通常投稿してましたが、批評募集を書いていないのに、表記していないのに重箱の隅をつつくような感想ばかりでうんざりした。感想募集もなしでした。
なので一度消して、チラシ裏に投稿する事にしました。
ああ、それと短編小説に高望みしないで。
重箱の隅をつつくような批評は批評募集を設定してる人に書いてあげなさい。
神々の記憶を、建造物を、慣習を、アモンケット次元の全てを作り変えたニコル・ボーラスは別の次元に降り立っていた。ワールドアイテムと呼ばれる特殊なアーティファクトを回収するために。
彼が見下ろす視線のはるか先には、女装をした少年のダークエルフがいた。
ニコル・ボーラスがプレインズウォークをしてこの次元に来た時に、彼のほぼ真下にいた存在。
ダークエルフからボーラスにへと向けられる負の感情、その周りにいる有象無象からの敵意ある視線。合理的だが、残虐で狡猾な性格。反発や、自身に向けられる敵意を楽しむ彼が騒動を起こすのは時間の問題であった。言葉が交わされる事、数度、ボーラスから嘲笑に激怒した有象無象は飛び掛かろうと、ダークエルフは魔法により攻撃しようするも、有象無象はすべて消滅し、ダークエルフの魔法は打ち消されて不発に終わった。
黒い触手が地面から湧き出し、ダークエルフの胸と喉に巻き付き、締め上げた。少年はその掌握の中で激しくもがく。
精神・思考を覗かれるダークエルフ。ボーラスの声が少年の心に響き渡る。『瞬きほどの時しか生きていないおぬしが、そのほんの僅かな才能で我を倒せるなどと思うたか? そして我をトカゲと言うか』 辛辣なその笑い声に、少年の心は怯えた。
精神・思考はもちろん、知っている事すべてを、隅々まで見られていく事に少年は半狂乱に心を閉ざそう、見せないように抵抗するも、ボーラスは隅々まで見回していく。ほどなくして、文字通りすべて見回され、用済みとなった少年の精神は紙のようにバラバラに引き裂かれた。
今、ボーラスの瞳に映るのは女装をした少年のダークエルフの抜け殻。アインズ・ウール・ゴウン=モモンガを釣るための餌として映っていた。
ボーラスはそれなりに知ったナザリックを、モモンガを頭の中で想起して研究し、分類し、分析した結果。モモンガはアインズ・ウール・ゴウンとして間違いなくあのダークエルフを自らの手で救いに来るとの結論に達していた。あとはワールドアイテムを幾つも持つ獲物が餌にかかるののを待つのみ。数日たっても来ないようなら、多少の骨折りにはなるがナザリックに赴こうの心構えになっていた。
だがそんなボーラスに押し殺していた笑いが込み上がってきた。虚像を虚像だと見抜けないで慕える配下に、無能なのに絶対なる支配者の虚像を見せ続ける哀れな存在に対して。
「…………っ、っ。愉快、愉快。実に愉快だ。
――――モモンガ、おぬしは我が予想を裏切ってくれるアンデッドか?」
◆
『アインズ様。マーレ・ベロ・フィオーレが反旗を翻しました』
アルべドから<
その声は、逃げよう――――アウラとマーレを連れて旅行しようと準備していたアインズに衝撃を与えるには十分なものだった。言われた内容をしばらく理解できず、ようやアルべドの発言内容が脳に染み込んだアインズは間の抜けた言葉を口にする。
「……………はぁ!?」
何を言うべきか、何をするべきか纏まらずに黙り込んでしまったアインズだが、一拍置いたのちに、アルべドに話し掛ける。
「アルべド、今どこにいる」
『玉座の間にいます』
「そうか。では今からそちらへ向かう」
アインズはナザリック地下大墳墓内を自在に転移する事のできる指輪――――リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力を起動して転移する。
玉座の間の、その手前にある
「お待ちしておりましまた。アインズ様」
優し気な声で出迎えるアルべド。
アインズは出迎えを労うべきか考えるが、今はそれどころではないと頭を振る。
「アルべド、<
問い掛けるも、いつの日かと同じ声色、語句で口を閉ざしてしまった。それをもし言葉にしてしまうと事実になってしまうような不安が、内から再び浮かび上がったためだ。あの時よりは交流は深まったが、それをシモベたちの前で話すのは危険だという認識は変わっていなかった。
「…………行くぞ」
「はい」
重厚な扉を開け、奥の推奨で作られた玉座に、アルべドを伴ってアインズは進む。歩みを進めながら、アインズは質問を投げ掛ける。
「始める前に聞きたい事がある。マーレが反旗を翻したと言ったが、アウラはどうだ? アウラは反旗を翻していないのか?」
「はい。反旗を翻す気配はございません」
「そうか。情報の収集の方はどうだ?」
「はい。既に終わっております。最後にマーレに会った70レベルのシモベの話では、村も街も都市も残すところあと僅か、そういって南にある王国貴族の領地、その西に向かったとの事です」
「西…………か。それでは具体的な所在地は摑めないな」
「はい。………………それとシモベ数体、ハンゾウを連れていたようですが、滅びているようです」
「そうか。…………………………ハンゾウが、か・・・・・・・」
玉座にたどり着き、規定の言葉を唱えた。
「マスターソース・オープン」
コンソールと似ているが、それとは違う半透明の窓が開く。タグで区切られ、無数の文字がボードに書き込まれている。
ナザリック地下大墳墓内の管理システム。
アインズは見やすいように、読みやすいようにNPCタグを表示させた。
上から順に並んだ名前を眺めて、視線を一ヶ所で止めたアインズは二度三度と繰り返し眺め、それが決して自分の見間違いではない事を理解してしまう。
アインズは管理システムからアルべドへと視線を動かす。
「マーレに
「はい。持たせ続けました」
もう一度、視線は管理システムに向けられる。
そこには白い文字によって書かれた名前が続く中、マーレ・ベロ・フィオーレの名前だけが黒く表示されていた。
「アインズ様、マーレが明確に反旗を翻したのは事実。討伐隊を至急、編成される事を進言いたします」
鋼の口調でアルべドが続ける。
「隊の指揮官としては私が。そして副指揮官としてはアインズ様が許してくださるのであれば、パンドラズ・アクター、そして紅蓮を選抜する事を考えております」
その選抜はマーレを確実に抹殺するための完璧な布陣であり、アルべドの本気がアインズに伝わった。
マーレ・ベロ・フィオーレは強い。シャルティア・ブラッドフォールンほどではないが。
序列2位の存在。それだけの存在であるマーレに必勝を期すなら、アルべドの言う面子でなければ逆に難しい。
「いかがでしょうか?」
「いや、それは早計だ。私は一体何故、マーレが反旗を翻したのかを知りたい」
「アインズ様はお優しいお方です。ですが――――」
「分かっている。どのような理由だとしても、敵意を向けた存在に情け容赦は無用、ということであろう。分かっているさ。それでも…………」
まずは対話から、とアインズは思った。
幼い少年をかなり酷使してしまっていた自覚がアインズにはあった。もしそれが原因で離反したのならもっと優しく接しよう。違うなら、どういった理由で反旗を翻したのかを知らなければならない。
「…………マーレの居場所を摑むために、もう一度、お前の姉のところに行くとしよう」
◆
ニコル・ボーラスは抜け殻を捜すための魔法、様子を見るための魔法が使われたのを察知した。望むならばそれに介入できたが、彼らがどのような計画をたて、行動に移すのかを見る方が楽しかろうと考えた。
待つのみ。
あとは数刻待つのみ。
そしてボーラスが待ち望んでいた時はきた。転移の魔法で移動してきたアンデッド、インプにダークエルフ。遙か遠方にいたボーラスだがアンデッド、インプにダークエルフがいる場所を目指す。近付くにつれ騒がしさが増してきたが気にしないで、降下して着地した。
ボーラスが先ほど知った難攻不落の戦士アルべド、屍術士にして死霊術士モモンガ、レインジャーにして獣の調教師アウラ・ベロ・フィオーレ。
「……………………お前は、誰だ?」
モモンガからの問いに、ボーラスは鷹揚に答える。
「我か? 我はエルダー・ドラゴンにして比類なき最古のプレインズウォーカー、
ニコル・ボーラス!」
巻き起こる暴風。轟く音。
翼を広げ、覇気のある声で自らの威光を示したボーラス。
「無礼者!! アインズ様に対するその振る舞い! その言動! 不敬罪に値する!!」
アルべドの怒り、苛立ちが頂点に達したのか怒鳴る。アウラも声を荒げはしないが、剥き出しの敵意、殺意を出す。その雰囲気、オーラはモモンガにも伝わる。
「落ち着け! アルべド、アウラ」
モモンガは手を上げ、守護者たちに落ち着くように命ずる。多少冷静さは戻ってきたようだが、すぐ下を溶岩が流れる程度の小康状態だ。話を変えるという意味でも、アインズはボーラスに言う。
「私はアイn―――――――」
「知っているとも、アインズ・ウール・ゴウン。だが其れは偽名。真の名はモモンガだという事も、影武者でもない事もな」
アウラ、アルべド、モモンガの三者に警戒心、あるいはそれ以上のが生まれる。
何故なら、外では一度もモモンガを名乗った事がないのだから。
「…………それをどこで知った?」
アルべドが盾になろうとモモンガの前に出て、アウラは鞭をしならせ、臨戦態勢に入る。
「モモンガという名前の事なら、そうさな―――――」
ボーラスは背後に棒立ちしているダークエルフを一瞥したあと言う。
「――――あのマーレから知った」
言葉が途切れると、沈黙はまるで決められた運命のように、その空間に重く腰を据えた。
聞こえるのは、木々や草が風に揺れる音だけ。
ボーラスはモモンガから、テレパスかそれに近い魔術が周囲にいるモノに使われている察知していたが何もしない。
いつまでも続くように感じられた静寂。だが、モモンガが言葉を絞り出した事で終わる。
「マーレを、、やったのはお前か?」
粘着質なドス黒い感情が混じった声に、ボーラスは事も無げに答えた。
「ああ、そうだ。もっともわっ―――――」
その嘲るかのような口調、認めた事でモモンガの怒りが爆発する。
「く、クズがぁ、クズがぁ、くそがああああ!!! 俺の、俺のぉぉぉ、愛おし子ぉ、傷つ、つけぇえてぇぇぇ、さらにはああ! 罵ろうとするぅ~!! 赦さんんnぞぉぉぉぉぉぉ!! ゴミぃが!!!!」
激しい、激しい怒りを抑えきれずに、モモンガはまるで深呼吸をするように肩を動かし、守護者たちに命令する。
「こいつをぉ! 赦すことぉわあできんっっ!! この場で殺す!」
「「はい!!!」」
命令を受けたアルべドはハルバードを固く握りしめ、二歩前に出て、飛び立つ。
黒い翼をはためかせ、一気に相手との距離を詰める。
それを見たアウラは後方へ跳び、鞭から弓へと変えて構えた。
「グラスプ・ハート」
だが、アルべドにアウラは、半透明の三重の半透明の青白い膜に閉じ込められて。
モモンガの死霊術は不発に終わった。
「その程度の黒魔術でこの我を倒そうと思うとは。モモンガ、おぬしに真の黒魔術を見せてやろう」
ボーラスの大きな鉤爪にマナが集まり、おどろおどろしい黒い波となって、猛烈な凄まじい速度でモモンガを襲う。
ズタズタになる豪奢な漆黒のアカデミックガウン。砕け散る肋骨、無数の罅が入る鋤骨。背骨は折れた。
「ごはっ!」
永久に回復しな傷、呪いにモモンガは跪く。
アウラ、アルべドは悲鳴を、怒声を出して半透明の三重の半透明の青白い膜を抜け出そう、壊そうとするもびくともしない。声だけが膜の中に空しくも響く。
「モモンガよ。おぬしにはもう少し期待していたのだがな。買い被っておったようだ」
ボーラスは大きな鉤爪を彼のガウンに押し当て、仰向けに倒す。
「……我を殺す。そう言ったな?」
ボーラスの笑い声が辺りに轟く。
「モモンガよ。おぬしは現実を見るのが真に下手であるな。我は何千という将軍と、軍師と、戦略家と、そして戦いの達人と戦ってきた。おぬしはその中でも最悪であろう。これは助言だ。明白な現実を無視することは一連の流れにおいて致命的な欠陥だ。無論、我も……………熱意の重要性は理解しておる。だが目の前の事実を正確に見積る力、それは戦いにおいて重要極まりない技術だ」
「―――――そして、その力が不足したゆえの、この結末だ」
鉤爪が輝き出す。
完敗。文字通りの完敗。
惨敗に命乞いも出来ないこの状況にモモンガは[実力差を理解して即座に慈悲を乞わなった事に]後悔、自責、激しい後悔の念に駆られる。しかしその後悔・自責は遅い。すでにボーラスはモモンガをどうするかを決めていた。
しかし、ボーラスの鉤爪の輝きが止まる。
「ほお。おぬしの仲間がこの場に来るようだ。…………くっくっく、おぬしは我の実力を目撃する機会に恵まれた。滅多な定命には得られぬ報酬ぞ」
ナザリックに所属する全ての高レベル帯の存在が続々と、様々な場所から転移してくる。
「まずは、煩わしい羽虫どもを間引くとしよう」
「見せつけるには、これがよかろう」
膨大なマナが集まったボーラスの左手が、赤く輝いていた塊が弾けて消える。
約半径60km内が、同時に至る所で陥没するか隆起するかで土地を歪める。そこから灼熱の超高温の炎、生者必滅の熱量あるマグマを噴き出す。赤く染まる空、立ち込む煙。逃げ場はどこにもない。
空を飛べるモノも、肝心の空に逃げる前に死に絶えていく。
2500mもマグマが吹き上がって、地面に落ちていく。
繰り返される光景の中、空を飛べるシャルティアが煙を潜りながらボーラスに迫る。
「っ!!! アインズ様の仇いぃぃぃぃ!!」
黒い翼をはやしたデミウルゴスも背後から、顔を憎しみに染め、迫る。
しかしボーラスは慌てもしない。デミウルゴス、シャルティアの精神を軽々と引き裂く。
落下するシャルティア、デミウルゴス。
モモンガの中に僅かに灯った希望も消えてなくなった。
押し当てたままの鉤爪が再び輝き始める。
ドラゴンはモモンガの心を乱暴に掌握し、念入りに壊して作り変えていく。
思い出が砕けた。苦痛が弾けた。狂気が手招いた。遠くに暗黒の波が立ち上がった。その直撃は崩壊を、精神の死を意味した。この時、モモンガは死に、新たなるボーラスの奴隷が一体生まれた。
ボーラスの咆哮が、オレンジ色に染まった空に、いまだに燃え続ける大地に響き渡った。