ぼくのえいゆう
ぼくはベル・クラネル。アルフィアおかあさん、ザルドおじさん、おじいちゃんとくらしてます。まいにちクワをもって土をたがやしています。とってもつかれますが、おじいちゃんとザルドおじさんといっしょなのでたのしいです。
おじいちゃんはとてもたくさんのことをしってます。たべられる花や草、切ってもいい木です。文字もおじいちゃんからおしえてもらいました。まだまだ下手だけど、おかあさんみたいにもっときれいにかけるようになりたいです。
おじいちゃんは英雄のおはなしをしてくれます。おじいちゃんのはなす英雄はどれもかっこよく、とってもおもしろいです。
いちばんすきなのはアルゴノゥト。はじまりの英雄がいつのまにかミノタウロスをたおします。おじいちゃんはそのおはなしを【喜劇】と言いました。
「英雄が99を救うとしたら、私は英雄が取りこぼした"1"を救う英雄となろう」
「誰もが苦悩し、絶望し、悶絶し、罵詈雑言が飛び交い、皆が笑顔を忘れても、私だけは笑顔でいよう。【惨劇】にしかになり得ない世界を【喜劇】とするため、私は笑う。その為に、私は【道化】となる」
ぼくは、このおはなしの中で、よくわからないけどこのことばがいちばんすきです。ぼくのしょうらいのおよめさんは、いつも笑ってくれる、おかあさんみたいにキレイな人がいいなあ。
ぼくもしょうらい、大人になったらミノタウロスをたおせるくらいつよい、英雄になります!それまでぼくを、みまもってください。いつもありがとう!
ベルより
「頑張って書けたな。さ、早く渡しに行こう」
「うんっ!」
何枚かに重ねた紙を大切に持って、2人はもう一つの小屋へ。
「おじいちゃん、入っていい?」
「おお、ベルか。良いぞ」
ベルは少し躊躇うも、アルフィアに背中を押されて一歩前へ進む。
「どうしたんじゃ?改まって」
「こ、これ。あげる!」
紙を祖父の胸に押付け、顔を真っ赤にしてその場から走り去る。
「ベル!」
アルフィアの叱責が飛ぶも、誰に似たのか逃げ足だけは速い。ピューっと走る先は、おそらくベッドだろう。恥ずかしさで布団にうずくまる姿が容易に想像できる。
「全く…すぐ逃げる癖は治さなければいけないな。後でゲンコツだ」
「まあ、確かに逃げ癖がついてる気は…しなくもないのう。して、アルフィアよ。これはなんじゃ?」
「今日は極東ではケイロウという日らしい。そもそも暦が違うから今日かどうかは分からんが、老人を労る日らしいからな」
「なるほど。どれ、読んでみるか」
その夜、ゼウスの笑い声と悲鳴が夜空の星々に木霊した。
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料理対決
目の前には包丁、鍋などの各種調理器具に肉や野菜などの食材。視界の斜め下には羨望の眼差しを向けるベル。余計な事を考えてるのが顔に書いてあるのを隠そうとしない
どうしてこうなった…
時は昨日の夜まで遡る。
アルフィアが風邪を拗らせて寝込んでしまい、ベルがオロオロして大変だった時に俺が料理をすることになった。仮にも【暴喰】の名を冠するゆえ、料理は人並み以上にできると自負している。とは言えブランクが大きい。ここ2ヶ月はアルフィアがベルのため、良い義母親たらんとするために栄養に配慮してしっかり予定立てて作っていた。だから、その期間全く料理をしていない。酒のつまみを作ることさえままならなかった。
その夜、俺は失敗しにくい肉と野菜の炒め物など、オーソドックスな料理をした。
「おいしい!」
ベルは素直に喜んでくれた。しかし、その後の言葉がまずかった。
幼子の純新無垢な感想。それはアルフィアにとてつもない衝撃を与えた…らしい。
「ザルド…明日の夜、勝負しろ。もちろん料理で、だ」
俺は背中に氷柱をぶち込まれたような悪寒がした。下手したら、俺は明日死ぬ。そう感じた。
もちろん予防線も丁寧に敷かれている。逃げるなと、手を抜くな。これらをしたら間もなく死ぬらしい。いや、耐えれんことは無いが、アルフィアの事だ。ゼウス諸共消すんだろう。
柄にもなく怯えて床につき、朝起きた時はまだ夜明け前だった。何とか数時間を擁して覚悟を決め、
「ザルド、今一度確認しておく。この中の食材を使って、いかにベルとゼウスを美味いと言わせるか。食べてもらう順番は作り終えた順。裁定は2人にしてもらう。良いな?」
「ああ、それでいい」
「2人とも準備は出来たか?それでは…スタート!」
ゼウスの掛け声と共に俺は食材の選別へ走る。料理は食材が命、鮮度の低い物を使うともれなくアウトだ。鮮度の低い物を化けさせる方法もあるにはあるのだが、如何せん時間は無いし、不足しているものが多すぎる。この勝負の分かれ目は『速さ』と俺は見た。
絶賛親バカ発動中のアルフィア。一見普通のルールに見えるがそこが落とし穴。ベルは毎日美味しそうに残さず食べる。故に速さ。まだまだ幼いベルは食べる量が少ないから、ベルを満腹にした瞬間、確実にベルの投票先は決まる。
「よし…やるかっ?!」
目の前にある食材はロクな物がない。鮮度はまあまあ、しかし、これでは…彩りが悪すぎるっ……!!
「どうしたザルド。さっきからずっとブツブツ呟きおって。アルフィアはもう材料の下ごしらえはおわったみたいじゃぞ」
なっ…なにっ!?後ろを見ると、それは洗練されたアルフィアの料理風景が。まさに母親の調理風景。質も兼ね備えて量もある。そして何より、速い。アルフィア曰く、
「妹の甘味を勝手に食べた罰で私が料理を何ヶ月と作らされ続けたから、多少は出来る」
とのこと。
まずい。冒険者の勘が囁いている。速く作らねば、手を抜いたとされてもれなく今夜は夜空の下で眠る事になると。
深呼吸をして、思考を落ち着かせる。
……よし、覚悟は決まった
「見ておけ、ベル。これが【暴喰】の本気だ」
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調理が全て終了した。同時にアルフィアも調理を終えたようだ。
「同時か。では、2人揃って料理を出すのじゃ」
「では、まずは俺から」
俺は魚が余っていたので、魚の包み紙蒸し焼きだ。余った野菜のことを考えると、彩は無視した方が良いと判断してこれに落ち着いた。
「見た事ない料理じゃな。詳細を教えてくれんかの?」
「まずは包み紙を開いてくれ包み紙の中には白身魚から出る出汁と野菜の甘み、旨味が溶け合い絶妙な美味さを感じさせると言った一品だ。ヘルメスの受け売りだがな」
2人が包み紙を開けると、ほのかな香りのする湯気が各々の鼻をくすぐる。味の方は…
「美味しい!」
「まだまだその腕は健在じゃの」
「うむ、美味い。流石は【暴喰】と言ったところだな」
大好評。作った甲斐が有った。
さあ、次は問題のアルフィアだが…
「私の料理は、これだ」
コトリ、と置かれた平皿には小麦を練った弾力のあるパン、何やら茶色い?ドロっとした物が小皿に収まっている。
「あ、アルフィア。この得体の知れない料理は…」
「これは南方に伝わる
俺とゼウスは思わず、ゴクリと生唾を飲み込む。見栄えも何もあったものじゃない。だが、見た目とのギャップがありすぎる各種の香辛料の香ばしい香りが食欲をそそる。
「ベルはこっちだ」
「あむんむ…おかあさん、これおいしい!」
「そうか。それは良かった」
硬直する俺とゼウスをよそ目に、
「く、食うか」
「そ、そうじゃな…ザルドよ、毒味をしてくれんか」
「何言ってんだもうろくジジイ。
「50過ぎた立派なおっさんを子供と呼んでやる義理はないわい。さあ、食べた食べた」
「チッ…いただくとしよう」
恐る恐る、震える手でパンをかれーにつけ、口へ運ぶ。
瞬間、口の中を駆け巡る辛さ。それと同時に迫り来る香辛料の風味と、溶けた野菜の甘み。それらが染み込んだ極上の肉。
「う…美味い」
認めるしかなかった。いや、認めてなかった訳では無い。しかし、心のどこかで俺の方が料理は上手いという自負があった。
だが…これは、まさに
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ああ、星が綺麗だ。澄んだ空気に見渡す限り一面の星空。時折流れ星も見える。
「結局こうなるのか…」
あの後、
「どうしてこうなったのかのう…」
「十中八九貴様のせいだクソジジイ」
そうそうかと笑い飛ばす我が主神。蹴り飛ばしたいが、もう頭から下は土の中のためにやり場のないモヤモヤだけが残る。
そうそうかと笑い飛ばす我が主神。蹴り飛ばしたいが、もう頭から下は土の中のためにやり場のないモヤモヤだけが残る。が、どうでも良くなってきた。
……む、なにか忘れてる気がする。まあいいか