眩しい笑顔は雪のせい   作:悪霊の遊佐

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[中編]

あれから3日、Moonの仕事が入っていないかったり、りおさんが担当したりで関わっていない。

だから凛音のその後の調子や、聡里の心象、利恵や鳴にどう思われているかも何一つ分からない不安な毎日だった。

いや、まぁ完全に自業自得だし何を思われても仕方無いんだけどさ……。

そんな事を考えながらお昼の時間になって近くのコンビニに足を運ぶと、丁度コンビニから出て来る聡里と絢に会った。

……思わず息が止まるが、それは一瞬のこと。直ぐに笑みを浮かべて挨拶をする。

……ぎこちなく無かったよね?

 

「あっ聡里、絢、お疲れ様」

「……お疲れ様です、マネージャー」

「お疲れ様です、マネージャー。……どうしたの、聡里さん、マネージャー?」

 

レッスンの途中なのか絢はレッスン着、聡里はいつもの服装で、手にはお互いコンビニ弁当を持っていた。

絢はいつもの真面目な表情で、聡里はいつもとは違って真っ直ぐこちらを見て、挨拶をする。余りの無表情さについ身構えてしまう。

先日の件、やはり聡里は事故だとは思っていないのだろう。当然だ、誰の目から見ても、そんな風には見えなかったハズだ。

……凛音も、あの時納得したかの様な口調だったけれども、実際の所は分からない。もしかしたらあの後、寮で自分のした事を聡里にぶつけたかもしれない。

 

「神室さん、ごめんなさい。マネージャーと少しお仕事の話があるから、お昼他の子達と食べて貰える?」

「………。分かった。それじゃぁマネージャー」

「あぁ、うん、また」

 

絢は自分たちの不穏な空気を悟ったのか、何も言わず、何も聞かずにその場を後にする。

絢の遠く小さくなる背中を見送り、そのまま踵を返して反対方向へ歩を進める。だが、直ぐに聡里が止める。

 

「あぁ、すみません。そうお時間は取らせませんので、どうぞお昼を買って下さい。近くの公園で食べながら」

 

最後の晩餐になるのかな……昼だけど。

 

 

 

途端に食欲が落ちたので、おにぎり2個とお茶だけにする。公園のベンチに並び、聡里は生姜焼き弁当を食べる。

食べながら喋るのは行儀が悪いと言うことで、暫くの間無言の時間が流れる……。胃が痛い。

 

「マネージャー」

「は、はい……」

「……来週の収録なんですけど、木曜日も増えたと言う話は聞いてますか?」

「あぁ、うん、聞いてるよ」

「それで、恵庭さんは学校の関係で少し遅れるそうです」

「それも聞いてる。だから、その日は自分があいりの送迎に行くから、多分そんなに遅れないと思うよ」

「そうですか」

「………。え、終わり?」

「仕事の話があり、時間は取らせないと言ったはずです。違いますか?」

「そうだけど……」

「……凛音の事で、私の口から言う事は何もありません」

「そうなの?」

「と言うか、本人の中で消化したみたいなので、別に何も問題は無いですね」

 

あの状況で、凛音はどう消化出来たんだろう……。それはそれで何か複雑なんだけど……。

けれども何も問題無いなら、それはそれで良かった。

 

「そっか。……じゃぁ、そろそろ自分も仕事に戻るね」

「マネージャー」

「うん?」

「不服そうな顔をしてますね」

「え? いや、そんな顔はしてないと……」

 

そこで近くの水溜まりに写る自分の顔を見る。

……なんだこの顔は、なんで自分はこんな顔をしているんだ。

何も問題無いはずなのに、今の自分の顔は物凄く……悔しそうな表情をしていた。

そして、そう思うとなぜか自分の中に苛立ちにも似たような感情が浮かんでいる事にも気付く。

怒り? 何に対して?

聡里に言われたことに? いや、聡里の言葉には別に怒りを表すものは含まれていない。

 

「先ほどまでは死んだ魚の目をしていましたが、今のマネージャーは不服そうな顔をしています。しかし、その理由は分かっていない」

「なんで……」

「なぜ分かるか。決まってるじゃないですか。マネージャーが私の言葉一つで豹変したからですよ」

「え?」

「凛音の中で消化した、その言葉を聞いた瞬間にマネージャーは悲しみの様な、苛立ちの様な表情に変わりました。その理由は、マネージャーが取った行動は思わず取ってしまった行動で、凛音の行動はマネージャーの事をなんとも思っていない行動だったから」

「つまり、どう言う……?」

「簡単に言えば、凛音の事を好きでしてしまった行動に見向きもされなかったから、拗ねている子供みたいな状態ですね」

 

凛音が好き? そうなのか……?

いや、あの行動を取ってしまったなら、それは当然凛音が好きだからこその行動だろう。

それに、確かに凛音になんとも思われていないって言われてから、心のモヤモヤが強くなった気がする。

でも、そんなの一方的で勝手なものだ。

自分はマネージャーで、凛音は新人だけど声優で、それでいて、決してその感情を表に出してはいけない関係だ。

それを表に出す時は、自分がマネージャーを辞める時だ。

 

「何覚悟決めた様な顔をしてるんですか。別にアイドルって訳でも無いですし、良いんじゃないですか?」

「いや、流石にそれはまずいって」

「どうせ覚悟決めるなら、ずっと隠し通す方に覚悟決めれば良いじゃないですか」

「………」

「マネージャー、凛音の事、好きなんでしょう? 今時珍しい、純真無垢とも言える真っ直ぐな凛音の事が」

 

自分は……いや、何を迷う意味があるんだ。別に迷う必要なんかない。

此処に居るのは、聡里だけじゃないか。

聡里の目を真っ直ぐ見る。聡里も、真っ直ぐ自分の目を見る。

自分の想いを、見届ける為に。

 

「好きだ。大好きだよ。付き合いたい。例え誰に何を言われようとも、付き合いたい。それが自分の本音だ」

「……分かりました。マネージャーの気持ち、確かに聞きましたよ」

 

ようやく聡里の表情が柔らかくなる。そこで自分が酷く緊張していた事に気付いた。

全く、聡里に言われるまで自分の気持ちに気付く事すら出来ないなんてな。

 

「それじゃぁ、告白するよ」

「それも聞かなくちゃダメですか?」

「いや……でも、大丈夫かな?」

「えぇ、大丈夫ですよ、マネージャー。さて、そろそろ私も行きますね」

「うん、ありがとう」

 

そう言って聡里と別れた。この後、まさかあんな事になるなんて……。

 

§

 

~5分前~

喉乾いちゃったし、この辺に自動販売機ってあったかな?

確か公園の近くにあった気がしたけど……あれ、こっちだっけ?

 

「………」

「………」

 

あれ、なんか聞き覚えのある声がこっちから聞こえて来る。

この声、マネージャーさんとさとちんの声じゃないかな?

あ、居た、どうしたんだろう、二人とも真っ直ぐ見詰め合って?

 

「おーい、マネ――」

「好きだ。大好きだよ。付き合いたい。例え誰に何を言われようとも、付き合いたい。それが自分の本音だ」

「……分かりました。マネージャーの気持ち、確かに聞きましたよ」

 

えぇ!? 告白!?

マネージャーさんとさとちんって、そうだったの!?

あ、もしかして3日前に抱き着いてきちゃったマネージャーさんに鋭い視線を送ってたのって、嫉妬心!?

そうか、わたし分かっちゃった、二人の関係!!

 

「それじゃぁ、告白するよ」

「それも聞かなくちゃダメですか?」

 

今告白してたじゃん!? え、何、コントなの!?

そうか、分かった! きっとコントだ! だってあんな分かり易いボケとツッコミ、そうそう見ないし!

ふっふっふ、だからここでひっそりとやってたんだね!

わたし今すっごく冴えてる気がする!

 

「いや……でも、大丈夫かな?」

「えぇ、大丈夫ですよ、マネージャー。さて、そろそろ私も行きますね」

「うん、ありがとう」

 

今のネタで大丈夫なのか、きっとマネージャーさん不安なんだな……。

それにしても、もっと早い内から二人の漫才見て見たかったな……どっちがネタ書いたんだろう?

やっぱりさとちんかな?

いつかわたしにも見せてくれると良いな~♪




そう言えば凛音さんの好きな物の所に「肉、お笑い」って書いてるなーと言うのを思い出したら、こんな事に……。
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