AKB49 〜浦川みのりRe:Start〜   作:YAYOI@小説書き始めました

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第6話 浦山実の決断

時刻は午前10時。

休みの日の俺は、ゆっくりと昼まで寝るつもりだった。

 

だが、インターホンの音で目を覚まし、眠たい目を擦りながら玄関先へ出ると、そこにいたのはAKB48のトップを走る「高橋みなみ」、「吉永寛子」、「有栖莉空」の3人だった。

 

突然の訪問に驚愕した俺だったが、ここで追い返すのも違うし、何かトラブルが起きても困るので、自宅へと招き入れた。

 

そして、ごちゃごちゃしたり、たわいもない話で盛り上がったりしたが、ついに俺は本題に入った。

そして、3人のうちの一人である、浦山実と同級生だった「吉永寛子」が口を開いた。

 

「浦山くんは、昨日の話についてどう思ってるのかなって...、ちょっと余計なお世話だったのかなって思ったんだけど、やっぱり浦山くんの家に行って、しっかり話を聞きたくて...有栖ちゃんに「浦山くんの家に行きたい」って言ったのも私なんだ。」

 

どうやら吉永は、俺の事を気にかけてくれた上で、こんな朝早くから家に来たと言うのだ。

 

「そうか...吉永が、俺の家に来て話をしたいって言ったんだな?」

 

「うん...迷惑だったかな?」

 

そう言うと、吉永は戸惑いの表情をこちらに向けてくる。

やめてくれ!!!そんな顔を一個人に見せるな!!!俺はもう「浦川みのり」じゃなくて「浦山実」なんだぞ!!!

 

「いいや、全然迷惑じゃない。寧ろありがとうの気持ちでいっぱいだよ。だって、俺の為に悩んだり、大丈夫かな?って気にしたりしてくれたんだろ?それは俺にとってめちゃめちゃ嬉しいし、俺の事をまだ気にかけてくれているって言う事実が嬉しい。

俺が“浦川みのり”とわかった上で、AKBメンバー含めみんなが気にかけてくれていることが...。

あれ...?何でだろう、目から汗が...。ごめんな、ちょっと落ち着かせて...。」

 

俺の正体が“浦川みのり”と知った上で、ここまでメンバー皆が気にかけくれていたり、ここまで熱心に語りかけてくれていることに心を打たれた俺は、話している最中に自然と涙が流れていた。

 

「ねぇ、浦山くん、本当に、AKB48のメンバーとして、“浦川みのり”として再デビューしなくてもいいの?それは勿論、“浦川みのり”卒業公演に訪れてくれた沢山のファン達を裏切ってしまうことになってしまうかもしれないけど、本当はどうなの?浦山君の意見を聞かせて欲しいな」

 

吉永が真剣な眼差しをこちらに向けながら、俺に問いかけてくる。

 

「当たり前だろ?俺は“浦山実”であって“浦川みのり”ではないし、“浦川みのり”と言うアイドルは吉永、お前がセンターに立ってから役割を失っているんだ。

”浦川みのり“は、吉永にセンターに立って欲しいと言う願いから生まれた幻想みたいなもんだと思ってくれたらいい。

今更「浦川みのりは男で、浦川みのり再デビュー、そして浦山実として男性アイドルとしてもデビュー」とかなったら、俺を応援していたファンもどう思うかわからない。

あの手紙も、卒業公演に訪れてくれた一部のファン達の願いかもしれないし、もう戻ってくるな!と思っているファン達もいるかもしれないし、戻りたくてもリスクが高いってもんだ。

なんだかんだで今の生活も嫌いじゃないぜ。

仕事中は有栖と秋元先生も来てくれるわけだし、休憩中にラジオを聞いたりできる。

それで吉永の姿を見るたびに、「ああ、もう浦川みのりは必要ないんだな...」って思う。

要件はそれだったんだろ?

今話したように、俺は戻るつもりはないから、早めに帰ってくれ。

じゃないと、AKBオーラが消えるぞ?」

 

ちょっと吉永にもきつい事を言ったこともしれないけど、自分の意見だ。

そのまま俺は皆に帰ること促し、布団に戻ろうとした。

 

 

 

パシィッ!!!!!!

 

 

頬に伝う痛み。

そうか、俺は今吉永に頬を引っ叩かれたんだな...。

 

 

 

「そんな事言わないでよ、浦山くん!!!!」

 

吉永が俺の目をしっかり見て、剣幕の形相をしていた。

 

「私は、みのりちゃんの事をすごく尊敬してたの!いつもいつも、無理難題をやってのけたり、自分から率先していろんなことに挑戦していって、でも、苦しい表情なんか一つも見せなくて...

私が、AKB48に相応しいアイドルになれたのは、みのりちゃんのおかげなんだよ?

みのりちゃんの背中はすごく大きくて、私はその背中を追いかけていたの。

今でも、勿論苦しい事もあるよ?しんどい仕事だってあるし、辛くなったりもする。

でも、その時に思い出すのはみのりちゃんなの。

だから、みのりちゃんが必要ないんじゃないの。

みのりちゃんは私の心の中にいつもいる。

それが、みのりちゃんが“浦山くん”とわかったとしてもそれは変わらない。

だって、みのりちゃんはみのりちゃんだもん!

浦山くんがみのりちゃんだったって事は、今までみのりちゃんが卒業してから、“浦山くん”がずっと遠くから見てくれていたって言うのが嬉しいの。

だから、私はみのりちゃんが大好きなの。

勿論、無理に戻ってきて欲しいとは言わないけど、できたら私は、またみのりちゃんと一緒にいたいな。」

 

長い長い吉永の言葉、それには遠回しの俺への告白にも聞こえるし、浦川みのりへの告白にも見えるし、色々な取り方が取れるような言葉だった。

 

「そんな風に”浦川みのり“の事を思っていたのか...本当にありがとう、吉永。

そう思ってくれたなら、俺がみのりであった意味もあったな。

でも、やっぱり俺はAKB48にいてはいけない存在なんだ。

男はAKB48とかおかしい話だろ??

そう言う事だから俺は、浦川みのりにはなれないし、これからは一吉永ファンの浦山実として生きていくさ。」

 

吉永に厳しい言葉を突きつけてしまったかもしれない。

でも、これは事実であり、俺はあの時吉永を合格させて、俺は不合格で落ち、後は吉永を応援する、そんなシナリオを描いていた。

だが、ましてや俺まで受かってしまうだなんて予想だにしていなかった。

だから、これでいいんだ。

そう思って、今度こそ布団へ潜ろうとした。

 

「浦山くん...自分に素直になりなよ...?」

 

「よ、吉永、その言葉は...」

 

その言葉は、卒業公演の日、宝春に“浦川みのりの正体がばらされたくなければ、卒業公演は欠席しろ”と言う脅しの電話を受け、

俺が手紙を置き一人劇場を抜け出し、卒業公演を欠席するつもりでいた。そんな時、吉永が俺を連れ戻すべく、雪の中、俺の元へとやってきた。

その時にかけられた言葉が“自分に素直になりなよ”と言う言葉だった。

 

その言葉を聞き吉永の方へと振り返る。

 

「よ、吉永、それ......」

 

吉永の目には、涙が今にも溢れ出しそうなほど、溜まっていた。

 

「本当に...戻りたくはないの??...」

 

もう一度、吉永が問いかける。

 

「.........本当は、戻りたいよ...。でも、みんなに迷惑かけるかもしれないし、ファン達にも迷惑をかけるから...この気持ちは押し殺して、普通に生活を送らなきゃ...。」

 

俺だって本当は戻りたい。

でも、それを許さない奴がごまんといる。

この感情は押し殺さなければいけないものだ。

 

「浦山くん...自分の心には素直になりなよって、私、言ったよね?

本当の事を聞きたいな...。」

 

涙で目を腫らした吉永がそう問いかける。

 

「うっ...お、俺だって戻りたいよ!!!!ステージに立ちたいよ!!!!でも...みんなに迷惑かけないかな....????」

 

俺の口からは、ついに耐えきれず、本音が飛び出した。

 

「みのりん、そんなわけないじゃん!私たち先輩も、みのりんに救われた事が沢山ある!勇気ももらったし、ライバルとしても!だから、みのりんがまたメンバーに戻ったとしても、誰も文句は言わない!それはAKB48総監督の高橋みなみが保証する!!!」

 

「そうですよ、実くん!有栖は、みのりちゃんに憧れてこの世界に入ったんですよ!そりゃ卒業した時はすごい悲しかったですけど...でも、みんなきっと、みのりちゃんに戻ってきて欲しい!って、思ってるはずです!」

 

「有栖ちゃんとたかみな先輩と同じように、私も浦山くんが“浦川みのり”にまたなったとしても、私の感情は変わらないし、私の憧れのみのりちゃんにまた会えることがすごく嬉しいの。みんな、みのりちゃんの復活を待ってる!」

 

たかみな先輩、有栖、吉永も3人からの心からの熱い言葉を受け、俺の涙腺は崩壊した。

気づけば、涙がポロポロと零れ落ちていた。

 

「本当に、いいのかな...?」

 

「いいんですよ、実くん」

 

「俺みたいな、AKBにいちゃいけない男でも、本当に戻っていいのかな..?」

 

「当たり前じゃん!」

 

「みんな、怒らないかな...?」

 

「みんな絶対怒らないよ。むしろ両手をあげて喜んでくれると、私は思うな」

 

「じゃあ...わかった...。」

 

零れ落ち、目に溜まった涙を服で拭い、しっかりと吉永の顔を見る。

 

「今から、秋本先生の所に行こう!俺はまた今日から”AKB48、浦川みのり“としての活動を再開する!!!」

 

こうして俺は、またAKB48”浦川みのり“としての生活を送り始めるのであった。

 

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