不良と皇帝陛下   作:アイリエッタ・ゼロス

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初デート

「....ん」

 帝君と恋人になれた次の日の朝、私は窓から入ってくる陽の光で目が覚めた。

 私は起き上がって部屋の椅子を見ると、帝君は机の上にメダルを並べて何かを

 していた。

 

「....おはよう、八重....雫」

「おはよう、帝君」

 帝君は私が起きたのを見てそう言ってきた。昨日まで帝君は私の事を名字で呼んでいたが、

 せっかく恋人になれた事なので名前で呼んで欲しいと私は言ったのだった。その時、帝君は

 良いと言ってくれたのだが、どこか今まで呼び方が抜けていないように見えた。

 

「(きっと、すぐ慣れてくれるわよね)」

「随分と早起きなのね」

「まぁ、少し眠りが浅かったからな」

「そう....なら、今日は一緒のベッドで寝る?」

「....考えておく」

「っ! ....そっか」

 私は昨日の様子から随分と変わった帝君に驚いていた。

 

「....取り敢えず、朝飯食べに行くか。八....雫。何が食べたい?」

「そうね。できればサンドイッチの様な軽いものが良いわ」

「そうか....じゃああそこだな。雫、俺は先に宿の外で待ってる。着替えたら来てくれ」

 そう言って、帝君はメダルをケースに直して部屋から出ていった。

 

「別に、いてくれても良かったのに....」

 そんな事を呟きながら、私は服を着替えて部屋から出た。

 

 ~~~~

 

「おまたせ」

「じゃあ行くか」

 そう言うと、帝君は手を差し出してきた。

 

「手、繋いでいくか?」

「....ありがとう。でも、手を繋ぐよりも....」

 私は差し出してきた手ではなく、腕に抱き着いた。

 

「私はこっちの方が良いかな....」

「....そうか。コケないように気をつけてくれよ」

 そう言って、帝君は歩き出した。その時、帝君の耳は真っ赤に染まっていた。

 

 ~~~~

 

 しばらく歩いて着いたのは私がブルックに入って来たギルドだった。

 

「ここ?」

「あぁ。ギルド内の飯屋にサンドイッチ的な物はあったからな。でもその前に、少し

 挨拶に行っても良いか?」

「挨拶? 誰に?」

「少し世話になった人にな....」

 帝君はそう言いながらギルドに入ると、真っ直ぐに受付の机に向かって歩いていった。

 そして、帝君は私が占いをしてもらった女の人の前に立った。

 

「おばちゃん、久しぶりだな」

「アンタッ....!? 帰ってきてたのかい! それに隣のお嬢ちゃんは....」

「....その、俺の恋人だ」

「昨日はお世話になりました」

「....そうかい! そうかい! これはめでたいね! アンタ等! 朝からそこで酒飲んでないで

 席空けな!」

 帝君がおばちゃんと言った人はギルド内のご飯屋でお酒を飲んでいる人達に向かって

 そう言っていた。

 

「ささっ! 取り敢えず席に着きな」

 女の人は私と帝君の背中を押して席に座らした。

 

「ちょっと待ってなよ! 良い物を持ってきてあげるよ!」

 女の人はそう言ってご飯屋の厨房の中に入っていった。

 

「帝君....さっきの人と仲良いの?」

 私は女の人が見えなくなるとそう聞いた。

 

「あの人はブルックにいた時に世話になった人でな。色々と宿とか店を教えてもらったんだよ」

「へぇ....そうなんだ」

「あぁ。あ、すんません。これとこれと俺はいつもので」

 帝君は近くを通った店員の人にそう言っていた。すると、私達に昨日会った大剣の男の人が

 近づいてきた。その後ろには似たような服装の男の人達がいた。

 

「よぉボウズ。久しぶりに帰ってきたら美人な恋人連れてきたな!」

「うるせぇよガラッド....それに後ろのオッさん共もうるせぇぞ。どっか行け」

 帝君は男の人にそう言いながら向こうに行くように手を振っていた。その時、再び帝君の

 耳と、今度は頬も赤くなっていた。

 

「バッカ野郎! こんな良いイジリ....じゃなかった。良い事があって祝福しないわけには

 いかないだろ!」

「今イジリって言っただろう....」

 帝君はどこか諦めたような表情をしていたが、少しだけ嬉しそうな様子だった。

 

「(帝君、嬉しそう....)」

 そう思っていると、厨房に行った女の人が何かの釜の様な物を持ってきた。

 

「ほらほら! どきなアンタ等! 邪魔になってんよ!」

 女の人はそう言いながら私達の前に釜を置いた。

 

「おばちゃん、これは?」

「祝いの時のご飯だよ!」

 そう言って女の人が開けた釜の中には赤飯の様なお米の様な物が入っていた。

 

「赤飯か....?」

「キハンセっていう料理だよ。お祝い事の際に作られる料理なんだよ。これからの未来に

 良い事がたくさんあるように願った料理さ」

「良いんですか? 私達が頂いても?」

「良いんだよ! この子、お嬢ちゃんの事に関して色々と悩んでたからね。....付き合えた

 みたいで私達の肩の荷も降りたよ」

「っ! おいおばちゃん! 余計なこと言わないでくれよ....」

「おっと。口が滑っちゃったね。ま、後はお若いお二人で。アンタ等も少し二人に

 してやりな」

 女の人がそう言うと、周りにいた男の人達も少し離れていった。

 

「はぁ....何か疲れた」

「お疲れ様。....それよりも帝君。私の事で悩んでくれてたの?」

 私は女の人が言っていた事を帝君に聞いた。

 

「まぁ....その....色々と悩むことが多くてな。俺の過去とか、雫の気持ちとかを

 考えたらどうしたら良いのかとかを少し相談に乗ってもらってたんだよ....」

「そうなんだ。そんなに私の事を考えてくれて嬉しい....」

「....それは俺も同じだ。雫だって、ずっと俺の過去を知りながらも色々と考えて

 くれていたんだろ。それを聞いて....まぁ、その....すごく嬉しかったぞ....」

 帝君は少し歯切れが悪そうだったがそう言ってくれた。

 

「そっか....ありがとう」

 そう言って、私は帝君の頬にキスをした。

 

「なっ!?」///

 すると、その様子を見ていたギャラリーの人達は口笛やひゅーひゅーと囃し立てていた。

 

「~~~~っ! 今こっちを囃し立てた奴....全員表出ろやァァァ!」///

 帝君は顔を真っ赤にしながらも、囃し立てた人は全員黒い鎖の様な物で捕まえて外に

 出ていった。

 

「(流石に人前ではまずかったかな....)」///

 私は衝動的にキスをしてしまった事を今更ながら少し恥ずかしくなってしまった。

 

 ~~~~

 

「酷い目にあった....」

 食事の後、帝君はどこか疲れた表情をしていた。

 

「外にいた人達、皆黒焦げになってたけど何したの?」

「知らん。そんな事は忘れた」

「そう....それよりも、これからどうする?」

「そうだな....せっかく恋人になれたし、デートでもするか? 雫さえ良かったら....」

「行くわ! すぐにでも行きましょう!」

 そう言って、私は帝君の両手を力強く握った。

 

「お、おうわかった。おばちゃん、代金はツケといてくれ。今日の夜に一括で払う」

「はいよ!」

「よし。そういうわけだから、じゃあ行くか」

「えぇ!」

 帝君は私の手を引いてギルドの外に出て何処かに向かって歩き出した。しばらく歩いて

 着いたのは服屋だった。

 

「雫。せっかくだから、服見ていかないか? 雫の持ってる少女漫画に出てくるフリフリの

 スカートとか好きだったよな?」

「え、えぇ。というか、何でその事を? 帝君に言った事あった?」

「....少女漫画を見てた雫の顔を見ればわかる。すごく憧れているような目をしていたのを

 よく覚えている」

「そう、なんだ....」

「それによ....好きな女には、好きな服着てもらいたいしな」

 帝君はどこか緊張した様子でそう言った。

 

「....そっか。ありがとう、帝君」

「っ....さっさと入るぞ」

 帝君は私から視線を外すと店の中に入っていった。

 

 ~~~~

 

「....結構恥ずかしいわね」///

 私は試着室で着た服を鏡で見てそう呟いた。

 

「(....スカート短くて中が見えそうだし。それに肩も丸見えで....あの漫画のヒロイン、

 凄いわね)」

 私は少女漫画でヒロインが着ていた服を思い出しながらそう思った。

 

「(帝君、喜んでくれるかしら....)」

「雫、着替えれたか?」

「っ! ちょ、ちょっとだけ待って!」

「(....うん。大丈夫)」

 私は心を落ち着けて試着室のカーテンを開けた。

 

「着替えれたか....っ!」

「その....どう、かしら?」

 試着室から出て帝君の前に立つと、帝君は目を見開いていた。

 

「似合ってる....?」

「....あぁ。凄く似合ってて、その....見惚れてた....」

「ほ、本当?」

「あぁ」

「そ、そう....!」///

「(そんなにハッキリ言われるとにやけちゃう....)」///

 私は自分の顔がにやける事に気づいて顔を背けた。

 

「帝君、着替えるから少し待ってて」

 私は帝君にそう言うと逃げるように試着室の中に入った。

 

「うふふふ....似合ってる、か」

 私は試着室に入ると、帝君に言われた事を思い出しながら笑った。

 

 ~~~~

 

「ありがとう帝君」

「気にすんな。少しは彼氏らしいことをさせてくれ」

 あの後、私は着ていた服とは別に二着のスカートと服を帝君に買ってもらった。

 

「さて、じゃあ次の場所に行くか」

「えぇ」

 そう言って、私達は次の目的地に向かった。

 

 

 

 

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