ニジガクビルドダイバーズ   作:バース・デイ

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マリナの過去

その日、1年生とミアはそれぞれの用事、3年生はマギーに呼ばれていて部室には侑、歩夢、愛の3人だけしか集まらなかった。

侑が組み上げたトレーニングを歩夢と愛がこなしていると、部室のドアを開けてせつ菜とランジュも合流。

しかし、いつもなら騒がしいぐらい大声で挨拶しながら入ってくる2人だったが、今日は何故か落ち込んでおり、侑達はその姿を見て2人に駆け寄った。

 

「こんにちわせつ菜ちゃんランジュちゃん、どうしたの?何かあったの?」

「こんにちわ侑さん。やはり、見てわかりますか……?」

「そりゃわかるよ!いつも元気な2人だから、すぐわかったよ!ねぇ、歩夢、愛ちゃん!」

「うん。でも、何があったの?」

「せっつーとランジュってことは、マリナっち絡み?」

「えぇ……まぁ……。」

「ランジュが悪いのよ……。」

「と、とにかく座って!私お茶淹れてくるから!」

 

 

せつ菜とランジュを部室に座らせて、その間に侑が部室の備え付けの冷蔵庫からペットボトルのお茶を出してコップに注ぐ。

人数分のお茶を出すと、せつ菜とランジュが昨日起きた事を侑達に語ってくれた。

ガンプラ友達で、左脚が義足の同級生のカツラギ・マリナ。

スクールアイドルの事も大好きな彼女を、ランジュがスクールアイドル部に勧誘した事。

その際にランジュのいつもの悪い癖が出てしまい、一方的に誘ってしまった。

それによりマリナと大喧嘩してしまい、それから学校でも避けられてしまっているらしい。

すっかりランジュは意気消沈しており、せつ菜も責任を感じて侑達に相談に来たそうだ。

 

「ランジュちゃんの気持ちはわかるよ。マリナちゃんもスクールアイドルが大好きな子だもん。一緒にやりたいって思うのはおかしい事じゃないよ。」

「アタシだって、マリナの脚の事を忘れてたわけじゃないわ。あの子の歌声なら、そんなハンデなんてもろともしないって思ったの。でも……、」

「難しい問題だよね。」

「部のコーチには障碍者施設でダンスを教えてくれていたインストラクターだっているわ!なによりランジュは脚の事なんて関係無くマリナにスクールアイドルを楽しんでもらいたかったのよ!でも、マリナはそうじゃ無かったみたい……。」

「んー……。」

「愛ちゃん?」

「ねぇ、ランジュとせっつーはどうしたい?」

「どうしたいって……。」

「そんなの!マリナと仲直りしたいに決まってるわ!当然じゃない!」

「そっか。そうだよね。」

 

 

そう言うと、愛は席を立った。

歩夢が不思議そうに首をかしげると、愛は歩夢に向かってピースサインを送った。

 

 

「ま、愛さんに任しとき!」

 

 

 

 

~~

 

 

「はぁ……。」

 

 

その頃、マリナも同じように悩んでいた。

昨日、感情的になったとはいえランジュとせつ菜を無理やり追い出してしまった事に負い目を感じている。

せっかく3人で合作のクリムゾンフェネクスを完成させて、最高の日になるはずだったのに、最悪の日にしてしまった。

カバンの中から愛機のガンプラを取り出すと、マリナは彼に語りかけた。

 

 

「ノワール……私、また一人ぼっちになっちゃったよ……ダメだね、私……。」

 

 

いくら語りかけても、ノワールは答えない。

当然だ、ガンプラに命が宿っているわけが無い。

そんな事わかりきっていっても、今のマリナにはノワールしか友達がいない。

心を許せた友達だったせつ菜とランジュは、昨日マリナが突き放してしまったのだから。

ため息をついているマリナに、そんな彼女を呼びかける声が聞こえた。

 

 

「おーい!マリナっちーーー!!」

 

 

「え?あ、宮下さん……?」

「やほー!1人?」

「あ、う、うん……どうしたの?」

「ん?いやぁ、マリナっち見かけたから、つい声かけたくなっちゃったんだよね。お?それマリナっちのガンプラ?ちゃんと見るの始めてだよ!見せて見せて!」

「えぇ!?ど、どうぞ……。」

 

突然やってきたのは、部室棟のヒーローでありスクールアイドル同好会の一員でもある宮下愛。

せつ菜ともランジュとも仲が良く、周りに友達も多い。

恐らく、マリナとは正反対のタイプ。

マリナが差し出したノワールを大事そうに手に取り、マジマジと見つめて目を輝かせていた。

 

「うわっ!めっちゃ丁寧に作ってんね!マリナっちの愛が伝わってくるよ~!『愛』だけに!アハハ!」

「……ランジュさん達に頼まれて来たの?」

「んーん。そういうわけじゃないんだ。あ、ごめんね、返すよ。」

 

 

そう言ってノワールをマリナに返す愛。

それを受け取ると、マリナは愛に尋ねた。

 

 

「私、ランジュさんとせつ菜さんに酷い事言っちゃった……。」

「ん。」

「宮下さんは、そういう喧嘩とか無縁そうだよね。」

「いやー、そうでも無いよ?」

「そうなの?」

「アタシ、昔から近所のお姉ちゃんの事、本当のお姉ちゃんみたいに思っててさ。でもあんまり身体が丈夫じゃなくて、小学生の頃とかお姉ちゃんを馬鹿にする男子とよく取っ組み合いの喧嘩とかしてたなー。」

「そ、そうなんだ……でも、お姉さんも嬉しかったんじゃないかな?宮下さんにそんなに想われてて。」

「マリナっちは?」

「え?」

「マリナっちは嬉しく無かった?ランジュやせっつーに、本気で想われててさ。」

 

 

愛にそう言われて、マリナは黙ってしまった。

しばらく沈黙が続くが、愛は決してマリナを急かしたりしなかった。

スカートから伸びる無機質な脚を左手で触り、マリナはようやく沈黙を破った。

 

 

「私ね、中学生の頃までは両親と静岡に住んでたんだ。」

「静岡かー。この前、かすみん達が研修旅行で行ったっけ。」

「昔から歌う事が好きで、いつか私の歌で誰かを笑顔に出来たらいいなって思ってたんだ。その時に出会ったの。」

「出会った?」

「うん、スクールアイドル『Aqours』!あの人達、本当に凄くて、輝いていて、キラキラしてて……私も、憧れたんだ、スクールアイドル。」

 

 

全盛期のAqoursが活躍していたのは今から5年前。

現在マリナは高校2年生で17歳なので、5年前は12歳の小学6年生。

彼女がお台場に引っ越してきたのは両親と死別した4年前なので、その1年前にスクールアイドルと出会っていた。

 

 

「両親に無理を言ってダンス教室とか通わせてもらったりして、高校生になったら静真高校に進学して、絶対にスクールアイドルになるんだって、そう思ってたんだけど……。」

「あ……。」

「パパたちが偶然お弁当を忘れたあの日、それを届けに行った時にたまたま事故に巻き込まれちゃって……それでスクールアイドルになる夢も無くなっちゃった。」

「…………。」

「虹ヶ咲学園に進学したのは、その当時は都内で唯一スクールアイドル部が無かったから、未練が消えると思ったからなんだ。でも入学してみると、その年に同好会が出来て、廃部になったと思ったら高咲さんが復活させて……。」

 

 

もしかしてマリナが侑にだけ気まずそうな態度を取るのは、それが原因なのかもしれないと愛は悟った。

一度完全に廃部になったスクールアイドル同好会を、スクールアイドルでも無い侑が復活させた。

その未練が残ったから、侑と話す時だけ少し気まずそうになるのだと。

 

 

「でも、スクールアイドルを嫌いになったわけじゃ無かったんだよね?」

「それはもちろん!好きになった物を嫌いになるだなんて、そんな事あるわけ無いよ!だけど、どうしても気になっちゃうんだ、この脚が。」

「………。」

「ランジュさんにスクールアイドル部に誘われた時、ホントはすっごく嬉しかったよ。この脚の事で馬鹿にする人もたくさんいたのに、ランジュさんはそれでも私と一緒にやりたいって言ってくれた。でも、それと同じぐらい腹が立った。人の気も知らずにって、そう思っちゃった。」

 

 

やりたい事を出来ない。

そんな人に一緒にやろうと言うのは、時には優しさや善意だとしてもその人や周りにとっては残酷な悪意ともなりうる。

マリナだって、ランジュがマリナを陥れるためにそんな事を言ったんじゃないとわかっている。

しかし昨日は、そんな冷静な思考が出来ずに感情的になってしまった。

 

 

「私、ランジュさんとせつ菜さんに謝りたい……。」

「マリナっち……。」

「酷い事を言ったのは、人の気も知らなかったのは私の方。だから謝りたい……でも、今更あの2人に会わせる顔が無いよ……。」

「……じゃあさ、顔を会わせなければいいんじゃない?」

「? どういう事?」

「だってうちらには、これがあるっしょ!」

 

 

愛がマリナに見せたのは、ダイバーギアと愛参頑駄無のガンプラだった。

 

 

 

 

~~

 

 

その頃、ミアを除いた3年生の3人はマギーに呼ばれてニジガクのフォースネストに集まっていた。

マギーの他にはタイガーウルフとシャフリヤールもおり、彼ら3人は開催を直前に控えたガンフェスの運営の一部も担っている。

フォースの代表として、名目上フォースのリーダーとして登録されていたエマがソファに腰かけ、カナタとカリンはエマの後ろでマギーたちに話を聞く事に。

 

「聞いたわよ。あなた達、イオリ・セイから直々に招待状をもらってるんですって?」

「大したもんだよなぁ。相手はあの世界一のビルダーって評されたイオリ・セイだぜ?」

「えへへ~。でも、招待状を貰えたのは璃奈ちゃんのおかげだから。」

「謙遜する事は無い。君たちは今や我々と肩を並べる上位フォースだ。その招待状は、君たちの勲章の様な物として誇りにしてくれたまえ。」

「それで、マギーさん。話ってなんなのかしら?」

「ふふ、そう身構えないでカリンちゃん。あなた達にとってはとってもいいお話よ。」

「カナタちゃん達にとっての良い話って……それってもしかして……?」

「え!?マギーさん、もしかして……、」

「そう、そのもしかして♡」

 

そうしてマギーがエマに差し出したのは、ガンダムフェスに開催スケジュール。

様々なイベントが行われるこのフェスであるが、一時間ほど空欄のスケジュールがあった。

マギーはそこを指差し、エマ達にウインクしながら言った。

 

 

「あなた達、ガンフェスでライブする気は無いかしらん?」

 

 

 

~~

 

 

「あーーー!!待って!!待って当たらないで!!あ~~~!!」

「www」

「笑わないでよミア子!!」

「大丈夫かすみちゃん。次は少し手加減するから。」

「うぅ……璃奈さんとミアさん、強すぎるよ……。」

「しずくさん、かすみさん!順番です!変わってください!」

 

1年生4人とミアの5人は、ゲームセンターでガンダムの対戦格闘ゲーム『エクストリームバーサス2』を絶賛プレイ中。

璃奈とミアのタッグにはどれだけやっても敵わずに、かすみ、しずく、栞子の3人は順番に挑んでは手も足も出ずに返り討ちにされている。

しばらく5人で仲良く遊んでいたが、途中で何度やっても勝てないかすみがため息と苦言を漏らした。

 

「あー、もう無理~!!勝てないとつまんな~い!!」

「そうだね。そろそろ次行こうか。」

「あ、そうだ!GBN行こうGBN!りな子とミア子にやりかえさないとかすみん気が済まない!!」

「いいね。どこからでも掛かってきなよ。ボクと璃奈のライトニングビルドガンドムは最強だってことを教えてあげるから。」

「? 栞子ちゃん、どうしたの?」

「いえ、今姉さんからメールが来まして……。」

「薫子先生なんて?」

「大した事では無いのですが、最近ニルス先生と中々連絡が取れないとの事なので、何かわかれば教えてほしい……と。」

「薫子先生、ニルス先生に何の用事なの?」

「フォースネストの購入の入金が済んだので、その確認の連絡をしているそうなんですが、中々返事が来ないそうです。」

「そうなんだ、なんだか心配……璃奈ちゃんボード『ハラハラ』」

「GBN着いたらニルス先生について何か知ってる人いないか調べてみる?」

「そうですね。そうしましょう。」

 

 

 

 

~~

 

 

愛とマリナが話した約1時間後……ユウ、アユム、セツナ、ランジュの4人は愛に言われるがままGBNへとログインしていた。

指定された場所はフォースネストでは無く、ニジガクがよくGBNでのライブ練習に使っていた廃墟の街。

ここは『機動戦士ガンダムUC 0096』にてシャンブロ戦の舞台にもなり、バンシィが初登場した場所でもある。

 

「アイちゃん、どうしてGBNへ来いだなんて……。」

「おーい!アイちゃーん!」

「? あそこにいるのは……?」

「アイ!と、ま……マリナ……?」

 

 

ランジュがアイの姿を発見した。

声を掛けようとしたら、その隣にいる少女を見て固まってしまった。

そこにいたのは、昨日大喧嘩をしてしまった少女だったから。

 

 

「……ランジュさん、セツナさん……。」

 

 

「あ、アイ!あなた……!」

「面と向かって言い辛い事でもさ、GBNの中なら言えるっしょ?だって、面と向かって無いんだからさ!」

「アイちゃん、それはいくらなんでも無茶苦茶な理屈なような……。」

「なるほど!そう言う事か!」

「納得しちゃうのユウちゃん!?」

 

 

確かにGBNは仮想現実なので、実際に顔を会わせているわけでは無い。

だが体感的にはそう変わらないはず。

アユムはどうも納得できていないが、アユム以外の5人は全員納得している様子だったのであまり深く考えない事にした。

 

「マリナ。」

「マリナさん、昨日は……、」

「あのね。」

 

ランジュとセツナが話そうとすると、マリナがそれを遮った。

彼女はモジモジしながらも2人に近づき、ゆっくりと顔を上げてランジュとセツナを見た。

 

 

「あのね……私、やっぱりスクールアイドルは出来ない。」

「そ、そう……。」

「………。」

「だけどね、ランジュさんから誘われた時、ホントは凄く嬉しかったの。それなのに、私……、」

「「!」」

 

 

シュンッと顔を俯かせたマリナ。

そんな彼女に、ランジュとセツナが少しずつ歩み寄る。

3人とも、昨日の喧嘩の事を後悔していた。

全員が全員、自分を悪いと思い込んでいる喧嘩なら、仲直りなんて想像以上に簡単だ。

 

 

「アイちゃんの作戦、成功かな?」

「アイさんのアイデア、中々っしょ!アイだけに!」

「だけどこれで、皆仲直りしてくれるといいね。」

 

 

アユム達が見守る中、マリナとランジュ、セツナは歩み寄り、手を取合おうと手を伸ばす。

そして、ランジュとマリナが手を合わせようとしたその時、聞き覚えの無い声が後ろから聞こえた。

 

 

 

 

「そこまでです。その場から少しでも動いた場合、全員拘束します。」

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

そんな声が聞こえて、全員が思わず後ろを振り返った。

するとその場にいたのは、白衣を着た色黒な長身の男性型のダイバー。

ダイバーにしては普通の服装ではあるが、何故か腰には刀を下げており、彼の周りにはGBNの警備用モビルスーツのガードロボが複数機。

全員殺気立っており、男はその場にいる全員へ視線を移す。

彼の顔を見てマリナが驚いた表情になり、彼女は男の名を呟いた。

 

 

「に、ニルスさん……?」

 

 

 

「カツラギ・マリナさん。いえ、バンシィ・ノワール……あなたを、逮捕します。」

 

 

 

 





~にじビル毎回劇場~

第89回:ニジガクライブ!

せつ菜「うぉおおおおお!!!ついに4thライブですよぉおおおお!!!」

歩夢「栞子ちゃん、緊張してない?」

栞子「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。今はライブが待ち遠しくて仕方ないんです!」

しずく「あ、パルくん達見に来てくれるんだって。」

かすみ「ドージ達はGBNから見るらしいよ!」

ランジュ「カワグチも来ればいいのに。」

エマ「メイジンは忙しい人だからねぇ。」

果林「それにしても、緊張してる子が誰もいないなんて、皆成長したわね。」

愛「緊張どころか、皆もう待ちきれないって感じだもんね!」

彼方「うぉおおおお!!!彼方ちゃんやったるぜぇえええええ!!!」

ミア「!? か、彼方どうしたんだい!?」

璃奈「遥ちゃんが見に来てくれるから、凄く張り切ってる。璃奈ちゃんボード『メラメラ~』」

侑「ステージで輝く皆を、客席から精一杯応援するからね!」

歩夢「ありがとう侑ちゃん!よーし、頑張ろー!」


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