コメントのご指摘で自分の書いてる時に説明不足だった所が何ヶ所もあるという事に気づけました。
作品をお借りして書くという事の重みを改めて理解しました。これからは読者の皆様が不快にならない、読んでて楽しい作品を書いていきたいと思います。
こんな僕でも続けて応援してくれるのであれば、これ以上嬉しいことはありません。
これからも、よろしくお願いします
コンコン。ノックの音が部屋に鳴り響く。
「入っていいぞ」
ガチャリ。おずおずと扉から現れたのはアイズ。晴天の空のような水色のワンピースを着ており、特徴的な金髪金眼によく映える。しかし、だいぶ前から着ているためにサイズが合わないのか胸元がせり上がっておへそが見え隠れしている状態だ。
「ん、アイズか。どうしたんだ?こんな夜更けに」
「…ねえ、リヴェリア。聞きたいことが、あるんだけど、良いかな?」
ぱちぱちと目を開閉するリヴェリア。
「ああ。勿論だ。こっちに座りなさい。今お茶を出すから」
茶葉を取り出し、特徴的な形のポットの中にある網目状の場所に、大さじ1つ分落とし、湯を入れる。
こぽこぽと湯気を立てて深緑の液体がコップへ流れてゆく。極東に伝わるギョクロという珍しい茶だ。
出されたアイズは少し怪訝な目で見ていたが、飲んでみると存外美味しかったようであっという間にコップの中は空になった。
「それで?今日はどうしたんだ?」
「ん。えっとね、今日のフィンって、いつもと違う、よね」
リヴェリアは眉を少し持ち上げる。
「どうして…そう思ったんだ?」
「えっと。フィンは、いつも事が起こってから行動してたのに。今回は違う。なんか…焦っている、気がして」
「確かに。普段とは違う行動が多かったように感じる部分も多々あるな」
「うん…フィンの話を聞いてると、私たちが謝らなきゃいけないのに、あっちが悪者みたいに…」
「……そういえば、酒場の時もアイズは何か言いかけてたな。あれはどうしたんだ?」
「ベートさんがあの子のこと悪く言って、ほんとはあの子、凄く強いのに…」
「あの魔石が血溜まりに散乱していたという、あれか?」
「そう。私が行った時には、もうリオンさんが残ったモンスターを倒した後だったから。でも、ベートさんは何も、何も知らないのに、あの子を…侮辱した」
アイズの瞳からすうっと明かりが消える。
「…昔のお前に、何か重なったのか」
コクリ、頷くアイズの瞳には、涙が溜まっている。
「そうだな…私達は都市最大派閥の一翼を担う存在。その第一級冒険者ともあれば影響力が大きいのは必然。自明の理だ」
「うん。だから…あの子、私たちの、せいで、私みたいに、これから冒険者として、人間として、崩れていくんじゃないかって。もし、そう、なったら…」
涙と共に溢れる嗚咽に言葉が遮られる。
アイズの叫びに、リヴェリアは気付かされた。7年前の事を考えすぎて、自分達より強大な勢力憎しで動いているという事実を。相手を敵だと認識して相対すれば、自ずと口調も攻撃的になる。結果、敵では無いものを敵に回しかねなくなる。
何より、リヴェリアは知っていたはずだ。【人形姫】や【戦姫】と言われ、過去の境遇も手伝って無意識のうちに感情を封じた目の前の
リヴェリアはアイズの頭をそっと撫でる。
「そうだな……私たちは憎しみで動きすぎていた。まだ敵だと決まったわけでも無いのに」
そう。私達は1人の有望な少年を壊す所だった。それも彼のあずかり知らぬ所で。
そのままリヴェリアに体を預けてすやすや寝てしまったアイズを見て、リヴェリアは意を決した。
フィンへの
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翌日。日も暮れる頃、道行く人に振り向かれる3人は、ロキファミリアの幹部3人だ。【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴ、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン、【大切断】ティオナ・ヒリュテ。明朝、ティオナが散歩するアリーゼにアポを取り、こうしてアストレアファミリアへ行くという訳だ。
「ティオナ、お前はどうして付いてきたのか聞いてもいいか?普段なら面倒臭いとか何とか言って来ないじゃないか」
「んー。何かさ、私たち、主にあの
こんな事ガラじゃないんだけどやらなきゃだめだからねー、と少し顔を上げてティオナはのんびり歩く。
アストレアファミリアのホーム。中からはドタドタと走る音が聞こえる。
音が止んだ。今度はしくしくとすすり泣く声が聞こえる。
「一体何が起きていると言うんだ…?」
コンコン、ノックをする。
「すいませーん。ロキファミリアの者ですが」
「どうぞ!今手が離せないから入ってて!」
アリーゼのよく通る声が聞こえたので、言われた通りに中へ入る。
入った瞬間、3人は固まった。とある者に視線を釘付けにされたのだ。
純白の長い髪にぴょんぴょんと猫耳を生やした年端もいかない少女が、そこにはいた。大きな真紅の瞳に涙を溜めて、小さな体を震わせる子兎のような少女だ。よく見ると女装の服は豊穣の女主人のワンピース。そして今、リオンに拘束されてアリーゼにエプロンを着させられる所だった。
「どういう…状況だ。これは」
リヴェリアの問いは儚く虚空へと散っていった。
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「すまない。騒がしいところを見せた」
「いや…大丈夫、です」
「ロキファミリアの皆はお茶いるかしら?」
「心遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですよ」
「そう?分かったわ」
そう言い、アストレアは席につく。リヴェリアが北側に、アルフィア、アストレアが向かい側にいる形だ。
アイズとティオナは、アリーゼとリオンと向こう側で話している。
「挨拶はいい。本題から入ってくれ。」
アルフィアに促され、リヴェリアは席を立って頭を深く下げる。
「此度の無礼、本当に申し訳ありませんでした。彼も影響力のある第一級冒険者。それの発言の非は私達ロキファミリア全体にあります。なので、ロキファミリアを代表して謝罪に来…ました。本当に…すみませんでした」
「何もそこまでする必要などないのではないか」
本当に分からなかった。プライドを捨て、ここまでの謝罪をする意味が。ベルの罵倒なら少し頭を下げるだけで済むはずである。
「いえ、しなければならない理由がこちらにはあるのです」
リヴェリアは頭を下げたまま、ポツポツと事の顛末を語り出した。
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「良いわ。気にしないで」
リヴェリアは驚愕した。身体が震えた。ここまで勝手な推測で貶められ、評判を奈落に落とされる寸前だった。たとえ善神であっても、それは看過出来るはずのない事だ。
「しっ、しかし…!」
「良いのよ。本人が謝りに来ないのは気になる所だけど。正直私の神としての在り方が多少不明瞭であるって事も原因だと思うから」
ああ、どこまでこの神は…普通ならば、何かしらの形で報復する事を念頭に置くはずだ。それを自分の責任でもあるなどと…私達が言わせてはならない、あってはならない事だ。
「それに、まだその話は公ではないのでしょ?ならまだ間に合うわ。それにね」
「私は確かに正義を司る神。でも、殺戮とかをその人の正義として捉えようとするほど、まだ腐っちゃいないわ」
顔を上げて、と言われ、恐る恐る顔を上げる。ここまでの恐怖は、リヴェリアにとって冒険者始まって以来だ。
「確かに7年前、貴方達は多くの者を失った。肉親を、仲間を、守るべき民を」
「でも、それは私達も一緒よ。あえて厳しい事を言うと。あなた達の推測は亡くなった私達の仲間への侮辱。それさえ分かってくれれば、私としては十分よ」
優しい顔が、毅然とした凛々しい顔つきになる。
「誠心誠意謝りに来たあなた達に免じて、私はロキファミリアの蛮行を許します」
実害も出てないからね、と苦笑するアストレア。
「だが、私の話はまだ終わっていない」
ここで沈黙を貫いていたアルフィアが前に出る。
「冒険者たるもの、侮辱や嘲笑を受けることは避けては通れん道だ。しかし、あの駄犬は口が過ぎる。貴様の所の
「しかと承りました」
「ああ、特にあの駄犬は現行犯だ。次下手をしたらすり潰すとでも伝えろ」
溜飲が下がったのか、アルフィアは少し頬を緩める。何も彼女はリヴェリアに怒っているのでは無いので、理不尽な暴力を働くことはない。しっかりと然るべき相手に報いを受けさせる事を了承させた事の方が、彼女にとって大きな意味があった。
「でも、疑惑はここに来た時はまだあったんでしょ?」
「はい。ですが、入った時の光景を見て、そんな事をするファミリアではないと判断しました」
そんな事するファミリアが、女の子を着せ替えして遊ばないですからね、と、ここでリヴェリアは初めて笑う。
「あの子は少女では無く、男の子なんだが…」
「え?」
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その日、ロキに考えを伝えたフィンはロキに首根っこを掴まれて一日中説教を受けた。善神はその善良さに付け込まれて利用されることはあっても、自らその身を堕とすことは無い。ましてやアストレア、善神の中でも確固たる意志を持った神を侮辱する事は自分でも許すことは出来ないと。
そして翌日、ロキに引きずられるがまま、謝罪しに行った所宣言通りに天高く吹き飛ばされたのであった。
次回、兎の着せ替え講座part1