20話かけてまだオラリオへ来てから2週間とちょっと…
「悪いな、付き合わせてしまって」
「良いわ。あなたが来て楽させてもらってるもの。お礼よ」
太陽が空の
「いや、正直なところ彼女の境遇を知ると貴方とは相容れない気がしてだな」
「そうかしら?私は神の中でだと結構お友達も多い方だったわよ?」
「いや、まあ、それならいいんだが」
一体誰なんだろう。神友だったら話は早いんだけどなあ、と軽い気持ちで考えるアストレア。
相変わらずプラス思考のアストレアに溜息が漏れる。出会って2週間と少し。ある程度この神の事が掴めてきた。
気高く高潔。正義を重んじ、何よりも
そして、度を過ぎるお転婆だということも。
たった2週間の間で語れるお転婆エピソードは枚挙に
最も驚いたのは、何を思い立ったのかいきなりオラリオの外へ誰も連れずに飛び出したことだ。本人曰く、
「メレンでお魚が食べたくなっちゃって」
いや、それは無いだろう!?しかも買い物の途中に、だ。ここまで思い立ったらすぐ行動を地で行く神は初めてだったので面食らった。振り返ってみても、幼い頃のベルよりも落ち着きが無い。
行動力の神と言っても差し支えないレベルである。
「でだな、今から行くところの主についてなんだが…って、居ない?!」
アルフィアが目を離した隙に、どこかへ行ってしまった。探すか…そう思った直後、何故か空から彼女の声が聞こえてきた。
「アルフィア、私を受け止めてくれないかしら?」
「は、はあ?」
「行くわよ、そーれ!」
春先に咲く極東のサクラという木の枝に乗っている神、アストレア。日輪のように眩しい笑顔でそこから落ちるさまは、まるで桜吹雪が舞うように可憐なものだ。
しかし、アルフィアにとっては思いもよらない突飛な行動。何とか怪我がないように受け止めることに成功した。手には色鮮やかないくつもの風船が。
アストレアを下ろすと、まだベルより小さい子供たちがわらわらと群がってきた。
「かみさま、ありがとう!」
「木にスイスイ〜ってのぼったの、かっこよかった!」
なるほど、相変わらずお節介を焼いていたようだ。困った人がいるのは見過ごせない。素晴らしくもあり、難儀でもある性分だ。
「おねえさんも、ありがとう!」
しかし、たまにはこう感謝されるのも悪くは無いな。
若干、世話好きのアストレアの色にも染まりつつあるアルフィアだった。
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「着いたぞ、ここだ」
「えっ、ここって…」
2人が辿り着いた場所はオラリオの中心部から少し進んだところの廃教会。ツタや
「えっと…」
「言うな、私も悲しくなる。これでも以前よりは綺麗になった方なのだ」
「ええ…」
どうやらアストレアが思っていた以上のぐーたらな神のようだ。アストレアは、思っていた感じの神友との再会はできなさそうだと、早くも感じていた。
「邪魔するぞ」
がチャリと立て付けの悪い扉を開いた先に待っていたのは、地獄のような惨状だった。
「「えっ…」」
2人揃って生娘のような声を出す。だが、無理もないだろう。
そこら中に散らばった衣類。
ヒビが入りかけている窓はそのまま放置で風が吹き込んでいる。
ソファの後方からは謎の液体が。恐らく酒が打ち捨てられているのだろう。
部屋の隅には所々蜘蛛の巣が張っている。
そして机の上には、食べかけたまま腐りそうなじゃがまるくん。
極めつけは、そんな汚部屋に備えられた埃まみれのベッドでぐーすかといびきをかく女神だった。
アストレアが横を見ると、そこには般若が、死神が、
「ゴ…いや、起きろ!色々と話があるっ!」
あ、何とか踏みとどまった、などとどうでも良い事を思うアストレア。
首根っこ引っ掴まれてうんうんと唸るツインテールの少女。いや、少女の見た目なのだが、異常なまでの胸部の発育の良さが際立っている。服は…触れないでおこう。天界にいる頃から変わらない、服かどうかも怪しい謎の衣類を纏っている。
「アルフィアの言ってた神って、もしかしなくても…」
「ああ、『自称』善神、ヘスティアだ」
ああ、まさか。いや、筆舌に尽くし難い程の善神であることに間違いは無い。仲が悪い訳でも無い。
しかし、しかしだ。私は正直苦手としている。父の姉…つまりは叔母に当たる訳だが、根本から性格が違うためにこちらから忌避している節がある。
まず第一に、何よりもヘスティアはぐーたらである事。
神会にすら聞こえの良い理由をつけて毎回出席せず、私が抜け出して見に行ったら神殿に引きこもってやれポテチだやれコーラだのを食っては飲んで食っては飲んでしていた。
元来、私は活動的な方であると自負している。それが故に、彼女とは上手いこと噛み合わないのだ。
ほら、こんなに私がモヤモヤしてる間にも「お、アストライアーくんじゃないか!こっちではアストレアだっけ?これからもよろしく頼むよ」などと陽気に言ってくる。ホント、憎めないのよね…
「この
「ちょっと!お転婆って」
「それだとボクが高潔で貞淑じゃないみたいじゃないか!」
アルフィアはアストレアとヘスティアの抗議に耳を貸さず、手に持つ女神を、放り投げる。放られた先のソファから埃が舞いあがる
「さあ
鞄の中から用意してきた手袋やゴミ袋を装備する。【才禍の怪物】と呼ばれた彼女は勿論、掃除においても真価を発揮するのだ。
〜数時間後〜
「よし。部屋はこのくらいだろう」
「よしって…君はほとんど何にもしてないじゃないか」
「ヘスティア、貴方の部屋、貴方の生活区域だ。よって貴方が1番やるのは道理だろう」
「結局、君たちはどこを掃除していたんだい?」
「私たちがやってた場所はこっちよ」
ヘスティアが扉を開けると、そこには見違えるような礼拝堂が。
「ほ、ほえー…」
絶句。埃まみれ蜘蛛の巣まみれ、よく分からない液体が滲んでいた礼拝堂がまるで
「アルフィアって凄いわよね。本当に病弱なの?」
「ああ。だが、アミッド女医のお陰で病状の進行は止まっている。長生きはするものだな。完治はしないものの、これでベルを見守る時間が増える」
「相変わらず子煩悩ね」
「貴方に言われたくはない」
なんだろう…女帝とお転婆娘が子供たちに関して軽口叩きあってる。むむむむむ〜!いいなぁ!」
「心の声が丸聞こえよ、ヘスティアおば様」
「ボクをおば様って呼ぶなあ〜!」
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「お、美味しいよ!アルフィア君は料理も出るんだね!なんだか意外だな」
「意外だと?」
「いっ、いででででで!ごめんなさい、謝るからほっぺた引っ張らないで!!」
今日のメニューは野菜や肉をふんだんに使ったシチュー。久しぶりのまともな食事に泣きながら食べる…と言うよりは
「おば様。食べ方が汚いわよ」
「う、うるさいやい!2週間ぶりのじゃがまるくん以外の食事なんだ!あ、アルフィアくん、おかわり!」
「分かった。だからアストレアの言う通りもう少し綺麗にだな」
人の枠から外れた美女3人の食卓。大多数の男から見ればそれだけで至福の一時なのだが、見た感じはアルフィアお母さんにアストレアお姉さん。そしてわがまま娘のヘスティアと言ったような感じである。
「ねえ、どうしてアルフィア君はそんなに家事が得意なんだい?見るからに…こう、
「貴方まで言うか…まあ、やらなければならない状態に追い込まれただけだ」
「ベルと二人暮しするってなって、頑張ったのよね?」
「なっ…!」
アルフィアは顔を少し赤らめ、
「へえ〜そうなんだ。やっぱり女の子なんじゃないか」
「ちっ、ちが」
「アルフィア、私たちは嘘がわかるのよ。どんなごまかし言ったって無駄だわ」
「〜〜〜〜!!!!!!」
あの【静寂】が力無き女神2人にやり込められる、今までなら考えられないような
次回、お祭り