「(どうしてこうなった、って思ってるんでしょうね)」
膝枕に誘った私だったが、帝君は始めは困惑して断っていたのだが、私は力づくで帝君の
頭を膝に下ろし、頭を撫でていた。帝君は起き上がろうとしたのだったが、私が無理にでも
起き上がらせようとしなかったので諦めて私に頭を撫でられていた。
「なぁ....何で急にこんな事を....」
十分ほど経った時、ずっと黙って頭を撫でられていた帝君は私にそう聞いてきた。
「帝君が私に触れてくれなくて寂しかったっていうのもあるけど....一番は帝君にリラックス
して欲しかったの」
「リラックスって....」
「さっきグロッケンから聞いたの。帝君が機嫌の悪い理由。だから、少しでも帝君の
機嫌を良くしてほしいと思ったの。ほら、彼氏って恋人にこうやって膝枕してもらうのが
好きなんでしょ?」
「何の少女マンガ読んだんだよ....」
帝君は呆れたようにそう言っていたが、表情はさっきよりも柔らかくなっていた。
「どう? 少しはリラックスできた?」
「....まぁな」
「何だか歯切れが悪い言い方ね....」
そう言って帝君を見た時、私はある事に気づいた。
「ねぇ帝君。少しだけ動かないでね」
「あ、あぁ....」
私は帝君の返事を聞いて帝君の耳を優しく引っ張って耳の中を見た。見てみると、帝君の
耳の中は結構汚れていた。
「....よし。帝君、私が耳かきしてあげるわね」
「何が"よし"なのか知らないが....じゃあ、頼む」
~~~~
「帝君、金属と木の耳かきどっちが良い?」
私は荷物を入れているケースから二本の耳かき棒を取り出して帝君に見せながらそう聞いた。
「じゃあ....金属の方で」
「わかったわ。....じゃあ、やっていくからじっとしててね」
私はそう言って帝君の耳を少し引っ張り耳の外側から汚れを取り始めた。
さりさり....さりさり....
「....中じゃないのか?」
外を搔かれて不思議に思ったのか、帝君はそう聞いてきた。
「えぇ。外の窪みには意外と溜まってしまうものなのよ。ほら」
私はそう言いながら匙に乗った汚れを見せた。
「....ホントだな」
「でも、窪みにしか無いから結構綺麗な方だと思うわ」
私はそう言って耳の裏を見た。だが、帝君の耳の裏は綺麗で汚れはついてなかった。
「耳裏は綺麗ね」
「まぁ風呂入る時に洗うからな....」
「そ。....じゃあ、次は耳の中を掃除するから。じっとしててね」
「....あぁ」
帝君の返事を聞き、私は耳の中の手前に耳かき棒を入れた。
さりさり....パリパリ....
かりかり....パリパリ....
耳の中の手前側には、意外と薄いものや細かいものがついていた。
「どう? 痛くない?」
「全然痛くない....何なら気持ちいいぐらいだ....」
「そっか。それなら良かった....」
私はそう言いながら汚れを取り続け、取れた汚れをティッシュの上に置き一度耳の中を見た。
「手前はこんなものね....じゃあ次は奥をやっていくんだけど、動かないでね。動かれると
手元が狂っちゃうかもしれないから....」
「....わかった」
帝君はそう答えたが、どこか声は眠そうな声をしていた。
かりかり....かりかり....ゴリッ!
「っ!?」
耳の中を掻いていくと、一際大きな耳垢に当たった。当たった瞬間、帝君の肩はビクッと動いた。
「だ、大丈夫!? 痛かった?」
「いや、痛くはない....驚いただけだ」
「そ、そう?」
「あぁ....そこの部分かゆいから、取ってくれないか....?」
「....わかったわ。じゃあ、慎重に行くわね」
そう言って、私は大きな耳垢に耳かき棒を当てた。
ガリガリ....ガリガリ....
「(....硬いわね。何かふやかすものがあれば....)」
そう考えていると、あるものが思い浮かんだ。
「ねぇ帝君、耳に少しだけ水を入れてもいい? 耳垢がかなり硬くてふやかそうと思うんだけど」
「....任せる」
「わかったわ」
帝君の返事を聞き、私は手のひらに小さな水の球体を作り出した。そして、その水の球体を
帝君の耳の中に入れた。そしてしばらく待ち、再び耳かき棒を耳垢に当てた。
ゴリュッ! グリュッ!
硬かった耳垢はかなり柔らかくなっており、耳かき棒は簡単に耳垢と耳壁の間に入った。
「(これなら....)」
私は耳かき棒に力を込めて耳垢を耳壁から引きはがした。
ベリリッ!
私は耳かき棒から落とさないように慎重に耳から耳垢を引き上げてティッシュの上に置いた。
取れた耳垢には耳毛や砂粒などが混じっており、かなりグロテスクな見た目であった。
「どう帝君? すっきりした?」
私は帝君にそう聞いたのだが、帝君から返事はなかった。
「帝君?」
私が帝君の顔を覗き込むと、帝君は目をつぶって眠りについていた。
「....寝てたんだ」
「(もう片方は後にした方が良いかしら....)」
そう思いながら、私は帝君の頭を回転させて仰向けにした。
「....ぐっすり眠っちゃって」
私はそう呟きながら、帝君の頬に触れた。
「(今なら、バレないわよね....)」
そんなことを考え、私は自分の唇を帝君の唇に近づけた。そして、私は帝君の唇にキスをした。
キスをして少しすると、私の顔はどんどん熱くなってきた。
「はぁ、顔熱い....」
私は自分の顔を押さえながら帝君を見ていた。そして、何を思ったのか私は帝君の首元に
キスマークを付けてしまった。
「....誰にも渡さない。帝君は私のものなんだから。だから、私から離れないでね....?」
そう言った私の瞳には光が消えていた。
~~~~
「ん....」
一時間程すると、帝君は目を覚ました。
「おはよう帝君」
「....悪い、寝てたか」
「良いのよ。よく眠れた?」
「あぁ....ありがとな雫」
そう言いながら、帝君は膝枕から身体を起こした。
「どういたしまして。機嫌もよくなってくれてよかったわ」
「あー....まぁそうだな」
「また機嫌が悪くなったらいつでも膝枕をしてあげるわね。あ、機嫌が悪い時じゃなくても
いつでもしてあげるわよ?」
「....そうか。じゃあ、また今度頼んでも良いか?」
「えぇ」
「じゃあ、また頼む」
帝君はそう言って立ち上がった。
「....さて、雫は少し休んでくれていいぞ。見張りはしばらく俺がしておく」
帝君はそう言って私に来ていたローブを渡してくれた。
「寒かったら言えよ」
「ありがとう」
私は帝君のローブを羽織り、近くに置いていたバッグにもたれた。
「(私も、少し休もう....)」
そう思い、私は目をつぶった。