せつ菜とランジュがバンシィ・ノワールと戦い、マリナが姿を消してから一夜が明けた。
未だに目を覚まさないランジュの事が心配なスクールアイドル同好会とミアの12人だったが、あの後病院へと駆けつけてくれたマギーに『学校には行った方がいい』と諭され、ひとまずは帰宅してから登校。
昨夜ガンプラバトル同好会の部室が破壊された件については、現在警察が学校にやってきて調べているが、ガンプラバトルの結果なのでおそらく調べても何もわからないだろう。
同好会の部室に集まった一同は、今後について話し合う事にした。
「あれ?栞子ちゃんは?」
「ミアちゃんと一緒に、理事長に呼ばれてた。」
「理事長に?それも、ミアちゃんと?」
おそらく生徒会絡みと思われるが、ミアも呼ばれた事が気になる。
相変わらず昨夜からせつ菜が心ここに非ずという感じで、普段は部室に来るとせつ菜モードになる彼女は、菜々モードの姿のまま椅子に腰かけて一言もしゃべらない。
普段は部室の中でかすみや愛と一緒に騒いでいるせつ菜がこんな状態なので、全員せつ菜を心配して視線を向けた。
「せっつー……。」
「…………。」
「……そうだ!ねぇ皆、ぬか漬け食べない!?今日おばあちゃんがどうしても持って行けって持たせてくれてさ……って……ごめん……。」
「ううん、元気づけようとしてくれてありがとう愛ちゃん。」
「愛さん、こういう時どうすればいいか全然わかんないや……。」
なんとか愛が皆を元気づけようとしてくれるが、その奮闘も虚しくさらに重い空気が流れた。
その中で3年生の3人が何かを話し合っているが、誰もそれを気にも留めない。
そして、しばらくの間沈黙が続くと、廊下の方からドタドタと誰かが走ってくる音が聞こえた。
勢いよく部室の扉が開くと、それは栞子であり、普段は廊下は絶対に走らない彼女が息を切らせながら部室に飛び込んできた。
その顔は全力疾走してきたのに顔面蒼白であり、彼女の後ろには目の周りを赤くしたミアもいた。
「し、栞子ちゃん!?どうしたの、そんなに慌てて……。」
「ミアちゃんも、何があったの?」
「た……大変!!大変なんです!!」
「栞子ちゃん落ち着いて!何が大変なの?」
「す、スクールアイドル部が!!」
そこから栞子が語ったのは、先ほど理事長室で告げられた話。
そこで告げられたのは、なんと『スクールアイドル部の統廃部』
つまり、スクールアイドル部を廃部にして、今いる部員をスクールアイドル同好会へ入部させるようにと理事長から直々に通達があったらしい。
何故そのような事になったのか、栞子はその理由を説明した。
「スクールアイドル同好会とスクールアイドル部の違いは、プロの指導を受けるか受けないか、簡単に言うとそれだけなんです。練習もライブもイベントも、全て自分たちの手で行う同好会と、プロの斡旋を受ける部。つまり、その指導を行うプロがいなければスクールアイドル部は成立しません。」
「それは前に聞いた事あるけど、だけど……、」
「ランジュがいないからさ。」
そこで、初めて黙っていたミアが口を開いた。
彼女は顔を俯かせたまま、言葉を続ける。
「部の指導を行ってるコーチ達は、皆ランジュが連れてきた。実際、ボクだってその一人さ。だけど、そのランジュは意識不明でいつ目覚めるかもわからない……彼らからしてみれば、もうこの学園に留まっている意味が無い。」
「意味が無いって、そんな!」
「コーチもいなくなって、スクールアイドル部は実質ボク1人だけの部になった。そんな部活の活動を認める学校がどこにあるっていうんだ。」
「……理事長も、説明の時はとても辛そうでした。当たり前です。一人娘が原因不明の昏睡状態……この決断も、ランジュと同じ部に所属しているミアさんを1人にしないために……。」
ランジュがいなければスクールアイドル部は成り立たない。
アシムレイトでシランジュと繋がっていたランジュは、シランジュをバンシィ・ノワールに完全破壊された事によるショックでいつ目覚めるかもわからない昏睡状態にある。
そんな彼女の為にまともに活動できない部を残しておくことは、学園的にも出来なかったのだろう。
「ボクだって君たちの事は好きだよ。だけど、ランジュを置いてボクだけ同好会に入る決心なんて、今はまだできない……。」
「ミアさん……。」
「……ねぇ、ちょっといいかしら?皆に話しておかなければいけない事があるのだけど。」
「果林さん?」
いったん話を止めて、果林が割り込む。
果林はエマ、彼方と顔を会わせて頷き、本来であれば昨日のうちに伝えるべきだった事を告げた。
「実は、マギーさんから、同好会と部に正式に、ガンフェスでのライブを依頼されていたの。」
「まだ引き受けてはいないんだ。皆に相談してからって思ってたから。」
「でも、あんな事が起こって、ランジュちゃんも目が覚めないんじゃ、ライブなんて無理だよね……。」
最後に彼方が言った、無理という言葉が全員に重くのしかかる。
ガンフェスがGBNにおける最大のイベントだ。
ありとあらゆるディメンションでガンダムに纏わるイベントが同時に開催され、リアルでもGBNでも大いにお盛り上がるお祭り。
そんなガンダムシリーズ最大級のお祭りというステージに、ニジガクのスクールアイドルがライブを依頼された。
だが、もしも今ガンフェスでライブをすれば、バンシィ・ノワールにフェスが狙われるかもしれない。
それにランジュもいまだに目覚めない。
そんな状況の中でライブをしようだなんて、この場にいる誰も思わなかった。
「……なんでですか……!」
「かすみちゃん……。」
「どうしてこんな事になったんですか!私達、ただ楽しくライブやガンプラバトルがしたいだけだったのに……ランジュ先輩だって、友達のマリナ先輩を助けようとしただけなのに、ライブも出来なくなって、部も廃部になって、ミア子1人だけ残して……そんなの、可哀想じゃないですかぁ!!」
ずっと我慢していたのか、そこからかすみは声を上げて泣き始めた。
普段ならしずくが撫でればすぐに泣きやむが、今回はそうもいかなかった。
今までの同好会のピンチは、廃部の危機だったり、ライブが出来なかったりなど、物理的なピンチが多かったが、今回はそうではない。
やろうと思えばライブをすることは出来るし、全ての問題を度外視すればガンプラバトルだって出来る。
しかし、そう簡単にはいかないのが人間だ。
「もうすぐお昼休み、終わっちゃうね。」
「さすがに授業に出ないわけには、いかないよね……。」
「……教室に戻りましょう、皆さん。」
「せつ菜ちゃん、大丈夫?」
「えぇ……大丈夫です。ありがとうございます、歩夢さん。」
今のこの状況で、一番つらいのはきっとせつ菜だろう。
昨夜一緒にいた中で、唯一無事だったせつ菜は、バンシィ・ノワールを止められなかった事と、ランジュを守れなかった事に負い目を感じている。
その事はこの場にいる全員がわかっているし、せつ菜が何も悪くない事も全員十分わかっている。
それでも、今のせつ菜に掛ける言葉が見つからない。
「せっつー、思いつめなきゃいいけど……。」
「…………。」
「ミアちゃん、どこに行くの?」
「学校にいる気分じゃない。今日はもう帰る。いいよね、栞子?」
「……わかりました。どうかお気をつけて。」
ミアがどこへ行くのかわかっている栞子は、それ以上ミアに聞く事はなかった。
全員が様々な想いを抱えたまま、それぞれ自分の教室へと戻って行った。
~~
授業は全く頭に入らなかった。
先生が何を言っているのか、菜々には理解できなかった。
途中で当てられても答えられず、クラスメイトから驚かれたりもしたが、そんな事に対して何の感情も湧かないまま、そのまま放課後を迎えた。
きっと今日は練習なんて無いだろう。
ランジュの病院へ行こうか……そう考えた菜々だったが、今の自分はランジュに会わせる顔が無いと、その考えを捨てた。
何も考えずに鞄に教科書を詰めていると、その中に入っているケースが目に映る。
(……ごめんなさい、スカーレットエクシア……。)
その中には、昨日の戦いで壊れてしまったスカーレットエクシアが入っている。
両腕を接続していたポリキャップはねじ切れ、右腕は完全に粉砕。
シランジュほどではないにしろ、修復がほぼ不能なレベルまで壊れてしまっている。
胸を締め付けられるような想いをしながらも帰り支度をしていると、菜々の肩を誰かが叩いた。
「菜々。」
「あ……副会長。お疲れ様です。」
「朝からずっと顔色が悪いけど、大丈夫?」
「えぇ……ご心配をおかけしてしまってすいません。」
「ねぇ、この後時間ある?」
「え?」
練習に行くつもりは無かったが、遊ぶ気も起きない菜々。
きっと副会長は元気のない自分を遊びに連れて行ってくれる気なのだろう。
しかし、昨日の今日でそんな事をするわけにもいかず、菜々は副会長の誘いを断ろうとした。
「いえ、今日は……、」
「ほら、前に一緒にせつ菜ちゃんのライブに行った時、菜々は自分のガンプラ持って無かったでしょ?今日、私が昔ガンプラバトルを教わった人が講師をしてるガンプラ塾の無料体験会をしてるの。一緒に来てくれると嬉しいなって。」
「…………。」
笑顔でそう言ってくる副会長の顔を見たら、断るのも失礼な気がしてきた。
仕方なく鞄を手に取り、彼女に着いて行く事にした。
「わかりました。少しの時間なら、お付き合いします。」
「ありがとう!さぁ、行きましょう!」
~~
1人でランジュの病室にやって来たミア。
未だに目を覚まさないランジュは、いつもの騒がしさが嘘のように静かに眠りについている。
ベッドの横の椅子に座り、今日あった事をランジュに話していた。
「今日、スクールアイドル部が廃部になったよ。君がいないんじゃ、コーチ達もこっちにいる意味無いってさ。まぁ、仕方がないよね。あの人達だって仕事でやってるんだから。」
チラっとランジュを見る、やはり目を覚まさない。
「理事長からも同好会に入るように言われたよ。正直、悪い話じゃない。璃奈ともずっと一緒にいられるしね。彼女たちとのステージは心が躍る。だけど、ボクは君に呼ばれて日本に来たんだ。ボク1人だけ同好会に入るなんて、そんなの出来るわけないじゃないか。」
眠っているランジュの手を握るミア。
その手に、少しずつ力が篭る。
「だから、早く戻って来てよ……こんなもんじゃ無いだろう、君は……!」
~~
「着いたわ。ここよ。」
「ここは……?」
副会長に連れられてやってきたのは、お台場から少し離れた場所にある道沿いの小さな建物。
大きさは一般的な塾よりも少し小さめで、人が10人も入れればいい方だろう。
塾の名前が書かれた看板を見上げ、菜々は小さくその名前を呟いた。
「ユウキ……ガンプラ塾……?」
~にじビル毎回劇場~
第94回:アイスはほぼ水
エマ「ん~♡ボーノ!」
彼方「エマちゃんって本当に美味しそうに食べるよね~。彼方ちゃんエマちゃんのそういう所大好き~。」
果林「それはいいんだけど……エマ、あなたちょっと食べ過ぎじゃない?」
エマ「そうかなぁ?」
ミア「いくらデザートビュッフェだからって、大皿に山盛りにアイスを載せるのはどうかと思う。」
彼方「エマちゃん、お腹大丈夫?」
エマ「大丈夫大丈夫!アイスはほとんど水分だから!」
果林「そんなドーナツには穴が開いてるからカロリーゼロみたいな理論通用しないわよ。」
ミア「えぇ!?ドーナツってカロリーゼロなの!?」
エマ「し、知らなかったよぉ!!」
果林「いやそんなわけ無いじゃない。めちゃくちゃカロリー高いわよ。ドーナツもアイスも。」
彼方「じゃあ今度彼方ちゃんが低カロリーなおからドーナツ作って来てあげるよ~。」
エマ「やったー!彼方ちゃんありがとう!」
ミア「彼方、ボクにもカロリー少な目のハンバーガー作って来てよ。」
彼方「いいよ~。」
果林「……いや話題がドーナツにすり替わってるけど今の問題はアイスよ。」
ミア「すり替えたの果林じゃん。」
エマ「うんうん。」
果林「私は例え話をしただけよ!うぅ、なんだか頭痛くなってきたわ……。」
彼方「そりゃ果林ちゃんもアイスたくさん食べてるからね~。それだけ冷たい物食べてたら頭も痛くなるよ~。」