思い立ったが吉日、その足で直ぐに花屋に行って花を買い、凛音に告白する!
……と言う気持ちを持つのは良いが、いかんせん予定が詰まっていて、気付けば3日も経っている。
それに、この間凛音と仕事で一緒になった時は――「マネージャーさん! マネージャーさんなら大丈夫ですよ! 自信持って下さいね!」と言う謎の励ましを受けたし……。なに、もしかして自分、遠回しに凛音にふられたの……?
「はぁ……」
「ちょっとマネージャー、人の顔見て溜息吐くのやめて貰える!?」
「あ、いや、別に利恵の顔見て溜息吐いた訳じゃないよ」
「じゃぁ何? 疲れている顔はいつも通りだけど、それに輪を掛けて不安が顔に出てるけど、誰かに何か言われた?」
「サラッと酷い事を言うね……。まぁ、その通りなんだけど。あぁ、何かを言われたと言う訳じゃなくてね。寮で凛音どうしてる?」
「凛音? う~ん、最近なんだか楽しそうに見えるかな? いや、いつも楽しそうだけど、うきうきしてるみたいと言うか……。オーディション、何か受けてた訳では無いみたいだけど……」
「だよねぇ……。はぁ……」
「えっ、凛音絡み? でも、何で凛音が嬉しそうで、マネージャーが落ち込んでるの?」
「いや、何でも無いんだ、何でも……。はぁ……」
§
それにしても、マネージャーさんがネタを披露するのって何処なんだろう?
どうせだったら、わたしもマネージャーさんのお笑いのネタを見てみたいなぁ。
さとちんなら何か知ってるかな? 一緒にお笑いのネタ考えてるみたいだったし!
あ、でもこう言うのは内緒だろうから、教えて貰えないかなぁ?
そんな事を考えていたら、不意に扉がノックされる。
「凛音、居る?」
「リエンヌ? うん、居るよ! 何かあった?」
「いや、寧ろ凛音こそ何かあった? 最近楽しそうだけど……」
「え、そんなに分かる?」
「うん。それに、何故か逆にマネージャーが常に胃薬飲んでいそうな感じになってるけど……」
「あぁ、きっと不安なんだよ」
「不安?」
「うん!」
(マネージャーが不安で、凛音が楽しそう?? それに、何が不安で凛音を気にかけてるんだろう……。凛音のこの楽しそうな感じを見てマネージャーは不安を抱えてるのかな?)
「楽しみだなぁ、マネージャーのネタ!」
「ネタ? あ、分かった。罰ゲームだ」
「罰ゲーム?」
「罰ゲームでネタをマネージャーにやらせようとしてるから、凛音はテンション高くてマネージャーは不安なんでしょ? 確か凛音、お笑い好きだったもんね」
「え? いや、わたしがマネージャーさんにやらせるんじゃなくて……」
「利恵、居る?」
「あ、聡里の声だ。ごめん凛音、行くね」
「あ、うん。なんでリエンヌ、わたしがマネージャーさんに罰ゲームさせてるって思ったんだろう??」
§
「え、まだ告白出来てないんですか?」
「全然時間取れなくて、凛音の今の仕事もりおさんの方が担当してるから……」
「………」
利恵から話を聞いた翌日のお昼、聡里とまたコンビニで会ったから前回と同じ公園で話を聞いてもらっていた。
聡里にあれからどうだったかと尋ねられて今の答えを返すと、まるで……ではなく本当に言葉を失っている様だった。
「それより、なんか凛音最近楽しそうだって聞いてるんだけど……」
「利恵から聞いたんですけど、なぜかマネージャー、罰ゲームでお笑いをすることになってまして……」
「何で!?」
「私が凛音に聞いても『大丈夫、誰にも絶対に言わないから!』って意味の分からない返事を返されましたし……」
「あぁ、だからあの時謎の励ましを受けたのか……」
「「はぁ……」」
§
とは言え、このままあの二人をそのまま放置していくと、いよいよすれ違いが酷い事になりそうね。
となると、柄では無いけどここは私が動くしかないみたいね……。
「利恵、居る?」
「聡里?」
~~~~~
「なるほど、そう言う事だったの」
「何でそんな事になってるか利恵から探り入れて貰える? 私が聞いても、はぐらかされちゃって」
「と言うことは、つまりマネージャーと聡里の会話を部分的に聞いて凛音が勘違いしてるって事じゃない?」
「どう言う事?」
「マネージャーが聡里に相談したと思ったから、聡里にも内緒にするって言ったんじゃない? つまり関係者って思われているって事。最近、マネージャーと話をしたのは?」
「今日と4日前ね……」
「凛音が楽しそうにしている時期も大体その辺りだから、多分凛音に告白するって覚悟を決める話を聡里にした時、近くに凛音が居たんじゃない?」
「不覚だわ……。それにしても、部分的に聞いてそんな勘違いするなんて、凛音も凛音ね……」
「それで、どうする?」
「凛音を呼び出して、突き出すしかないわね」
「そうね。凛音のスケジュールを確認しないと……」
「……ま、これで凛音も分かるでしょう、事の重大さに」
「マネージャーも可哀想にね……」
「他の子も言ってたけど、そろそろマネージャーの方もなんとかしないと、倒れるかも知れないわね……」
~5分前~
ふ~、今日も沢山遊んだし、沢山練習したし、マネージャーさんのお笑いも楽しみだし、最近良い事がいっぱいだな~!
まぁ、わたしに見せてくれるかは分からないけど、いつかは見せて貰いたいな~
「それで、どうする?」
(ん、この声……リエンヌ? 何の話をしてるんだろう?)
「凛音を呼び出して、突き出すしかないわね」
(え、呼び出して突き出すって、何の話!?)
「そうね。凛音のスケジュールを確認しないと……」
(わたしのスケジュール? なに、なに、何の話!?)
「……ま、これで凛音も分かるでしょう、事の重大さに」
(事の重大さ!? わたし、何か知らない間にやらかしちゃったのかなぁ!?)
「マネージャーも可哀想にね……」
(しかもマネージャーさん絡み!? そう言えば、わたしが励ました時、少し元気なかったかも……って、わたしのせいだったの? わたしのせいでマネージャーさんが罰ゲームをする事になったって言うこと!?)
「他の子も言ってたけど、そろそろマネージャーの方もなんとかしないと、倒れるかも知れないわね……」
(ど、どうしよう、これは……大変なことになった……)
§
「……マネージャーに何をやらかしたか分からないけど、何かをやらかしてしまった為に罰ゲームをすることになって、マネージャーが倒れそうになっていると」
「なるちゃん、どうしよう……」
「でも、凛音さんに心当たりは無いんでしょ?」
「そうだけど……」
となると、取引先? いや、でも確か凛音さんの今の仕事はりおさんが担当してるはず……。
凛音さんの話だから、100%鵜呑みには出来ない。となると、何か前提条件が間違ってる可能性がある。
4日前には既にマネージャーが罰ゲームを聡里さんと形にしている……となると、もっと前にやらかした?
いや、マネージャーがみるみる落ち込んでいるのは此処最近だ。となると、多分仕事じゃない。
「凛音さん、4日前より前にマネージャーか、マネージャーが関係する何かで関わったものって何かある?」
「えっと……何日か前に滑ってマネージャーさんに抱き着かれちゃった事あるけど、それより前だと特には――」
「凛音さん、今の話詳しく聞かせて」
「え?」
~~~~~
「………」
「なるちゃん、何か分かったの?」
「いや……」
もし、マネージャーが凛音さんに抱き着いたのが滑ったのじゃなければ……。
もし、公園の告白がネタの打ち合わせじゃなく、本当に告白しようとして聡里さんに相談に乗って貰っていたなら……。
もし、凛音さんのその勘違いがマネージャーの耳に入っていたなら……。
辻褄は合う、さっきの利恵と聡里さんの会話の意味が……。
けど、さて、どうしたものか……。
「なるちゃん、大丈夫?」
「取り敢えず、事実確認をしたいから、凛音さんは部屋に戻ってて」
私はそう凛音さんに告げて利恵と聡里さんの居る所へ向かう。
扉を開けると、二人は驚いた表情を浮かべ、次に安堵の表情を浮かべた。
「鳴、どうしたの?」
「今凛音さんに相談持ち掛けられて、二人に確認したい事があるんだけど……」
~~~~~
「やっぱり……」
「なんであの子は毎回タイミング悪いのよ……。恵庭さんだってそんなタイミングは悪く無いわよ……」
「でも、もうこれで今大分状況は纏まってきたわね。全く……世話が焼ける二人なんだから……」
「それで利恵、どうするの?」
「凛音の方はなんとか出来るけど、問題はマネージャーの方ね……。でも、りおさんと真咲さんに言う訳には行かないし……」
「お困りのようね?」
「「「………!!」」」
§
『ごめんなさいマネージャーさん! この日、テストがありまして……』
「大丈夫だよ陽菜。なんとかなったから」
『本当にありがとうございます……』
「それじゃぁテスト頑張って」
陽菜との電話を切る。これで6人目だ。急にみんなが色々な理由で明日の予定を変更して来る。
千紗は急にバイトが入ったから、舞花は補習があるから、莉子はバイトが入ったから、美晴はコンクールの関係で、鳴は納期がどうとか言って……。
お陰で明日は1日大分時間が空いてしまった。
その時、7人目の電話が鳴る。
「聡里?」
『マネージャー、お疲れ様です』
「お疲れ。もしかして聡里も予定変更?」
『レポートがあるのでずらして欲しいのですけど、大丈夫ですか?』
「うん、まぁ、大丈夫と言えば大丈夫かな?」
『そうですか。では、私が空けた分、凛音と会う時間に当てて下さい』
「え?」
『それでは』
そう言って聡里は電話を一方的に切る。もしかして、本当は皆も同じ理由で……?
全く……皆にそこまでされたら、自分も引き下がれないじゃないか……。
§
『え?』
「それでは」
そう言って私は電話を切る。これで時間は確保出来た。
全く、あの人は本当に恐ろしい。のらりくらりとして、誰よりも事態を知らない筈なのに誰よりも状況を的確に見て、誰よりも的確な状況を作る。
本当に適わないな……。少なくとも敵には回したくない……。
此処まで完璧な根回しを誰にも悟られずにやってのけるのは、AiRBLUE内であの人に適う人は本当に誰も居ないだろう。
§
「そう。分かったわ。それでは明日、休みで良いわよ。たまにはリフレッシュなさい」
『え、ですが……』
「他の子達も貴方が倒れるんじゃないかって心配してたわよ?」
『そんなにですか……?』
「私の目から見てもね。良いから明日の事は私達に任せてゆっくり休みなさい」
そう言って私は電話を切る。側には楽しいと言う感情を隠す気が全く無いりおが立っている。
「りお、悪いんだけど、明日は頼むわね?」
「分かってますよ。マネージャー、上手く行くと良いですね」
「そうね。ま、経営者としては、本当は良くない事なのだけれども」
「経営者としてよりも、人としては正しいと思いますよ? それにしても、マネージャーと凛音ちゃんか。案外お似合いかも知れませんね」
「そうね。さて、私に隠れて、何処まで行けるかしらね?」
「真咲さんも悪い人ですね」
「これも試練よ」
そう、これは試練。マネージャーと所属事務所の社内恋愛は普通許される訳がない。
けれども、私が目を瞑ったとして、一体何処まで隠せれるのか。
「聡里と利恵、鳴にはちゃんと報告して貰わないと、楽しみが無いわね」
「そうですね。たまにはこう言う刺激が無いと」
§
明日、休みになってしまった……。となると、明日しか、凛音と会える時間は無い。
凛音の番号に電話を掛ける。心の準備は出来ていないが、3コール程で凛音は電話に出てくれた。
『もしもし、マネージャーさん……?』
「凛音、明日大事な話があるから、少し時間貰って良いかな?」
『分かりました……。えっと、何時に何処行けば良いですか……?』
「明日駅で、9時に。大丈夫かな?」
『はい、9時に駅ですね、分かりました……』
そう言って電話を切った。……アレ、前と違ってなんか凄く元気が無かったな、凛音らしくも無い。
それより、告白すると決めたんだ。自分も明日の為に準備しないと。
§
はぁ~~~~~~。
明日、もしかして解雇通告とかされるのかなぁ……。
声優、辞めたくないなぁ……。
「凛音、酷い顔してるけど、大丈夫?」
「さとちん……。今までありがとう……」
「え、何?」
「ううん、分かってるんでしょ? 隠さなくても大丈夫だよ?」
「……そう。じゃぁ、明日楽しみにしていなさい」
そう言ってさとちんは立ち去った。
あれ、凄い冷めてるけど、なんで? もしかして、さとちんにも何か迷惑を掛けて、怒らせてたのかなぁ……?
「泣きそうな顔してどうしたの?」
「リエンヌ~」
「大丈夫?」
「ううん、リエンヌは優しいね」
「我輩は優しくなど無い。悪魔なのだから」
「知ってる。……リエンヌ、今までありがとうね?」
「あぁ、こちらこそ礼を言う。明日、頑張るのだぞ?」
リエンヌはそう言って立ち去る。
明日、何があるかリエンヌも知っているんだ……。
けど、その割に清々しい程の笑みだったな。
リエンヌも、本当はわたしが居なくなって嬉しいのかな?
わたし、そんなに皆に迷惑を掛けてたのかな……?
事の重大さに気付く、取り返しの付かない何かをわたしはしてたのに、わたしは何を浮かれてたんだろう……。
「凛音さん?」
「なるちゃん……」
「大丈夫?」
「今まで迷惑掛けてごめんね、なるちゃん……」
「迷惑なんて思ってないよ」
「ううん、分かってるから。なるちゃん、今までありがとうね」
「? まぁ、明日になれば分かるから。これからクラン戦だし、もう行くね」
「うん……」
皆、本当に、今までありがとうね……。
こんなに迷惑を掛けたわたしだけど、最後までMoonの一員として笑顔で居てくれてありがとう。
わたし、このグループに居れて良かったよ。
ありがとう……さようなら……。
§
8時30分。予定の時刻よりも30分も早くに着いちゃったけど、マネージャーさんもまた、既にそこに居た。
もし時間通りに来ていたならば、30分も待たせちゃう事になっただろうに……。
マネージャーさんは、私の姿を見ると、酷く苦しそうな表情を浮かべる。
わたしに気遣ってくれているからだろう。きっと何時に来ても、苦しそうな表情をわたしに向けて来る筈だ。
それなら、早くわたしに伝えて、マネージャーさんを楽させてあげよう。
「おはようございます、マネージャーさん」
「おはよう、凛音。早いね」
「眠れなくて、5時には目が覚めちゃいまして。寮に居ても、特にやる事無かったんで、早めに来ちゃいました」
「そっか」
辛そうな笑顔、マネージャーさんのそんな無理に作った笑顔なんか、わたし、みたくないよ……。
わたしを傷付けない為にしてくれる気持ちが、わたしには凄く痛いよ……。
「凛音、大事な話があるんだ。けど、ちょっと心の準備が出来て無いし、凛音もなぜか辛そうな表情してるから、一回気晴らしに出掛けよう?」
「分かりました。何処へだって行きますよ?」
そう言ってわたしはマネージャーさんと共に電車に乗る。
そこから揺られて15分、そこから5分程歩いた、スキー場に今わたし達は来ていた。
「凛音、スキー経験ある?」
「はい。小学校から高校まで12年間はスキーしてました」
「じゃぁ、教えて貰っても良いかな?」
「わ、分かりました!」
そう言ってわたしは初めて滑ると言うマネージャーさんにスキーの滑り方を教えた。
最初から板を揃えるのは無理だから、ゆっくり板で登って行って、それからハの字で滑る練習をしようとした。
……立つこともやっとなマネージャーさんを見て、手を引きながら、子供たちに教える様に、マネージャーさんに教えた。
「凛音教えるの上手いね、先生とか向いてるんじゃない?」
その言葉が、声優をやめた後の進路について話しているのだろうと、分かる。
マネージャーさんは純粋に褒めてくれているのかも知れないけど、わたしには、少しずつ現実を見せられている気がして、逃げ出したかった。
それから3時間、お昼過ぎになってようやくまともに滑れる様になったマネージャーさんがリフトに乗って、泣きそうになっていた事以外は、楽しく滑れた。
私も2年ぶりのスキーだったし、気分は大分晴れやかになっていた。
そして、そんな楽しい時間は突如、打ち砕かれた。
マネージャーさんが頂上から滑り降りて中腹まで降りて、また転んだ所。わたしがさっきと同じように手を差し伸べると、マネージャーさんは手を取らなかった。
その代わり、真っ直ぐ、わたしの顔を見る。
「凛音、此処が丁度良い。大事な話があるんだ」
「……ない」
「え?」
「聞きたくない、聞きたくないです!」
「あ、凛音!」
わたしは思わず逃げ出した。逃げ出しても意味は無いのに。
けれども逃げ出せずにはいられなかった。
「凛音!」
「マ、マネージャーさん!?」
ハの字じゃ追い付けないからって、直滑降で降りて来るなんて、なんて危険な!?
マネージャーさんは、そのままわたしの前で減速……出来て無い!?
ハの字じゃ全然減速出来て無いマネージャーさんは、そのままバランスを崩して転ぶ。
スキーの板は宙を舞い、マネージャーさんも転がりながら落下して行く。
わたしも慌てて直ぐにマネージャーさんの後を追った。ようやく止まったその先で、マネージャーさんは酷く青ざめた顔をしていた。
「マネージャーさん、大丈夫ですか!?」
「凛音、自分は……凛音が好きだ!」
「そんな事を言ってる場合じゃ……」
「そんな事じゃない、真面目な話なんだ! 凛音!」
「真面目って、わたしもマネージャーさんのことは好きですけど……」
「そうじゃない。今日一緒にスキーをして、より確信を持てた。凛音、自分は凛音の事が好きだ。愛している」
酷く、格好の付かない告白だ。
転んだ拍子に、多分骨にヒビか、最悪折れているかも知れない。
けれども、マネージャーさんは真っ直ぐわたしの顔を見て、わたしに告白をする。
中学の時も、高校の時も、わたしに告白する人は居た。けれども、わたしは夢の為にその告白を全て断った。
そのせいで少し居心地悪くなった時もあったけど、わたしの願いは、夢は、本気だって皆知ってたから、酷いことにはならなかった。
けれども、今は? わたしは本気だと、誰よりも知っているマネージャーさんの告白だ。
告白を断る理由は無い……けれども、わたしはマネージャーさんの告白を受けても良いの?
「笑顔にいつも救われて、子供っぽくも明るく元気な姿を見て癒されて、今も懸命に凛音の指導のお陰でこうして滑れる様になって、凄いって思った」
告白の内容は、いつもわたしのことを褒める内容だ。子供っぽいけど、笑顔が好きだ。
明るく元気な所が好きだ。可愛くて、誰に対しても隔てなく接するのが好きだ。
だけど、それはただのわたしの――
「でも、凛音はそれだけじゃない。子供達の笑顔の為に夢を追い続ける姿が好きだ! 子供達の為に頑張る姿が好きだ! 子供達の為ならば、どんな努力も惜しまないその姿勢が好きだ! 声優として頑張っている凛音も、普段の凛音も、自分は、どっちも好きだ!!」
それはわたしの見た目だけ。わたしの普通に振舞っている姿だけ。
本当に見て欲しいのはそんな姿じゃない……。
そう思っていたのかも知れない。けれども、マネージャーさんの言葉でわたしは、本当に欲しかった言葉に気付けた……。
「凛音……」
「ありがとうございます、マネージャーさん……。嬉しいです……」
「じゃぁ……」
「私も、マネージャーさんが、大好きです!」
「ははっ……やった、やった!」
「って、それよりもマネージャーさん、足!」
「安心したら、急に痛みが! 痛い、本当に痛いんだけど!!」
「でも、楽しそうですね。いや、嬉しそう?」
「ははっ、そう言う凛音も楽しそう、いや、嬉しそうだよ?」
「そんな事無いですよ、心配してるんですよ!」
§
「……どうやら、上手く行ったみたいね」
「そうですね。二人とも、あんなに楽しそうに、幸せそうに笑ってますね」
「一応、皆に写真撮って送る?」
「そうですね。それくらいの事をしないと、割に合いませんから」
「……見てほのか、凄くあの二人の笑顔、輝いて見えるわ」
「眩しい笑顔は、雪のせいって事ですかね?」
「もう少し夢のある発言しなさいよ……」
「さて、ベストショットも撮れましたし、千紗さん、まだ滑ります? それとも帰ります?」
「久々のスキーだし、こんな役任されたんだから、少しくらいは私達も楽しみましょ。付いてこれるかしら?」
「宣戦布告ですね! 負けませんよ!」
§
『申し訳ありません……』
「さっさと治して、仕事に復帰なさい。マネージャーが抜けた穴埋めるの、どれだけ大変だか分かってるの!?」
『す、すみません!』
電話を切って溜息を吐くけど、不思議と苛立ちは無い。
それもこれも、二人の仲が上手く行ったと、千紗ちゃんとほのかちゃんから画像付きで教えて貰っていたからだろう。
「りお、マネージャーはなんて?」
「全治1週間の捻挫ですって。仕事には支障は無いですけど、一応大事を取って2,3日は休む様に伝えました」
「そう。ま、その2,3日は凛音のお見舞いで幸せな夢を見られるでしょう」
「その後は地獄を見る事になるでしょうけどね」
そう言って私達は通常通り、マネージャーの空けた穴を埋めながらの業務に戻るのだった。
§
「はい、あーん」
「一人で食べれるから!」
「ダメですよ! けが人は安静にしてないと!」
「足挫いただけだから!」
「……わたしがしたいんです。ダメですか?」
「凛音にされると、子供扱いされてるみたいでなんかな……」
「そう言う事言うのは、どの口ですか?」
「わ、分かったよ……」
毎日の様にお見舞いに来てくれる凛音。
こんな甘々な日々が毎日続くと、なんだかダメになっちゃいそうだ。
そんな事を考えていると、凛音が肩に寄りかかって来る。
「マネージャーさん、大好きです」
「凛音。……自分も、凛音の事、大好きだよ」
「えへへ……」
こんな笑顔を毎日でも見れるなら、明日からも頑張れる。
あの時眩しかった笑顔は雪のせいなんかじゃない。
正真正銘、心から美しい凛音の素敵な笑顔だったんだ。
愛しているよ、凛音。
りおさんルートは別にして、利恵さんルート、凛音さんルートと来たら、多分次書くのは聡里さんルート、鳴ルートになりそう、と言う事で、この予想を次回予告にします。次回、マネ×さとルート。