静寂を纏う白兎の狂奏曲   作:あルプ

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遅れてすみません。友人とマイクラするの楽しくってつい、書くのをサボっていました。

p.s.ゼロ距離爆破についての僕の感じたことなんですが、コメント欄の返信にもあるようにもし爆破されても通常なら死んでるレベルの傷で冒険者は全く死なないので「あれ?これ死なねえんじゃね?」と思いました。
すみません、人体構造とかそういう理化学系の事に関して無知なので破綻してると思いますが、暖かい目で、出来れば映画ドラえもんの恐竜のやつみたいな目で見てくださると嬉しいです。


祭りと狂騒・ 象神の詩

彼女…アーディ・ヴァルマは、明るくて快活な女の子だった。また、可愛い物と英雄譚が大好きで、変な所で頑固。誰にでも笑顔で優しく接することの出来る自慢の妹だった。

だが、まだまだ若いのに【正義】の答えを知っているような、どこか達観していて儚げな雰囲気を漂わせることもある。

 

それら全部をひっくるめて、私は(アーディ)を愛していた。

 

そんな彼女の歯車が狂い始めたのは7年前のあの日。

奇跡的に生きながらえたものの、右脚は細胞の壊死で切断を余儀なくされ、右腕と右目は爆破で吹き飛んでいた。

私は直ぐに、全財産を叩いてディアンケヒト・ファミリアから義手、義足、少し遅れて義眼を買い揃えた。

取り付けるための手術は成功したもののアーディに笑顔は無く、左目に残るのは虚ろのみ。

やっと口を開いたその言葉は、私の心に深く突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう…何も()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今では本当に悪かったと思ってる。あれだけ献身的に尽くしてくれた、昏睡状態の3日間を寝ずに介護してくれた姉を突き放すような発言だった。

でも、私は私で限界だった。リオンに正義とは何かって偉そうに講釈垂れといて、なんなのって話。敵を信じた結果、私は死にかけた。己の【正義】を振りかざしておいて、己の【正義】に殺されかけた。いや、私の心はもう、あの時に()()()()()

 

 

ーー全てを否定された気分だった。

 

 

 

 

 

 

 

それから、アーディは外へ出なくなった。()()()冒険者もやめて、今は貯金を崩しオラリオ近郊の人気のないところに小さな家を建ててそこに暮らしている。

だが、年に一度の怪物祭(モンスター・フィリア)だけは欠かさず来ている。アーディが幼い頃から特等席と言って座っていた、主神であるガネーシャから広場を挟んだ真向かいの場所で。

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

 

 

 

7年。長い月日を私は1人で暮らした。お姉ちゃんは3日に1度は来てくれた。リオンも、アリーゼも、月に1度くらいのペースで来てくれた。でも、直接顔を合わせたことは無い。どうしてって?そんなの決まってる。

 

 

 

 

 

()()()()

 

 

 

 

 

これだけ。

来てくれている人達がどんなに優しくても、私のことを心配してくれていても、7年前救えなかったあの子のように何か有るのでは……どうしても、そう疑ってしまう。

 

他人と隔絶された世界に1人の生活が続いていた。永遠とも思える時間。壊れた心のネジは見つからず、使われないまま凍っていった。

 

だけど、1人の少年との出会いで、停滞していた私の人生は大きく揺れ動いた。

 

今日、たまたま隣に座ったのはアストレアファミリアだった。もちろん、ローブを深く被っているから気づかれない。

アリーゼに抱かれてやってきた少年は、女性陣が席を外すと急にソワソワし始めた。

そしてぶつぶつと何か呟いた後、あろうことか私に話しかけてきた。

 

「お、おねえさん」

 

「…」

 

もちろん無視。

 

「あ…あの、」

 

「……なに」

 

英雄譚(アルゴノゥト)、好きなんですか?」

 

「え、なんで」

 

「そのストラップ、アルゴノゥトに出てくる主人公の絵とよく似ている、ので」

 

少年が指さした物は、幼い頃姉がくれた1枚の手乗りプレート。

私はそれをぎゅっと握りしめ、いつも通り突き放す言葉を告げる。

 

「関係ない、よ。う、るさい、なぁ」

 

7年まともに人と喋ってないと、上手いこと呂律も回らない。右の口も上手く開かないし、恥ずかしい。

そう言って眼前で行われているモンスターの調教に目を移す。あ、ヴァディーが調教し終わった。つぎはハシャーナかな。

 

それでも、少年はあの手この手で話しかけてきた。私は始末に負えなくなり、青筋立ててこう言ってやったんだ。

 

「なんで、私に構う、の?醜い私に構っ、たって「理由なんているんですか?」」

 

私の言葉は途中で途切れた。

やめて。理由無しに話しかけてもいいことなんて絶対ない!だってあの日、()()()()()私は手を差しのべてっ…!!

 

 

 

 

 

「強いてあげるなら、僕とすごく似てる気がして…仲良くできると思ったんです!」

 

ニィ、と少年ははにかんだ。無邪気に、少し恥ずかしそうに、白兎のような少年は笑った。

私は不思議と、いつもなら冷たくあしらうはずの少年の言葉に呼応した。思えばあの曇りの無い純粋無垢な笑顔が私の琴線に触れ、凍てついた心を少しずつ溶かしてくれたのかもしれない。

 

「そう、かな…」

 

「はいっ!僕、お姉さんと仲良くしたいです!」

 

 

 

 

 

その時、探していた()()が、やっと見つかった気がしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

 

「エイナさん、ミィシャさん!何が起きたんですか!?」

 

ベルに呼ばれた制服のギルド職員ーーエイナ・チュールとミィシャ・プロットはギョッと目を丸くする。

 

「ベルくん!?どうしてここに!?」

 

「ファミリアの皆と一緒にお祭りに来てたんです!そしたら突然アリーゼさんがいなくなっちゃって、何か恐ろしい事があるのかもって!」

 

話しながらエイナへと詰め寄るベル。あまりにも真剣な表情にエイナは少し顔を赤くして狼狽(うろた)える。

するとすぐ、その後ろから黒いローブを深く被った少女が駆けつけてくる。

 

「ベル!はや、く、戻らないと!あぶ……な、い…

 

途切れ途切れ、たどたどしい喋り方の彼女の声が掠れて小さくなる。エイナ、ミィシャのどちらも、ベルの方をもう見ていない。全く別の方向を見ている。ベルも、恐る恐るその方向を向いた。

 

白い体毛、鋭い犬歯、紅く染まった猛獣の瞳。南方に存在すると言われてるゴリラを想起させられる筋骨隆々の身体。特にせり上がった大胸筋は、見る相手に圧倒的な威圧感を与える。

 

ーー名を、シルバーバックと言う

 

シルバーバックはこちらを視認すると、猛然とアーディさんを狙って突撃してきた。その場にへたりこんだアーディさんを僕は間一髪で救い出す。

 

「アーディさん!?どうして…」

 

僕は、レベル3と聞いていた彼女が全く反応しなかった事に疑問を感じた。

そして、ここでやっと、僕は彼女が()()()冒険者を辞めていると言った理由がわかった。

 

僕の服の裾を掴む揺れる右手

ガタガタと震える足

カチカチと恐怖で鳴る歯

鳥肌で全身を覆い、産毛は逆立っている

見開かれる瞳に広がる瞳孔

 

何より、【純白】を通り越して【透明】と形容できるくらいに怯えた顔色。

 

 

 

………その全てが僕に決意をさせた。

 

シルバーバックはゆっくりとこちらへ振り返る。他の人間なんて興味もないかのように、薄気味悪い笑顔を携えて。

 

僕のステイタスはお姉ちゃん、リオンさんとの地獄の訓練で十分に伸びている。

だから、僕が…この僕がっ!

 

 

「僕がお前を倒すっ!!!!」

 

 

カタナを掲げて大きく吼えた。

少年は何故か標的となっているアーディを抱えて走り出す。ここではあまりに人目が多すぎる。それに、体格で格段に劣るベルには不利だ。ならば地の利を活かせば良い。だから、目的地はダイダロス通り。そこへ全速力で走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

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