「うわっ....夜じゃねぇか」
俺がゲートをくぐった先は城の庭に繋がっていた。そして、空は真っ暗で夜に
なっていた。
「おいベリアル。今、どれぐらいの時間が経った?」
俺はホルダーからベリアルメダルを取り出してベリアルにそう聞いた。
『さぁな。最低でも五日ぐらいは経ってるんじゃないか?』
「五日か....まぁまぁ時間は経ってるな」
『お前が俺の力を受け継ぐのに時間がかかっていたからな』
そう言って話していた時、剣を振る様な音が聞こえてきた。
『剣の音か....それもなかなか鋭い音だな』
「あぁ」
「(多分アイツだな....)」
俺は一人の人物を思い浮かべながら剣の音が聞こえる方向に向かった。
すると、そこには一人の少女が剣を振るっていた。
「夜だってのに、お前は真面目だな」
「っ、誰!」
俺は少女の背後に立ちそう言った。すると、その少女は驚いたのか
振るっていた剣を俺に向けた。だが、俺の顔を見た瞬間、剣を地面に落とした。
「も、もしかして、帝君....?」
「あぁ。約束通り帰ってきたぞ、八重樫」
そう言った瞬間、八重樫は俺に抱きついてきた。
「おっと....急に抱きついてくるなよ」
「ご、ごめんなさい。久しぶりに顔を見たからつい....」
そう言いながら、八重樫は俺から離れた。
「....帝君、何か変わってない?」
八重樫は俺の髪と雰囲気が違うのを感じ取ったのかそう聞いてきた。
「まぁちょっと色々あってな。一応お前には話しておいた方が良さそうだな。なぁ、ベリアル」
『それは知らん。お前の好きにしろ』
「メダルが喋った!?」
八重樫は突然浮かび上がって喋ったメダルに驚いていた。
「み、帝君。そのメダルは一体....」
「少し長くなるが、それでも良いか?」
〜〜〜〜
「....つまり、帝君は宇宙を破壊するほどの力を手に入れたって事?」
「あぁ。だが、現状ではまだまだ不完全な状態らしいがな」
俺と八重樫は近くのベンチに座ってベリアルとの事を話していた。
「力の破片はこの世界の何処かにあるらしい。こんな風に、メダルとなってな」
俺はホルダーからベリアル以外のメダルを二枚抜き取った。
「....じゃあ、帝君はこれからどうするの?」
「この世界を回るつもりだ。元の世界に帰る方法と、ベリアルの力の回収、ベリアルの肉体を
復活させる為にな」
そう言って、俺は宙に浮いているベリアルのメダルを掴んだ。
「....そっか」
八重樫は少し残念そうな表情になった。
「悪いな。お前には無駄な心配させて」
「ホントよ。こんなに心配するなら、私も帝君について行った方が....」
「それは駄目だ」
俺は無理矢理八重樫の言葉を遮った。
「....何で駄目なの」
「悪いが、俺はもう人を殺す覚悟も、目的の為には手段を選ばない覚悟もできている。だが、
お前はどうだ八重樫。お前はまだ、人を殺す覚悟ができてないだろ?」
「それは....」
「それにお前、白崎を置いていけるのか?」
「....」
そう言うと、八重樫は黙って下を向いてしまった。それを見た俺は、八重樫の頭に手を置いた。
「....もしも、お前が覚悟を決めた時には連れて行ってやるよ」
「....ホント?」
「あぁ。だが、しっかりと考えろよ。一度殺したら、二度と元には戻れないぞ。元の世界に
戻っても、殺したっていう感覚は永遠に残るからな」
そう言いながら、俺は立ち上がった。
「さてと....」
「もう行くの?」
「あぁ。ここ、あんまり好きじゃねぇからな」
「そう....なら行く前に私の部屋に寄って。帝君に渡したい物があるの」
「渡したい物?」
「えぇ。ついてきて」
八重樫はそう言って城内の中に歩いていった。俺は不思議に思いながらも八重樫に
ついていった。そして、八重樫の部屋に着くと、八重樫は銀色のプレートを渡してきた。
「コイツは?」
「ステータスプレート。その名の通り、自分のステータスを表すアーティファクトよ」
「アーティファクトってのは?」
「強力な魔法道具って思ってくれたら良いそうよ」
「へぇ....で、コイツの使い方は?」
「それに血をつければステータスがわかるわ」
そう言われたので、俺は爪で指を引っ掻いて血を垂らした。すると、プレートに数字と文字が
表示された。
月無 帝 17歳 男 レベル:計測不能
天職:闇の皇帝 レイオニクス
筋力:計測不能
体力:計測不能
耐性:計測不能
敏捷:計測不能
魔力:計測不能
魔耐:計測不能
技能:巨大化、武装、格闘術、憑依術、怪獣使役、超獣使役....etc
「....何、そのおかしなステータス」
八重樫は、俺のステータスを見て混乱していた。
「これ、不良品とかじゃねぇよな」
「流石にないと思うけど....これはいくらなんでも異常よ」
「....じゃあ聞くが、八重樫のステータスはどんなだった?」
「私のはこれよ」
八重樫 雫 17歳 女 レベル9
天職:剣士
筋力:80
体力:90
耐性:68
敏捷:170
魔力:70
魔耐:70
技能:剣術[斬撃威力上昇]、縮地、先読み、気配感知、隠業、言語理解
「まぁ、お前は剣関連だよな....驚きもねぇ」
「(それと、俊敏のステが高いな。抜刀術が使えたらかなり強いだろうな)」
俺は八重樫のステータスが剣に関係する事だったので逆に安心した。
「そうよね....それよりも、これでわかったでしょ? 帝君のステータスが異常って」
「確かにそうだな....そういえば、今の今まですっかり忘れてたが、南雲のやつはどうだった?」
「南雲君は....」
〜〜〜〜
「....檜山は殺していくか」
「気持ちは理解するけど、それはやめて。私達の行動が制限されかねないわ」
八重樫の話を聞いた俺はそう言ったのだが、その提案は八重樫に止められた。
「チッ....で、南雲は図書館でこの世界の情報を集めてたと」
「えぇ。何度か様子を見に行ったけどモンスターの本や他の街の本を読んでいたわ。
おそらくだけど、戦えない分を知恵でカバーしようとしてたんだと思う」
「なるほどな....なら、アイツに情報を貰いに行くか。八重樫、南雲の部屋は何処だ?」
「....お化けと間違えられない? 居なくなって、10日も経ってるのよ」
「....今、10日って言ったか?」
俺は八重樫の言葉に耳を疑った。
「え、えぇ」
「(ベリアルの野郎、大嘘つきじゃねぇか....)」はぁ
俺はベリアルの適当さに呆れてため息が出た。
「まぁいい....とりあえず八重樫、南雲の部屋を教えてくれ」
「良いわよ。というか、南雲君の部屋まで案内してあげる」
「そうか。悪いな」
俺は八重樫に感謝して、南雲の部屋まで案内してもらった。
「南雲君、八重樫よ。少し良いかしら?」
『八重樫さん? 少し待って』
扉の向こうから声が聞こえると、扉の鍵が解除されて扉が開いた。
「どうしたの八重樫さん? こんな時間に」
「少し会わせたい人がいるの。ほら、来て」
そう言われて、俺は南雲の前に立った。
「よっ。久しぶりだな南雲」
「....あの、どちら様ですか?」
南雲は俺を初めて見る人間のようにそう聞いてきた。
「....お前、何気にひどいな」
「南雲君。彼、帝君よ」
「帝君!? それにしては髪が赤いし目つきが悪いような....」
「目つきが悪いのは前からよ」
「お前も何気にひどいな....」
俺は八重樫の言葉に少し傷ついた。
「南雲、お前に話がある。少し部屋に入っても良いか?」
「う、うん。どうぞ....」
その言葉を聞き、俺と八重樫は南雲の部屋に入った。そして、俺達は
適当に椅子に座った。
「帝君、生きてたんだね。良かった....」
俺が椅子に座った瞬間、南雲はそう言ってきた。
「それ、どういう意味だよ」
「帝君、死亡扱いになってたんだよ。初日に行方不明になったと思ったら次の日に
城の庭に血の跡があったから」
「誰だよそんな面倒な事したの....」
俺はそれを聞いて呆れた。
「でも、本当に良かったよ。帝君が生きていてくれて」
「(....ありがとな南雲)」
俺は口には出さなかったが、心の中で礼を言った。
「それで、僕に話って?」
「お前が調べたこの世界の情報をくれないか? 俺はこれから単独行動を取ろうと思ってな」
「単独行動って....それ、本気で言ってるの!?」
俺の言葉に南雲は心底驚いていた。
「あぁ。ここに残って他の奴らと足踏み揃えて進むより、一人で進んで帰る方法を見つける方が
よっぽど楽だ。それに、俺が思うに天之河と一緒に行動してる方が危険だしな。後、単純に
死んだと思った奴が生きてたら何をされるかわかったもんじゃねぇ」
「そ、それは確かにそうだけど....いくら帝君でも一人じゃ」
「これを見てもそう言えるか?」
そう言って、俺は自分のステータスを見せた。
「な、何これ....こんなのチートってレベルを超えてる....」
「私も見た時は目を疑ったわ....」
南雲は俺のステータスを見ると固まってしまった。
「ま、そういうこった。もしも帰る方法を見つけたら帰ってくる。だから南雲、
お前が調べた情報を俺にくれ」
そう言って俺は頭を下げた。すると、南雲は少し考え込んでこう言ってきた。
「....はぁ。わかったよ。僕は帝君の力に賭ける」
そう言って、南雲は数枚のメモ用紙を渡してきた。
「僕が調べたこの世界の事。その中でも、特に重要そうな物を書いたやつだよ」
「そうか。助かる」
「それと、この世界には冒険者ギルドがあるみたい。単独行動をするなら資金も必要だと
思うから入ってても損は無いと思うよ」
「そうか。何から何まですまないな」
俺はそう言ってメモ用紙に目を移した。
「(七大迷宮か....迷宮っていうぐらいだからベリアルの力がある可能性はあるな。後、
ここから近い街はブルックって所か。しばらくはそこを拠点にして動くか....)」
俺はすぐに今後の動きを考えた。
「あ、あと帝君。10日経ったけど、僕と先生と八重樫さん、あと白崎さんしか戦うのが
危険だっていう事が分かってないみたいだったよ」
「それを俺に言ってどうすんだよ....基本的に俺は、お前と八重樫以外の人間には興味が
ないんだが....」
『(ちょっと待てミカド。少し面白い事を考えた)』
俺がそう言うと、突然頭の中にベリアルの声が聞こえてきた。
「(何だよ、面白い事って)」
ベリアルはなかなかにエゲツない事を言い出した。
「(お前、南雲と八重樫を殺す気か?)」
『(安心しろ。サイズがデカくても、闇の力が少なかったらただの人間と変わらん。
それに、憑依の練習にもなるだろ?)』
「(....それはそうだが)」
『(この先、どの道その手を使う事は増えるだろ。それの練習とでも思っとけ)』
「(....それもそうだな)」
そう思い、俺は二人に向かってこう言った。
「二人とも、俺は明日、この国に面白い物を見せる。その時に現れた物をお前達二人で
倒してくれ」
「えっ?」
「それってどういう事?」
「それは明日になってのお楽しみだ。じゃあ二人とも、世話になったな」
俺はそう言うと、南雲の部屋にある窓から外に出て城を出た。
....その日の夜、ハイリヒ王国にいる一人のゴロツキの行方が消えた。
〜〜〜〜
八重樫side
「(無事に帰って来てくれて良かった....)」
私は自室のベッドでそう思っていた。帝君が単独行動をしていた10日間、私はずっと心配で
心臓が痛かった。それに、単独行動を開始した翌日に血があった時は本当に生きた心地が
しなかった。だけど今日、彼は帰って来てくれた。....何故か途轍もなく強くなって。
「(今、帝君について行ったところで、私はただの足手まといにしかならないわよね....)」
彼のステータスは数字が書いていなかったが、計測不能という事はそれだけ強大な力を
持っているという事だ。今の私が、仮に彼についていったところで役にも立てず、
彼の足を引っ張りかねない。
「(殺す覚悟か....)」
そう思った瞬間、私のステータスプレートが光った。見てみると、私の技能に何かが
追加されていた。
八重樫 雫 17歳 女 レベル9
天職:剣士
筋力:80
体力:90
耐性:68
敏捷:170
魔力:70
魔耐:70
技能:剣術[斬撃威力上昇]、縮地、先読み、気配感知、隠業、言語理解、
◾️の◾️◾️の◾️
「(文字が消えてる....?)」
突然現れた技能は、何故か文字化けしていた。唯一わかるのは“の”だけだった。
「(何なのかしら、この技能....)」
私はそう考えていたが、いつのまにか目を瞑って眠ってしまった。