「ユウキ……ガンプラ塾……?」
「私、昔ここでガンプラバトルを教わったの。さぁ、入りましょう。」
「あ、ちょ、ちょっと!」
副会長と共に、お台場から少し離れた街の小さな建物にやってきた菜々は、『ユウキガンプラ塾』という聞き覚えの無い塾の中へと連れて行かれた。
建物にはGBNや実機バトルの大会のポスターが張られていて、パッと見ではただの模型屋に見える。
しかし中に入ってみると、模型屋のように商品が置かれているわけでは無く、長机とパイプ椅子が設置された一般的な塾の様な内装で、小学生から中学生ぐらいの子供たちが数人いた。
中にはお年寄りの塾生もいるようで、孫ぐらいの年齢の子供たちと一緒に楽しそうにガンプラ作りをしていた。
「あら?先生はいないのね……。」
「あの、副会長……私は……。」
「仕方ないわ、中で少し待ちましょう。」
「いえ!あの、勝手に入っていいんですか!?私、ここの塾生ってわけじゃ無いですし……、」
「フフッ、大丈夫大丈夫。言ったでしょ?無料体験会だって。それにこの塾は、ガンプラ好きなら誰でも出入り自由なの。ここにいる人達だって塾生ってわけじゃないんだから。」
「はぁ……そ、そうなんですか……。」
机に座り、先生が来るまでの間待つことにした2人。
待っている間、子供たちとガンプラ作りをしていたおばあさんが飴玉をくれたりした。
それを口に頬張り、溶けて無くなるぐらいまでの時間が経つと、教室のドアを開けて、優しそうな顔立ちの30代前後のスーツ姿の男が入って来た。
「皆さん、初めまして。今日は体験会に来てくれてありがとう。塾長兼講師の、ユウキ・タツヤです。今日は皆さんに、ガンプラがいかに素晴らしく、そして楽しい物であるかを知ってもらえればいいなと思っています。」
(? あの人、どこかで見た覚えが……気のせいでしょうか……?)
「先生!」
「ん?やぁ、久しぶりだね!最後に会った時はまだ中学生だったかな?」
「今は虹ヶ咲学園の2年生です。」
「そうか、もうそんなになるんだね。隣の子は?お友達かい?」
「へ!?わ、私ですか!?」
「はい。同級生の友達なんです。」
塾講師のユウキ・タツヤという男と、親しげに話し始めた副会長。
その最中に突然自分に話を振られたため、菜々は慌ててしまった。
すると彼女の目の前に、タツヤはガンプラの箱を置き、ニコッと笑って来た。
「来てくれてありがとう。ガンプラはとても楽しいものだよ。是非、楽しんでいってね。」
「あ……は、はい……ありがとうございます……。」
(……HGの……ダブルオークアンタ、か……。)
タツヤに渡されたキットは、劇場版機動戦士ガンダムOOに登場する主役機『HG ダブルオークアンタ』
ガンダムエクシアの後継機であるダブルオーライザーの、更なる後継機であり、主人公の刹那・F・セイエイが劇中最後に登場した機体。
正確にはこの後更に、このクアンタが進化したELSクアンタという物も存在するが、そちらは機体というより金属生命体と言った方がただしく、ソレスタルビーイングが開発した刹那専用ガンダムという意味では最終機となる。
しかし、それだけにクアンタを見ていると思い出してしまう。
「……エクシア……。」
「菜々?どうしたの?」
「もしかして、クアンタはお気に召さなかったかな?なら別のガンプラを……、」
「いえ、すいません……大丈夫です、このガンプラで。」
「そうかい?無理はしないようにね。ガンプラ作りは、楽しくするものだから。」
今の気分で楽しいガンプラ作りなど出来るはずも無い。
クアンタを見ていると、破壊されたスカーレットエクシアの事や、目を覚まさないランジュの事、それにバンシィ・ノワールとマリナの事を思い出してしまう。
それほどまでに、エクシアとクアンタは似ている機体なのだ。
「菜々がクアンタなら、私はサバーニャにしようかな。最終決戦仕様……まさか令和になってからこのガンプラと出会えるだなんて思ってもみなかった!」
「フフ、コレはセラヴィーIIも期待できるね。」
「はい!さぁ、作りましょう、菜々。」
「……そうですね。」
気乗りしないまま副会長とタツヤに促され、菜々は仕方なくガンプラ作りを始めた。
普段ならゲート処理、スミ入れ、塗装までするところだが、今の菜々にはそんな事をするほど心の余裕が無い。
黙々と作業を続ける菜々、その様子を心配そうに見守る副会長。
クアンタとサバーニャの上半身を作り終えるところで副会長のスマホに着信があり、彼女はそれを取った。
相手は副会長の母親だった。
「もしもし?今?うん、友達と塾に来てて……そう、ユウキ先生の。え!?あの約束って今日だったっけ……ごめんなさい、すぐ行きます!」
「用事かい?」
「すいません先生!今日、家族で食事に行く約束をしていた事すっかり忘れていて……菜々もごめんなさい!!」
「いえ、お気になさらず……それより、早く行ってあげて下さい。」
「え、えぇ!先生、後はよろしくお願いします!」
「うん。家族水入らず、楽しんでおいで。」
サバーニャをカバンにしまい込み、副会長は席を立ちあがった。
急いで帰ろうとする彼女だったが、最後に菜々に小声で伝えた。
「菜々。」
「はい?」
「……あんまり一人で抱え込まないでね。」
「え?」
「じゃあ、また明日学校で。」
それだけ伝え、副会長は帰宅。
1人残された菜々は副会長に言われた言葉の意味がよくわからず、自分だけいても仕方がないと席を立ちあがろうとする。
「……では、私も……、」
「君も用事かい?」
「いえ……そう言うわけでは無いのですが……今日は彼女に誘われて来ているので、彼女がいないと私がいる意味は……。」
「意味が無いなんてことは無いさ。それとも、ガンプラは嫌いかい?」
「…………。」
「好きならば、是非ここで完成させていってくれたまえ。クアンタもきっと喜ぶ。」
「……わかりました。」
大人しく席に座り、菜々は再びクアンタの製作を開始した。
クアンタのデザインはエクシアと似ているが、ダブルオーガンダム以降のHGOOシリーズは可動範囲が従来のガンプラに比べて圧倒的に広く、作りは全然違う。
「作りが細かい……これが10年以上前のキットだなんて信じられませんね……。」
ふと顔を見上げると、タツヤは他の生徒を指導していた。
子供たちやお年寄りにも分け隔てなく優しく接し、漢字が読めない子供や説明書の文字が小さくて読めないお年寄りには内容を読み聞かせてくれている。
「先生!このパーツ固くてハマんないよ!壊れてるんじゃない!?」
「こらこら、力づくでやっちゃダメだろ!ほら、説明書をよく見てごらん。このパーツはこの小さな出っ張りを上向きにして入れるんだ。ほら、やってごらん?」
「んー……あ、入った!先生ありがとう!」
「あの~……すいません先生……文字が小さくて見え辛いんですが……。」
「はい!どのページですか?」
「ここなんですけどねぇ……。」
「じゃあ私が読みますので、その通りに作ってみてください!」
「どうもすまないねぇ。孫がどうしても、誕生日にはじーちゃんと一緒にプラモデルを作りたいって聞きませんで……。」
「だったら頑張らなきゃいけませんね!お孫さんにカッコいいところを見せてあげて下さい!」
(この教室は、こんなにも『大好き』で溢れている……あの先生、凄い……。私も、あの時にもっと大好きを伝えられていたら、あんな事にはならなかったんでしょうか……。)
「中川さん。」
「は、はい。」
「……うん、よく出来ているね。」
「え?あ……。」
タツヤに話しかけられて、初めて菜々は自分がダブルオークアンタを完成させていた事に気が付いた。
改めて見て見ると、本当にクアンタはエクシアに似ている。
コレは元々、クアンタの開発経緯が刹那専用ガンダムの開発と言う事で、開発者のイアン・ヴァスティがエクシアに似せて作ってくれたためだ。
クアンタを手に眺めていると、タツヤが教卓の下からカバンを取り出した。
「良かったら、性能のテストをしてみないかい?」
「バトル……と言う事ですか?」
「あぁ、君さえよければ、だけど。」
「……わかりました。是非お願いします。」
何故かその時、菜々はバトルをしなければと思った。
タツヤは頷き、彼女をバトルルームへと連れて行くと、そこには実機バトル用筐体GPDによく似た、ガンプラバトル用の筐体があった。
だが、よく見て見るとGPDとはまた少し違った形をしており、何故かダイバーギアをセットする所もあった。
「これは、実機バトルでは無いのですか?」
「コレはGBNのシステムとGPDのシステムを融合させた新しいガンプラバトルシステムさ。手元の操縦桿のところにガンプラをセットしてごらん。」
「ここ、ですか?」
言われた通り、筐体にダブルオークアンタをセット。
すると、筐体上のバトルフィールドにダブルオークアンタが出現する。
もちろんガンプラそのものは手元にあるままなので、菜々は驚いた。
「コレは……!」
「コレは筐体上のバーチャル空間にガンプラを出現させ、実機バトルの様に戦わせることが出来る、ヤジマ商業が開発中に新しいガンプラバトルシステム『GVB(ガンプラバーチャルバトル)システム』さ。」
「新しいバトルシステム?どうしてあなたがそんなものを……!?」
「さぁ、私も行こうかな。」
そう言うとタツヤもガンプラをセット。
ダブルオークアンタの目の前に全身真っ赤なガンプラが出現。
両者操縦桿を握り、相手の機体を見据える。
「始めようか中川さん!ユウキ・タツヤ!ハイゴッグ・アメイジング!出る!!」
「……中川菜々、ダブルオークアンタ、行きます。」
操縦桿を操作し、新システム上でダブルオークアンタが動き出した。
それと同時に目の前にダブルオークアンタのメインカメラの映像がモニターに映し出され、さながらGBNでバトルしているような操作感だ。
専用武器であるGNソードVを握り、ハイゴッグ・アメイジングへと迫る。
ハイゴッグは水陸両用のモビルスーツ……しかし、地上戦においてはダブルオークアンタの方が圧倒的に有利。
そもそものスペック的にもダブルオークアンタは全シリーズ通しても最強クラスのモビルスーツ。
しかも菜々はGBNでは名の知れた上位ランカー……負ける通りが無い。
GNソードVをハイゴッグ・アメイジングへと突き刺そうとするが、ハイゴッグ・アメイジングはその場で大ジャンプをした。
「!? と、跳んだ!?なんですか、この運動性……!?」
「フフフ……。」
ハイゴッグとは思えないほどの大ジャンプに、菜々は驚いたが、すぐにGNシールドから6基のGNソードビットを分離。
空中にいるハイゴッグ・アメイジングを目掛けてビットを放つが、ハイゴッグ・アメイジングはリアスカートに搭載している最低限のブースターを巧みに使い、空中にも拘らずビットを全て躱す。
「あ、当たらない!?こ、この……!」
「フフフ、今の君では、私を捉える事は不可能さ。」
地上に降りてきたハイゴッグ・アメイジングが、今度は目には見えないほどのスピードでダブルオークアンタの懐へと踏み込んできた。
巨大な両手のクローでダブルオークアンタのGNソードVを弾き飛ばし、ダブルオークアンタの喉元へと右手のクローを向ける。
一瞬の出来事に、菜々はしばらく放心状態だった。
「今の君では、私のハイゴッグ・アメイジングに一撃を当てる事さえ不可能だ。中川菜々さん……いや、優木せつ菜さん。」
「!? ……どうして……!?」
「一目でわかったよ。君が優木せつ菜さん、フォース『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のメンバーで、ガンダムスカーレットエクシアのダイバーだと言う事は。」
今まで菜々の姿の自分をせつ菜だと見敗れたのは、果林と栞子しかいなかった為、菜々は驚きを隠せなかった。
その隙にハイゴッグ・アメイジングはクローでは無く、ショルダーアーマーを振いダブルオークアンタを弾き飛ばすと、ダブルオークアンタは地面に倒れた。
「君のバトルには迷いが見える。まるで楽しんでいない。いや、むしろ君はガンプラバトルを恐れているようにも見える。」
「……そ、そんな事は……!」
「バンシィ・ノワールかい?」
「……そこまでわかっているのなら、どうして……!」
その質問に、タツヤは答えない。
その事にいら立ちを覚えた菜々は操縦桿を握りしめ、ダブルオークアンタをハイゴッグ・アメイジングへと突撃させた。
GNソードビットも併用し、ハイゴッグ・アメイジングへ猛攻を仕掛けるが、機敏な動きに翻弄されて全く攻撃が命中しない。
「あなたに何がわかるんですか!!あなたのガンプラ塾を素晴らしかった……どこを見ても大好きが溢れている……。そんなあなたに、大好きが届かなかった私の何がわかるというんですか!!」
「…………。」
「私とランジュさんは、必死に大好きを届けようとしたんです!!だけど、私達の大好きは、大嫌いに負けてしまった……友達を救えず、エクシアも失い、何も成し遂げることの出来なかった私の気持ちなんて、あなたにわかるはずありません!!」
GNソードVをハイゴッグ・アメイジングへと突き刺そうとする菜々。
ハイゴッグ・アメイジングはその剣を片手で受け止め、ダブルオークアンタの動きを封じる。
「なら君は、ここで諦めるのか?」
「な、何を……!」
「負けたらそこで終わりなのか?本当に大好きという気持ちを届けたいのなら、何度でも諦めずに挑戦するものなんじゃないのか?」
「……ダメなんです………あの人は……バンシィ・ノワールは大嫌いという気持ちから生まれた存在……そんな相手に、大好きを届けるなんて……!」
「甘えるなぁ!!」
突如、タツヤの声色が変わり、同時にハイゴッグ・アメイジングがダブルオークアンタのGNソードVをへし折った。
彼はハイゴッグ・アメイジングを巧みに操り、ダブルオークアンタのGNソードビットをも退け、ダブルオークアンタを殴り飛ばす。
「一度の失敗で挫けるな!!何度負けても、何度壊されても、諦めずにビルドし挑戦し続ける……それが本当のガンプラファイターだ!!私の知るガンプラファイター達は、何度負けても決してあきらめる事無く挑戦し続けた!!君の大好きが届かなかったのなら、また別の方法で大好きを伝えればいい!!君はそれを成し遂げるだけの力と、仲間たちがいるだろう!!」
「別の……方法……。」
「君を今日、ここへ連れてきた彼女は、君の事を心から心配していた。彼女だけでは無いはずだ。一人で出来ない事でも、仲間とならば不可能なんて無い。きっとあるはずだ、君たちなりの、ベストな大好きな伝え方が。」
タツヤに言われて真っ先に思い浮かんだのは、同好会の仲間たちやミアやランジュの顔。
そしてバンシィ・ノワールに囚われたマリナの顔も。
自分なりのベストな大好きな伝え方……そんなものは一つしかない。
一度バトルを中断した菜々はダブルオークアンタを引っ込め、鞄の中から壊れてしまったスカーレットエクシアを取り出した。
無言のまま彼女はダブルオークアンタとスカーレットエクシアを分解し、そのパーツを入れ替え始める。
やがて組み換えが終わると、GNソードシールドを携え、一部のパーツがクアンタに置き換わったスカーレットエクシアがそこにあった。
それをGVBの筐体へと読み込ませると、新たな姿を得たスカーレットエクシアがバトルフィールド上に出現した。
メガネをはずし、三つ編みを解いた菜々は、せつ菜へと姿を変えて操縦桿を握る。
「……先生、私、目が覚めました。怖かったんです、大好きを否定される事が……私の大好きが、また誰かを傷つけてしまうのではないかと……。だけど、もう迷いません。私自身が言ったんです!決めたのなら、貫くのみです!!」
「ふむ、良い目になった。ならば私も……、」
ニヤリと笑い、タツヤは髪をかき上げた。
不敵な笑みを浮かべ、再び操縦桿を握りしめる。
「優木せつ菜!!ガンダムスカーレットクアンタ!!大好きを、貫きます!!」
「行くぞ、ハイゴッグ・アメイジング!!」
生まれ変わった新たなエクシア……ガンダムスカーレットクアンタが、折れたGNソードVを手にハイゴッグ・アメイジングへと突撃。
当然ハイゴッグ・アメイジングはそれを回避するが、回避の直前にその軌道を先読みしたせつ菜は、その位置へとGNソードビットを放つ。
それに被弾し、肩アーマーを切り裂かれたハイゴッグ・アメイジングはバランスを崩し、思ったような軌道でジャンプできなかった。
その隙にスカーレットクアンタはハイゴッグ・アメイジングへと急接近し、握りしめた左拳でハイゴッグ・アメイジングを殴り飛ばした。
「!!」
「やった!ついに一撃当てましたよ、スカーレットクアンタ!」
「……面白い……ではここからは、私も本気でいかせてもらおう……。」
「え?」
先ほどのまでのタツヤの雰囲気とは打って変わり、突然彼は高笑いし始めた。
するとタツヤは胸ポケットからサングラスを取り出すと、それを装着。
その姿を見て、せつ菜は驚いた。
何故なら目の前にいたのは、数年前にガンプラバトル世界選手権で優勝を収めた、伝説の男だったから。
「あ……あなたは……まさか!!」
「フッ……さぁ、続きを始めようか!!優木せつ菜さん!!」
「……臨むところです!!スカーレットクアンタ、トランザム!!」
全身が赤く輝き、スカーレットクアンタはトランザム状態へ移行。
折れたGNソードVは捨て、手にはスカーレットエクシアの頃に使用していたGNブレイドを握りしめる。
ハイゴッグ・アメイジングは全身の排気口から煙を噴きだし、爪を研ぐ動作を見せ、そこから空高く大ジャンプをした。
「スカーレットクアンタ!!せつ菜スカーレットストーーーーーム!!!」
「燃えろ……燃え上がれ……!ガンプラぁああああああ!!!」
~~
バトルを終えた頃には、すっかり夜になってしまった。
講習会に来ていた人達も帰ってしまい、せつ菜は最後にタツヤと握手を交わした。
「ありがとうございました先生。私、皆と話して見ます。」
「あぁ、それがいい。しがないガンプラファイターの私では、これぐらいの手伝いしか出来ないが……君たちの事は、ずっと応援しているよ。」
「はい……本当に、お世話になりました、3代目。」
くるっと振り返ったせつ菜は、決して後ろは向かなかった。
その後ろ姿を見守りながらタツヤ……3代目メイジン・カワグチだった男は、静かに塾の中へと戻って行った。
~~
その頃、入院中のランジュと、せつ菜とミアを除いた10人の同好会メンバーはGBNのマギーたちの下を訪れていた。
彼の傍にはタイガーウルフやシャフリヤール、それにキョウヤもいる。
正式にガンフェスでのライブを断りに来た。
こういう場ではフォースの名目上のリーダーであるエマが代表をする。、
全員が暗い顔を見せているのでマギーたちも悟ったのか、残念そうな表情を浮かべた。
「あなた達が言いたい事はわかるわ。ガンフェスの件よね?」
「はい……。」
「まぁ、無理もねぇよな。」
「そもそも、ガンフェス自体無事に開催できるかもわからないのが今の状況だからね。」
「エマ、本当にいいんだね?」
「……はい、私達、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は……ガンフェスへの出演を……、」
「ちょーーーーーっと待ったーーーーーーー!!!」
「え?えぇ!?えーーーーっ!?」
エマが断ろうとしたその瞬間、赤と青が入り混じった継ぎ接ぎ感の強いガンプラが彼女たちの下へと落ちてきた。
そのガンプラ……スカーレットクアンタからセツナが飛び出してくると、全員目を丸くした。
「せ、セツナちゃん!?」
「セツナさん、そのガンプラは一体……?」
「チャンピオン!!マギーさん!!ライブの件、喜んでお引き受けします!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいセツナ!あなた、何を……!?」
「ただ、お願いがあるんです!!ガンフェスの前日……その日を、私達のライブにしてほしいんです!!」
「前日に?それは構わないが……いったいなぜ?」
「私、マリナさんにもガンフェスを楽しんでもらいたいんです!その為に、マリナさんとバンシィ・ノワールに、私達の大好きを……ライブを届けるんです!!」
「えぇ!?バンシィにライブぅ!?セツナ先輩本気ですか!?」
「本気と書いてマジです!!ミアさんも一緒に、私達の精一杯の大好きをバンシィと、マリナさんへ届ける……大嫌いなんて気持ちが吹き飛ぶぐらい、最高のライブを見せつけてやりましょう!!!」
突然現れたセツナの言葉に全員が困惑していた。
しかしその中で一人だけ……ユウだけはセツナの言葉にうなずき、彼女の手を取った。
「セツナちゃん!」
「ユウさん。私は、ファンの皆だけじゃなくて、世界中の人に大好きを届けたいんです。それはもちろん、マリナさんや、ノワールさんも例外ではありません。私達の大好きを届けるために……協力してくれますか?」
「勿論だよ!!皆のライブは、絶対に邪魔させない!!私が責任を持って、バンシィ・ノワールに皆のライブを届けるよ!!」
ユウがそう言うと、全員顔を見合わせて、少しだけだが笑みを浮かべた。
ユウとセツナが手を握っている所に、更にアユムも手を載せてきた。
「私も皆に、夢と勇気を届けたい!セツナちゃん、私も本当はライブがしたかったの……決めたのなら、貫くのみ、だね!」
更にそこへ他のメンバーも順番に手を重ねていく。
「だったらかすみんだって、カワイイをお届けしますよー!バンシィだろうがなんだろうが、かすみんの可愛さの前だとイチコロです!」
「皆さんだけに美味しいところは持って行かせません!私だって、舞台の上では主役なんだって気持ちで頑張ります!」
「やられっぱなしは性に合わないのよね。ぐぅの音も出ないぐらいの物を、アイツに見せつけちゃいましょう。」
「見せつけるだけじゃなくて、笑顔になってもらいたいよね!『しょう』ねを入れて、『ショー』タイム!笑いだけに!アハハハ!」
「うぉおおおおおお!!!カナタちゃん燃えてきたぁああああああ!!!!やってやるぜぇええええ!!!」
「GBNは皆の大好きが溢れる場所だから、私達でバンシィ・ノワールの大嫌いを、大好きに変えちゃおう!」
「きっと出来る!私達なら、きっと伝えられる!りなこちゃんボード『むんっ』!」
「ミアさんには私から伝えておきます。それからランジュにも……。最高のライブにしましょう!」
先ほどまでの暗い表情が嘘のように、全員の目には光が溢れていた。
彼女たちの言葉を聞き、頷いたキョウヤは、ニヤリと笑う。
「では、全員、ライブの件は承諾してもらえる……と言う事で受け取って構わないかな?」
「「「お願いします!!」」」
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。
GBN最大イベント『ガンダムフェス』0日目への、参加及びライブステージ決定。
~にじビル毎回劇場~
第95回:派閥
タイガーウルフ「うーむ……困った……。」
しずく「何が困ったんですか師匠?」
タイガーウルフ「あぁ、しずこか。いや……実は、虎武龍で今、ちょっとした内乱が起こっていてな。」
しずく「えぇ!?な、内乱ですか!?な、何があったんですか!?」
タイガーウルフ「いやー……お前に相談するのはちょっと……いや、かーなーり気が引けるんだよなぁ……。」
しずく「どうしてですか師匠!私はそんなに頼りない弟子ですか!?」
タイガーウルフ「そういうわけじゃねぇんだけど。あー……仕方ねぇ、言っちまうか。」
しずく「?」
タイガーウルフ「マギーに紹介されたお前らがうちの門下生になって数か月、うちのフォースはしずこ派、アユム派、セツナ派の3つに分かれて混沌を極めちまってるんだよ。」
しずく「………。」
タイガーウルフ「最近だと派閥争いが過激になって来ててよ、どうしたもんだか……。」
しずく「師匠は誰派なんですか?」
タイガーウルフ「あん?今それはどうでも……、」
しずく「師匠は誰派なんですか?」
タイガーウルフ「お、おいしずこ。目が笑ってな……、」
しずく「師匠は誰派なんですか?」
タイガーウルフ「え、なに?こわっ……。」