p.s.他の方の作品を見て感じました。
輝夜に襲われるベル君…襲われるベル君…いいな。めっちゃ良いな。ヨシ
「ねぇねぇ!これも着せてみてよ!」
「いーや、次はこれだわ!」
「これなんてどうでしょうか」
「…よく、わかんない」
ワイワイと抵抗しなくなった小動物で遊ぶ
あるはずのないうさ耳がぺたりと垂れているようにも見える。
どうしてこうなったのか。それは数分前に遡る…
※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※
「本当に、ごめんなさい」
一度しか出会ったことの無い、しかも、その記憶は微かなものだけ。もしかしたらリオンさんと見間違えただけかもしれない。いわゆる九割九分初対面の人に、いきなり昨日の無礼を詫びられても、正直よく分からない。
「えっ、いや。僕がムカッときたのはあの男の人だけでっ」
「それでも、止められなかった、から。ごめんなさい…」
「わたしも…本人が居てもいなくても、あんな風に他人の悪口言って酒の肴にするの、ダメだと思っても止められなかった。本当にごめん…」
重たい沈黙。僕は言葉をあれこれ探すが、見つからない。
「あの、その…えっと」
良いですよ。言いかけた言葉は吐く息と共に音も立てず消えていく。
あの後、お母さんにも言われた言葉。
「いちいちあんな事で心を揺さぶられるな。冒険者には嘲笑、罵倒、嫉妬は付いて回る。これ以上引きずっても何も良い事は無い」
そう。僕は強くならなくちゃいけない。だから、見返すための覚悟を決めた。
でも、謝られることは無いと思っていた矢先、こんなに真剣に謝ってもらえるなんて思ってもなかった。だから今、僕の覚悟は揺れに揺れている。許すことで、この覚悟が流れて言ってしまいそうな、漠然とした不安が僕を襲ってきている。
「」
口をパクパクさせ、声なき声しか出ない。
そんな極度の動揺の中、背後からふわりと僕は優しい何かに包み込まれた。
耳元で囁かれる声は、妙にくすぐったくて、暖かかった。
「ベル、あなたが何で悩んでいるか、私には皆目見当もつかない。だけどね、ベル。この場合、迷うならやらない方が良いわよ。そんなの、相手に対する誠意が無いもの」
ーーーーああ、ほんとに、僕の周りにいる女の人は優しくて、強い。僕の心の内を手に取るように掴んで来る。
やっと、僕は決心がついた。簡単な事だった。
「大丈夫ですよ。僕はあなた達には特に怒ってないですから」
そうだ、この人達とあの
「ありがとう、ごめんね」
「はい。大丈夫です」
長い沈黙。お互い何を話せば良いのか分からなくなっている。
しかし、直ぐに僕のすぐ上からこの場に似つかわしくない元気ハツラツな声が降ってきた。
「さっ、ベル!服はまだまだあるのよ!どんどん着替えていきましょ!」
「えっ、えっ、」
さっきまでの頼れる先輩からの緩急差に僕は激しく困惑する。
「ベル、あなたの格好からして、シリアスな感じは長く演出出来ないと知りなさい!さっきから後ろでリオンが笑いをこらえてるんだから」
ぶんっ、と後ろを振り向くと、確かにリオンさんが笑いを噛み殺していることが分かる。
「リオンさんっ。なっ、なんで…」
「す、すいませ、ん。私たちが、無理やり、着せた、とは、い、え、女装しな、がら、そ、その、ギャップが、」
僕は改めて自分の着ている服を見て、瞬間湯沸かし器の如く顔が真っ赤になる。
髪は同じ色のエクステで、中性的な顔立ちに童顔も相まって見た目なら完全に女の子だ。身長も悲しいかな、お母さんやアリーゼさんとも頭1つ分は違うから余計女の子と言われても納得される。
服装はと言うと、深緑のワンピースに白いエプロン。そのエプロンにはしっかりフリルがあしらわれおり、可愛らしさと華やかさが演出されている。
「あうあ…」
「ベル、次はこれにしましょ!そうと決まれば早くその服脱いで!じゃないと無理やり脱がせるわよ?」
サッと取り出したのは赤色の丈が長めのTシャツに…白いミニスカ。そしてカチューシャ。
どう考えても女の子じゃないか。じわりと、僕の瞳に涙が浮かぶ。
「や、やです。恥ずかしいです!」
僕は恥ずかしさで俯いて縮こまる。
「そう…分かったわ」
ん?アリーゼさんがすぐに諦めてくれた。まだまだ1ヶ月にも満たない付き合いだけど、アリーゼさんがここで簡単に引くような人では無いことだけは分かる。
不安半分、期待半分で顔を少し上げると、そこには破壊力抜群の天使がいた。
「ベル…おねがい」
いつも見上げていたアリーゼさんが、僕の目線の下にいる。
涙目の上目遣い
胸元が開いている目のやり場に困る服
そこからチラリと見える豊かな乳白色の双丘
甘えるような声色
普段の勝気な性格からは想像出来ないくらい弱々しい雰囲気を纏っている
その全てが僕の思考回路をショートさせた。
アリーゼさんはそのまま僕に少しずつ近寄ってくる。
「ね、ベル。だめ?」
あう…これが、ギャップ萌えってやつなの?おじいちゃん…
僕は少しずつ、少しずつ近づいて来るアリーゼさんを前に
「イ、イイデス…」
「よしっ!ありがとうベル!」
徐々に近づいてきていたアリーゼさんの身体が一気に迫り、僕は反応出来ずになすがまま抱きしめられる。
「ベル、顔が真っ赤ですよ」
「ま、まっかじゃないです!」
「かーわいい!さあ、了解も取ったし、どんどん着せ替えさせるわよー!」
そうして手際よく着替えさせられた。
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「あの、アリーゼさん。股がスースーします…」
上には灰色のパーカー。カチューシャは僕には似合わなかったのか、頭に関していえばヘアピンで前髪を上手く止められている。そして下はまさかのミニスカ。普段はズボン、先程まで着ていた服のスカートもロングだったので初めての感覚に戸惑ってしまう。
「そう?じゃあこれとかどうかな?」
〜少年?着替え中〜
「わぁー!すっごく似合ってる!おとぎ話のアルゴノゥトみたい!」
黒いアンダーウェアによく合う黄色と白、2枚の上着を肩にかけるような形で羽織り、赤いバンダナを腰からぶら下げる。ズボンは足元がふっくらしているタイプのもので、これは以前にも着た事のあるものだ。
「ほんとね!アルゴノゥトの挿絵そっくり!」
「かっこいいですよ、ベル」
「うん。似合ってるよ」
「え、えへへへ」
大好きなおとぎ話の英雄に似ていると言われて照れるベル。先程までの不機嫌はどこへやら、すっかり上機嫌だ。
「じゃあ次はっと…これにしてみましょう」
〜少年着替え中〜
「う〜…」
必死にベルは上に羽織る上着を下に下げている。上着はベルより一回り大きいサイズの物で、柄は青と黒のスプライト。しかし、着ているものはそれだけだ。ちなみに先程外したエクステを再び付けている。
いわゆる部屋で着る彼氏服のようになっている。
「リオン…あんた、こーいうのが趣味なの?」
「ちっ、違います!」
「意外…リオンさん、結構攻め…」
「せっ、攻めってなんですか!」
「まーまー。誰にも好みはあるから、ね?」
「だーかーらー、違いますって!ベル、ちゃんと下に着るものも入れましたよね?」
「えっ、無かったですけど…」
ベルは服の入っていた袋をひっくり返す。確かに何も入っていない。
「リオン、もしかしてだけど…あんたの横に置いてあるのじゃない?」
「いっ!?」
リオンの座る椅子の肘掛けにかけられているのは、黒一色のショートパンツ。
「うわぁー、しかもちゃんと女の子用…」
「リオンもベルに女装させたかったのね!」
「ちっ、ちが」
「ここに物的証拠が有るのよ?言い逃れは出来ないわね。しかもこの刺繍!女性冒険者人気No.1のお店じゃない!」
ニヤニヤ、ニヤニヤ。3人から好奇の目を向けられるリオン。へたりとその場に座り込む。
「うう…ベル、助けてください」
何故かベルに泣きつくリオン。しかし、ベルもベルで声を大にして言いたいことがあった。
「僕から見れば1番の加害者ってリオンさんなんですけど…」
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その後も様々な服を着させられた。主に、というかアリーゼさん一人に。他の3人は途中から静止に回るほど、色んな服を着た。しかも大半は女の子用。だから、恥ずかしさが徐々に、じわじわと押し寄せてきて、
遂に、羞恥心のダムが決壊した。
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「それでアイズがもう水をとことん嫌がってしまってだな。水中どころか水がダメだから家事もろくにできないもので…このままでは嫁の貰い手が無くなりかねん」
「まだまだそれは可愛いものだ。ベルは未だに親離れが出来てなくて…あの子はもう14だ。境遇が境遇とは言え、今の段階では異性に恋愛感情を持つことすら難しいかも分からん」
「それはアリーゼとリューもよ。特にリュー!あの子お堅いのに家事はてんでだめで、それが可愛いんだけど…誰か見初めてくれないかしら。若い時に良い関係が無いと行き遅れるんだから」
「「全く、その通りだな」」
謝罪での陰鬱とした雰囲気は何処へやら、いつの間にか子供の将来を憂うママ友トークになっている。
「お母さーん!」
そこに母親離れが一向に出来ない少年が、ポロポロ泣きながらやってきた。
ドタドタドタ。ベルは大好きな母親の元へ走ってゆく。
「ん、どうしたベル…」
アルフィアにひしと抱きつくベル。
「うぐっ、ひぐっ」
「メ、メーテリア…」
アルフィアがボソリと呟いたが、ベルの耳には届かない。ベルは自分の事でいっぱいいっぱいなのだ。
「お母さん!僕、男だよね?!」
母親に何を当たり前の事をと言われるようなセリフ。しかし、アルフィアは妹の幻影を息子に見ていた。
だから失言した。
「いや、お前は女…いや、待て。すまん。妹と勘違いを」
慌てて取り繕う頃にはもう遅い。アルフィアに見放されたベルはヒックと喉を鳴らし………泣いた。
「うわあああ!お母さんのバカー!」
ピューっと自室へ走り去ってゆく。ウィッグを付けたまま、女装のまま叫びその場から逃げていく様は、まさに幼い頃の
「はあ…やってしまった。妹にあまりにも似ていたから、つい」
済まない。アルフィアはそう言って席を立ち、ベルが逃げていった部屋へ歩く。
「…アストレア様」
「なに?」
「甘やかしすぎて、マザコンになったとかの可能性は」
「詳しい事は分からないけど、十分あると思うわよ」
「まあ、あの女帝がここまで柔らかくなったのも…彼のおかげなのでしょうね」
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「ベル……すまん」
ベルは布団から引きこもって出る気配が無い。聞こえるのはすすり泣く声だけ。
「お前の姿が、本当に…瞳以外、お前の母親に、妹に似ていたんだ」
ベルは布団からひょこりと顔だけを出す。
「……」
「……」
「…おかあさん、ぼく、おとこ」
「そうだな。お前は男だ」
「ぼく、じょそう、やだ」
「うむ。あの子達には辞めるように言っておく」
「ほんと?」
「ああ、ほんとだ」
「………じゃあ、こっち来て」
アルフィアがベルの元へ近寄ると、ベルは布団にくるまりながら器用に抱きつく。
「このまま…」
そのままベッタリアルフィアにくっつく。頬を少し膨らませ、ムゥという表情で離れる気は微塵もないようだ。
アルフィアは知っている。ベルが拗ねた時は治るのに時間がかかる事を。
にしても、抱き着いてくる癖は治すべきだ。結局矯正出来ずにここまで来てしまったが。
「はぁ…子育てというものは大変だな。メーテリア」
抱きついたまま眠ったベルを撫でつつ、瓜二つの少年に重なる妹へ言葉をなげかけた。
次の日、今度は4人でベルに謝る光景がとある酒場にて行われていた。服装はもちろん…
次回、酒場の白兎
追記:吹き飛ばされるフィンは不意打ちアッパーカット入ってます。それはもう綺麗に