AKB49 〜浦川みのりRe:Start〜   作:YAYOI@小説書き始めました

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第3話 ファンレター

秋元先生がホワイトボードを前に出し、今回の目的を話し始める。

 

「浦山、お前はまた“浦川みのり”に戻りたいか?」

 

「秋元先生、何を突然言ってるんスか!?」

 

突然の質問に戸惑いつつも、こう返す。

 

「そりゃ、当然”浦川みのり“に戻れるなら戻りたいっスよ...

あのキラキラして毎日が忙しいながらも充実して楽しい毎日、ライブに出た時の高揚感、あの想いは一生忘れないですし、何年間もあの場所に立っていたんですから、戻りたいなんて当然っス。

でも、俺は”浦川みのり“と言うAKB48のメンバーではなくただに吉永寛子ファンの”浦山実“っス。

しかも、卒業公演に来てくれたファン達にその事実を伝えたのに、その事実は1年立った今でも隠されたままっス。

それなのに、俺がまた”浦川みのり“になるとなれば、隠し通してきてくれたファン達に申し訳が立たないっスよ...」

 

俺は当然、あの輝かしい舞台に戻りたいと言う考えではあるが、俺は一度卒業をしている上に、卒業公演に来てくれたファンに自分の正体を公表して、その正体をファン達はずっと隠し続けているのだ。

それを自分自ら破るようなものであるため、申し訳が立たなくなってしまう。

 

その後、話を聞いていた吉永が口を開いた。

 

「そうですよ!浦山くんは私の夢を叶えてくれるためにずっといてくれたんです!

私がこうしてここに立てているのも”浦川みのり“ちゃんのおかげです!

だから私は、”浦山実“くんを無理にこの世界に連れ戻すなんて、先生でも許せません!」

 

吉永は普段はあまり怒らない性格なのだが、少し怒り口調で秋元先生に話をしていた。

”浦川みのり“のおかげでこの場所に立っている。

だから”浦山実”に無理はさせられない、と。

明らかに、俺が“みのり“だと言うことを承知した上で話をしてくれているのだ。

おそらくこの事実を一番受け止められないのは吉永だろう。

なにせ、自分はライバル意識をしていた相手が、女装していた男子で、しかも学校の友達なんだから。

 

「そうですよ先生!私もそりゃ、みのりんが男だったって事を初めて知った時はめちゃめちゃびっくりしましたよ。

でも、ただの潜入っていう理由でここまでみんなの事を考えてくれてたり、AKBの事をここまで考えてくれてたりはできないはずです!

だから、どれだけ戻ってきて欲しいと思っていたとしても、それはあまりにもみのりんの意見を尊重していないと思います!」

 

普段は温厚なたかみな先輩が秋元先生に少し剣幕の形相を呈している。

たかみな先輩が怒っているのも珍しいのに、プロデューサーである秋元先生に向かってだから尚のこと珍しい。

それだけ俺のことを気遣ってくれているのか。

 

それとも俺の顔を見て目線を逸らしたということは、そういうことか...???

 

いやいや、何を考えているんだ俺は。相手はAKB48トップアイドルだぞ。曲がりなりにもそんな感情は抱いていないはず...

そう信じたいが。

 

「そうですよ秋元先生!莉空は“浦川みのり”に憧れてAKBを目指したんです!!!

そりゃ、やっぱりみのりんが“実くん”って気づいた時は、まさかとも思いましたけど、それでも私の憧れは”浦川みのり“であり、その正体が”浦川実“であっても、私の尊敬するアイドルは浦川みのりであり、実くんでもありますから!

莉空は実くんの意見を尊重します!!!」

 

普段ふざけた事だったり、男だという事を揶揄ってきてばかりだった有栖だったが、真面目な顔で少し怒り口調で秋元先生に自分の考えを発していた。

普段ふざけていても俺の事をよく見ていて、それでもって俺の事を理解してくれてるのは、一番長く共同生活をした有栖なのではないか、と再確認することとなった。

 

「ほら、先生!たかみな先輩も、有栖も吉永も、みんなこう言ってます!

もう一度考えて直してはくれないっスか!?!?」

 

俺は、3人がこうやって、俺の事を考えて発言してくれた事を引き合いに出し、考え直してくれないか、と提案をした。

 

「なるほど、なるほどな...わかった。」

 

だが、秋元先生の懐から机に並べられた物を見て言葉を失った。

 

「そんな君達にこれを見てほしい。」

 

その言葉と同時に、ポケットから手紙のような物を取り出し、机に広げた。

 

「これは...ファンレターっスかね...?」

 

「そうだ、ファンレターだ」

 

「でも何故、今このタイミングでファンレターを?」

 

「それはそのファンレターを読んでみればわかるさ。」

 

「は、はぁ...」

 

言われるがままファンレターを手に取る。

そのファンレターを手に取った時、俺は驚きを隠せなかった。

 

「えーと...は?浦川みのりちゃんへ?どういう事っスかこれ!?!?」

 

そのファンレターには、”浦川みのり“と文字が書かれていた。

 

「そのままの意味さ。今僕が出した沢山のファンレターは全て”浦川みのり“当てのものだ」

 

「どういうことっスか!?”浦川みのり“は1年前にAKB48を卒業したんスよ!?

それなのに、なんでファンレターがあるんスか!?」

 

その時、一つの可能性が浮かんだ。

 

「あ、このファンレターって、ひょっとしたら昔のやつですか!?そうっスよね!?昔のやつを今見せてるんスよね!?」

 

説得するためだけを理由に、昔のファンレターを持ってきて説得をしているのではないかと。そう疑った。

だが、秋元先生から発された言葉は予想とは違うものだった。

 

「残念ながらそうではない。そのファンレターの中身を読んでみればわかるさ。」

 

ファンレターの中身を読めばわかる、と言われたので、手に取った1枚のファンレターの封を切り、ファンレターを読み上げる。

 

 

 

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AKB48 みのりんへ

 

僕は、AKBっていう存在がめちゃめちゃ嫌いだったんだけど、みのりちゃんが無謀なチャレンジでも果敢に挑戦していくその姿に心を打たれて、みのりんを応援していました。

 

卒業が決まった時には、悲しくて1日中、家で泣いてました。

当然、僕は浦川みのり卒業公演にも足を運びました。

 

でも、そこで”浦川みのり“は架空の人物だという事を知りました。

それと同時に僕は、”浦山実“と言う男性に恋をしていた事を知り、ショックを受けてしまいました。

でも、それは皆一緒です。あの場にいたファン達は皆、ショックを受けたと思います。

でも、そんな時に、舞台の前の方に出てきた少し年老いたファンの方の発言により、我に帰ることが出来ました。

当然、僕を含め他のファンも皆、この事実をネットなどで広めて、拡散しようとしていたと思います。

でも、その人の「少なくとも僕は幸せしかもらっていない!」と言う言葉に心を打たれ、僕を含めファンは皆、拡散する事をやめました。

 

あれから1年が経ち、みのりんは“伝説の神推しアイドル”と呼ばれています。

でも、その正体を知っているのは卒業公演に足を運んだごく一部のファンのみです。

 

きっとみのりん、いや、“実くん”も、僕らやファンのみんなに申し訳ない気持ちがあるでしょう。

 

でも、僕らはこの事実を公表せず隠し通している事を決して後悔しません。

 

だって、浦川みのりの無邪気な笑顔、無謀でもチャレンジするその心意気、その全てに心を動かされた人間が、少なからずいるのだから。

そう、僕のようなファン達が。

 

そんな僕は、決して無理なお願いだとわかっているのですが、どうか“浦川みのり”をまたAKB48のメンバーとしてデビューさせてほしいのです。

 

当然、無謀な事だと思います。

でも、無謀な事でも頑張れば叶うという事を教えてくれたのは他でもない“みのりん”だから...。

 

どうか秋元先生、お考えください。

それと”浦山実“くん、ぜひ、お願いします。

 

僕らの無謀な希望を叶えてください。

 

浦川みのりちゃんの一ファンより

 

 

 

 

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