静寂を纏う白兎の狂奏曲   作:あルプ

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すいません、意外に文字数が増えたので2分割します。



追記)pixivの方でも作品を出してるのですが、何故かベルくんのおねショタ本だけ異常に伸びる傾向があります。不思議ですね。

※暴走注意報発令
※アルフィアはアスフィ謹製認識阻害系ローブ着用


酒場の喧騒1

太陽の光も闇に呑まれ、子供達が遊び、商人の陽気な客寄せが響く無邪気な昼の喧騒が去った頃。眠らない街である【オラリオ】は、ここからが本番とばかりに酒に浸った酔いどれ冒険者が街へと繰り出す。ある者は一攫千金を狙ってギャンブルに興じ、ある者は歓楽街へ足を進めて色欲の波に溺れていく。

 

そして、ある者達は祝い事のため、とある馴染みの酒場へと歩いてゆくのだった。

 

 

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

アストレアファミリア。団員3人に主神一人、保護者一人の5人だけで構成される小規模ファミリアは、夜の街でも一際目立っていた。

なんせ美女4人、少年1人である。少年には多数の冒険者から妬みの視線や殺気が飛ばされたが、ビクビク怯えて一人の灰色の髪の女性の影にそそくさと隠れるのを見ると毒気が抜かれて皆、興味を無くす。

女性冒険者からは逆に少年を可愛がりたいという視線がちらほらあるが、殺気を感じてこちらもすぐにそっぽを向く。

 

かくしてたどり着いた酒場を見て、少年…ベルは少し期待に胸を躍らせていた。

 

「豊穣の…女主人」

 

僕は名前からしてなんというか…そっち系のような、可愛いお姉さん達が沢山いるのかな?と想像してしまう。

直後、お母さんからの手刀が頭に降ってきた。やっぱりお母さんは心が読めるのでは?と僕は常々感じる。

 

カランコロンと扉を開けると、鈍色の髪をしたとても可愛いお姉さんが僕たちを出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませー!あっ、予約のアストレアファミリア様ですね。こちらへどうぞ!」

 

中に入ると視界に映ったのは、足を机の上に乗せて大酒をかっ食らうドワーフ、カウンター席でウェイトレス姿の猫人(キャットピープル)と楽しげに会話をする人間(ヒューマン)、小さな机でワイワイと会食をしている小人(パルゥム)等…多種多様な人がいる。

 

そんな中を通り過ぎて案内されたのは角の5人がけのテーブル席。隣にお母さんとアストレア様。向かいにアリーゼさんとリオンさんが座った。

席に着いた時、案内してくれたウェイトレスさんが僕たちに話しかけてきた。

 

「ご注文は決まったら呼んでください。…で、アストレア様、ちょっとこの子借りていいですか?」

 

「えっ、」

 

「ええ、いいわよ」

 

「ええっ!?」

 

すると、僕はそのウェイトレスさんの方に顔を向けさせらる。

 

「なっ、なっ、なっ…なに、するんですか?」

 

「ふふっ♪」

 

僕の必死の問いもにこやかにスルーされる。何されるのかと目を閉じて縮こまった時、柔らかい感触が背中から全身を包んだ。

鼻腔を通り抜ける甘い花のような香り、柔らかい感触、特に肩の辺り、非常に柔らかい感触が…

 

「なっ、何してるんですか!?」

 

「何って、ギューってしてるだけですよ?」

 

「な、なんで」

 

「んー?なんででしょう。小さくて目がクリクリしててもふもふだからでしょうか?」

 

言葉に合わせて髪の毛をも執拗に触られる。

 

嫌じゃない…嫌じゃないんだけど…!

 

「小娘、あまり戯れてやるな。ベルはこれでも14歳、そろそろそういう時期に差し掛かっている筈だからな。そして何より、ベルも一端の冒険者だ。子供扱いはあまり嬉しくないだろう」

 

耐えかねた僕に助け舟を出してくれたのはやはり、お母さんだった。

 

「ええっ!14歳なんですか!?こんなにぷにぷにもふもふなのに?」

 

「しっかり食べさせていたつもりなのだがな…」

 

いつまで経っても慣れない、不服な驚かれ方をされた…

僕はムスッと不貞腐れる。

 

その時、アリーゼさんがこちらを向いて口をパクパクさせ、何かを言い始めた。

 

「………か」

 

「か?」

 

「かわいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

むぎゅう

 

「むー!?む、むぅー!」

 

さっきまで静かだったアリーゼさんが僕に抱きついてきた!

レベル差はいかんともし難く、なされるがままにこれでもかと言うほど愛でられる。

しかもシルさんに抱きつかれた時とは違う、真正面から抱きしめられたのだ。身長的にしょうがないとはいえ、僕の顔をアリーゼさん自身の胸に埋めるような体勢で。唯一救いだったのはアリーゼさんの私服が胸元の開いたものでは無かったこと、それだけ。

 

「ねえなに!この子本っ当に可愛すぎるんだけど!さっきのむーって少し怒ってるみたいな顔といい笑ってる顔といい怯えてる顔といい、全てが可愛すぎるわ!何この子、可愛さの化身?アルフィアさんはどうやったらこんなに無垢で可愛い子を育てられるんですか?あーもう、本当に尊敬、感謝、感激です!でも少し許せないのはリューね。私が事務作業に明け暮れている間にダンジョンであーんなことやこーんなことしてたんでしょ!リューにばっかり懐いて私が声掛けてもオドオドしてるのもリューが抜け駆けしたからじゃない?いやきっとそうね、そうに違いないわ!それでも今日は許してあげるだってこんなに可愛いベルを見れたんだもの!」

 

今まで溜まっていた何かが吹き出したように早口でまくし立てるアリーゼさんは、言葉を続ける毎にどんどん僕を抱きしめる力をつよめてくる。やばい、何がやばいって、邪な意味ではなく生命の危機的な意味でやばい。

 

「んーんーんー!!!!!!!!」

 

「あ、ごめんねベル。少し興奮しすぎたわ」

 

抗議の声?をあげたら案外パっと離してくれた。

 

「ぷはぁ!うぅ…柔らかくて、痛かった…」

 

「ご、ごめんね?強く抱きしめすぎちゃってたかも」

 

「強すぎです。ミシミシって鳴ってましたよ」

 

「もう少し加減してあげてね?団長の胸に埋もれて窒息死なんて、洒落にならないんだから」

 

「…事務仕事くらいなら、ベルの事を拾ってくれた恩だ。多少手伝ってやらんことも無い」

 

リューさんとアストレア様は呆れ混じりに、お母さんは何だか哀れむような目でアリーゼさんを見ていた。

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

その後、落ち着いたアリーゼさんがいつもの料理を頼み、料理はすぐに運ばれてきた。

一つはみねすとろーね?とシルさんが言っていた血のように真っ赤な液体の中に、野菜などの具材が沢山入ったスープ。でも、そこには無いはずのトマトの良い香りがして食欲をそそる不思議な料理だ。そして大皿に山盛りにされた大量のスパゲティ。5人でも食べ切れるのか、そのくらい多く盛り付けられている。お母さんはそこまで量は食べないし、僕も同年代と同じくらいは食べる…と思う。同年代の男の人に未だ出会ったことないけど。

 

「シル、これいつもの倍くらいありませんか?食べ切れるか分からないのですが…」

 

「なんでも、ミア母さんが『団員が増えたのかい?ならサービスして大盛りだね!値段は同じで良いからね!』って」

 

「はは…サービスしすぎだよミアさん…」

 

乾いた笑いは他の冒険者の喧騒に掻き消される。

 

「そうそう、残したら許さないからね、とも言ってましたよ」

 

その言葉で僕以外の皆が石像のように固まる。どうしてだろう?大きい女将さんにしか見えないけど、もしかして強かったりするのかな?

そんな事を考えていると、ポンっとアストレア様は肩に、お母さんは頭に手を乗せてくる。

 

「ベル、頑張るのよ」

 

「え?」

 

「男を見せる時だ。なに、帰る時は私がおぶってやる」

 

「ええ?」

 

「ベル、大変な時も多いけど、頑張りましょう」

 

「ど、どういう」

 

「何事も諦めない事が大切よ。でも、諦めることだって時には必要なの。分かる?」

 

「な、何を言ってるのかさっぱり…?」

 

何が何だか分からないその時のぼくは、その後の事態に検討もつかないままに悟りきった表情の4人に戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

「ほらベル!まだまだ沢山あるわよ!」

 

「ほら、沢山食べないと大きくなれないですよ」

 

「も、もうげんか…い…で、す」

 

そこに居たのはこれでもかと大皿のスパゲティを詰め込まれる哀れな子兎(ベル)の姿。他の冒険者はその光景にかなりドン引きしている。

しかし、悲しきかな。大皿のスパゲティはまだまだ半分はある。

 

「残したら貴方がこの後苦しくなるだけよ?ベル」

 

「流石に、もう厳しいんじゃないか?かなり辛そうなんだが…」

 

追い討ちをかけるアストレア様と心配気な声色のアルフィア。アリーゼにぶち込まれたスパゲティを無理やり胃の中に押し込んだ辺りで、静けさがでてきた店内に威勢の良い声が入口から飛んできた。

 

「邪魔するでー!んん?なんやあ、他にも人がおったんかいな」

 

どこかの訛りだろうか。奇妙な喋り方だが風格を感じる。まるで人ならざる人を見ているこの感覚、間違いなく神様だ。そう思ってお母さんの方を見ると、露骨に嫌な顔をしている。

 

「お母さん?」

 

「いや…何でもない。それよりベルは大丈夫か?あまり食べすぎても身体に毒だ。その辺にしておいた方が良い」

 

「う、うん。分かった」

 

その時、僕の頭の中に雪崩が迫ってくる時のような、冷たく嫌な音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か、よからぬ事が起こるという嫌な予感が…全身を駆け巡る。

そして僕は、世界(オラリオ)は思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【静寂】との名を冠された女帝の脅威、集めた畏怖……そして、恐怖を

 

 

 

 

 

 

 

 

 




厚かましいですが、感想いただけると嬉しいです!ご指摘やアドバイス等もどんどんお願いします!
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