不良と皇帝陛下   作:アイリエッタ・ゼロス

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ショーの終わり

 八重樫side

 

「近くで見ると大きいわね....」

 私は巨大な怪獣の足元近くにいた。

 

「(とにかく、あのモンスターの動きを止めないと....!)」

 そう思った私は剣を抜き、モンスターに一瞬で近づいて脚に一撃を入れた。

 すると、私の剣はモンスターに届き、モンスターの脚からは血が出て、モンスターは

 鳴き声を上げていた。

 

「(思ったよりも鎧は薄い....? それに動きもそこまで速くない....)」

 今の一撃から、私はその二つが思い浮かんだ。すると、モンスターは自身の腕を

 振り下ろしてきた。だが、そこまで速いものでもなかったので、私は簡単に躱す事ができた。

 だが、さっきまで私がいた場所はクレーターができていた。

 

「(やっぱり遅い....もしかして、あのモンスターは攻撃だけに特化しているのかしら....)」

 そう考えていると....

 

「八重樫さん! この辺にいた人達の避難は終わったよ!」

 避難誘導を終えた南雲君がやってきた。

 

「そう。ありがとう南雲君」

「うん! ....それよりも、あのモンスターについて何かわかった事はある?」

「....あのモンスター、見た目通り装甲が硬いと思っていたんだけどそこまで硬くなかったわ。

 それと、動きは遅い。だけど攻撃の威力はとんでもなかったわ」

「そっか....」

 そう言うと、南雲君は考え込み始め、一つの案を出してきた。

 

「八重樫さん。僕があのモンスターの足が入るほどの落とし穴を作る。その落とし穴に

 モンスターが嵌ったら、八重樫さんはあのモンスターのうなじを斬りに行って」

「うなじを?」

「この世界の生物も、僕達の世界の生物同様、うなじに神経が通ってるんだ。だから、

 うなじを斬る事ができればあのモンスターを倒せると思う」

「....そう。わかったわ。じゃあ南雲君が落とし穴を作るまであのモンスターを足止め

 しておくわ」

「うん。お願いするよ」

 そう言って、南雲君はここから少し離れた地面に錬成で落とし穴を作り始めた。その間、

 私は南雲君にモンスターが意識を向けない様に注意を引いていた。そして....

 

「八重樫さん! 準備終わったよ!」

 南雲君は二つの巨大な穴を作り出していた。

 

「わかったわ! こっちに来なさいモンスター!」

 私はそう叫び、穴の方に向かって走り出した。すると、モンスターは声に反応して私に

 ついて来た。そして、モンスターは南雲君が作った落とし穴に嵌って体勢を崩して

 地面に倒れた。

 

「今だ八重樫さん!」

「えぇ! 全てを斬り裂く至上の一閃! “絶断”!」

 私はモンスターの背中に乗り、走りながらそう叫んだ。そして....

 

「これで、終わりよ!」

 私はモンスターのうなじ部分に向かって剣を振るった。

 

 

 〜〜〜〜

 帝side

 

「ゼェ....ゼェ....」

「はぁ、はぁ....」

「どうされましたか、勇者パーティーの皆様? 随分とお疲れのようですが....」

 俺はわざと煽るようにそう聞いた。

 

「くそっ....! なんで当たらないんだ!」

「光輝! 一度落ち着け!」

 騎士の言葉も聞かず、バカ勇者は再び突っ込んできた。

 

「それは貴方の攻撃がワンパターンだからですよ」

 そう言って、俺は攻撃を避けて距離をとった。

 

「はぁ....これでは拍子抜けもいいところです。これなら騎士の皆様と戦った方がよほど

 面白かった気がしますね」

「....その割には、一度も攻撃していないが。攻撃の手段は無いのか?」

「さぁ? どうでしょうね」

 俺は隊長らしき騎士の言葉にそう返した。すると、突然地面が揺れた。

 俺は周りを見ると、ゴモラが地面に倒れようとしていた。そして、ゴモラが倒れた

 次の瞬間、ゴモラが倒れた場所から光の粒子が出始めていた。

 

『(帝、ゴモラがやられたようだ)』

「(そうか。なら、メダルの回収に行くか)」

「さて、どうやら私の僕がやられたようですので、一度引かせていただきますね」

 ベリアルと脳内で会話した俺は連中にそう言って、高速でこの場からゴモラがいた場所に

 移動した。

 

 〜〜〜〜

 

 ゴモラがいた場所には、南雲と八重樫がいた。

 

「お見事お見事。敵をしっかりと分析し、状況を把握してよく倒せたな」

 俺は声を元に戻して二人に向かってそう言った。

 

「その声....」

「帝君....」

 二人は俺が現れた事に驚く素ぶりは見せなかった。

 

「帝君、さっきのモンスターは帝君が連れてきたの?」

 南雲は俺の顔を見るとそう聞いてきた。

 

「少し違うな。あの怪獣は俺がこの世界の人間を依り代にして召喚したってのが正しいな」

 そう言いながら、俺はゴモラの光が収束している場所に近づいた。

 すると、そこには俺が昨日殺した男と、ゴモラのメダルが現れた。

 

「このメダルを使って、この死体に怪獣を憑依させたんだよ」

「一体何のために....」

「お前と八重樫のためだ。南雲の場合は無能と呼ばれているのを少しでも少なくするため。

 八重樫の場合は、人を殺すというのがどういう事かを知ってもらうためだ」

「じゃ、じゃあ、そこに倒れている人は私が....」

 八重樫は俺の足元で転がっている男を見て顔が青ざめていた。

 

「いや、こいつは昨日俺が殺した。八重樫は別に誰も殺してねぇよ。

 ....だが、今ので分かったか? 人を殺すって事が」

「っ....!」

「八重樫、お前は俺の旅について行きたいと言ったが、俺と旅をするって事はその重圧を

 何度も味合わないといけないって事だ。....それでもまだ、俺の旅について行きたいとお前は

 言うか?」

「それは....」

 俺の言葉に、八重樫の表情は曇っていった。

 

「....今一度、よく考えてくれ。出来る事なら、俺はお前に殺しをやらせたくはない」

「....」

「帝君....」

 そう話していると、バカ連中がこっちに向かって来ていた。

 

「南雲、八重樫。今からちょっと演技するから、上手く振舞ってくれよ」

 そう言って、俺は“変声”を発動させた。

 

「おや、攻撃するのは遅いのに追いかけるのは速いですね」

「ハジメ! 雫! 二人とも無事だったか!」

 隊長らしき騎士はそう言うと、二人を庇うように前に出た。

 

「いやはや、たった二人に私の僕がやられてしまうとは。どうやら警戒しておかなければ

 いけない人物を少々見誤りましたね」

「お前の僕とやらはやられた。....さぁ、お前はどうする」

 隊長の様な騎士は、俺に剣を向けてきた。

 

「この様な場合、取る手段は一つですよ」

 そう言いながら、俺は上空に浮遊した。そして、俺は両手に闇の魔力を溜めた。

 

「それでは、本日のショーはこれにて閉幕です。次に会った時は、もう少し強くなっていて

 欲しいものですね」

 俺はそう言うと、両手に溜めた魔力を一気に解放した。

 

「ダークバースト」

「っ、お前達! 結界を張って全員を守れ!」

 騎士の隊長のような男はそう言った。俺はその声を背中で聞きながら、この場から撤退した。

 

 〜〜〜〜

 

『はぁ....お前も甘い男だな』

 城から撤退してブルックに向かっている時、突然ベリアルがそう言ってきた。

 

「うるさい....」

『それよりも、良かったのか? ワザとあの女から距離を取るような事をして』

「良いんだよ。手を汚すのは、俺みたいな人間で十分だ。アイツの手は、あまり汚させたく

 ないからな....」

『....』

 そう言うと、ベリアルはそれ以上何も言ってこなかった。

 

 

 

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