夜明けの魔法少女   作:Woudy

3 / 10
オリジナリティが強過ぎて伸びが悪かったので、プロローグの内容を変更し、また原作要素を多く含む現代編や魔王編の話も古代編の合間に入れようと思います。


プロローグ
太陽は魔法少女と出会う


「……はぇ?」

 

 パーパルディア皇国の皇族レミールは混乱した。

 

 彼女はつい先ほど、フェン王国ニシノミヤコで捕えた日本人観光客を眼前の朝田という男に見せ付け、此方が提示した要求を呑むよう命令。その際生意気にも同胞の解放を要求してきたので、手始めに数人ほど処刑する旨を現場指揮官に指示した。

 

 察した男が止めるよう叫んだが無視。奴は自らの無礼さを自覚しなくてはならない。その為の教育だ 

 今までと同じ。捕虜にした敵国民を少数殺処分し、それを見た敵国が屈することで戦争を回避する。敵味方双方の犠牲を最小限に抑え、且つ皇国は確実に目的を達せられる。とても合理的で、敵国民のことも考えた慈悲深き手段。

 これで日本は世から消え、皇国はまた一歩世界制覇へ近付く……そう確信していた。この時までは。

 

「な、何だ奴らは……!?」

 

 想定外の事態だ。何処からともなくローブを纏った不審人物が現れ、皇国兵士が日本人に振り下ろそうとした剣を同じく剣で止めたのだ。

 

 仰天し固まる兵士たちに、その人物はすかさず剣を横に振るう。するとどうだ。それだけで暴風が発生し、数十人の兵たちが纏めて遠くまで吹き飛ばされるではないか。地面や木々に叩き付けられた彼らは気絶し、残りの兵たちは慌てて”敵”に武器を構える……驚愕の色を隠さないまま。

 

「誰だ……?」

 

 それはレミールも同じだし、朝田と篠原ら日本人外交官も同じだ。ただ彼らとレミールでは内に秘めた感情は異なる。故に顔色も大きく異なる。

 

(そ……そんなバカな!! 有り得ない……!!)

 

 レミールは”それ”を確認し、その雪の様な白い肌が蒼褪める。謎の人物が背中から放つは……”光り輝く翼”。

 

 彼女の脳裏に、この世界の誰もが知る御伽噺が浮かぶ。

 かつて世界を恐怖と力で支配した大帝国――ラヴァーナル帝国。彼の国を建国した種族が持つ最大の特徴を、不審人物は持っていた。

 

 おかしい。奴らは神の裁きから逃れるため大陸ごと未来へ転移した。僅かな生き残りも他種族に狩られて既に絶滅している。現時点でこの世界に存在している筈がないのだ。いや、それ以上に有り得ないものをこれからレミールは見せ付けられることになる。

 

 突如画面外から『く』の字状の何かが2つ現れ、捕えた日本人たちの拘束具を一瞬で破壊。直後に剣を所持する人物と同じ格好の者が数名現れる。不審人物は一気に6人に増えた。

 ある者は剣を。ある者は槍を。ある者は未知の武具を。ある者は先の『く』の字の武具を。ある者は何も持たず。そしてある者は六芒星の小さな魔法陣を周囲に浮遊させていた。

 

 そこから先は……一方的な戦闘だ。

 

 数百名もの兵が放ったマスケットの銃弾は目にも留まらぬ剣捌き、槍捌きによって弾かれ、また障壁で容易く防がれる。

 

”嘘だろ!?”

 

”こんな至近距離で全弾防ぐなど……!”

 

 兵たちが口々に叫びながらも応戦するが戦況は全く覆られない。それどころかさらに不利に陥っていく。目に見えない何かで地面に縫い付けられる兵たちもいれば、六芒星の魔法陣から放たれた魔光弾の雨に吹き飛ばされる兵たちもいた。あっという間に500人以上の兵が無力化される。

 

”皆! 此処に集まってくれ!”

 

 不審人物の一人が声を発する。かなり若い声だ。

 何時の間にか人質にされた日本人たちは彼らによって一箇所に集められ、現れた巨大な魔法陣の内側に入れられた。兵たちが発砲するも、全て障壁で阻まれる。魔法陣は絨毯の如く人々を乗せ、何処かへ飛んでいく。おそらくフェン王国の首都アマノキへ向かうのだろう。

 

 たった6人で皇国精鋭兵3000人による包囲網を容易く撥ね返し、同時に人質全員を救出してしまう圧倒的な力。それを齎したのが例の御伽噺の種族なら納得だと思いたいが、レミールはどうしても受け入れきれない。何故なら……

 

「何故奴らが……光翼人が下等種と呼ぶ人間を助けたのだ!!?」

 

 光翼人――それがラヴァーナル帝国を建国した種族の正式名称だ。プライドが高く傲慢で、他種族を見下し家畜扱いする恐ろしい種族。レミールは勿論、この世界の住民は誰もがそう教育されてきた。

 

 しかし魔像画面に映されるものは、レミールや皇国兵にとっての非常識を連発する。

 魔法陣に向けて発砲しようとした者は優先して武具の柄や拳などを腹に叩き込まれ、鎮められる。日本人たちを守るだけじゃなく、明らかに皇国兵殺害を極力避けている。力を抑えてる筈なのに、それでも全く敵わない。

 

「そんなことが、ある訳がない!! 光翼人が他種族を殺さないよう配慮した戦い方をするなど、そんな現実があってたまるか……!!」

 

 長きに渡って心に染み付いた固定観念が、目の前の事実を全力で拒否する。

 

”全員奴らから離れろ! 魔導砲を撃て! リントウ゛ルムも前に出すんだ!!”

 

 兵たちが一斉に不審者たちから距離を取り、間を置かずに牽引式魔導砲の弾が着弾。謎の集団はカラフルな爆炎に飲まれる。

 

「よしっ! 皇国の力を見たか悪魔どもめ!」

 

 レミールもこれにはガッツポーズを取る。今のは確実に仕留めた、と。取り戻し掛けた自信溢れる笑みは、すぐに凍り付いたが。

 

 ローブが舞う。謎の6人組が纏っていたものだ。

 

 直後に立ち上がる煙の中から何かが飛翔した。現場の記録係が魔導通信の受信カメラを動かしてそれらを追う。それらが着地と同時に魔導砲が全て破壊された。

 

「な……」

 

 朝焼けに照らされた彼らの姿が、荒い魔像画面にもはっきりと映る。朝田と篠原もその正体に言葉を失った。

 

「お、女の子……?」

 

 6人組は全員が少女だった。日本人で言えば中学生くらいの年齢だろうか。如何にもアニメの魔法少女らしい、可憐と神秘を併せ持った服を纏っている。

 

(まるでアニメじゃないか……流石異世界だな)

 

(くっ……白黒じゃなくてカラー画像で見たかった)

 

 日本人たちがどうでも良いことを考えている最中も、少女たちの攻勢は激しさを増す。

 

”緊急事態!! 光翼人だ! 光翼人を確認した! 魔法帝国が復活した可能性大! 至急、全世界に通達をグべッ!!?”

 

 最後に白銀の髪の少女が周囲に猛烈な弾幕を放ち、皇国側の残存戦力に止めを刺す。指揮官のベルトランが最後に通信を入れてきたが、途中で強制的に途切れた。

 3000人もの皇国兵はほぼ全てが地に伏せ、残ったのは記録係の兵士数名と、怯えて豆粒ほどに遠ざかっているリントウ゛ルムの群れだけだった。

 

 陸戦隊の壊滅を確認した少女たちは、画面外へと飛び去っていった。

 

 

 

 

 

「こ……これは一大事だ。光翼人が復活するとは……」

 

 レミールも、周囲の衛兵やメイドたちも顔面蒼白で狼狽えている。

 

「……朝田さん。結局あの女の子たちは何者だったんでしょう?」

 

「分からん。私の失言の尻拭いをしてくれたのは確かだが」

 

 完全に日本側は置いてけぼりを喰らっていた。異世界人たちは彼女らを見てかなり慌てているが、地球から来た新参者の彼らにこの世界の事情など分かる訳なく、立ち尽くしたままその様子を眺めていた。

 

 だが、朝田と篠原のピンチはまだ終わっていない。

 

「……貴様ら、今のはどういう意味だ?」

 

 レミールが朝田たちを見る。その顔は先ほど以上に敵意に満ちていた。憎しみが籠っていると言っても良い。

 当然、日本側にしてみれば何でそこまで睨まれなければいけないのか全然分からない。寧ろこっちが聞きたい。

 

「どういう意味と申されましても……何が起きたのか我々にはさっぱり」

 

「とぼけるな!! 光翼人と手を組む人類の裏切り者が!!」

 

「「はぁ!?」」

 

 突拍子もないことを言われて唖然とする朝田と篠原。

 レミールたち皇国側は朝田らが異世界人だと露ほども信じておらず、光翼人のことも知っていて当たり前と思っている。そう思うが故に日本人を光翼人の手先だと結論付けてしまったのだ。

 

「やがて復活するであろう魔法帝国には人類一丸で立ち向かわなければならない! なのに自分たちだけ慈悲を得る為に我々を売ろうとは……やはり蛮族!! 卑しい精神しか持たぬ!!」

 

他国を恐怖で支配しておきながらどの口が言うんだと思う朝田だが、皇国に絶対服従=平和と定義してるレミールにそれを指摘しても無意味だ。

 

「しかし残念だな。傲慢な光翼人が貴様らの様な野蛮人に慈悲を与える筈がない。裏切られるのが関の山だ。世界からも魔帝からも、貴様らは孤立していることを理解しろ」

 

(さっきから一方的に決め付けやがって……!!)

 

 此方の言い分は全く聞かず、自分たちだけで話を完結させようとするレミールに朝田は焦りと同時に苛立ちが募る。傲慢なのはお前だろうがと、内心悪態を付かずにはいられない。

 

「何度も申し上げますが、我々とあの少女たちは無関係で」

 

「衛兵! この者らを捕縛して情報を引き摺り出せ! 場合によっては神聖ミリシアル帝国に突き出さねばならん!」

 

(くそっ、ダメだ! まるで聞く耳を持ってない……!)

 

 兎に角説得を試みるが完全に無視され、数人の衛兵に囲まれ鋭利な槍を向けられる。絶体絶命のピンチに気の弱い篠原は泣きそうだ。捕まれば間違いなく拷問を受け、殺されるだろう。何とか脱出する方法を考えねばと思考を巡らせていると、

 

 

 

「――ん? 何だ?」

 

そんな時、朝田たちの目の前に小規模な霧が出現し、中から人が飛び出してきた。

 

(……え?)

 

 

 

「はぁっ!!!」

 

 それはニシノミヤコで日本人を救ってくれた6人の内の一人だった。後ろに結った桃色の髪を揺らし、少女は衛兵へ剣を振るう。

 

「何……故……悪魔、め……」

 

 圧縮された高濃度の魔力を含んだ突風が室内を荒らし、衛兵とレミールを気絶させる。朝田と篠原は少女が作った障壁で無事だった。

 

「……どうやってニシノミヤコから皇都まで? これも魔法か何かか?」

 

 朝田は眼前で起きた非科学的な現象に困惑する。少女は霧を通って自分たちの所へ現れた。多分某ネコ型ロボットが持つ、何処へでも行けるドアの様な魔法だろう。

 

「天使だ……」

 

 篠原が思わず呟く。力強く輝く光翼を持った可憐な少女。この姿を天使と呼ぶ以外の表現が思い付かない。

 

「ふぇ? 今なんて……?」

 

 振り返った少女がキョトンとした様子で首を傾げる。格好はアレだが、それ以外は何処にでも居る普通の少女と言った感じだ。

 

「あのぅ、怪我とかは在りませんか?」

 

「え、あぁ……大丈夫です。貴女が助けてくれたので」

 

「そうですか。間に合って良かったぁ」

 

 笑みを溢すその姿はとても愛らしく人を引き寄せる魅力があった。レミールが言っていたイメージとは大きくかけ離れている。

 

(おいおい、この子のどの辺が悪魔だって言うんだよ?)

 

 少なくともレミールよりは遥かに真面で良い子じゃないか。

 

「ニシノミヤコで貴女たちが助けたのは我が国の国民です。あともう少しで殺されるところでした。本当にありがとうございました。……しかし、何故我々を? 貴女たちは、何者なんですか?」

 

「えっと……」

 

 朝田の問い掛けに、少女は少し考えてから答えようとしたが、

 

「あっ、ちょっと待って下さい!……はい……はい……分かりました」

 

 突然朝田たちから背を向け、耳に手を当て小声で誰かとやり取りを始める。無線かと思って見守っていると、通信を終えた少女が焦った様子で朝田と篠原の手を掴んだ。

 

「すいません。今の騒ぎでこの国の兵隊が近付いているそうです。今すぐ脱出しますので捕まってて下さい!」

 

「え、ちょっ」

 

「待っ」

 

 結局名前は教えて貰えなかったが、朝田たちは少女の魔法で無事皇国を脱出した。

 

 

 

 

 

 後に救出された人質の一人が、スマホで撮影した少女たちの戦闘シーンをネットに投稿。

 

 ネット上における反応は……

 

 

 

魔法少女キターー!!!!

 

こんなアニメみたいな魔法少女が実在するなんて。異世界最高!!

 

可愛い! 結婚したい!!

 

翼すごい綺麗……見とれちまいそう。

 

これ実体あんの? そうは見えないけれど。

 

何か光だけで出来てるっぽくない?

 

青い女の子は俺の嫁な。

 

違う、俺の嫁だ!

 

じゃあ私は桃色の子で。

 

俺は銀髪の子。

 

私は緑の子で。

 

お前ら……じゃあ俺は紫っ娘で。

 

あの黄色ツインテの娘 マミらないよね?

 

「もう何も怖くない」

 

フラグ立てんのやめい。

 

衣装ちょっと露出多いな。脇舐めたい。

 

夜明けを背景に映る翼の少女か……お前ら、この子たちの呼び名こんなのはどうだ?

 

 

夜明けの魔法少女

 

 

意外と悪くないじゃん?

 

何で疑問形?

 

翼の魔法使いのが良いかなと思って

 

悪(今回はパ皇)を倒して夜明けを齎すって意味なら確かに似合うな。

 

イイね、押しました!

 

夜明けの魔法少女。この子たち一体何者なんだろう?

 

 

 

 天使の如く光の翼を生やし、魔法少女の如く可憐な格好で敵の大軍を圧倒する美少女たちは、日本国では大きな話題となった。

 




プロローグはレミールや朝田視点での話です。
魔法少女たち視点の話は別の機会で。
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