不良と皇帝陛下   作:アイリエッタ・ゼロス

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成就

 リトラの姿で飛び続けて30分ほど、俺と雫はブルックの街に着いた。

 

「到着っと」

「結構暗くなってるわね」

「だな。取り敢えず、泊まる宿探しに行くか」

「えぇ」

 そう話し合い、俺と八重樫は泊まる宿を探しに向かった。

 

 ~1時間後~

 

「1部屋だけか....」

「はい。申し訳ありませんが」

 1時間宿を探し続けてようやく泊まれる宿を見つけたのだが、その宿の空きは一部屋しか

 なかった。

 

「八重樫、取り敢えずお前はここで....」

 俺は取り敢えず八重樫にここに泊まるように言おうとしたのだが....

 

「わかりました。じゃあこれで」

 八重樫は料金を払って鍵を受け取ると、俺の腕を掴んで部屋まで引っ張っていった。

 

「お、おい八重樫! お前何考えてんだ!」

 俺は部屋に着くとまず八重樫にそう言った。

 

「仕方ないでしょ。何処も宿が空いてなかったんだからここに二人で泊まるしか

 方法がないじゃない」

「おまっ....! 自分が何言ってんのかわかってんのか!?」

「えぇ」

「っ....! 馬鹿言ってんじゃねぇよ! 俺は外で野宿するぞ!」

「じゃあ私も野宿するわ」

「だから何で....!」

「私を、また一人にするの?」

「っ....」

 八重樫のその言葉に、俺は何も言えなくなってしまった。

 

「....私、ひとりぼっちはもうごめんよ」

「....はぁ。分かった」

 俺は八重樫のその寂しそうな表情を見て折れた。

 

「じゃあ決まりね」

 そう言った八重樫の表情はさっきまでの寂しい表情とは違い嬉しそうな表情をしていた。

 

 ~その日の夜~

 

「ねぇ帝君。熱風を出せる怪獣っている?」

 シャワーを浴びてきて寝巻に着替えた八重樫は俺にそう聞いてきた。

 

「熱風か?」

 俺は腰のホルダーを開き、炎と風の怪獣を探した。

 

「取り敢えずコイツだな....」

 そう呟き、俺はほとんど魔力を込めずにリトラとのメダルをベリアライザーに

 セットした。

 

LITRA!

 

 すると、俺の右手に手のひらサイズのリトラが現れた。

 

「リトラ、八重樫の髪を乾かしてやれ」

 そう言うと、リトラは八重樫の髪に熱風を当て始めた。そして、八重樫は手で髪を

 梳いていた。そんな中、俺は八重樫の長くて綺麗な髪をじっと見ていた。

 

「....じっと見てるけど、髪に何か付いてる?」

「っ! いや、別に何も付いてないが....その、改めて八重樫の髪が綺麗だなと思ってな」

「っ! ありがと....帝君にそう言ってもらえると嬉しいわ」

 八重樫は頬を染めながらそう言った。

 

「(駄目だ....何か調子が狂う....)」

 俺は八重樫のそんな様子を見てそう思っていた。そして、八重樫の髪が乾きリトラがメダルに

 なって戻って来た数十分後、俺と八重樫はそろそろ眠りに就こうとした。

 

「その、ベッドは私が使って良いの?」

「当たり前だ。お前を椅子で寝かして俺がベッドで寝るのは流石に俺が嫌だわ」

「それを言うなら私だって....ベッド、結構広いんだから帝君も一緒に....」

「....八重樫、修行の時に何かブレーキ壊れたのか知らないがもう少し考えてから

 もの言えよ? 自分が何言ってるか本当にわかってるか?」

「えぇ。だって、私は帝君の事が好きだから。好きでもない人に、私はこんな事言わないわ」

「....っ」

 俺はまっすぐに俺の目を見てくる八重樫の目を見れずに視線を逸らした。

 

「帝君は、私の事が嫌い?」

「....嫌いなわけねぇだろ」

「そんな濁さないで、ハッキリ言って」

 すると、いつの間にか八重樫は俺の目の前におり、俺の肩を掴んで目をまっすぐ見て

 そう言ってきた。

 

「....」

「....」

 しばらくお互いに沈黙が続いたが、俺はただまっすぐに見てくる八重樫の目に負けて

 こう呟いた。

 

「....好きだよ、八重樫の事」

「そう。....なら、私とお付き合いしてくれますか?」

「....それはできない。俺じゃあ、八重樫の恋人に相応しくない」

「どうして?」

「....八重樫。お前は、俺の過去の事を知らないだろ? きっと過去を知れば、お前は

 俺のことを軽蔑して....」

「それって、もしかしてご両親を殺した男を殺した事?」

「っ!? 何でそれを....」

 俺は八重樫が言った言葉に身体が固まった。

 

「実はね、帝君がご両親を殺した男を殺すのを私の家族が見ていたの。それを、私は

 偶然聞いてしまってね」

「何で....何でその事を知って俺が好きって言えるんだよ!」

 

 ~~~~

 八重樫side

 

「俺は元の世界で人を殺してるんだぞ! それがどういう事かわからないお前じゃ

 ないだろ!」

 帝君の表情は普段の様な落ち着きは無く、どこか困惑や様々な感情が入り混じった

 表情になっていた。

 

「....だって、帝君は悪くないじゃない。悪いのは全て帝君の両親を殺した男。帝君は、

 ただ巻き込まれただけ。そんな帝君を嫌うわけないじゃない。....それにね、私にとって

 帝君はたった一人の私のヒーローだから」

「俺が、八重樫の....?」

「覚えてる? 小学生の時、いじめられて校舎裏で泣いていた私にかけてくれた言葉」

 

 ~~~~

 

『....大丈夫?』

『どうして誰も助けてくれないの....私は何も悪い事はしてないのに....』

『そっか....なら、僕が君を助けるよ!』

 

 ~~~~

 

「あの後すぐに帝君は転校しちゃったけど....あの時言ってくれた言葉は、本当に

 嬉しかったの」

「八重樫....」

「帝君。あの時、あなたは私の希望になってくれた。だから、今度は私があなたの希望に

 なる番」

「....」

「だからお願い。もっと私を頼って。私が、あなたの希望になれるように」

 そう言うと、帝君は顔を伏せてこう言ってきた。

 

「....八重樫。お前、本当の大馬鹿者だよ」

 そして、帝君は私を抱きしめてきた。

 

「み、帝君!?」///

「悪い....少しだけ、抱きしめさせてくれ」

 そう言った帝君の声は、どこか弱々しいものだった。

 

「....わかったわ」

「ありがとな....」

 

 ~~~~

 

 しばらく私を抱きしめていた帝君は私から離れてベッドの隣に座った。その時、帝君の目は

 赤く腫れていた。そして、帝君は私にこう聞いてきた。

 

「なぁ八重樫。俺はお前が思ってるよりも弱い人間だ。そんな俺でも、お前は良いって

 言ってくれるか?」

「....もちろんよ」

「....そうか。なら、改めて俺の方から言わせてくれ」

 そう言うと、帝君は立ち上がって私の前に膝をついた。

 

「八重樫。一度断ったが....俺とお付き合い、していただけますか?」

「....はい。こんな私でよければ、よろしくお願いします」

 こうして、彼を思い続けて七年。私の恋は成就したのだった。

 

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