の灯も消えゆく運命なのだ。』

「そんな……!」

『案ずるな。長くは無いと言っても、今を生きる新しき民の子供たちが成長するまでの寿命はある。お前たちの基準であれば、十分長い時間と言えるだろう。』

「クアドルンさんは……それでいいんですか……?」

『…………。』

「何か方法が!」

『……私は、今この時代に、死を迎える事が出来た事を幸運に思う。』

「え……?」

 

 

 

クアドルンは、数千年前からエルドラに生きる聖獣。

しかし、いくら数千年前から生きていると言っても、命ある限りいつか必ず終わりが来る。

彼は1年前のアルスの消滅の時から、自分の限界を悟っていた。

ゆっくりと、クアドルンはヒロトへと語る。

 

 

『思えば私は、生まれてから今まで、争いの無い時代という物を経験した覚えがない。エルドラとは、それほどまでに戦いの絶えない世界だったのだ、ガンプラの民よ。』

「………。」

『それが、今はどうだ?争いの無い、平和な世界がようやく訪れたのだ。私は、これほどまでに幸福を感じた事は無い。数千年生きてきた私が、そんな平和な時代に死を迎えられるのだ。これ以上幸せな事があるだろうか?』

「クアドルンさん……。」

『そんな顔をするな、ヒロトよ。』

 

 

この時、クアドルンは初めてヒロトの名を呼んだ。

数千年間、聖獣として生きてきたクアドルンは、この平和な時代に、ただの生き物として死ぬことが出来る。

彼はそれを幸福と言った。

クアドルンは決して卑屈な気持ちで言っているのではなく、心の底からこの時代での死を望んでいる。

それにヒロト達が何か意見する権利など無い。

 

 

『いや、それ以上に幸福な事があった。』

「え?」

『マイヤのから揚げが、たまらなく美味という幸福がな。』

「ハハッ、違いないですね。」

『ヒロトよ、私はお前たちには返し切れぬ恩がある。もし、お前たちがこの先、強大な壁の前に屈してしまいそうになった時は、私は惜しみなく力を貸そう。』

「はい……ありがとうございます。」

 

 

 

「あ!いたいた!ヒロトさーーん!聖獣様ーーーー!!」

 

 

 

「! フレディ!」

 

 

その時、フレディがヒロトとクアドルンに大声で駆け寄って来た。

彼の手には、宇宙渡しで流す為の灯篭があり、今からこれを流すためにヒロトを呼びに来たのだ。

フレディはヒロトとクアドルンのただならぬ空気を感じ取ったのか、その場で少し緊張してしまった。

 

「あの……お二人とも、何かあったんですか?」

「……いや、なんでもないよ。」

「それならいいんですけど……今から灯篭を流しに行くんです!宇宙渡しの本番ですよ!」

「あぁ、俺も行くよ。」

「聖獣様も行きましょう!」

『いや、私はこの身体の大きさなのでな。』

 

 

クアドルンの身体は、ガンダムテルティウムが騎乗して戦えるほどの巨体。

彼が行くと、それだけでかなりのスペースを取ってしまう。

その為クアドルンは遠慮したのだが、直後にヒロトが振り返った。

 

 

「行きましょう、クアドルンさん。」

『ヒロト……。』

「村長のトノイさんから聞きました。宇宙渡しのお祭りは、村の人は全員参加だそうです。クアドルンさん、アナタもその一員じゃないですか。」

『うむ……。そうか……いや、そうだな。ならば、行くとしよう。』

 

 

 

 

~~

 

 

そうして、灯篭を流すために集まった村の人々とBUILD DiVERS、そしてクアドルン。

各々が願いを込めた灯篭を海へと流し、それが上昇気流に乗って空へと浮かんでいく様は、非常に幻想的。

初めて宇宙渡しを見るヒナタは、その光景にとても感動していた。

 

「綺麗……。」

「そうだな。」

「ヒロト、連れて来てくれてありがとう!」

「お礼を言うのは俺だよ。ヒナタはお祭りの準備を、誰よりも頑張ってくれたじゃないか。」

「だってこんなに綺麗なんだよ!そりゃ頑張るよ!」

 

 

「お熱いねー、あの二人。」

「しっ!聞こえちゃいますよカザミさん!」

「おっと、あぶねぇあぶねぇ。」

「聞こえてしまってはまずいのか?」

「んー……メイにはちょっとまだ早いかなー。」

「?」

 

 

最近、ヒロトとヒナタの仲を茶化すのはカザミのマイブーム。

一部の方にばれたら取り返しのつかない事になるのですぐにやめた方がいい。

 

 

『フレディよ。』

「はい、なんですか聖獣様?」

『すまないが、私の灯篭も流してはくれまいか?』

「もちろんです!喜んでー!」

 

 

クアドルンから灯篭を受け取るフレディ。

その灯篭を海へと流し、手を合わせて祈る。

祈り終わった後、フレディはクアドルンに尋ねた。

 

 

「聖獣様は何をお祈りしたんですか?」

『なに……大した願いでは無い。誰もが願う様な、他愛もない願いだ。』

 

 

そうして、クアドルンは空へ浮かぶ灯篭に思いを馳せる。

 

 

願わくば、この命尽きた後も、未来永劫このエルドラが、争いの無い平和な時代である事を。

 

 

 

 

 

~~

 

宇宙渡しの祭りと、その後片づけを終え、ヒロト達はクタクタになりながらもGBNへと帰還した。

リアルであるエルドラでの疲れはログアウト後に本体にくる。

幸福感と疲労感に包まれながらも、BUILD DiVERSはGBNに戻ってくると、ふぅと一息ついた。

 

 

「どひぃ~……つ、疲れたぜ~……!」

「カザミさんのたこ焼き屋さん、大盛況でしたね!」

「おう!サプライズ大成功だぜ!来年もやってもいいかもなぁ。」

「武者丸のバックパックにあんな使い方があるのだな。」

「けど、人多すぎてさすがにもう限界だ……さっさと帰って寝ようぜ……。」

 

 

カザミが疲れを包み隠さずにそう言うと、全員のアカウントにメールが届いた。

見て見ると、ヒロト、ヒナタへはカリン、メイにはエマ、カザミにはアユム、パルにはしずこからメールが。

その内容はどれも同じであり、全員同時にそのメールを確認すると、以下のような文面が記載されていた。

 

 

 

『ニジガクのフォースネスト設立記念のパーティーをします!皆来てね!』

 

 

 

「……どうします……?」

「今からか……?」

「行こう。」

「ヒロト!?」

「うん、私は行きたいな!久しぶりにカリンちゃん達に会いたいし!」

「私も賛成だ。マサキも招待しよう。ヤツに少し話があるからな。」

「……しょうがねぇ、祭りの二次会だ!こうなりゃとことん盛り上げていこうぜ!!」

「ですね!!」

 

 

 

こうして、BUILD DiVERS達の宇宙渡しの準備のための慌ただしい日常は終わりを告げた。

来年の宇宙渡しのお祭りの時は、マサキだけじゃなくて、リク達ビルドダイバーズやキョウヤ達、それにユウ達ニジガクもエルドラに招待したい。

 

エルドラこそが、BUILD DiVERSのフォースネスト。

彼らの第二の故郷だ。

 

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第86回:見た目と年齢

侑「ククルス・ドアンの島の映画楽しみー!皆で見に行こうね!」

エマ「うん!楽しみだよ~!」

侑「私、ファーストガンダム見た事無いからこれを機に予習していかないと。ククルス・ドアンって確か人の名前だよね?あ、このおじさんの事かな?」

エマ「失礼だよ侑ちゃん!」

侑「え?」

エマ「ククルス・ドアンさんは19歳だからおじさんじゃないよ!」

侑「えぇ!?19歳なの!?ど、どう見ても30歳前後……。」

エマ「そうだよ!ちなみに侑ちゃんはシン・マツナガさんはいくつかわかる?」

侑「シン・マツナガ……画像画像……うーん、40歳ぐらい……で、でも意外と若いってことも……さ、35歳ぐらい……?」

エマ「全然違うよ!24歳だよ!」

侑「わかんないよ!!」

エマ「ちなみにキシリア・ザビさん(初代)も24歳だよ。」

侑「ファーストガンダムのキャラ皆老けすぎじゃない……?」

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