静寂を纏う白兎の狂奏曲   作:あルプ

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まず最初にお詫びを。
ヘスティアルートのプロットが他の方の作品と酷似していたためにアンケートを打ち切りました。少し似ているどころか。内容がほとんど被っていたからです。誠に勝手ではございますが、投稿頻度、パクリなどの批判を避けることを考慮してアストレアルートで物語を進行して行きます。

アンケートに投票してくださった皆様、本当にすいませんでした



5. 足りない何かを埋めるため

迷宮都市オラリオ。僕とお義母さんは毎年この地へ訪れる。目的はただ1つ、とある人への、神への手向けの花を捧げるため。

 

最初に来た時は、取りすがって泣いた。

2度目、3度目は現実に引き戻されて、胸にぽっかり穴が空いた気分になった。

4度目、5度目は目を背けた。涙が零れないように、上を向いて帰り道を歩いた。

そして、今日が6度目。ザルドおじさんの事を思うとまだ涙が溢れてくる。恥ずかしいからお義母さんに悟られないように、必死になって我慢する。

 

……広大な墓地の奥のさらに奥に、僕と、僕達の家族がいる。僕達以外、誰からも手を合わせられることの無い家族が、静かに土の中で眠っている。

他の墓より不格好で、手入れもされてない。毎年4束の花が添えられているだけだ。鬱蒼とした雑草の中で隠れるように佇んでいる。

 

「いつ見ても、墓には見えないほどに荒れ果てているな…」

 

お義母さんの言葉に、僕は反応できない。改めて見るその荒れ様に怒りを覚え、ただ、噛み切った口の中に広がる鉄の味を感じることしか出来ない。

 

「おかあさん…」

 

「どうした、ベル」

 

「どうして…ザルドおじさんは、こんな扱いを受けなければならないの?」

 

僕の声に内包される怒り、憎悪、怨嗟が入り交じる少しの機微ですらお義母さんはしっかりと聞き分ける。

その上で、お義母さんはこう言った。

 

「当然…いや、墓があるだけまだマシだ。動機が何であれ、【悪】に堕ちるということは、()()()()()()()()

 

僕は悔しさを血と共に噛み締める。果たして、おじさんは本望だったのだろうか?何年も英雄の生まれる場所(オラリオ)へ降り立っているが、一向に英雄と言う単語を聞かない。

おじさんはこの地で戦い、その果てに何を見たのだろう?

先の戦いで間違いなく、英雄は表れはしなかった。おじさんが望んだ未来には結局、成りはしなかったのだ。

 

 

 

 

 

おじさんが悪なら、一体正義はどこにあるの…

 

 

 

 

僕の呟きは誰にも拾われず、虚空へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハックション!」

 

「アリーゼ…もっと乙女としての恥じらいをですね」

 

「細かいことはいいじゃない。それより、何か噂をされた気がするのよね」

 

「何を言っているのですか。墓参りの帰りからおかしいですよ」

 

「何言ってるの!私はいつも通りよ!ね?」

 

「はぁ…そういうことにしておきましょう」

 

 

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

僕とお義母さんは露天街に来ていた。何やらまだ行くところがあるから、ここでご飯を買うらしい。

 

「ベル、好きなものを選んでこい」

 

今更だけど、お義母さんは変装をしている。いつものドレスではなく、質素な町娘の出で立ち。それでも髪色と相反する黒色の服装は変わらない。なんでも、お義母さんがアルフィアって事がバレたら()()()()らしい。おおごとってなんだろう?

そんな事をちょっと考えながら歩いていると、おいもを揚げた香ばしい香りがする。

僕はその屋台の前に立ち止まる。

 

「ん、決まったか?」

 

「うん、これにする」

 

「これはまた久しい物だな…本当に今日、オラリオへ来てよかったと思うよ」

 

僕はよく分からずに小首を傾げる。

 

「好きなのを頼んでいい。値が張るものでもないからな」

店舗に入ると、まさかの女神様が店番をしていた。

 

「いらっしゃい!メニューはコチラだぜ。何にするんだい?」

 

「えっと…じゃあ、塩じゃがまるくんをひとつ下さい」

 

「そちらのお姉さんはどうするんだい?」

 

「…ああ、私のことか。では、小豆クリーム味を一つ」

 

「まいどっ!今週ならいつでも使えるサービス券、今ならボクのファミリアに入れる特典付きだよっ!」

 

ツインテールが特徴的な女神様のあまりの勢いに、僕は少したじろいでしまう。

 

「えと、、その…」

 

しどろもどろな僕の代わりにお義母さんが応対してくれる。

 

「すまないが、私たちはここから遠く離れた辺境に住んでいる。ここには墓参りに来ただけだから、気持ちだけ受け取ろう」

 

「いやいやいや!謝る必要は無いさ。見かけない顔だからつい、ね」

 

平気平気と言いながらも少し落ち込んだ感じの女神様。後ろから妙齢の女の人が叱咤を飛ばし、女神様はペコペコしながらじゃがまるくんを作り始める。

数十秒後にそれは出来上がり、ほいっと僕達に渡してくれる。

僕はお代を払う前にパクッと食べてしまい、ゲンコツを食らう。美味しいけど痛い。

 

「あはは…まっ、まいどっ!また来てくれよな!」

 

苦笑いの女神様が元気よく手を振って見送ってくれる。と、お義母さんが不意に振り向いて、女神様の耳元で囁く。

女神様はポカンとして、僕とお義母さんを交互に見る。

そんな女神様を放っておいてお義母さんは先をゆく僕に追いついてきた。

 

「お義母さん、女神様と何を話したの?」

 

「たわいもないことだ。さあ、先を急ぐぞ」

 

「まっ、待ってよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…いつものじゃがまるくん2つください。あれ、どうしたんですか?」

 

「おお、ヴァレンシュタイン君じゃないか……いや、あそこで歩いている2人、親子らしいんだ」

 

「お母さん、とても若いですね」

 

「本当に驚きだよ…」

 

※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※

 

 

「お義母さん、ここは…?」

 

お義母さんに連れられてやって来たのは、賑わいの声は遥か遠く、オラリオの中でも少し寂れた住宅街の一角。似たような建物が立ち並ぶ中で一際異彩を放つ建物の前に、僕達は来ていた。

 

その建物とは、教会。

 

手入れも随分されてないらしく、元々白かっただろう大理石の壁は酷く黒ずんでいて全体的に傷んでいる。

他にも、ツタが絡まり蜘蛛の巣が張っていて、よほど見れたものでは無いと言うのが正直な感想だ。

 

「ここは…私の妹、お前のお母さんが大好きだった場所だ」

 

少し寂しげなお義母さんの声。でも、どこか少し嬉しそう。

優しく、そっと花束を教会の前に置く。

 

「ふふっ。今までお前が連れて来れる状態じゃなかったからな。でも、ああ、やっと連れてこれた。メーテリア、よく似ているだろう?お前の子だ。こんなにも立派に成長してくれているよ」

 

「…」

 

「ほら、ベル。お前もお母さんに挨拶するんだ」

 

「…え、と……こ、こんにちは…?お母さん」

 

促されるままに挨拶をするも、実感が湧かない。実際、僕は母親の顔を知らないし、僕にとっての母親はアルフィア(お義母さん)だけだから。

お義母さんは仕方ないな、と言った感じの溜息を吐いて、再び()()()()に話しかける。

 

「このとおり、元気に育っているから安心してくれ。大丈夫、私が生きてる限りは必ず守り通してみせる。だから…私がそちらに行くまで、3人1神(4人)で見守っていてくれ」

 

言い終えると、そのまま天を仰ぐ。僕もつられて空を見る。途端、涙がポロポロと溢れてきた。お墓参りの時に我慢してた分も流れてきて、一向に止まる気配はない。

お義母さんの方を見ると、目を開いて少し驚いた顔をしている。その瞳には一粒の涙。

その後、ちょっと頬を緩ませて、僕の事を優しく包み込んでくれた。

 

 

なんで涙が流れたのかは分からない。でも、僕にも確かに()()()()も、()()()()もいた。2人の温もり、愛情を一瞬でも受けて育ったことを知ることが出来て、嬉しかったことは間違いない。

 

 

今はお義母さんが、何年か前まではザルドおじさんに、おじいちゃんからも沢山の愛を注いでもらった。ほとんど覚えてないけど、エレボスっていう神様も、僕の家族であると聞いた。こんなに多くの人から愛され、今の僕はここに立っている。そう思うと、僕は自然と誇らしくなって、涙を流しながらも笑顔になった。

 

 

伝えないと伝わらない。そう思った僕は、今まで伝えられなかった家族の分の気持ちを込めて、

 

 

 

 

 

おかあさん。僕を愛してくれて、僕のおかあさんでいてくれて、僕の家族になってくれて。本当にありがとう!

 

 

ストン、と、僕の中でぽっかり空いてた穴が塞がった気がした

 

 

 

 

おかあさんは綺麗な翡翠色と黄金色の瞳を揺らして、微笑んだ。

僕が見た中で、1番嬉しそうな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかあさん、僕の本当のお母さんってどんな人だった?」

 

「お前に似て、とても可愛かった。病気がちで、冒険者には全く向いてなかったがな…ああ、でも、甘味の事になると人一倍怖かった」

 

「えっ、おかあさんに怖いものがあるの?」

 

「たわけたことを言うな、私にだって怖いものはあるさ。おや、妹の甘味を…忘れもしない、じゃがまるくんの小豆クリーム味を勝手に食べてしまった時、私は死を覚悟した程だった」

 

「えっ…」

 

「ふふっ。もしかしたら、私より怖かったかもしれないな」

 

「お、おかあさん でよかった 」

 

「冗談だ。怒ると私より怖いが、すごく優しかったからな。甘々だったかもしれん」

 

「あまあま?」

 

「そう、甘々だ」

 

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