「....取り敢えず、お久しぶりです先生。それに南雲君も」
先に食事を終えた私は愛子先生の前に座っていた。
「八重樫さん、今までどこで何をしていたんですか?」
「特には。強いて言うなら奈落に落ちて死に物狂いで鍛えて奈落を出て帝君と
会ったって感じですね」
「その着物と刀と顔の傷は?」
「私を奈落で鍛えてくれた人に頂いたものです。顔の傷もその人の修行で付きました」
「どうしてすぐに戻ってこなかったんですか?」
「戻るよりも優先すべきことがあった、それじゃあダメですか?」
「優先すべきことって....」
「帝君と合流することです。正直、味方に攻撃を撃つような人間がいる所に戻るよりも
帝君を探して一緒に行動する方が安全ですから」
「味方に攻撃って....それどういう事ですか!」
愛子先生は驚いたようにそう言った。
「私と南雲君が奈落に落ちたのは味方の攻撃が当たったせいです。落ちる時に見たので
間違いないですが....」
「そ、それはいったい誰が?」
「それは内緒です。言っても面倒なことになるだけなので」
「おい雫、話終わったか」
私が愛子先生にそう言うとベリアルが私達の方にやってきた。
「まぁある程度は」
「そうか。ならとっとと行くぞ。宿も探さねぇと今日は野宿だ」
「はいはい....そういう事なので先生、私はもう行きますね」
そう言って、私は席から立ち上がった。
「ま、待ってください! 八重樫さんは戻ってこないのですか?」
「....そうですね。そちらに戻るつもりはありません。私は帝君について行くって
決めましたので」
「どうして....」
「....好きな人と一緒にいたい、それが理由ですかね。行きましょ」
「あぁ八重樫、ちょっと待て」
愛子先生にそう言ってこの場から離れようとした時、南雲君に呼び止められた。
「何?」
「お前ら、迷宮いくつ攻略した?」
「私は一つだけど....ベリアルは?」
「二つ。ライセンと氷雪だ」
「....そうか。止めて悪かったな」
「いえ。....それじゃあまたね」
そう言って、私達は店から出た。
~その日の夜~
「寝すぎた....」
「....随分お寝坊さんね」
宿の部屋で刀の手入れをしているとベッドで寝ていた帝君が起き上がった。声からして、
どうやら帝君に人格が戻ったようだった。
「何か身体だるいんだが....」
「ベリアルがお酒飲んでたからじゃないかしら?」
「そういう事か....」
「寝てる間に色々あったわ。南雲君と愛子先生に会ったわよ」
「....! アイツ生きてたのか」
私の言葉を聞いて帝君は驚いているようだった。
「えぇ。元気そうだったわよ。女の子二人連れてたわ」
「そうか。....明日、少し顔見せに行くか」
「良いんじゃない」
そう言って、私は刀を鞘に戻した。
「じゃあ、私は少し眠らせてもらうわね」
「あぁ。わかった」
そう言って、私は帝君がさっきまで寝ていたベッドに寝転がった。
「おやすみなさい。朝出る時は起こしてね」
「あぁ、わかった」
私は帝君にそう言って眠りに就いた。