静寂を纏う白兎の狂奏曲   作:あルプ

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タグにも追加しましたが、この作品は絶対ベル×リューになる訳ではありません。何ならヒロイン未定です。スキルにも原作のようなスキルが無いように。
アリーゼになるのか、リオンになるのか、はたまたその他の誰かか…楽しみにしていてください。
しかし、最大の障壁を前に皆散りそうでは有りますが。


酒場の白兎 1

豊穣の女主人。何人もの見え麗しい美女が給仕をを行い、それに釣られて盛った男共が集まる酒場。料理は絶品、酒も金を積めば積むほど良い酒が出てくる。特に店主、ミア・グランドが手がけた果実酒は恐ろしいほどの人気で、多少値が張っても買いに来る冒険者は後を絶たないほど。

そんな感じで常に賑やかな場所ではあるが、今日はいつも以上に騒がしい。あちこちで黄色い声が飛び交っている。

その輪の中心にいるのは…処女雪を思わせる白い髪に大きな真紅(ルベライト)の瞳を携えた、身長140CM程の小さい白兎だった。

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

時は遡りお着替え事件の翌朝。いい歳して母親に抱きついて眠ってしまった恥ずかしさから悶えジタバタする所からベルの一日は始まった。

ごめんね、やり過ぎたねと謝られ、ベルもあんまり引き摺っても良くないと考えてその謝罪を受け入れて朝ごはんを食べた。

そしてその後はアリーゼさん念願の3人でダンジョン…の前に、僕の装備を整える事に。

 

「アリーゼさん。これからどこの武具屋に行くんですか?」

 

ベルは半ば強制的に繋いでいる手を意識しないように務めながら歩いている。

 

「そうね。ゴブニュファミリアでも良いんだけど…今日はバベルの方へ行きましょ。あっちの方が駆け出しにはあってるから」

 

そう言って2人バベルへの道を歩く。リオンは先にダンジョンに潜ってるとのこと。なので、傍から見たらバッチリデートなのだが、そこは特に2人とも気にしてない模様。

 

「バベルに店を出してるファミリアってどこでしたっけ」

 

「ヘファイストスファミリアよ」

 

ヘファイストスヘファイストス………

アリーゼの言葉を反芻して、突然魔蛇に石にされたかの如く往来のど真ん中で立ち止まる。

 

「どうしたのベル?みんなの邪魔よ」

 

「ヘファイストスファミリアって…あの何千万ヴァリスもするって言う最高級ブランドの!?」

 

「ん?まあそうね」

 

繋いでいた手を離し、全力で後ずさる。

 

「いやいやいや僕ごときにそんな高いものは勿体ないです!」

 

キョトン、とアリーゼはベルを見つめていたが、なるほど合点がいったのかニヤニヤしながらベルに詰め寄る。

 

「ふふん。その種明かしは行ってからのお楽しみよ!さあ行くわよ!」

 

「わわっ!ま、待ってくださーい!」

 

ベルをひょいと抱き上げ、ぬいぐるみを持つ子供のようにベルの脇に腕を通してそのまま抱きしめる形で固定する。ベルは為す術なく全身を余すことなく包むその柔らかな感触に身を預けるしか無かった。

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

「ここがヘファイストスファミリアのお店ですか?」

 

「そうよ。ここから先の武具屋は全部」

 

「す、すっごい!」

 

「でしょう?さあ、ベルの武具はこっちこっち♪」

 

抱っこに羞恥心が無くなったベルは珍しい光景に目を輝かせる。ここまで来るともはやデートなどではなく姉と弟、もしくは飼い主と飼い兎(ペット)にしか見えない。

 

エレベーターなる不思議な円盤に乗って上へ上がると、そこは雑多な箱の中に武具が無造作に置かれている店が乱立していた。

先程までの華々しい雰囲気はどこへやら、少し淀んだ空気を感じさせるものがある。

 

「ここですか…?さっきとは感じがまるで違いますけど」

 

「ここは駆け出しの職人が自分を売り出す為の場所。凄いわよね、ヘファイストスファミリアって上から下までくまなく面倒見てあげるもの。その代わり実力主義な所があるから、振るいにかけられて落とされたらそれまでってことね」

 

時たま見せるドライなアリーゼをベルは下から羨望の眼差しで見つめる。

 

「どうしたの?ベル」

 

「い、いやあ…凄くかっこいいなあって」

 

アリーゼさんの翡翠(エメラルドグリーン)の瞳がキランっ、と輝く。

 

「さっすがベル、私の可愛い弟!世界一かっこかわいいだなんて分かってるわね!やっぱり私の目に狂いなんて無かったわ!流石私!人を見る目も素晴らしい!」

 

「アリーゼさん…?」

 

止まらない拡大解釈による自画自賛。ベルは口を開けてポカンとしている。

 

「よし!ベル、好きなものを選びましょ!あんまり高いのは無理だけど、5万ヴァリスくらいなら手持ちがあるから!」

 

「え、そんな、悪いですよ!僕も一応お金いくらか持ってますし」

 

「いーのいーの。1つ条件付きだけど」

 

「条件って、女装は嫌ですよ!?」

 

「違うって。それはこんy…ゴホッゴホッ。まあとりあえず選んできなさい。私も少し見て回るから、ね?」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

指定されたフロアには武具屋が円形に10店舗並んでいる。どれも全てヘファイストスファミリアの名を冠しているが、売られている品物はまだ刻印(名誉)を刻むことを許されていないものばかり。商品も棚には並べられず、床の置かれている木箱に入っている。それでも、一介の職人が精魂込めて作った作品なのでどれも武具としての質は良いものが多い。

ベルはよりどりみどりの環境で、どれが良いかも分からずにあちこちを見て回って物色していた。

 

「これ、かっこいいな」

 

「これは女の子っぽいかな…」

 

「これ凄い!完全鉄製(フルメタル)なのになんで軽いんだろう?」

 

ぴょんぴょん飛び回って商品を物色するベルは、さながら餌を求める白兎。男も可愛いと思うその仕草に強面の店主もお堅い相貌を柔らかくしている。

 

「これもなんか違う…ん?これって」

 

ベルが手に取ったのは埃を被った軽装備(ライト・アーマー)。よく見てみると小手、すね当てなど全ての部位の装備が入っている。これで値段は2万ヴァリス。

ベルはこの装備にただならぬ『なにか』を感じた。己の髪色と同じ粉雪のように淡い純白の鎧に。

 

アリーゼを呼び、強面の店主の元へ商品を出す。

 

「おじさん、これ、ください!」

 

「おお、坊ちゃん…で良いのか?あんがとよ。2万ヴァリスだ。っと、よし。確かに受け取ったぜ」

 

「ありがとうございます!」

 

木箱から持ちやすいように袋に詰め替えた鎧を持ってアリーゼの元へ急ぐ。

 

「アリーゼさん、ありがとうございます!」

 

「良いわよ。それよりベル、こっちに来て」

 

「は、はい」

 

ベルが連れてかれたのは武具が多数置いてある店。剣や(ロッド)、弓矢などのオーソドックスな武器から鎖鎌、槌、極東に由来を置くカタナなど膨大な種類の武具が比較的安価で売られている。

 

「うわあああ…!こ、ここって」

 

「ん。ここで新しい武器をプレゼントしてあげようと思ったんだけど、やっぱりベルが選んだ方が良いと思ってね。もうそろそろ支給された小刀じゃ限界でしょ?」

 

「う…ば、バレてましたか」

 

「あったりまえよ!なんたって私は正義のファミリアの団長。正義を成すためには色んなことに目を配ってなきゃいけないもの」

 

他の人の事にも目を配る

 

決して難しいことでは無いかもしれないが、現状第1級冒険者を2人擁するだけの零細派閥にくらしのゆとりというものは実はそんなに無い。そんな中でも彼女は『余裕』を失わず、当たり前のように他の人のことを思いやることが出来るのか。

 

ベルの尊敬の眼差しを受け取ったアリーゼは少し照れくさそうにして、目線を合わせるようにしゃがんで僕の頭にポンと手を乗せる。

 

「ベルも私達の家族(ファミリア)の一員よ。私を凄いなって思ってくれるのは嬉しい事だけど、私達はベルに同じことを求めてる。アストレアファミリアに入るってのはそういうこと。それを忘れないでね?」

 

「…」

 

「ベル、話聞いてる?」

 

「は、はい!頑張ります!」

 

「ん、よろしい。じゃあ、自分に合う武器を探してきてみて」

 

ベルはサササッと、薔薇のように真っ赤な顔を見られないために店内へ走る。

 

アリーゼの真剣で、凛とした顔に。どこか悲しみを携えていたその瞳に見惚れていた事を悟られないように。

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

結局さんざん悩んだ末に選んだのは短刀。そしてアリーゼさんからはカタナをプレゼントされた。

なぜカタナなのか、彼女曰く

 

「短刀だと火力が足りない時がままあるのよ。その時のためのサブウェポン。ベルの魔法も乱発出来るくらい燃費が良ければいいんだけど、リオンから聞く限りそうでも無いらしいからね〜」

 

だそうだ。さっきの件があったから、お礼の時少し意識してよそよそしくなってしまった。

そんな感じでバベルを出ると、日は傾きかけていた。朝に来たはずだが、昼も食べずにぶっ通しで武器防具を物色していた事になる。「お腹すいたわねー」と言うアリーゼさんに全力で謝り、ダッシュでじゃがまるくんを購入して二人で食べた。

 

「もう夜だから…ダンジョンには行けませんね」

 

「そんなに落ち込まないの。ダンジョンは逃げないんだから、ね?それより約束の時間に遅れちゃうから早く行きましょ。リオンも待ってる」

 

そう言われて連れてかれたのは……豊穣の女主人!?

 

「えっ、なんでですか?今日もここでご飯たべるとか」

 

「そんな訳ないでしょ。今日はこっち」

 

アリーゼさんに案内されるがままに行くと、裏口らしき所にたどり着く。ここで僕の第六感が『逃げよ』と告げてきたので逃げようと一歩後ずさる。

ぼふん。何かに当たった。恐る恐る後ろを見ると…

 

「シルさん!?」

 

「あら、ベルさんとアリーゼさん。今日はよろしくお願いしますね」

 

う、嘘だ。だってここは豊穣の『女』主人。僕は男だ。まさか、僕がやらされるわけ…

 

「はい、これがアリーゼさん、これがベルさんの服ですよ」

 

やっぱり。僕の一抹の願いは虚しく塵芥となって消え去った。

 

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

若草色のワンピースに純白のエプロン。背中まで届く長さのエクステに頭にちょこんと乗せられたヘッドドレス。

 

可愛い可愛いベルネルちゃんの冒険?がとある酒場で始まっていた。

 

「なんだいアリーゼちゃん?またそこのポンコツエルフが酒場でやらかしたか?」

 

「や、やらかしてません!ポンコツって、何言ってるんですか!」

 

「あ、あの…注文はお決まりですか?」

 

「おっ、なんだいこの子?可愛いね、もし良かったら俺とこのまま夜の街へ「お客様?潰しますよ?」ご、ごめんよアリーゼちゃん、謝るからそのお盆を振りかざさないで!」

 

初めての接客。記念すべき初のお客様はまさかのヘルメス様だった。しかも僕の事に何故か気づいてない。

 

「かわいー!」

 

「ねぇねぇどこのファミリア?どこにも入ってないならうち来なよ!」

 

「可愛いからもうひとつエール頼んじゃお!その代わりちょっと頭なでなでさせて?」

 

なんか僕の所に人がたくさん…特に女の人がやって来る。撫でさせてくれだとか、こっちに来ているだけでいいとか、ぼくだけよく分からないことになっている。しまいにはミアさんに

 

「坊主は給仕はいいから店の外にでも出て愛想振りまいてきな!」

 

と言われる始末。恥ずかしさをこらえて頑張って客引きすると、

 

「何この子かわいー!」

 

って言われてもみくちゃにされる。もしかして僕、普通の男じゃなかったりするのかな…?と自分自身に不安が出てくる。

最終的に女の人から散々もみくちゃにされて今日の一日は終わった。

 

「お、終わった…」

 

「ふふ。今日は大活躍でしたね」

 

「ほんと!私よりモテモテだなんてあんた良い度胸してるわね」

 

アリーゼさんにほっぺをフニフニされ、リオンさんからは頭をなでなでされる。何この天国。

 

「へ、へも、きょふへほはりへふよね?」

 

「ん?何言ってるんですか?あと2日、頑張らないと行けませんよ」

 

「へ」

 

僕は固まる。こんな事をあと2日も…?考えるだけで酷い悪寒がする。

 

「顔を青くしてるところ悪いけど、諦めなさい。全ては予約キャンセルが悪いの」

 

あと二日、ベルネルを、女の子を演じなくてはならない。

 

僕の視界は奈落に落ちるような速度で真っ暗になった。

 

 

 

 

 




ベルに対しての皆の認識、小話

アルフィア…最愛の息子。少し手がかかるとこもまた可愛い。実はベルを女装させる為に裁縫を覚えた。(結局嫌がられて出来なかった)
ベル評…大好きなお母さん。最近体調が良くなってきてるのでそのままずっと元気でいて欲しい

アストレア…将来有望な可愛い眷属。実は隙あらばなでなでしていたりする。
ベル評…優しく気高い女神様。もう1人のお母さん。でも、スキンシップ多めなのが少し恥ずかしい。

アリーゼ…超可愛い弟。何かと構ってあげたい。愛でたい。出来ることなら四六時中一緒にいて愛でたい。
ベル評…何かと構ってくる美人なお姉ちゃん。アストレア様の比にならないくらいスキンシップが多くていつもドキドキ

リオン…手がかかる可愛い弟分。ベルを撫でている時のへにゃりとした顔を見るのが好き。
ベル評…好みのど真ん中。憧れの人。でも、最近構ってくれなくて少ししょんぼり。
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