不良と皇帝陛下   作:アイリエッタ・ゼロス

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母と娘としばしの別れ

 空を飛び続けて一時間後、俺と八重樫はエリセンという町の上空に着いた。

 

『ココカ?』

「えぇ。地図の場所的にここで間違いないわ」

『ソウカ。ジャアオリルゾ』

 そう言って、俺はエリセンの町に向かって降りていった。すると、下の方では

 人が慌ただしく動いているのが見えた。その中には騎士の様な鎧を纏った人間もいた。

 

『シタガアワタダシイナ』

「....いきなり九本首の龍が現れたら慌てるでしょ」

『....ソレハ、タシカニソウダナ』

 そう言いながら、俺はエリセンの町に降り立った。すると、騎士の様な男達が俺の周りを

 囲んだ。そして....

 

「総員攻撃開始!」

 突然団長のような男がそう叫ぶと、騎士達は一斉に俺に襲い掛かって来た。

 

「....どうするの?」

『スコシミミフサイデロ』

 俺は八重樫にそう言うと、九本の首から叫び声をあげた。向かってきた騎士達は全て、

 吹き飛ばされ全員気絶していた。

 

『コレデヨシ』

 そう言いながら、俺は姿を人に戻しベリアライザーでゲートを開いた。そしてゲートの中に

 入りミュウに呼びかけた。

 

「ミュウ」

「あっ! お兄ちゃん!」

 ミュウは俺の方に向かって飛びついてきた。

 

「おっと」

 俺はミュウを抱きとめて頭を撫でてやった。

 

「良い子にしてたか?」

「うん!」

「そうか。ならミュウに朗報だ。お前の故郷に今着いた。ママに会えるぞ」

「ホント!」

「あぁ」

 そう言って、俺はミュウと共にゲートを出た。

 

「どうだ? ここはお前が住んでた場所か?」

「うん! ミュウが住んでた場所なの!」

「そうか。じゃ、ママに会いに行くか。ミュウ、案内よろしくな」

 そう言うと、ミュウは人がいる方向に向かって走り出していった。

 

「じゃ、俺達も行くか」

「えぇ。....でも、アレはどうするの?」

 八重樫は気絶している騎士達を見てそう言った。

 

「....縛って放置だな」

 俺はそう言って影の鎖(シャドウ・チェイン)で騎士達を地面に縛り付けてミュウの後を追った。

 

 ~~~~

 

「お兄ちゃん! お姉ちゃん! こっちなの!」

 俺と八重樫はミュウの後を追いながら辺りを見渡していた。

 

「....人がいないな」

「帝君の龍の姿を見て慌てて隠れたんでしょうね....」

 俺と八重樫はミュウに聞こえないぐらいの声でそう話していた。すると、ミュウは少し

 大きな家の前で止まった。

 

「お兄ちゃん! お姉ちゃん! ここがミュウの家なの!」

「ここか....」

「結構大きい家ね....」

 そう呟いていると、ミュウは家の扉を開けて中に入っていった。

 

「ママ―!」

「っ! ミュウ....! ミュウ!?」

 すると、家の中にはミュウが美しく育ったような綺麗な女性がいた。

 

「あの人がミュウちゃんの母親みたいね....」

「みたいだな」

 俺と八重樫はミュウの母親に聞こえないようにそう言った。そして、ミュウとミュウの母親が

 抱き合っていると、ミュウは驚いた声を上げた。

 

「ママ! 足どうしたの! けがしたの!?」

 ミュウがそう叫んだ通り、ミュウの母親の足には包帯が巻かれていた。

 

「お兄ちゃん! ママを助けて! ママの足が!」

 ミュウは俺の足にしがみついてきてそう言ってきた。

 

「(治療は専門外なんだがな....)」

 そう思いながら、俺はミュウの母親の足を透視で見た。

 

「(コイツはかなり酷いな....俺達の世界だったらしばらく入院しないと駄目なヤツだな....

 ベリアル、これってどうにかできるか)」

 俺は頭の中でベリアルにそう聞いた。

 

『(無理だ。治療は俺の専門外だ)』

「(だよな....)」

 俺はあまり期待していなかったので特に気にせずそう言った。

 

「ミュウ悪い。俺の力じゃお前のお母さんの怪我を治してやれそうにない」

「そんな....」

「悪いな....八重樫、お前ならどうだ?」

「帝君で無理なら私でも無理よ。でも、一人だけ回復魔法を使える人なら知ってるわよ」

「そいつは誰だ?」

「香織よ。香織の天職、治療師だったから。....だからミュウちゃん。今度私の友達を

 連れてきてお母さんの足を治すように頼んでみるわね」

 そう言いながら、八重樫はミュウの頭を撫でながらそう言った。

 

「お姉ちゃんありがとう!」

 そう言って、ミュウは八重樫に抱き着いた。すると、ミュウの母親は不思議そうに首を傾げて

 こう聞いてきた。

 

「あの....先程から気になっていたのですがあなた達は誰ですか? ミュウからはお兄ちゃん、

 お姉ちゃんと呼ばれているようですが....」

「俺達は....」

「お兄ちゃんとお姉ちゃんはね! ミュウを悪い人から助けてくれたの! 

 それで、ミュウをここまで送ってくれたの!」

「あなた達がミュウを....!」

「まぁ....」

「そういう事になりますね」

「そうですか....娘を助けていただきありがとうございます。何とお礼を申したら良いか....」

「別に気にしないでくれ。こっちも成り行きで助けただけだ。それに、アンタが思ってるほど、

 俺は良い人間じゃないんでな」

 そう言いながら、俺はドアの方に身体を向けた。

 

「さて、これでミュウは自分の家に帰ることができた。俺達も行くぞ、八重樫」

「えぇ」

「お兄ちゃん! お姉ちゃん! もう行っちゃうの....?」

 すると、ミュウが上目遣いでそう聞いてきた。

 

「悪いなミュウ。俺と八重樫にはやらなければならない事があるんだ。それは俺と八重樫に

 しか出来ない事でな。だけど安心しろ。お前のお母さんの足を治せるヤツを連れてきたら

 また会える。だから、ミュウも自分ができる事をするんだ」

「ミュウが、できる事....?」

「あぁ。お前がお母さんを守ってやるんだ。ミュウが持っていたこのメダル、さっきミュウを

 守るために戦ってくれた。きっと、ミュウやお母さんがピンチになったら助けてくれる」

 そう言いながら、俺はナツノメリュウのメダルをミュウに手渡した。

 

「良いかミュウ。どんなに辛くても諦めるな。諦めなかったら、きっとその龍も

 力を貸してくれるはずだ。良いな?」

「うん! わかったよお兄ちゃん!」

「良い子だ」

 そう言って、俺はミュウの頭を撫でてやった。

 

「んじゃ、そういうわけだ。ミュウのお母さん、治療できるヤツを連れてまた来る。

 それまでは大人しくしてろよ」

「お邪魔しました」

 俺と八重樫はそう言うと外に出て、リトラに姿を変えて八重樫を背中に乗せて空を飛んだ。

 

「さて、これからどうするの?」

『メイキュウニイクカ、ボウケンシャトシテランクヲアゲルカノドッチカダナ』

「....帝君は、今ランクどれぐらいなの?」

『オレハミドリダ』

「そう....だったら、少しランク上げでもしない? ついでに、色々とお互いにできる事を

 把握して連携を考えない?」

『....ソウダナ。ジャアアソコニムカウカ』

「あそこって?」

『ブルックダ』

 そう言って、俺はブルックの方向に向かって羽をはばたかせた。

 

 

 

 

 

 

 

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