ありふれた果実は世界最強   作:EXE@(O8O)

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響き渡る狂化訓練と兎娘の決意

 

 

  ハジメ「さて、お前らには戦闘訓練を受けてもらう」

 

 

 フェアベルゲンを出た俺達が、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息ついた時の、ハジメの第一声がこれだった。

 

 拠点といっても、ハジメがさりげなく盗んで……貰ってきたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけのものだ。ちなみに、平然と割と重要な水晶を盗んだハジメに俺は遠い目をしていたりする。

 

 そして、ハジメが切り株に腰掛けて放った言葉に、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべた。

 

 

 

 シア「え、えっと、ハジメさん。戦闘訓練というのは……」

 

 ハジメ「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へは辿り着けないんだろ?ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱な負け犬根性が染み付いたお前らを、一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

 

 シア「な、なぜ、そのようなことを……」

 

 

 

 ハジメの据わった目と全身から迸る威圧感にぷるぷると震えるウサミミ達。シアが、あまりに唐突なハジメの宣言に当然のごとく疑問を投げかける。

 

 

 

 ハジメ「なぜ?なぜと聞いたか?残念ウサギ」

 

 シア「あぅ、まだ名前で読んでもらえない……」

 

 雄汰「……いい加減、名前で呼んでやれよ」

 

 

 

 落ち込むシアと流石に憐れんだ俺を尻目にハジメが語る。

 

 

 ハジメ「いいか、俺がお前達と交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。じゃあ、案内が終わった後はどうするのか、それをお前達は考えているのか?」

 

  

 ウサミミ達が互いに顔を見合わせて、ふるふると首を振る。族長であるカムも難しい表情だ。漠然と不安は感じていたが、激動に次ぐ激動で頭の隅に追いやられていたようだ。あるいは、考えないようにしていたのか。

 

 

 ハジメ「まぁ、考えていないだろうな。考えたところで答えなどないしな。お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。そんなお前らは、遂にフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、俺らの庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るというわけだ」

 

 

 ハウリア族「「「「…………」」」」

 

 全くもってその通りなので、ハウリア族達は一様に暗い表情で俯く。そんな彼らに俺とハジメの言葉が響く。

 

 

 雄汰「フェアベルゲン以外でお前達の安全を確保できる場所があるなら、そこに送るぐらいはできた。だが、生憎、俺らにはそういったツテはない」

 

 ハジメ「つまり、お前らに逃げ場はないってことだ。だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙ってくる。このままではどちらにしろ全滅は必定だ。……それでいいのか?弱さを理由に淘汰されることを許容するか?幸運にも拾った命を無駄に散らすか?どうなんだ?」

 

 

 誰も言葉を発さず重苦しい空気が辺りを満たす。そして、ポツリと誰かが零した。

 

 

 

  「そんなものいいわけがない」

 

 

 

 誰かが言われた言葉に触発されたのか、ハウリア族が顔を上げ始める。彼らの瞳には一様に強い輝きが宿り始めている、シアも同じだった。

 

 ハジメは、彼らの様子にかつての無力な自分の姿を頭の片隅に浮かべながら言葉をつづける。

 

 

 

 ハジメ「そうだな。いいわけがない。ならば、どうするか?答えは、簡単だ。強くなればいい。襲い来るあらゆる障碍を打ち破り、自らの手で生存の権利を獲得すればいい」

 

 シア「………ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように、特殊な技能も持っていません。とても、そのような………」

 

 

 

 兎人族は弱い。戦うことができない最弱種族。どうあがいても強く離れないとそう自分達を卑下する彼らをハジメは鼻で笑った。

 

 

 

 ハジメ「俺はかつての仲間から、“無能”と呼ばれていたぞ?」

 

 シア「え?」

 

 ハジメ「“無能”だ“無能”。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱。戦闘では足手纏い以外の何者でもない。ゆえに、かつての仲間達は俺を“無能”と、呼んでいたよ。実際、その通りだった。そして、俺はいつも雄汰に守られるだけだった」

 

 

 ハジメの衝撃的な告白にハウリア族達は例外なく驚愕を顕にする。ライセン大峡谷の魔物達を容易く一蹴して見せたハジメが、無能で最弱など誰が信じられるというのか。

 

 だからこそ、当時を知る陽和が保証する。

 

 

 

 雄汰「事実だ。少なくとも、奈落に落ちる前のハジメは戦う力はほぼ皆無と言っていいぐらいに弱かったな」

 

 ハジメ「だが、奈落の底に落ちて雄汰の庇護すらも無くなった俺は強くなるために行動した。出来るか出来ないかなんて頭になかった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てを賭けて戦った。………気がつけば、この有様さ」

 

 淡々と語られる……しかし、あまりにも壮絶な内容にハウリア族達の全身を悪寒が走る。

 

 ハジメは俺がヘルヘイムの森で10日も居たからな、その間に強くなったんだよな

 

 一般人並みのステータスということは、自分達兎人族よりも低スペックだということだ。その状態で、自分達が逃げ隠れるだけだったライセン大峡谷の魔物達よりも遥かに強力な怪物達を相手にしてきたというのだ。実力云々や実際生き残ったという事実よりも、そんな怪物共に挑もうとしたその精神の異常さに戦慄した。

 

 自分達ならそんなこと到底出来ない。絶望に押しつぶされ、諦観と共に食われるのが関の山だ。

 

 

 

 ハジメ「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束のうちにある今なら、絶望を砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だというのなら、それでも構わない。その時は今度こそ全滅するだけだ。約束が果たされた後は、助けるつもりは毛頭ないからな。残り僅かな生を、負け犬同士で傷を舐め合って過ごせばいい」

 

 雄汰「残酷なようだが、俺らだっていつまでもお前らを守ってやるつもりはない。こっちにも目的があって旅をしているんだ。わざわざ、お前達を守る為に悲願を曲げるようなことはできない。だから、強くなれ。自分達の意志で未来を選ぶんだ」

 

 

 

 さぁどうする?とハジメ達は問うた。ハウリア族達はすぐに答えることはできなかった。

 

 彼らの言い分が正しいのはわかる。ハジメは正義感から助けたわけではないから、約束が果たされれば容赦なく見捨てるだろう。陽和もいつまでもここにはいない為、ハジメと同じ選択を取るだろう。

 

 そう頭では理解していても、温厚で平和的、心根が優しく争いが何より苦手な兎人族にとって、二人の提案はまさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だったのだ。そして、完全に黙り込むハウリア族達に、雄汰が言葉を再び投げかける。

 

 雄汰「晴れの日もあれば雨の日もある。ハウリア達はさぁ、居場所をなくしたよな。ハジメは身体の一部をなくした。でもさ、生きていくってことはさ、なくすことばっかりじゃないぜ。」

 

「ハウリア達はさ、何も悪いことしたわけじゃないから、今はすごく辛いと思うんだ。でもね、すごく辛くても、それが現実なんだよ。 正しく生きてても、傷つけられたり、踏みにじられたりする。けどね、お前達の人生はお前達のものなんだよ。もしいま、すごく辛いと思うなら、これからは辛くならないようにすればいい」 

 

 シア「鍛える、ってことですか?」

 

 雄汰「・・・まぁ生きてりゃさ、何度も転んで、そのたびに傷を作ったり、痣を作ったりすると思うんだよね。でもそんなとき、心だけは強く鍛えておかないと、自分に負けちゃうじゃない。自分が信じたことを信じて、生きていってほしいなぁって思うんだ。って、ある人の言葉だけどな。」

 

 

 とある鬼のヒーローが弟子に言ったセリフらしいがこれもナーヤ様の加護のせいか。ここ最近どうも俺じゃない誰かしらの言葉が出てしまう。

 

 彼らの人もには決意のようなものが宿る。そしてシアが.....................

 

 

 シア「やります。私たちに戦い方を教えてください!!弱いのはもう嫌なんです!!!」

 

 

 そしてカムも...........

 

 

 カム「ハジメ殿..........お願いします!」

 

 

 二人の決意からさらに広がり全員が変わろうと決意する

 

 

 ハジメ「よし!わかった、覚悟しろよお前等?あくまで自分たちの意思の上で鍛えるんだ。途中辞退したって俺は優しく諭してやる気は微塵もない。わずか10日しかないからな?死に物狂いになってもらうぞ。お前等には残された選択肢は死か生の二つしかないからな?」

 

 

 

その言葉に彼らは覚悟を決めた表情で力強く頷く。

 

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 はじまったハウリア族の訓練。

 

 まず、ハジメが“宝物庫”から取り出した錬成の練習用に作った装備を彼らに渡した。先に渡していたナイフの他に反りの入った片刃の小太刀と呼ぶべき形状のナイフ。

 

 これらの小太刀は、ハジメが、精密錬成を、鍛えるためにその刃を極薄にする練習の過程で作り出された、強度、切れ味などに優れたものだ。

それを彼らに持たせ基本的な動きを教える。ハジメが教えられるのは合理的な動きだ。奈落で身に着けた生きるためのすべを教えていく。

 

 俺はユエと一緒にシアの訓練だ。シアは魔力もあり魔力の直接操作ができるためユエが専属でつくことになった。俺はユエだけじゃまかなえない近接戦闘についてを教えることになっている。ロックシードで数多な武具でシアに近接の立ち回りを教える。

 

 シアを二人でしごく中、時折別の場所で大きな悲鳴が複数聞こえたり、”ピー”が入りそうな規制対象にあたるようなワードがこだましている。ハジメがハウリア達にどのようにしているかは知らないが相当厳しくやってるみたいだ。

 

 

 

 まぁハジメもハート〇ン方式みたいなのにあこがれというかそういったのが好きだったからのってきているのかなぁ~

 

 

☆実際はただストレスによる要因が大きいせいである

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――ー

 

 10日しかないので当然ではあるものの悲鳴がやまない。でも最近はその頻度も減ってきてハジメの鍛えてるハウリア族の方からはなんか狂気的な笑い声まで聞こえたような気がした。ついに狂ったか?と思いつつこちらに集中する。ちなみに今日は最終日なのでシアの最終試験を行っている。さすがに俺とユエが同じ日にするのはシア的にきついので俺は昨日終わらせた。俺はとりあえず模擬戦をすることにした。ルールは簡単で俺に一定時間以内に変身してない俺から武器は離させるか一撃いれるかで結果的にはシアは合格といった感じだ。俺が彼女の身体能力を甘く見ていたからだ。

 

 

そしてシアは今……

 

 

ズガンッ! ドギャッ! バキッバキッバキッ! ドグシャッ!

 

 

 樹海の中、凄まじい破壊音が響く。野太い樹が幾本も半ばから折られ、地面には隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっており、更には、燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹まであった。

 

 この多大な自然破壊はたった二人の女の子によってもたらされた。そして、その破壊活動は現在進行形で続いている。

 

 

 シア「でぇやぁああ!!」

 

 

そう叫びながらシアはユエに向かって折れた木を投げつける。その木はもはや普通の木とは違い凶悪な破壊力を持った攻撃となりユエを襲う。だがそんな攻撃をユエは魔法で迎撃する

 

 

 ユエ「”緋槍”」

 

 

 シアの投擲とユエの魔法の衝撃波はすさまじく、霧は払われ魔法の余波であたりは少し焦げたようになっていた

 

 

 雄汰「(女ってこえぇ)」

 

 

 ユエの魔法はこれまでよく見ていたので知っているが、木による投擲であそこまでのものとは本当に恐れ入る。

 

  

 シア「まだです!」

 

 

 先の衝撃で舞い上がっていた丸太が地面に突き刺さるとシアはそれを思いっきりける。するとどれほどの力が込められているのか、蹴られた木は爆発的にはじけまるで散弾のようにユエを襲う

 

 

 ユエ「ッ!”城炎”」

 

 

 炎の壁により一発残らず防がれる。しかし、

 

 

 シア「もらいました!」

 

 

 流石の隠密性でユエの背後をとる。その時シアは大槌を持っており体を弓なりにそらして振りかぶっていた

 

 

 ユエ「”風壁”」

 

 

 風の障壁で防ぎつつシアのあまりにも強烈な一撃による余波を利用しユエは大きく距離をとりそこからまた容赦なく魔法を行使する

 

 

 ユエ「”凍柩”」

 

 シア「え!ちょっ、まっ!」

 

 

 制止などは意味もなく、一瞬で魔法は起動し足から凍り始め首から上を残し氷漬けになった。

 

 

 シア「さ、ざむいですぅ~はや、はやく解いてくださいぃ、ユエざん~」 

 

 ユエ「......私の勝ち」

 

 

 そう結果だけを見ればユエの勝ちである。だが、問答不要な自然破壊を行いながらのこの模擬戦闘は最終試験である。この最終試験のシアの合格条件はわずかにでもユエを傷つければ合格というわけだが果たしてどうなのだろうか...................

 

 

 シア「うぅ~そんな~せっかく昨日は........って、ソレ!ユエさんの頬っぺ!傷ですよね?私の攻撃あたってますよね?あはは~やりましたぁ!私の勝ちですぅ!」

 

 

 そう言ってユエを見ると確かに傷があった。恐らくは最後の攻撃の余波で飛んできた石か何かがかすったのだろう。だが、これは紛れもなくシアの攻撃によってできたものであるので合格であることに違いない。そしてそんなシアはというとうさ耳を必死に動かして大喜びだ。当然だろう、今回の合格にはユエとしたシアにとって大切な約束があるのだから。

 

 

 だがその様子を見ていたユエは面白くない。なので、

 

 

 ユエ「...........傷なんてない」

 

 

 自動再生によって傷がすぐに消えたことをいいことにユエは拗ねたようにプイっとそっぽを向く。

 

 

 シア「ユエさん。私、勝ちました」

 

 ユエ「………………ん」

 

 シア「約束しましたよね?」

 

 ユエ「……………………ん」

 

 シア「もし、十日以内に一度でも勝てたら……ハジメさんとユエさんと雄汰さんの旅に連れて行ってくれるって。そうですよね?」

 

 ユエ「…………………………ん」

 

 シア「少なくとも、ハジメさんに頼むとき味方してくれるんですよね?」

 

 ユエ「……………………………雄汰、今日のごはん何だっけ?」

 

 シア「ちょっとぉ!何いきなり誤魔化してるんですかぁ!しかも、誤魔化し方が微妙ですよ!ユエさん、ハジメさんの血さえあればいいじゃないですか!何、ごはん気にしているんですか!ちゃんと味方して下さいよぉ!ユエさんが味方なら、九割方OK貰えるんですからぁ!」

 

 

 ぎゃーぎゃーと騒ぐシアに、ユエは心底鬱陶しそうな表情を見せる。

 

 シアの言う通り、ユエは彼女と一つの約束をした。それは、シアがユエに対して十日以内に模擬戦にてほんの僅かでも構わないから一撃を加えること。それが出来た場合、シアが俺達の旅に同行することをユエが認めること。そして、ハジメに同行を願い出た場合に、俺とユエはシアの味方をして彼女の同行を一緒に説得することである。

 

 

そうして俺達はハジメと合流した。

 

 

 ハジメ「よう、3人ともどうだった?」

 

 

 そうして俺達はハジメに事の顛末を話した。ハジメはぶっちゃけ俺やユエの課した試験は突破できないと踏んでいた。ユエが負けるということは何らかの制限があってもないだろうと思っていたので驚いていた。そしてハジメと俺達はシアの戦闘力について話していた。シアの魔法適正はハジメと同じで全くない、しかし身体強化に特化していて強化すれば俺たちの素の能力の六割くらいで鍛えればさらに行くだろうとのことを伝えた。これにはハジメも当然驚きだ。こりゃ化け物だなと苦笑いだ。

 

 

 シア「ハジメさん。そ、その。」

 

 ハジメ「ん?なんだよ?トイレか?」

 

 シア「ち、違いますよぅ!!そうじゃなくて私を旅に同行させてください!」

 

 ハジメ「断る」

 

 シア「そ、即答!」

 

 ハジメ「お前だいたいカムたちはどうするんだ?嫌だぞ全員連れてけとか」

 

 シア「いえ、ついていくのは私だけです。その……私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって……」

 

 ハジメ「はぁ?何で付いて来たいんだ?今なら一族の迷惑にもならないだろ?それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし」

 

 シア「で、ですからぁ、それは、そのぉ……」

 

 ハジメ「……」

 

 

 いい加減我慢ならんと思いドンナーを抜きかけると

 

 

 シア「だ、だって、ハジメさんのそばにいたいからですぅ!そ、そのしゅきだからですぅ!」

 

 ハジメ「.......はぁ?」

 

 

 そんなかみかみの告白をしたシアはやってしまったとあわあわし、ハジメは何を言ったか理解するとなぜと問う。そもそもハジメからしてみればどこに惚れる要素があったかわからない。何せあんなにぞんざいな扱いをしていたから余計だ。そのことを踏まえなぜと問うと、本人もあれ?どこがいいんだろうといい始める始末でしかもその物言いもシアは天然なのだろうがわざわざあおっているようにしか聞こえずハジメもドンナーを構える。だが、

 

 

 シア「それでも本当に好きなんです!だから連れて行ってください!」

 

 ハジメ「お前の気持ちは分かったが、お前の心臓さてはアザンチウム製か?ユエがいるのによく言えたなお前?」

 

 シア「誰が、世界最高硬度の心臓の持ち主ですか!うぅ~、やっぱりこうなりましたか……ええ、わかってましたよ。ハジメさんのことです。一筋縄ではいかないと思ってました」

 

 

 そういうとシアは俺とユエに視線を向け

 

 

 シア「ですので外堀はすでに埋めてきました!ユエ先生、雄汰先生お願いします。」

 

 

 

ハジメ「は?ユエ、雄汰まさか!」

 

 

 

 ユエは約束というのも理解しているし守ろうとも思っているがそれでもやはり面白くない。だから苦虫を百匹くらい噛みしめたように顔をゆがめながら

 

 

 ユエ「...................................ハジメ連れて行こう」

 

 雄汰「まぁそうゆうことだ。連れて行こうハジメ」

 

 ハジメ「いやユエその間なに?めっちゃいやそうじゃん。てか雄汰やユエの最終試験のってそうゆうことだったのか。」

 

 ユエ「........無念」

 

 雄汰「まぁ、一応難しくしたつもりだぞ。」

 

 ハジメもここまでに至る経緯をさっき聞いたし、二人の課した試験は簡単に見えるようでそんじょそこらのやつにできることでもないとわかる。ここで断ることもハジメにはできるが....................

 

 ハジメは、一度深々と息を吐くとシアとしっかり目を合わせて、一言一言確かめるように言葉を紡ぐ。シアも静かに、言葉に力を込めて返した。

 

 

 ハジメ「付いて来たって応えてはやれないぞ?」

 

 シア「知らないんですか?未来は絶対じゃあないんですよ?」

 

 

 それは、未来を垣間見れるシアだからこその言葉。未来は覚悟と行動で変えられると信じている。

 

 

 ハジメ「危険だらけの旅だ」

 

 シア「化物でよかったです。御蔭で貴方について行けます」

 

 

 長老方にも言われた蔑称。しかし、今はむしろ誇りだ。化物でなければ為すことのできない事があると知ったから。

 

 

 ハジメ「俺の望みは故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」

 

 シア「話し合いました。それでもです。父様達もわかってくれました」

 

 

 今まで、ずっと守ってくれた家族。感謝の念しかない。何処までも一緒に生きてくれた家族に、気持ちを打ち明けて微笑まれたときの感情はきっと一生言葉にできないだろう。

 

 

 ハジメ「俺の故郷は、お前には住み難いところだ」

 

 シア「何度でも言いましょう。それでもです」

 

 

 シアの想いは既に示した。そんな言葉では止まらない。止められない。これはそういう類の気持ちなのだ。

 

 

 ハジメ「……」

 

 シア「ふふ、終わりですか? なら、私の勝ちですね?」

 

 ハジメ「勝ちってなんだ……」 

 

 シア「私の気持ちが勝ったという事です。……ハジメさん」

 

 ハジメ「……何だ」

 

 

もう一度、はっきりと。シア・ハウリアの望みを。

 

 

 シア「……私も連れて行って下さい」

 

 

 見つめ合うハジメとシア。ハジメは真意を確認するように蒼穹の瞳を覗き込む。

 

そして……

 

 

 ハジメ「………………はぁ~、勝手にしろ。物好きめ」

 

 

 その瞳に何かを見たのか、やがてハジメは溜息をつきながら事実上の敗北宣言をした。

 

 樹海の中に一つの歓声と、不機嫌そうな鼻を鳴らす音が響く。その様子に、ハジメは、いろんな意味でこの先も大変そうだと苦笑いするのだった。

 

 

 雄汰「良かったな、シア。」

 

 シア「もしかしてですけどその感じ、雄汰さんこうなるってわかってたんですか?」

 

 

 不思議なところが多すぎる雄汰に聞いてみた。すると思った通りの回答が帰ってきた。

 

 

 雄汰「まぁだいたいな。ハジメは本気なやつを突き放す程、腐った男じゃないのは知ってるからな、まぁこれからよろしくな。」

 

 ユエ「……不本意ながらよろしく。」

 

 

ユエも非常に不機嫌ながらも返した。

 

 こうして、俺達の旅に異端の兎人族の少女ーシア・ハウリアが加わった。

 

 

 

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