「指揮官、表出な❤︎」
「まだ執務始まったばかりなんだけど……ワシントンさん」
「エ" エ" !? アタシ、頭疲れたよ! それにお前、ロイヤルや重桜の奴らとイチャイチャしてんだからそのくらい良いだろ!」
ワシントンさんが秘書艦の時は大体こんな感じだ。だいたい仕事は片付けてくれるけど、僕と表に出たがる。イチャイチャとは失礼な。赤城さんとウェールズさんから逃げれると思わないでもらいたい。
「ほら、もうちょっとで片付くからさ。文句言える元気があるならやろうよ!」
「んにゃろ〜! いい加減手を出しやがれ!」
「僕はそんなに軽くないよ!?」
「お前はもうちょっと軽くしろ!」
「体重の事を言うなんてとんでもないわ〜ワシントンちゃん!」
「何可愛い子ぶってんだ! 服を引き剥がすぞ!」
「羅生門はやめて!?」
……まぁこんな感じのガチガチぶつかるようなコミュニケーションをとるのが定番だ。別にワシントンさんは常に喧嘩腰というか、こういう感じが普通なので多少イジったりしてもキレてはいるけど、会話として入れてくれている。彼女にとってはそのくらいフランクな方が良い、と解釈してる。
「そろそろお昼行こうか」
「おう。書類は……もう終わってんのか? ───って! 委託の子を迎えないと! アタシより忘れっぽくない!?」
あっ、時間を見るのを忘れてた。
「じゃあ迎えに行ってからにしよう」
「大丈夫かよ、お前……?」
ワシントンさんに心配されるとは。
「よし、あそこの席にしよう」
お昼の時間という事なので食堂は食器や御盆の音が鳴り響いている。同じ席に対してKAN-SENの子たちがローテションをするなどといった混み具合を表すのには充分だった。ワシントンさんが指差す先にちょうど空席があるので、料理を受け取った僕たちはそこへ座る。
「ワシントンさんは重桜のラーメンなんだね」
「なんか重桜のラーメンってクセになるんだよ……重桜の街にラーメン屋が繁盛するのも納得だわ。ほら、ロイヤルのアイツもバクバク食べてるぜ」
指差さされた方向を見ると、銀髪にゴシック調のドレスを着たKAN-SENの子がラーメンの大盛りっぽいのをズルズルすすっている。もう食べ終わったのか……。
「ってお前はアジの照り焼きか。相変わらずヘルシーだな」
「アジの皮がぺりっとなっているのが良いんだよ……何だか丁寧に骨が取り除かれてる……」
「その切り身、ハート型になってるな……アンタが調理を受け取った相手、重桜の長い黒髪の奴だぞ」
「重桜の……? ああ……大鳳さんか……」
昼間の厨房なんて忙しいから、そんなに丁寧にしなくても……。
「──────隣、良いですか? 指揮官」
「えっ? あ、どうぞ──────吾妻さん」
「ありがとうございます〜中々席が空かなくて……」
吾妻さんはお淑やかに僕の隣に座る……何か近くない? 吾妻さんの太ももが僕に密着してるんだけど……。
「全然大丈夫だよ。あ、吾妻さんもアジの照り焼きなんだ」
「はい。大鳳さんの作るアジの照り焼きは美味しいと評判なんです」
「そうなの?」
確かにすれ違うKAN-SENからアジの照り焼きについての高評価をたまに聞いていたような気がした。というものの、大鳳さんが厨房当番以外にアジの照り焼きを見たこと無いだけなんだけども。
「……チッ」
ラーメンをすする度にワシントンさんの舌打ちが聞こえてくる。汁の音かと思っていたけど、明らかにこちらを睨みつけているので確信した。
「……ワシントンさん、ラーメンが歯に詰まったの?」
「はぁ!? ラーメンが歯に詰まる訳ないだろ!? 何笑わそうとしてんだよ! ……何かお前を見てるとイライラする夢に出てくんだよ」
「わたしが……ですか?」
よく分からないけどワシントンさんと吾妻さんって折り合いが悪い。吾妻さんに至っては建造されていないのでカンレキは無いはず……。ワシントンの言う通り、夢に出てくるらしい。
「なんかお前にボコボコにされる夢を見るんだよ。戦艦だから重巡洋艦に負ける訳ないだろ」
「あの……私、超甲型巡洋艦です。奇遇ですね。私も戦艦を倒す夢をよく見るんです」
「テメェ……ぶっ飛ばされてぇのか!?」
ワシントンさんの啖呵で賑やかな食堂は静まりを得るが、一部のギャラリーの声が、
「おっ? ワシントンか?」 「またか」 「い つ も の」 「ニーミちゃん、一体どうしたんですか!?」 「へぇっ!? 私じゃないですよ!? あんな声出ませんもん!」 「指揮官様の取り合いかしら? この赤城も混ぜて欲しいですわぁ〜」
皆んな、慣れすぎじゃない……? しばらく平穏だったから少しは慌てた方が良いのでは? 赤城さんはキラキラ高揚してるし!
うん……? 頭の中で何かが……。
修羅場発生器発動!
ワシントンと
吾妻が
修羅場を起こします。
「遅いよ!?」
修羅場を起こします。じゃないよ! もう起きてるよ! もう少し早く来てくれたら何かしら対処出来たよ!?
「な、何だよアンタ!? そんな大きな声出るのかよ!?」
「し、指揮官……?」
急に立ち上がって大声を出したせいか両者間の気が逸れて、二人の目は僕の頭を心配するような目になっていた。ギャラリーの注目も僕に集まる。
「指揮官!? どうしたんですか!?」 「ボウヤ……慌てなくても大丈夫よ……?」 「お姉さんの準備はいつでもOKよ!」 「卿の怒声語録も悪くないな……ふふふ」 「ベルファストの準備はいつでもどこでもどうぞ」
「チッ……何か気が逸れた。おいアンタ、決して指揮官とイチャイチャしたり、膝枕したり、匂い嗅いだりすんじゃねえぞ!? 絶対だからな!?」
「あ、ワシントンさん!? どこへ!?」
「───ちょっと運動!」
ワシントンさんは昼食をかき込むと、ぷんすか一級フラグ建設士のようなフラグを建てては僕らと分かれてしまった。
「彼女、行っちゃいましたね……」
「そんなに終電逃したみたいな深刻な顔はしなくて良いんだよ?」
「私、今夜は帰りたくないですっ───」
「っ!?」
ジョークなやりとりだと思っていたけど、悪ノリした吾妻さんは僕の腕をギュッと抱きしめる。吾妻さんの心地良い香りとクッションのような柔らかさが僕を包む。
「指揮官……私、怖かったんですよ……?」
目をうるうるさせる吾妻さんの破壊力は戦艦をも凌いだ。その割にはワシントンさんの怒号にも一歩も引いていなかったし、煽り返していた気がするんだけど……?
「まぁ……ワシントンさんみたいな人もいるからね?」
「指揮官はあのような方と居て、お疲れにならないのですか?」
僕は元々、普通なタイプの人なので人にワシントンさんのような活気ある人に合わせるとなると、思いっきりぶつけられる楽しさもあるけど、疲れには勝てない所もある。けれども、疲れるのは仕事も同じだ。
「疲れても、また休めば良いからね」
「そうですか……無理はしないで下さいね? 指揮官の笑顔こそ私、母港の仲間が守っていくべきモノなのですから」
「僕の笑顔が……? そんな大げさな───っ!」
横からもの凄い力で吾妻さんの方に引っ張られた。吾妻さんの体のどこにそんな力が湧いているのか不思議すぎた。
「あら? 疲れていらっしゃるんじゃないですか? 私の胸、膝枕、胸のどこでお休みになられますか?」
「最初と最後同じじゃない!?」
「右と左、ですよ。ふふふ」
「あはは……今はそんなに疲れて、いないんだけどね……!」
吾妻さんの怪力で僕を彼女の胸に引っ張ってくるので抵抗しているんだけど、全然びくともしない……。
「……分かったよ。膝枕でお願い」
「ふふ、休む時は休みましょう?」
とうとう根負けして吾妻さんの膝枕で横たわった。当然、食堂はざわつき始め、真っ黒や真っ赤なオーラがメラメラと食堂内を覆い尽くした。
「指揮官、大丈夫ですよ。前衛艦隊なら私が一番耐久力がありますから」
「そこの心配だけじゃないんだよなぁ……」
ああ! 大鳳さんやエンタープライズさんが見たことない顔をしている!?
「指揮官は豪胆な事をするもんだな」
吾妻さんの声とは違うKAN-SEN、騎士をモチーフにした服装の人は……、
「ジョージさん」
「うむ、ちょっと二人に申したい事があってな」
ギャラリーはまたざわめく。【遂にキングジョージ5世が声を掛けたか】、【流石に指揮官様を独り占めしたら怒りますわよね〜】、【私も膝枕したいのに……私から奪うのか! ジョージめ!】
ざわめきの方向性は合っているのだろうか。
「申したい事?」
「あなたはロイヤルの……どうしました?」
ロイヤルの根幹に携わる事もあるジョージさんは毅然とした態度で話し、あのモナークさんですらたじろがせる雰囲気を放つが、それでも吾妻さんは動じない。
「食事が終わってから何分経ったんだ?」
「へ?」
何だその質問。遠回しに注意をしているのだろうか。
「だいたい5分は経ちましたけども」
「───そうか、ならいい。食後すぐに横になると、消化が良くないからな。ははは!」
注意じゃないんかい! それはギャラリーもズッコケるよね!
ただ、先程までの張り詰めた空気が一転して緩い雰囲気へと変わった。ひょっとしたらジョージさんはこれが狙い……?
「指揮官、これでゆっくりお休みできますねっ」
「できるのかな……?」
とは思いつつも気が抜けたか、ウトウトしてしまった。
───夢を見た。
──────何だか自分の体がクレーンで引っ張られる感覚。
─────────痛い。クレーンに掴まれると痛い。
「─────────!」
「──────、指揮官がお疲れですから膝枕をしたまでですが」
「ッ!? ふざけんなよ!」
「───っ!?」
怒声をキッカケに目が覚める。あれ? 僕の体が浮いてる。地面から遠い。顔を上げると、吾妻さんが胸ぐらを掴まれていた。
「何事!?」
「うぐ……指揮官……!」
「起きたな。アタシが目を離した隙にイチャイチャして───コイツが誑かしていたみたいだな!」
背中を吊られているのでワシントンさんの表情は見えないけど、これは相当怒ってるな……。
「指揮官がお疲れだったから、膝枕をしただけです……それに───」
「あ!? 何だ!」
「あなたが秘書艦の時は、ひどく疲れているみたいでしたから───」
「───ッ!? テメェ! 勝手な事言うんじゃねぇ!」
「だ、ダメだよ───!?」
僕が解放された刹那の直後、乾いた音が母港に響いた。
「指揮官、身内がご迷惑をおかけしました」
吾妻さんは医務室に運ばれて、ワシントンさんはノースカロライナさんに、海に投げ飛ばされた。片手で僕と吾妻さんを持ち上げたり、成人女性を投げ飛ばすってノースカロライナ級の腕力どうなってるの……?
「うん、僕は大丈夫だけど……」
「ワシントンなら、海に投げ飛ばされたくらいじゃ死にません。それに、頭を冷やすのには丁度良いでしょう」
「それ、体も冷えない?」
「大丈夫です。それがノースカロライナ級ですから」
満ち溢れた自信はどこから来るのだろうか。今11月で結構寒いんだけども……。
周りも動揺するよね。吾妻さんの売り言葉も買い言葉だけど、側から見たらワシントンさんが引っ叩いた事実は変わらないし。どう説明しようか……。
「指揮官、アイツの所に行ってやってくれないか?」
「サウスダコタさん……」
「事情はだいたい分かる。吾妻の言葉にカッとなって手を出したんだろう? アイツはすぐ血が昇りやすいからな。ただ、アイツの事で悩み苦しむ指揮官を見るのは僕は悲しいし、100%ワシントンが悪いとは僕は思っていない───」
「───だから、指揮官も一発殴ってやってくれないか?」
「サウスダコタさん、少し私怨混ざってない?」
「そんなことは……ない。アイツが指揮官とご飯を食べた事なんて微塵も恨んでいない」
ぷいっと顔を背けてしまう。まぁ、内容はともあれ。ワシントンさんの所に行こう。
「うひぃ……寒い……こんな時期に海に投げ込むんじゃねえよ! あっ───」
「風邪ひくから僕のジャケットを───っ」
岸から上がったワシントンさんが震えていたのでジャケットを渡そうとすると、手で振り払われてしまった。
「いい。アタシに無理に合わせていたんだろ。帰れよ」
吾妻さんの言葉を信じていたのか。ワシントンさんなら聞かないかと思っていたけど。
「な訳ないでしょ」
「ある! アタシと話しててあんなに大声聞いた事ないぞ! 我慢していたんだろ!」
極寒の海にダイブされてそんな大声出せるって相当元気だよ?
「近くにいるのに大声出したら変な人すぎるでしょ!?」
「お前は吾妻みたいな女がお似合いだよ! へっ!」
「意味分かんないよ!?」
「どうよ!? アイツの膝枕の感触は! 荒々しい秘書艦から解放されてせいせいだろ!」
「そんな事思ってないから! ほら、風邪引くからとりあえずジャケットを──────あっ」
「うるさい──────ふぐぅっ!?」
海に全身投げ込まれて頭が冷えてるかと思ったら、全然冷えてないよ。振り払われたジャケットを拾おうとしたら、何もない所につまづいてしまい──────ワシントンさんのボディに頭突きしてしまった。
「あかん……本当に気絶してる……」
予期せぬ出来事にエセ関西弁が出てしまうくらい唖然としてしまった。
「とりあえず運ぼう───っん、しょ!」
自分におんぶさせるようにワシントンさんをおぶった。気絶してる人って意外と重いんだなぁ。
「あら、指揮官。と、ワシントン? 二人ともびしょ濡れじゃない!? とりあえずタオルタオル!」
ヴェスタルさんのいる医務室になんとか運ぶ事ができたけど、びしょ濡れのワシントンさんをおぶって汗をかいたため、僕の服もびしょ濡れになった。
「ワシントンは私が拭くから、指揮官も風邪引かないうちに拭いて下さい!」
「ありがとう、助かるよ!」
「──────ふぅ……こっちはもう大丈夫ですよ〜。指揮官、何があったんですか?」
「ワシントンさんが海に投げ飛ばされて、僕がジャケットで暖をとらせようとしたら、転んで頭突きしちゃって……」
「踏んだり蹴ったりじゃないですか……まぁ、あんなに丈夫なワシントンが気絶なんてねぇ」
「え?」
「あの子、よく海に投げ飛ばされるけど、その後すぐにサウスダコタと演習したりしてピンピンしてるのに」
「よく投げられてるのか……」
「多分、指揮官に会えて嬉しかったんじゃないかしら。今朝、医務室から聞こえたのよ──────『今日は指揮官の秘書艦! やった!』ってね。それで気が抜けちゃったのね」
そこに吾妻さんが乱入して、自分の大事な時間が奪われてしまった、と。ワシントンさんの気持ちは分からなくも無い気はするけど、手を出して良い訳じゃないしなぁ……。
「───そろそろ行こうかしら。大した損傷では無いけど、やられた演技をしておかないと指揮官まで巻き込みそうでしたし……!? 指揮官!?」
別のベッド付近のカーテンが開かれると、先程、被害(?)を食らった吾妻さんがこちらを見るなり驚いた。何か言っていたみたいだけどよく聞こえなかった。
「吾妻さん大丈夫?」
「吾妻、もう大丈夫なの?」
「え、ええ。指揮官こそ無事でしたか?」
「僕は無事なんだけど、ワシントンさんが……」
「えっ? 何があったんですか?」
「僕が転んで頭突きして、気絶しちゃって……」
「指揮官はグローウォームちゃんですか……」
「う、う〜ん……ニーミは先生じゃありませーん……っは! あれ、ここどこだ?」
「ワシントンさん!」
うなされていたワシントンさんが目を覚ました。何だその寝言……。
「うおっ!? 指揮官の顔が目の前に! アタシ、どんな顔したらいいか分からないよ!?」
「普通で良いよ!?」
そのセリフ、指輪渡した時のセリフじゃんか……。
「うーん……記憶がどこから──────っ吾妻」
「こんにちは。ワシントンさん───」
「「話があ(ります)る」」
二人の顔は見たことがない程、真っ黒な表情だった。
黙々と歩く二人について行くと、周りは広い草むらのある広場に来た。遊具のない公園と言っても差し支えない。吾妻さんとワシントンさんは2〜3メートル離れて向かい合っている。
「指揮官に膝枕したのはお前からで良いんだよな?」
ワシントンさんは先ほどとは逆に、確認するように冷静に問う。
「合ってますよ。ですが──────」
「───っぐ!」
「だからと言って譲る事はしません」
吾妻さんは2、3歩歩くとワシントンさんに平手打ちをかます。
「ってぇ……お前、ホントに重巡かよッ!」
「っ……だから超甲巡ですって!」
拳銃のような乾いた音が言葉の後に交互に響く。
「アタシと指揮官に割り込みやがって!」
「隣に座ったのは運ですっ!」
「ぐっ! マジで硬えな……普通の重巡じゃ沈んでるぞ!」
段々とパーからグーに変わり殴り合っている。あれだけ緑色だった草むらは二人の周りを赤くさせた。
「指揮官に手を出して良いのはこのアタシだけだ! このデカ尻!」
「ガサツなあなたには指揮官を癒す事なんてできません!」
「お前と同じ土俵で戦うつもりは無ぇ! だけど───」
「指揮官と向き合うなら、正面から来いってんだ───バーカ!」
「……負け、ちゃった、わ……──────」
ワシントンさんのグーパンがちょくちょくクリティカルヒットしていて、とうとう吾妻さんは倒れてしまった。こうなる前に止めるべきだったのは百も承知なんだけど、割り込もうとするたびに二人にもの凄い力で弾き飛ばされてしまっていた。
「……おい」
満身創痍なワシントンさんに、指でちょいちょい、っと呼ばれた。
「どうしたの──────っぐふぅ!?」
「アタシに頭突きとか良い度胸してんじゃねえかよ……? お返しだ」
「僕はグーでは殴ってない……」
怪我だらけなのに力あるクソ痛い腹パンをされてうずくまった。
「ソイツ、医務室まで連れ帰るぞ。アンタも手伝え」
「なら、今殴らなくても……」
「うるさい!」
「またワシントン……? 吾妻も!? 襲撃かしら!?」
「いや……単なる衝突事故だよ」
「大事よ!? 早く止血しないと!」
本日2回目のヴェスタルさんのお世話になった。
「もう、無茶な事はやめて下さいね? 指揮官も止めてあげて、ね?」
「あぁ、うん……」
腑に落ちない返事をしてしまったけど、その通りなので無理矢理飲み込んだ。
「でもワシントンと吾妻が衝突……? 見た目は全然ぶつかりそうに無いのに……」
「僕も膝枕ひとつでこんな事になるとは思っていなかったよ」
「しきかぁん? お仕事中に何してるんですか、もう! エンタープライズちゃんが見たら怒りますよ!」
「膝枕しないと逃げれなかったんだよ……」
「よくわからない事を……」
「二人の様子を見てくるよ。助かったよ、ヴェスタルさん!」
「──────吾妻さん……はお休み中か。ワシントンさんのベッドはここか。ワシントンさーん。大丈夫──────っ!?」
「秘書艦が休養してんだからさっさと来いよ! 大声出したら……分かってるよな?」
ワシントンさんが寝てると思って近づいたら、腕を引っ張られてベッドに引きずり込まれた。
「全然元気じゃないか!? まぁ、午後の仕事は代理に──────っむ!?」
「あと5分休ませろ。そしたら秘書艦の仕事に戻る。それと──────
アタシの前で、二度と他の女に膝枕とかイチャイチャすんなよ?
そしたら今以上のコト、するからな?」
ワシントンさんは僕を突き飛ばすと、布団の中に隠れてしまった。僕はその様子をただ、棒立ちで見ていた。
自分の唇に触れた感触の余韻に浸りながら。
修羅場って難しいですね……。
吾妻とワシントンをどう争わせるかで一週間以上悩んでました。