静寂を纏う白兎の狂奏曲   作:あルプ

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長編の時はてえてえ要素は少なくなるかもです。


狂い酒・避け・狂い咲け 1

とある陽気な昼下がりの草原。果てなく広がる芝生の海の上に2人。穏やかに草は揺れ、心地よい風の中で僕は彼女の作ったサンドイッチを夢中で頬張っている。本当に暖かい。まさにピクニック日和だ。

 

「どう?美味しい?」

 

僕のことを優しく見つめる彼女の問いに僕は無言で首を縦に振る。あれほど高いと思っていた彼女も、今では僕より少し小さい。時代の流れを感じる今日この頃。

 

「えへへ♪よかったあ」

 

彼女の太陽のような眩しい笑顔に僕は蕩けてベタァと柔らかい膝に落ちてゆく。

 

「ねえ……は、僕のこと好き?」

 

「好きじゃないよ」

 

「えっ?」

 

「だーいすき!だよ」

 

「うっ…ぼくも……その、、、大好きだよ!」

 

僕がそう言うと、彼女の顔に一輪の花が咲く。そして、徐々にその顔が僕の顔に近づいて………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベル!いつまで寝ているんだ、とっとと起きろ!」

 

「ふえっ!?」

 

ベッドから吹き飛ばされて目が覚めてしまった。あれ?え?あれは夢?そんなぁ…

 

「全く、なかなか起きてこないと思ったらどんな夢を見ていたのやら。あまりにも腑抜けた顔でつい、吹き飛ばしてしまった」

 

そう言って至近距離でじーっとみつめてくるお母さん。う、な、なに…?

 

「もう昼だ。アリーゼ達はダンジョンに行ってしまったぞ」

 

「ええ!?なら早く起こしてよぉ!」

 

「起こしたのに起きてこなかったお前が悪い」

 

ペチンとデコピンを受け、壁にめり込みそうになる。うう、朝からなんて災難だ。

 

「ご飯は下に用意してあるから、早く食べて行ってこい」

 

「うん…ありがと!」

 

タタタタッと階下へ降りていくベル。そんな息子を見て彼女は一言。

 

「これが…九魔姫(ナイン・ヘル)の言ってた反抗期、か」

 

アルフィアは腰が抜けたようにヘナヘナとベッドに崩れ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

 

「ご馳走様でした!」

 

食べ終わって食器を洗い場に置くと同時に、玄関が開く音がした。

 

「えっと、ここに確か少し置いてあった気が…」

 

「あっ、リオンさん!」

 

「あらベル。やっと起きたのですか?夜更かしはいけませんよ」

 

「夜更かしてなんてしてませんよ!って、あれ?リオンさんはなんでここに?」

 

「ちょっと忘れ物をしてしまいまして」

 

「よく忘れ物しますよね、リオンさんって」

 

「なっ…!ねぼすけに言われたくないですね」

 

少しリオンの頬に赤みが刺す。しかし、それ以上にベルの顔は真っ赤になる。

 

「ねぼすけってなんですか!今日しか寝坊してませんよ!」

 

「未だにアルフィアさんに起こして貰っている内はねぼすけです!」

 

「むう…」

 

「こらこら、あんまり言い争いしないの。リオンもムキにならない」

 

幼稚な一部始終を見ていたアストレアが割って入ってくる。リオンもしゅん…となって半泣きのベルの頭に手を置く。

 

「すいません。ちょっと熱が入ってしまいました」

 

「僕もごめんなさい…」グスッ

 

手持ちのハンカチでベルの涙を拭うリオン。それを見て和むアストレア。そして忘れ去られるアリーゼ…

 

「はっ!アリーゼが待っているのを忘れてました!早く行ってきますね!」

 

そう言ってハンカチをポケットに仕舞うと、慌ただしい音を奏でながらホームを出て行った。

 

「あ…行っちゃった」

 

「それよりベル。あなたも一緒に着いてって貰った方が良かったんじゃない?」

 

「あぁ!ま、待ってよリオンさ〜ん!」

 

ベルは先程のリオンと全く同じ形で玄関を開けてバベルへと向かう。

 

「ふふっ、ほんとに楽しそう。私もバベルに行けたらなあ」

 

「お前だと本当に行きかねんからやめろ」

 

家事を終えたアルフィアがタオルを持ってトコトコと歩いてくる。

 

「あら?その辺の分別はついてるつもりよ」

 

「分別のつくやつは他ファミリアの内部分裂を誘発したりしない」

 

「そこを突かれると痛いわね」

 

そこから長い時間に渡る主婦の井戸端会議のようなお喋りが始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

 

薄暗い部屋の中、とある男と女が机を挟み相対している。かなり長い沈黙の後、神が突然口を開いた。

 

「ねえ」

 

「あんだよ?」

 

「酒に酔うやつってどう思う?」

 

「なんでまた」

 

「いいから」

 

「ったく…悪酔いしなきゃあ別に」

 

「違う、酒そのものに酔う奴のことだよ」

 

「ああ?全く話が見えてこねえ。私もやらなきゃ行けないことがあんだよ。無駄話は後にしやがれ」

 

そう言って女は机を蹴ったあと、扉を乱暴に閉める。この女の行動を見て神は鼻で笑う。

 

「なにも、なあんにも分かってない。笑えるよ。ねえ、イシュタル?」

 

イシュタル。そう呼ばれた女神は奥の暗闇から出てくる。人間離れした妖艶な雰囲気に切れ長の瞳。グラマラスな肢体には誰もが目を奪わられるだろう。まさに美の神と言われるだけはある、所謂()()()である。

 

「ああ、分かっちゃいないさ。あいつ…ソーマの造る酒は神酒そのもの」

 

「そして、それに魅入られた目のあるやつに支援をした…ということか」

 

「そう。そいつが上手くオラリオを引っ掻き回してくれれば、フレイヤも出て来ざるを得ない」

 

「しかし、あの様子を見ると闇派閥(イヴィルス)の協力は今回無いぞ」

 

「ある程度騒げばあいつらも乗じるだろう。奴らにとってキッカケは何でもいいのさ」

 

やることがあるからね、そう言い残してヒラヒラ手を振って去るイシュタル。神はその背中を細い目をして見送る。

 

「……馬鹿だね。実に愚かしい。嘲笑が込み上げてくるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アストレアファミリアを潰す…なんて妄言を信じるほど、あいつらは馬鹿では無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言い残し、不気味な笑い声と共に神もその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

 

夕暮れ時、ダンジョン帰りで楽しげに往来を歩く3人。この頃はロキファミリアが遠征中なので、往来では怪しげな取引が相次いで行われている。しかしその辺には以前の力を持たないアストレアファミリアは関与しないことを決めているのと、ベルにこの街の汚いところをあまり見せたくないという子煩悩の母親による命令とも取れるお達しがあるから、歯がゆそうにも見逃している。そんな3人の手には出来たてのじゃがまるくんがあり、アリーぜとリオンはほどほどに、ベルはじゃがまるくんに夢中になっている。

 

 

「はあー!今日も疲れたわ!」

 

「ええ。でも中々の収穫でしたね」

 

「そうね!いい金額が結構手に入ったわ」

 

「お姉ちゃん、リオンさん、今日はどこも寄らずに帰るよね?」

 

「そのつもりだけど、どこか寄りたいところでもあるの?」

 

「え、ええと…特に無いけど」

 

「あー!分かったわ、お母さんに早く会いたいんでしょ?」

 

アリーゼのいじりたいっ!欲がもれなく爆発しそうなことを察知したベルは首をブンブンと振る。だが、アリーゼにとってそれが逆効果なのは周知の事実である。

瞳を輝かせ始めたアリーゼの言葉を遮ったのは、名も無き住民からの一報であった。

 

 

 

 

 

 

「アストレアファミリアはどこにいる!」

 

「ここよー。なに?なにかあったの?」

 

 

 

 

 

 

「ホームが謎の覆面集団に襲撃された!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の記憶は曖昧だ。はっきりと覚えているのは血の香りと感触。臓物の生臭さ、それと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無数の屍の上に立つ、邪悪な英雄だけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

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