「....何処だよここ」
気づくと、俺は何かの神殿の様な場所にいた。そして、周りには教室にいた他の生徒どもと
ちびっ子担任がいた。
「....ねぇ」
すると、急に服の袖を引っ張られた。振り向くと、八重樫が不安そうな表情で俺を見ていた。
「....これ、一体どういうことなの?」
「俺が知るわけねぇだろ....だが、あのスカしたジジイは何か知ってそうだ」
そう言った俺の視線の先には、鈴を付けた杖を持った、無駄に派手な衣装の年寄りがいた。
「ようこそトータスへ、勇者様、ご同胞の皆様。私は聖教教会にて教皇の地位に就いております
イシュタル・ランゴバルトと申すもの。以後宜しくお願い致します」
〜〜〜〜
イシュタルとか名乗ったジジイに連れられて、俺達は大広間にいた。大広間には十メートルを
超えるテーブルが幾つも並んでいた。俺は後ろの方に座り、周りの様子を伺っていた。
「(どいつもこいつもメイドに見とれて呑気なもんだ....この状況を理解できないのか....)」はぁ
俺は周りにいるメイドに見とれているバカどもを見てそう思った。女子も鼻の下を
伸ばしているバカどもを冷め切った視線で見ていた。そうしている間にも、ジジイはこの世界に
ついての話を始めた。簡単に纏めてみると....
・この世界はトータスと呼ばれており、人間、魔人、亜人の三つの種族が存在している
・人間と魔人どもは何百年も戦争をしている
・少し前までは戦力は五分五分だったのだが、魔人どもが魔物を大量に使役するようになった
・その為、このままでは人間が滅びると思い、この世界を創ったエヒトとかいう神は、人間を
救うために俺達をこの世界に召喚した
「(くだらねぇ....マジでくだらねぇ....)」
聞いていた俺は心底そう思った。そう思っていると、誰かがテーブルを叩いた。
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの
許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、
ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
テーブルを叩いたのはちびっ子担任だった。そして、ちびっ子担任はジジイに向かって
そう言っていた。だが、どうにも威厳とかが足りないため、ほんわかした様な空気が
流れていた。だが、ジジイの次の言葉に空気は凍りついた。
「お気持ちはお察しします。ですが....あなた方の帰還は現状では不可能です」
「ど、どういう事ですか!?」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に
干渉するような魔法は使えませんので....あなた方が帰還できるかどうかはエヒト様の
御意思次第ということです」
それを聞き、生徒達はパニックを起こしていた。すると、再び誰かがテーブルを叩いた。
音の方を見ると、テーブルを叩いたのは俺が一番嫌いな人間の天之河だった。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ....
俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って
放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら救済さえ
終われば帰してくれるかもしれない....イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えて
いいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も
救ってみせる!」
その言葉をキッカケに、生徒どもは希望を見つけた様な表情に変わった。だが、俺を含めた
四人は全く違う表情をしていた。
一人目はちびっ子担任。このままだと俺達が戦争に参加してしまうので、それを止めようと
必死な表情をしていた。
二人目は南雲。流石はこの様な状況になるラノベを読んでいるからか、他の生徒よりは少し
落ち着いた様子でジジイの様子を伺っていた。
そして、最後は八重樫。八重樫はどこか呆れた様な様子で天之河を見ていた。
「(この三人だけか....このまま行くと、人殺しになる未来が見えているのは)」
そう考えているうちに、アホに賛成していく人間は増えていった。俺はそれを見ているうちに、
どんどんと苛立ちが溜まっていった。そして....
「皆! 俺達が力を合わせればこの世界の人達を助けられる筈だ! だから俺に
ついて来てくれ!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の苛立ちは限界を超えた。すると、突然目の前にあったカップが
音を立てて割れた。その音に気づいた連中は俺の方を見てきた。それが都合が良いと思った俺は
アホに賛同した連中にこう言った。
「....今、そこのアホの意見に賛同したお前ら、馬鹿ばっかりか?」