【未完】遊戯王GXタッグフォース~2度目の人生は赤帽子の幼馴染~   作:嘘つき熊さん

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前回のあらすじ:万丈目の旅立ち

今回のデュエルの対戦カードは早乙女レイとアカデミア教師ですが、デュエルは短めです。

それ以外の本文はかなり長めです。

今話はアニメGX第13~14話のオリ主視点です。


第百三話 ゴールデンウィーク

GW初日の朝、俺は本土へ向かう為のフェリーに乗り込む前に、船着場でコナミと話していた。

 

「じゃあ俺は本土の孤児院に帰省するけど、お前はやっぱりこっちに残るんだな?」

 

「あぁ!休み中ずっとデュエルしまくれるなんて残るっきゃないだろ!?」

 

「あぁ、うん。お前はそういう奴だよな。知ってた」

 

「お土産はドローパンがいいぞ!」

 

「数日帰省するだけなのに、同じ場所に住んでいた同い年のお前に土産なんて買うわけないだろ。購買で買え」

 

「(´・ω・`)そんな~」

 

落ち込むコナミを放置してフェリーに乗り込み、30分も経つとフェリーは船着場から離れて本土へと向かい動き出す。

 

~~~

 

本土に到着するまでかなりの時間がかかるので、時間潰しに船内を歩きながら見回ってみることにした。

 

デッキには談笑する天上院兄妹と枕田ジュンコ&浜口ももえたち4人が、帰省したら何をしよう?と言う話題で盛り上がっている。

 

天上院一家にとっては約2年ぶりの長男の帰還である。今夜はご馳走だな。

 

 

そんな彼らの近くには、何やら小難しいデュエル理論を話し合っている丸藤亮、藤原優介、三沢大地の姿が見えた。

 

三沢、いつも大体十代たちと一緒に居るのに、いつのまにあの2人と仲良くなったんだろう…。

 

~~~

 

船内の休憩室にはピンク頭のツァンと黒髪オカッパの紬紫が向かい合って座っており、ずっと話をしているようだ。ツァンはあれ以来、紬紫と仲良くなったらしく、ずっと2人で一緒に居るようになったのだ。

 

「紫も帰省するのね」

 

「はい。ツァンさまも帰省なさるのですね」

 

「もう。だからさま付けは止めて欲しいんだけど…と、友達でしょ」

 

「はい。ではツァンちゃんと呼びますね」

 

「うん!」

 

ツァンは(恐らく)初めての同性の友達との会話を楽しんでいるようだった。紬の方も自然体に見える。2人とも和食とか好きそうだし、案外相性のいい2人なのだろう。

 

少々寂しい気もするが、同性の友人がようやくできたことについて友人として祝うべきだろう。ボッチ卒業、おめでとう!

 

~~~

 

ツァンたちにバレない様に休憩室から離れて船頭に向かって通路を歩いていると、もはやラーイエローでお馴染みとなりつつある坂倉、ドルオが話しかけてきた。

 

「よう白河!お前も帰省するんだな!」

 

「フン。本当に帰省する家があったとは…お前も人の子だったんだな」

 

なんとも失礼な奴だ。

 

「お前ら、俺を何だと思っているんだ」

 

「ピンクの悪魔ことブルー女子のツァン・ディレの手下?」

 

「お色気女王ことブルー女子の藤原雪乃のおもちゃ?」

 

「よし!お前らとは少しOHANASHIする必要があるようだな!」

 

この後、そこそこデュエルをした。

 

~~~

 

彼ら2人をデュエルでぶっ飛ばしてから船頭に到着すると、ラーイエローの中村と三田川が話し合っている姿を目撃した。

 

珍しい。中村が自分から男に話しかけるなんて…この船が沈む前触れだろうか…。

 

「三田川!お前、弱点の分析とかが得意なんだろ!男のお前のことなんて本気でどうでもいいが、可愛い女の子をナンパするときの弱点とかを知っているなら教えろよな!」

 

「君はそう言う短気で短慮なところが弱点と言うか短所なのさぁ。だからお金持ちのお坊ちゃんのくせに女の子にモテない童貞なんだよぅ?ウシシ!」

 

「ど、どどど童貞ちゃうわ!」

 

なんだ。いつもの中村と三田川じゃん。気にする必要は無さそうだな。

 

~~~

 

ふらふらとその辺りを歩いて船尾へと向かう途中にダークロウの仮面を付けた少女とすれ違う。

 

「桜ちゃん、麗華ちゃん。お待たせしてしまってごめんなさい!ちょっと道に迷ってしまって…」

 

「いいよいいよ~いつものことだからね~」

 

「それよりも宮田さん。学園の外ではその仮面を外してくださいね?学園の外でそんな仮面を一緒に付けている人と歩くのは恥ずかしいです」

 

「そんな!こんなに格好いいんですよ!」

 

「私も嫌かな~」

 

「桜ちゃんまで!?」

 

ダークロウの仮面を付けた茶髪ボブカットの宮田ゆまが、友人の赤紫アホ毛の樋口桜や黒髪の眼鏡少女である原麗華と話をしている。

 

ダークロウの仮面を付けていること以外は普通の宮田ゆまのようだ。やはり普段からダークロウの仮面をつけていることは友人たちにはあまり良くは思われていないらしい。

 

~~~

 

船の通路を歩いていると、手すりに身を預けて海を見ながら話している青髪ウェーブの少女と紫髪ツインテールの2人、海野幸子と藤原雪乃を見かけた。

 

「雪乃さんはこの長期休暇はどちらに行かれますの?」

 

「私?私は両親の仕事の手伝いでイタリアに行くつもりよ」

 

「あら?奇遇ですわね。私も両親が今滞在しているヴェネツィアに顔を出しに行く予定ですのよ?」

 

「そうなの?確かにヴェネツィアには海野財団の本拠地があるものね」

 

どうやら彼女たちはGWは海外で過ごすらしい。今の俺にはあまり縁のない話だな。

 

ちなみに幸子とは『ゆきこ』と読む。以前、『さちこ』と呼んだ何処かの赤帽子と女好きのラーイエロー男子が顔面に右ストレートを食らって海に叩き落とされていたので間違えないようにしたい。

 

~~~

 

船尾に到着すると備え付けの椅子に座った銀髪ツインテールの少女がこちらを見ていた。言うまでもなくレインだ。

 

とりあえず彼女の隣の椅子に座って腰を下ろす。レインはまだこちらを見ている。

 

ナズェミテルンディス!!

 

「どうした?何か用か?」

 

「…別に。ただ見ていただけ」

 

プイッ!と言った感じで視線を逸らされた。本気で理由が分からないが、他の連中と違って暇そうなので時間つぶしの世間話にでも付き合ってもらおう。

 

「レインは俺達の地元のかがやき市でカードショップ『Z1』を経営してたじゃん?」

 

「…うん」

 

店の名前の由来は間違いなくZ-ONEだろう。

 

「あそこってまだ経営してるの?」

 

「…当然」

 

「なら、最近発売したカードパックの名前とか、パック内のカードラインナップとかって分かる?」

 

「…もちろん」

 

そう言うとレインは最新作のカードパックの名前とそこに収録されているカード名を淡々と話し始めた。

 

ラッキー。調べる手間が省けた。後でブログを更新して掲載しておこう。

 

しかし、こうして改めて聞いてみると融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムカードが増えてきたなぁ。アカデミアの購買のパックとは質の差が酷い。

 

「GWの間、そのパックを買いに行ってもいい?」

 

「いい」

 

店長から許可を貰ったので今度そのパックを買いに行くとしよう。

 

ふふふ、オカルトパワーを使えばパックを剥かずにレアカードをサーチして探り当てるなど造作もないことなのだ!

 

「…当店では、サーチ行為は禁止」

 

「レイン恵はエスパーだった?」

 

「…顔に書いてる」

 

彼女は『何を今更…』と言わんばかりの眼でこちらを見て来る。顔はほぼ無表情なのに眼だけで語るとか、凄い技術だな。

 

そして、言われてみれば確かに俺は、今まで彼女やセレナたちにもトランプなどのデュエル以外のカードゲームではただの1度も勝てなかったな。

 

どうやら俺はポーカーフェイスには向かない性格らしい。

 

~~~

 

GW2日目の早朝、俺は久々に乗る俺の愛車のDーホイール、D・ファントム・Typeゼブラを走らせてとある町の病院へとやって来ていた。

 

昨晩はセレナやユーゴ達にアカデミアでのことを延々と聞かれたせいであまり眠れていないので、オートパイロットモードとはいえ走行中に少し寝落ちしそうで怖かった。帰る時は少し仮眠を取ってから乗ることにしよう。

 

昼前になんとか病院に到着し、病院前にあるDホイール専用の駐車場にDホイールを駐車した後、病院入り口前で待つ眠そうなユーリと何故かお手玉をしていたデニスと合流する。

 

「遅かったねクロト。待ちくたびれたよ」

 

「やぁクロト。久し振り~」

 

「よおユーリ、それにデニスも。待ち合わせ時間5分前に付いたからセーフだろ」

 

「社会人は皆15分前行動を心がけるものだよ。それにしても、セレナ。君まで来たのかい?」

 

「別にいいだろ?今年のGWは割と暇なんだ!」

 

そして、今日の俺にはセレナと言う同行者がいた。昨日この病院に行くことを話したら強引に付いて来てしまったのだ。バレットもOKを出していたので付いてくるのは別にいいんだが…。

 

先ほどDホイールを走っている間はずっと背中に引っ付いていたから気付いたが、この娘は小学校高学年くらいから身体的にはほぼ成長していなさそうだ。そう言えば身長も今や20cm以上差があるしな。

 

「俺に付いて来ても特に楽しいことは無いと思うんだけどな」

 

「それは後で私が判断するからいいんだ」

 

俺、セレナ、ユーリ、デニスの4人はそのまま病院内に入り、とある病室まで辿り着くことが出来た。事前にユーリが話を付けておいてくれたおかげで受付で時間を取られるようなことも無かった。ありがたい話だ。

 

「ここは?特別病棟?」

 

「そう。ここには9年ほど前に交通事故で記憶の大半を失うことになった夫婦が入院している」

 

セレナの問いに俺は答えた後、病室の扉を開く。

 

「おぉ、お待ちしていましたよ。ユーリ社長」

 

「先日はどうも。こちらがお話していた白河クロトですよ」

 

病室の中にはこの病院の院長と思われる白衣の男性と、件の夫婦の姿があった。

 

「単刀直入に聞かせて貰いますが、本当によろしいのですね?」

 

「はい。二人で決めました」

 

「私たちの過去を取り戻させてください」

 

「分かりました。全力を尽くさせてもらいます」

 

俺が問うと夫婦は頭を下げて来る。そこまでしなくていいんだけど…。

 

「クロトは何をするつもりなんだ?」

 

「彼ら二人の記憶を取り戻せるかも知れないんだってさ」

 

病室の端に置いてある椅子に座るセレナの小声の問いに、同じくその隣に座っているデニスが小声で答えたようだ。

 

「では早速…まずは旦那さんの方から、頭をこちらに出して頂けますか?」

 

「こう、ですか?」

 

病室のベットの近くに置かれた椅子に座って彼と向き合い、腕に付けた金のオカルトブレスレッドを起動した後、俺の胸元辺りまで下げられた頭に両手をかざしてゆっくりと全力の回復魔術を施す。

 

「これは…!」

 

「セレナ、分かるのかい?」

 

「…クロトの手の平から薄い緑色の強力な魔力の光があのオジサンに向けて放たれているのが見える。でも攻撃的じゃなくてなんというか、優しい光だな」

 

それから約5分間、俺は回復魔術を行使し続けた。

 

「おっ、おぉぉぉぉっ!思い出した!交通事故に巻き込まれる前のことを!ボクの名前も!妻のことも!息子の優介のことも!全部思い出せた!」

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…。ふぅ~。良し、成功だな」

 

体内の魔力を急激に4割ほど使って汗だくな上に息も絶え絶えな俺の前には、記憶を取り戻して満面の笑みと涙を浮かべる男の姿があった。

 

「まさか、本当に記憶喪失を治療してしまうとは…!?」

 

「彼は普段はアレですが、こういう時にはやる男ですからね」

 

院長とユーリが何か言っているが、正直聞いている余裕が無かったので一切聞こえなかった。

 

その後、3時間ほど休憩した後に奥さんの方の治療も行い、無事に藤原夫妻の記憶を取り戻すことに成功した。おかげで魔力はスッカラカンで、数日は魔力を行使することは出来なさそうだ。

 

童実野町に向かうのはある程度魔力が回復してから行った方が良さそうだな。

 

「本当にありがとうございました。白河先生」

 

「貴方が居なければ、私たちはまだ自分たちのことや息子の優介のことも思い出せないままだったでしょう。感謝します、白河先生」

 

「いえ、お礼には及びませんよ。早く息子さんに会って上げて下さい。あと先生は止めて下さい」

 

藤原夫婦にとても感謝されたが、俺が自己満足でやったことなのであまり褒められるとむずかゆい。個人の家庭教師とかならともかく、医者の先生なんてガラじゃないしな。

 

「事前に説明しましたが、彼のことは内密にお願いします」

 

「はい。あくまで奇跡的に自然治癒したということにしておきます。それが今回の治療の約束ですからね」

 

俺が夫婦と話している間、ユーリと院長が話しているのが聞こえた。

 

現代の医学的に治療不可能な記憶喪失を治せる人間が居る、なんて世の中に知られたら色々と動きづらくなるからな。そもそもあまりにも胡散臭すぎる。面倒に巻き込まれるのは御免だ。俺は面倒が嫌いなんだ。

 

その後、院長と藤原夫婦に別れの挨拶をした後、俺達は病院を後にした。俺達が病院を出る頃にはもう夕方になっていた。

 

「じゃあボク達も帰るよ」

 

「またね、クロト、セレナ」

 

用事は済んだとばかりにユーリとデニスは例の黒服たちの運転する黒光りの車で立ち去った。

 

「セレナ、付いて来て楽しかったか?」

 

俺はDホイールをオートパイロットで走らせながら、後ろで背中にしがみついているセレナに聞いてみた。

 

今日の彼女はただ治療の様子を見ているだけだっただろうからそこまで面白い物でもなかったと思うんだが…。

 

「楽しかったというより、クロトの珍しく格好いいところが見れて面白かったぞ」

 

「…そりゃどーも」

 

「うん?照れたのか?」

 

「セレナ、お前って性格悪くなった?」

 

「きっと先生に似たんだろうな」

 

「やはり、リンの仕業か!」

 

「お前のことだぞ」

 

夕暮れに照らされながらセレナは眩しい笑顔をこちらに向けてくる。直視すると無性に照れくさいので目を逸らした。

 

俺達はそんな話をしながら家に帰った。

 

~~~

 

GW3日目の朝、俺はシスターを手伝って孤児院の朝食の準備をしていると、リンが話しかけてきた。

 

「あっ、そうそう。私とユーゴは朝食を食べたら出かけちゃうから、昼食は要らないからね」

 

「へぇ、デートかよ」

 

「そうよ」

 

俺の皮肉に動じることもなくアッサリと言葉を返してきたリン。コイツ、出来る!?DTの俺には太刀打ちできそうにない…!

 

「くっ!これがリア充の力か…!」

 

無性に壁を殴りたくなってきたぞ。何処かに今の俺が全力で殴っても壊れない壁は無いものか。

 

「リア充って何?」

 

「気にしなくていいよ」

 

そう言えばこの時代にはまだリア充なんて言葉は生まれてないんだっけ。

 

「夕食も要らないとか?」

 

「ううん。夕食までには帰ってくるつもりよ」

 

なら、夕食はシスターと相談して精の付く料理をメインにしておこう。モヤモヤした夜を過ごすがいい。

 

孤児院の壁は薄いので、色々と始めるのだけは切実に勘弁してもらいたい。

 

「「行ってきまーす」」

 

「「行ってらっしゃーい」」

 

先ほど言っていた通り、2人でデートに行ったユーゴとリンをシスターと一緒に見送って食器を洗って片づけた後、俺は孤児院の近くにあるカードショップ『Z1』へとやって来た。

 

「…いらっしゃい」

 

店内に入るといつものほぼ無表情のレインが猫のイラストが入ったエプロンを付けてレジの前に座っていて、店内にはコワモテのゴーストが何体が店内の清掃をしていた。

 

「店長さーん。お客には笑顔で対応願いまーす」

 

「…むぅ」

 

「えっ、それで笑ってるつもりだったなのか?」

 

「…そう」

 

レインとそんな話をしていると、そのうち一体が何故か店の前に掛かっている『OPEN』の看板を裏返して『CLOSE』に変えていた。俺達は何か秘密の打ち合わせとかするんだっけ?記憶にないんだが…。

 

「一昨日の約束通り、パックを買いに来たんだ」

 

「…これ」

 

「おっ、サンキュー」

 

どうやら俺が来店するときの為に準備しておいてくれたらしく、レインはいくつかのカードパックとそれらに収録されているカードのリストをレジのテーブル上に出してくれた。

 

「なるほど。これらがここ数年で出てきた有名な新規パックか」

 

「…他のは再販・再録が多い」

 

この世界ではOCG次元のようなスピードでパックが販売することは無く、1年に2~3個の新規パックが販売されることが多い。その間の期間は古いカードを寄せ集めたような物を安く売っているパックが多く、所持金の少ない学生は大体こちらを買ってしまう。

 

だが、再販パックでは新規パックの強力カードの足元にも及ばず、デュエリスト間の格差が激しくなっている。

 

「さて、まずは融合かな…【沼地の魔神王】や【簡易融合】みたいな優秀なカードは存在しているけど、融合モンスター自体はそこまで強くない感じか。この中でまともに組めそうなテーマは【剣闘獣】と【ジェムナイト】くらいだな」

 

【召喚獣】とか【シャドール】とかが入ってなくてよかった。この世界のこの時代で一般デュエリストがメルカバ―とかネフィリムなんて出して来たら発狂しそうだ。

 

「…【重装機甲 パンツァードラゴン】は結構優秀」

 

「えっ?あぁ、確かに最新パック入っているな。【簡易融合】で出すには便利なモンスターではあるよな。残りはユニオン融合体とかHEROくらいだけど、強力なHEROは期間限定&数量限定で発売したデュエリストパック響紅葉編だけか」

 

この世界では上位プロデュエリストの許可があれば、彼らのデッキに入っているカードの一部をカードパックにして販売することがある。恐らくこの世界で一番有名な融合は響紅葉のHERO一択だろう。次点で使用者の多い【剣闘獣】だろうか。

 

エドはまだ売り出し中の新人だし、【D-HERO】デッキを使わないんだよな。第一、使っていたとしても彼が【D-HERO】のパック販売にOKを出すとは思えない。

 

サイバー流や【古代の機械】は世界大会の優勝賞品だったり大企業が開発してI2社にカードイラストだけ依頼した物だったりするらしい。(元OCG次元の人間としてはカードを制作とか印刷ではなく、開発と表現していること自体か意味わからんが、この世界では珍しくもないらしい)

 

紫雲院素良が使う【デストーイ】シリーズや柊柚子が使う【幻奏】シリーズの融合モンスターも恐らくは同じようなものだろう。

 

【DD】?あれは赤馬のオリカだろ?アニメアークファイブでも自分たちでペンデュラムカード作っていたしな。

 

「シンクロは…おっ、結構多彩だな。【X-セイバー】、【氷結界】、【霞の谷】、【フレムベル】、【A・O・J】、【ワーム】、【ジェネクス】、【ナチュル】、【ジュラック】、【魔轟神】【ドラグニティ】、【ラヴァル】、【ガスタ】…ってこれ殆どデュエルターミナル出身じゃん」

 

テーマごとのラインナップもデュエル・ターミナル稼働時と大体同じだな。

 

「…デュエル・ターミナル?」

 

「こっちの話だから気にしなくていいぞ」

 

「…むぅ」

 

【氷結界】の3竜、【ダーク・ダイブ・ボンバー】、【ゴヨウ・ガーディアン】辺りが期間限定発売のパックにしか入ってないのは判断に困るところだ。全部エラッタ版だしな。別に普通のパック入っていてもいいと思う。

 

「期間限定&数量限定で発売したシンクロモンスターのデュエリストパックはダイナソー竜崎編くらいか」

 

「…【ジュラック】」

 

「そうだな。ダイナソー竜崎と言うか、恐竜族のシンクロと言えば新規パックにも入っている【ジュラック】だろう。世に出回っている汎用的なカードは【ゾンビキャリア】、【クレボンス】、【チューン・ウォリアー】辺りの使いやすいチューナーや【大地の騎士ガイアナイト】、それを素材とする融合の【地天の騎士ガイアドレイク】、【メンタルスフィア・デーモン】辺りか」

 

今後はこれらのシンクロ使いが増えてきそうだな。でも、このくらいの強さならまだ何とでもなるだろう。手札誘発も超レアカードのヴェーラーくらいだしな。

 

「エクシーズは…おっ、そこそこの数のNo.が出て来ているな」

 

「…クロトが使っていたカード」

 

「少し前にそこまで強力じゃないかと思ったカードの情報は提供したからな。それ以外にも、【ヴァイロン】、【インヴェルズ】、【セイクリッド】、【ヴェルズ】、【炎星】、【水精鱗】、【ギアギア】、【ゼンマイ】と結構色々出てるな。デュエリストパックは…」

 

「…【インゼクター】と【エヴォル】」

 

「まあぁそうだよな。今やインゼクター羽蛾とダイナソー竜崎の代名詞みたいな扱いだしな。【カチコチドラゴン】、【グレンザウルス】、【ガチガチガンテツ】や魔人エクシーズモンスター辺りはもう結構世の中に出回っているみたいだな」

 

【ジェムナイト・パール】がちゃんと出回っているのがいいよな。アイツがいないとなかなかオピオン倒せないし…。

 

「ペンデュラムは…テーマと呼べる物はまだまだ無いな」

 

「…デュエリストパックもない」

 

「ペンデュラムが出来ればシンクロやエクシーズはかなり楽になるのに残念だな」

 

かといって【EMEm】やら【クリフォート】やらが普通に出回っていたら恐ろしい環境になりそうで嫌だな。LP:4000環境なら手札次第じゃ俺も普通に負けそうだ。流行るなら俺がアカデミアを卒業して命の危険が無くなってからにしてくれ。

 

「最後の儀式は…儀式魔人は脅威だけど、儀式モンスターはデミスとルイン以外に見れるカードがあまりないな。テーマとしては【リチュア】くらいだな」

 

【メガリス】や【影霊衣】、魔神儀カード辺りは流石に無いにしても、【霊魂】や【ヴェンデット】辺りなら…いや、十分強いか。どちらにしてもまだ世の中には出回っていないテーマだ。

 

「…再録の【サクリファイス】くらい」

 

「確かにその辺りだな」

 

なるほどな。大体今のこの世界のカードプールが分かって来た。とりあえず、アカデミア卒業までの3年間で一般デュエリストに負けることはほぼ無さそうだな。

 

「結構勉強になったな。とりあえずここに出ているパックは全種類1パックずつ買っていくことにするよ」

 

「…まいど」

 

俺はそこそこの量のカードパックを手に孤児院へと帰った。

 

ちなみにユーゴとリンは普通に夕食前に帰って来た。かなり健全なお付き合いをしているようだな。

 

~~~

 

翌日、俺は朝から田中の家で鈴木、佐藤、田中と一緒に4人対戦が出来る懐かしのテレビゲームに興じていた。

 

俺達の中に4人全員での協力プレイなど存在しない。俺達4人で協力プレイ前提の狩りゲーなど始めようものなら、誰かを囮にしてその間に収集アイテムを集めているような奴等ばかりだからな。

 

 

「くらえ!回転切り!」

 

「鈴木の勇者はそれしかしないよね。それってガードすれば隙だらけなんだよ?じゃ、ボクのゴリラの一撃でサヨナラしてね?」

 

鈴木の緑の服を着た勇者の雑な範囲攻撃を冷静に防御した佐藤のゴリラは、攻撃後の硬直で動けない勇者に渾身に一撃を叩き込み、哀れ緑の勇者は画面外へと消えて言って星になった。

 

「あぁっ!?勇者ー!」

 

「おぉっ、勇者よ。死んでしまうとは情けない。これで鈴木の残機は残り1つだね」

 

「佐藤ぉぉぉ!」

 

「フハハハハッ!これは一対一ではないのだぞ?貴様ら、我が女兵士のチャージショットを食らえ!」

 

「チャージなどさせるものか」

 

俺の狐が画面内の死角でチャージしていた田中の女兵士を遠距離から狙撃して邪魔をする。

 

「あっ、チャージが邪魔されてまた初期値に!?クロト、キサマァァァ!」

 

鈴木の弓や爆弾やブーメランなどの豊富な遠距離攻撃を一切しない近接オンリーの直情型勇者。

 

佐藤の超火力床パン道連れゴリラ。

 

田中の逃げ回ってチャージショット溜めて撃つだけウーマン。

 

そして俺の瞬足ハイテク狐。

 

やはりこの中では佐藤が一番強い。

 

俺の狐の代わりに、ぶっ壊れのスピードと火力で近くの敵を皆〇しにするコナミのワンマンレーサーが加われれば、あっという間に他の全員で対コナミ共同戦線を構築することになる。

 

それでも負けるけどな。

 

 

ピチュン、ピチュン、ピチュン

 

『カモン!掛かって来い!カモン!掛かって来い!』

 

 

ピチュン、ピチュン、ピチュン

 

『カモン!掛かって来い!カモン!掛かって来い!』

 

 

俺は自分の操作する2足歩行狐のスピードを活かして、遠距離から嫌がらせに徹して彼らへのダメージを蓄積させている。

 

「狐うぜぇぇぇ!クロト、画面端からブラスター&挑発連打はマジで止めろぉ!復帰が!復帰がぁぁぁ!」

 

1P、LOST!

 

「害悪乙」

 

「その上、我のチャージショットをことごとくリフレクターで反射して来るとは…我が右手の封印が怒りで解けそうになるぞ!」

 

馬鹿め。バトルロイヤルで重要なことは、如何にして最終盤面の1vs1時に相手との体力差を広げるかどうかだ。最初から乱戦の中心に向かうなど、愚の骨頂!

 

「あぁ!また4位!?…はいクソー!二度とやらんわこんなクソゲー!」

 

 

しばらくして鈴木のいつものセリフが出た頃にまた別の4人対戦が出来るテレビゲームをやるのが通例だ。

 

「また曲がり角の死角にバナナが!?」

 

鈴木の操作キャラの赤い帽子の土管工の男が、バナナで滑ってレースコースから落ちてフェードアウトしていく。

 

1Pコースアウト!

 

「それを置いたのは佐藤だな」

 

「クロト、さらりと人に罪を擦り付けないでくれるかな?ボクの置いたバナナはショトカ前だよ」

 

それを遠目で見ていた俺の緑の恐竜と佐藤のゴリラは、コースに復帰した直後の鈴木を出待ちしており、鈴木のコース復帰直後の硬直を狙い撃ちして即座に甲羅を叩き込んで更にコースアウトさせた。

 

「ちょっ!お前らぁぁぁ!」

 

1Pコースアウト!

 

「ふはははっ。ざまぁないな鈴木!見よ!我が姫の飛翔を!我が姫と我の技量をもってすればこのショートカットも…馬鹿な、ショートカット突入コースにバナナがぁぁぁ!?」

 

田中の操る金髪の姫がレースコースを大幅ショートカットして周回遅れを取り戻そうとして、姑息な佐藤の罠にかかってコース外の奈落へと落ちてゆく…。

 

4Pコースアウト!

 

「「「馬鹿乙」」」

 

 

昼食後はまた別の4人で出来る対戦が出来るゲームを始める。もはや恒例だ。

 

「田中!オレのゲロビを食らえぇぇぇ!」

 

いきなり単独て突出してきた田中の機体へ、鈴木の操る黒い異様な形の機体が腹部から極太ビームを放つ。

 

「なんの!シールド展開!ふっ、やはり我は不可能を可能に…!」

 

死を予見させる光の波が田中の黒い機体に襲い掛かるが、田中はタイミングよく盾を展開してそれを防ぐ。

 

「行け、ビット。側面から田中をハチの巣にしろ」

 

だが、これは2vs2のチーム戦だ。

 

「えっ?」

 

4P、LOST!

 

「田中ぁぁぁ!」

 

俺の白い機体が放った無数の無線自動攻撃システム、通称ビットにより、田中の機体は盾の範囲外から攻撃を受けてバランスを崩し、鈴木の機体が放っていた極太ビームに飲み込まれて逝った。

 

「残りは佐藤だけだな。クロト、フォーメーションγだ!」

 

「いつもの挟み撃ちって言えばいいのに。さぁ、これで終わりにするか、続けるか、佐藤!」

 

「そんな決定権がお前たちにあるのか!」

 

田中を処理した俺と鈴木は、残る敵である佐藤の白と青の機体へと波状攻撃を仕掛けようとする。

 

「敵の動きが、見える!そこぉ!」

 

「何!?佐藤、お前はオレのォォォ!」

 

1P、LOST!

 

調子に乗った鈴木はいつものように近接ビーム兵器で近接攻撃を仕掛けようとして佐藤にアッサリ躱された上、ゼロ距離から強力なビームランチャーを叩き込まれて鈴木の機体は爆散した。

 

「ちょっ、やられるのはえーよ鈴木!ちっ、ビット!オールレンジ攻撃だ!」

 

2vs1の圧倒的有利な状況から数秒でタイマンに持ち込まれた俺は、焦ってビットを展開する。

 

「ボクの体を皆に貸すぞ!ここからいなくなれぇぇぇ!」

 

だがそのビット展開時の隙を狙い、変形して紫色のオーラを纏った佐藤の機体の突撃してくる。

 

「ゲッ!動け!何故動かん!?あっ、不味い!ギャー!」

 

2P、LOST!

 

攻撃の硬直で動けない俺はその突撃の直撃を食らってしまい、俺の機体も爆散した。

 

 

そんなこんなで俺は、1~2カ月ぶりくらいに会った友人たちと学生のゴールデンウィークらしい休日を過ごした。

 

~~~

 

GWも中盤となった頃、俺は童実野町の海馬コーポレーション本社へ呼び出されていた。

 

「ふぅん。来たか白河」

 

「よく来てくれたなクロト」

 

「お久し振りです。海馬社長、モクバ副社長」

 

朝食後にいきなり電話がかかって来たと思ったら海馬社長本人からの電話で、「今すぐ本社に来い」だからな。

 

しかも電話が切れた数秒後には孤児院の前に黒い高級車から黒服の男がわらわらと出て来て、あっという間に問答無用でこの海馬コーポレーションの社長室まで運ばれてきたわけだ。

 

海馬社長の奇行にはもう慣れたので特に気にしてはいない。呼び出された用件も何となく想像がつくからね。

 

「デュエルアカデミア本校の現校長、鮫島が行方不明なのは知っているな?」

 

「えっ?校長ッて行方不明なんですか?」

 

「つまらん真似は止せ。時間の無駄だ」

 

「クロト、兄様にはクロトが査問委員会の会議に侵入していたことも、鮫島校長から七星門の鍵の入った箱を盗み出したこともバレているぞ」

 

えっ?マジで?

 

「まぁいい。モクバ、説明してやれ」

 

「OK、兄様。クロト、お前は確かはオカルトの力で物質に封印を施したり姿を消すことが出来たよな?」

 

あっ、そう言えばこの2人にはある程度は俺のオカルト技能を説明しているんだった。

 

「海馬コーポレーションの科学技術を駆使しても一切開かなかった七星門の鍵の箱が会議中にいきなり開いて、会議が終了して無人のはずの部屋の扉が何故か開いた」

 

「そしてその間、白河クロトの姿はアカデミア校舎内に無数に設置された監視カメラには一切映っていなかったんだよな」

 

あぁ、うん。これは完全にバレてますねぇ。それにしてもやらかしたなぁ。短気は損気、だな。

 

はぁ、俺ってホント、馬鹿。

 

「問おう。白河、貴様はその時間帯にどこで何をしていた?」

 

多分、ここで言い訳しても他の証拠を提示されそうな気がする。まるで裁判ゲームで犯人が追い詰められるシーンの様だ。そしてその乙詰められる犯人は俺なのが困りものだ。

 

もう言い訳のしようがないくらいに詰んでいそうだし。さっさと謝ってしまおう。

 

「申し訳ございませんでしたー!」

 

海馬社長の確信を持った問いに対し、俺は目にも留まらぬ速度で土下座した。多分、今世で最速記録を叩き出したと思う。

 

七星門の鍵を海に投げ捨てた理由はもちろん三幻魔復活の阻止だが、結果的に俺がやったことは普通に盗難&不法投棄である。

 

やったことのレベルはさておき、校長のことをどうこう言える立場じゃなくなったよな。

 

「クロト、何で校長室から箱を持ち出したんだ?」

 

「校長室から箱を持ち出して海に捨てた件については、影丸理事長やセブンスターズから箱を隠蔽する為ですね。鍵を破壊したり隠蔽したりしても、また影丸理事長が同じ鍵を作ってしまえば意味はないかも知れませんが、時間稼ぎにはなりますからね」

 

本来なら、七星門の鍵を隠蔽することで三幻魔が復活するまでの時間を稼いで、俺が卒業するまで封印が保てばよかったんだよなぁ。後は成長した十代とコナミが何とかするでしょ。

 

「じゃあ、箱を封印した理由は?」

 

「海に捨てた後に万が一に箱の蓋が開いて鍵が海に流れ出て行ってしまった場合、発見と回収が困難だからです。セブンスターズに拾われてしまった場合、その時点で終わりですね。他にも誰か第三者が拾ってしまった場合にその人物を騒動に巻き込まないようにするためですね」

 

船着場に良く行き来するトメさんとかが拾って闇のデュエルの被害者になったら目も当てられない。

 

「なら、会議中にわざわざ鍵を開けた理由は?」

 

「既に箱の所在がバレてしまった以上、箱の封印をしておく理由がないんですよ。俺が箱を封印をしたところで、箱の中の鍵が周囲からデュエルエナジーの吸収する行動を止められるわけではありません」

 

「そうなのか?」

 

そうなんですよ。そうで無ければ箱を封印したまま俺がずっと持っているよ。

 

七星門の鍵が全て入った箱そのものを倫理委員会が守っているより、鍵の守護者をクロノスや響先生にした方が、鍵が奪われる可能性はかなり低い。

 

「そもそも、恐らく俺よりもオカルトに詳しい影丸理事長ならば箱の封印を解除できてしまうでしょうからね。箱ごと鍵を全て奪われたらもう終わりです」

 

「なるほど…箱ごと全ての鍵が一度に奪われるより、デュエリストに配って1つでも奪われにくくした方がいいということか」

 

付け加えるならば、鍵が近くにある状態でデュエルするだけでデュエルエナジーが溜まる仕組みっぽいので、鍵を奪ったセブンスターズたちがそれぞれ自身で鍵を身に着けて生徒&教師関係なく無差別に闇のデュエルを挑むだけでエナジーは溜まる。

 

最悪の場合は、鍵を奪われたその日のうちに多くの闇のデュエルの犠牲者を出した上で三幻魔が復活するかも知れない。

 

結果は同じだ。だから俺は隠蔽した状態で鍵の管理がしやすい海へと投げ捨てたのだから。

 

そして、これは直感だが、闇のデュエルは挑まれたら受ける以外の選択肢がないのだと思う。勝負を断るだけで敗北とみなされ、敗者への罰を受けることになるのだろう。

 

原作で闇のデュエルを受けた人たちも同じような直観を感じたからこそ素直に闇のデュエルを受諾したのだと思う。そうで無ければわざわざ死の可能性がある勝負なんて受けないだろうからな、

 

じゃあ最初から今までのようなまどろっこしいことをしないで、さっさとその方法を取っておけばいいのでは?と思うだろうが、多分自主的に闇のデュエルを受けさせた方が質のいいエナジーが手に入るんじゃないかな?

 

正直、これ以上は分からん。影丸に直接聞きただしたいくらいだ。

 

「話は分かった。白河、今回の行動の責任として、セブンスターズの事件を解決し、鮫島の行方を捜しだして俺の前に連れてこい」

 

「アッ、ハイ」

 

「倫理委員会の連中からオカルトに関する協力要請も届いて来ている。クロトは今後、ハノイの騎士として彼らに協力してくれ。彼らには連休後からハノイの騎士と共同で活動するように伝えてある」

 

「ハイ、ワカリマシタ」

 

海馬社長の無茶ぶりに対し、俺に拒否権など無かった。モクバ副社長の根回しも流石だ。今までのやり取りがまるで計算されていたかのような流れで俺は倫理委員会に協力してセブンスターズの事件の解決と鮫島の捜索を義務化されてしまった。

 

色々とゴチャゴチャと話したが、要は成果を見せて俺の利用価値を証明できたのなら俺のやらかし案件を見逃してやるってことみたいだ。

 

どちらに対しても三幻魔やセブンスターズの件については裏で対応するつもりではいたから、俺のやることはそこまで変わらないかな。

 

「そして、ついでにアカデミア本校の生徒全体の質を向上させろ」

 

「えっ?」

 

「アカデミア本校とノース校との交流試合が毎年7月に開催されていることのは知っているな?その交流試合に触発されたのか、他のアカデミア分校から交流試合の申し込みが来ている。最終決定はまだだが、特に断る理由もあるまい」

 

「開催する場合、時期は恐らく来年の1~2月くらいだろうな。もし開催するのなら、来賓としてペガサスも天馬兄弟を迎えるつもりだとも言っていたな」

 

各校のスケジュール調整や準備期間やなんかを考えると大体それくらいだろうな。むしろかなり早いくらいだ。

 

「アカデミア本校、ノース校、ウエスト校、サウス校、イースト校、アークティック校、そしてアメリカ校。この7校から選び出されたそれぞれの代表者6名にて交流試合を行う。その交流試合にて、本校を優勝させろ」

 

「アカデミア本校が他の分校に惨敗するようなら、本校のイメージは最悪だからな。海馬コーポレーションの来年度の予算編成にも大きく影響することになるだろう」

 

「えぇ…」

 

ついでで頼まれるような内容じゃないだろ…。1~2月の試合結果次第で来年度の予算が変動するとか、海馬コーポレーションの経理の人達かわいそう。ブラック企業すぎるだろ…。

 

えっとつまり、本校代表選手A vs ノース校代表選手A、本校代表選手B vs ウエスト校代表選手A、本校代表代表選手C vs サウス校代表選手C…と言った感じで、1選手1試合行うわけだよな。

 

 

  A B C D E F G

 

A ー 〇 〇 〇 〇 〇 〇

 

B × ー 〇 〇 〇 〇 〇

 

C × × ー 〇 〇 〇 〇

 

D × × × ー 〇 〇 〇

 

E × × × × ー 〇 〇

 

F × × × × × ー 〇

 

G × × × × × × ー

 

 

各校6試合、それが7校あるから…6+5+4+3+2+1で合計21試合行われるイメージかな。

 

デュエルではサッカーの試合みたいに引き分けとかは基本的に無いから、勝敗によって勝ち点とか付くのではなく、単純に合計勝利数の多さで優勝を争うんだろうな。

 

「セブンスターズ事件解決の件、鮫島捜索の件、交流試合での本校優勝の件、それら全てが達成達成できたなら今回の件はチャラにしてやる。当然、達成出来なければお前は退学だ」

 

海馬社長の追撃の無茶ぶりにより、俺のダメージは加速した。胃がキリキリする。

 

ふと横を見ると、モクバ副社長は苦笑いしている。彼は今までずっと海馬社長の意見を尊重し、それを実現可能なようにフォローするスタンスだからな。

 

俺には悪いと思ってくれているっぽいが、それ以上に海馬社長の思惑を成功させるには必要なことだと割り切っているのだろう。

 

「ハイ!セイイッパイ、ガンバリマス!」

 

俺は孤児院に帰った後、夕食を食べた風呂上りにシスターから分けて貰った缶チューハイをガブ飲みして不貞寝した。

 

~~~

 

海馬社長に無茶ぶりをされた翌日、俺は精霊界で2日酔いが完全に収まるのを待った後、早乙女レイのデュエルアカデミア編入試験の付き添いとして童実野町の海馬ランドへやって来ていた。

 

「へぇ。デュエルアカデミアの編入試験ってこんな広い会場でやるんだな」

 

そして何故かセレナも付いてきた。「暇だし、面白そうだから」だそうだ。

 

一応、レイちゃんにはセレナも同行することを事前に伝え、セレナとレイは初めて出会った当初こそお互い緊張していたが、この会場に来るまでの去年の学園祭でセレナたちがコンサートの話題で盛り上がり、会場に到着することにはすっかり仲良くなっていた。

 

女性版コナミとも言えそうな恐ろしいコミュ力だ。到底、俺には真似できない。

 

「レイは【ライトロード】デッキを使うって言っていたな。どんなデッキなんだ?」

 

「光属性を主体としたビートダウンデッキで、墓地肥やしに長けるデッキだな。各モンスターも優秀なのが多いが、デッキの切り札である【裁きの龍】は【終焉の王デミス】を上回る強力な全体除去効果を持つ強いデッキだ」

 

「おぉ!どんなデュエルが見れるか楽しみだな!」

 

俺とセレナが会場の観客席でそんな話をしていると、レイちゃんがアナウンスで呼ばれて試験コートに現れた。レイちゃんの対戦相手はデュエルアカデミア本校の教師、松村成基のようだ。

 

今のレイちゃんの恰好はアニメGXで初登場した時の様に茶色の帽子を被って長い黒髪を隠し、少し大きめの長袖のジーンズなどで体のラインを隠した男装をしている。この格好をしている時は一人称も『ボク』で通すらしい。

 

「ところで、なんでレイは男装しているんだ?」

 

「馬鹿な。何故、一発で女子だと分かった」

 

「なんだ。やっぱり女の子なんだな」

 

「なっ!?図ったな、セレナ!」

 

「こんな古典的な手に掛かるクロトが悪い」

 

セレナはこちらを呆れたような顔で見てくる。それにしても、何故バレたんだろう。

 

「男装するならせめてシャンプーくらいは変えるんだな」

 

「シャンプー?」

 

「女性用のシャンプーの香りがする男子生徒なんて私は見たことないぞ」

 

「なるほど」

 

そういうことか。女子視点だとそう言うところでバレてしまうのか。これはレイちゃんにも教えておかないといけないな。

 

「おっ、デュエルが始まるみたいだな」

 

セレナとそんな話をしていたらレイちゃんの編入試験デュエルが始まるようだ。

 

 

「「デュエル!」」

 

 

◆早乙女レイ(男装) LP:4000、手札:5枚。

 

vs

 

◆松村成基 LP:4000、手札:5枚。

 

 

「先攻は私が貰う。私のターン、ドロー。そのままスタンバイ、メインフェイズへ移行」

松村成基 手札:5→6枚。

 

「私は手札から【ゴブリンエリート部隊】を召喚」

松村成基 手札:6→5枚。

 

【ゴブリンエリート部隊】

効果モンスター

星4/地属性/悪魔族/攻2200/守1500

(1):このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になり、次の自分ターンの終了時まで表示形式を変更できない。

 

<松村成基のフィールド>

ゴブリンエリート部隊 ★4 ATK2200

 

「私はカードを2枚セットしてターンエンド」

松村成基 手札:5→3枚。

 

 

◆早乙女レイ(男装) LP:4000、手札:5枚。

 

vs

 

◆松村成基 LP:4000、手札:3枚。伏せカード:2枚。

 

<松村成基のフィールド>

ゴブリンエリート部隊 ★4 ATK2200

 

 

松村成基か。あのモンスターを出すのなら、使用デッキはグッドスタッフっぽい【地属性】デッキだろうな。魔法・罠もシンプルに優秀なカードが多い。

 

レイちゃんは話を聞く限りでは筆記試験の成績も上位っぽかったし、入学試験の成績上位者と対戦するとき同様に彼も自分のデッキを使う訳か。

 

「なぁクロト。あの人ってデュエルアカデミア本校の教師なんだよな?あの布陣は手加減しているのか?」

 

「セレナが育った環境が狂っているだけで、世の中のデュエリストの大半はあの先生のデッキに勝てないくらいのデュエリストが多いぞ」

 

セレナの周囲の奴らのデッキは【SR】、【WW】、【捕食植物】、【Em】とかだしな。それらと比べるのは流石に先生がかわいそうだ。

 

 

「ボクのターン、ドロー!そのままスタンバイ、メインフェイズへ移行!」

早乙女レイ 手札:5→6枚。

 

「ボクは手札からフィールド魔法【ジャスティス・ワールド】を発動!!」

早乙女レイ 手札:6→5枚。

 

【ジャスティス・ワールド】

フィールド魔法

自分のデッキからカードが墓地へ送られる度に、このカードにシャインカウンターを1つ置く。

フィールド上の「ライトロード」と名のついたモンスターの攻撃力は、このカードに乗っているシャインカウンターの数×100ポイントアップする。

また、このカードがカードの効果によって破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているシャインカウンターを2つ取り除く。

 

「ボクは手札から魔法カード【ソーラー・エクスチェンジ】を発動!手札を1枚墓地に送ってデッキから2枚ドロー!その後、デッキトップカードを2枚墓地に送る!」

早乙女レイ 手札:5→4→3→5枚。SC:0→1個

 

【ソーラー・エクスチェンジ】

通常魔法

(1):手札から「ライトロード」モンスター1体を捨てて発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。その後、自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

<手札コスト>

①ライトロード・プリースト ジェニス

 

<デッキトップから墓地に送られたカード>

①ライトロード・ウォリアー ガロス

②ライトロード・シーフ ライニャン

 

「ボクは手札から魔法カード【光の援軍】を発動!デッキトップからカードを3枚墓地に送り、デッキから【ライトロード・アサシン ライデン】を手札に加える!」

早乙女レイ 手札:5→4→5枚。SC:1→2個

 

【光の援軍】

通常魔法

(1):自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動できる。デッキからレベル4以下の「ライトロード」モンスター1体を手札に加える。

 

<デッキトップから墓地に送られたカード>

①ライトロードの神域

②ライトロードの裁き

③ライトロード・モンク エイリン

 

「ボクは手札から【ライトロード・アサシン ライデン】を召喚!」

早乙女レイ 手札:5→4枚。

 

【ライトロード・アサシン ライデン】

チューナー・効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1700/守1000

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。この効果で墓地へ送ったカードの中に「ライトロード」モンスターがあった場合、さらにこのカードの攻撃力は相手ターン終了時まで200アップする。

(2):自分エンドフェイズに発動する。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

<早乙女レイのフィールド>

ライトロード・アサシン ライデン ★4 ATK1700→1900 ※チューナー

 

「ボクは【ライトロード・アサシン ライデン】の効果発動!デッキトップからカードを2枚墓地へ送る!そして効果より攻撃力が200アップ!」

早乙女レイ SC:2→3個

 

<早乙女レイのフィールド>

ライトロード・アサシン ライデン ★4 ATK1900→2000→2200 ※チューナー

 

<デッキトップから墓地に送られたカード>

①ライトロード・ビースト ウォルフ

②ブレイクスルー・スキル

 

「ここでボクは墓地の【ライトロード・ビースト ウォルフ】の効果発動!自身を特殊召喚!」

 

【ライトロード・ビースト ウォルフ】

効果モンスター

星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守 300

このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがデッキから墓地へ送られた時に発動する。このカードを墓地から特殊召喚する。

 

<早乙女レイのフィールド>

ライトロード・アサシン ライデン ★4 ATK2200 ※チューナー

ライトロード・ビースト ウォルフ ★4 ATK2100→2400

 

「レベル4モンスターが2体…!しかも片方はチューナーか!だが、シンクロもエクシーズもやらせん!」

 

伏せカードを使う気だな。

 

「リバースカードオープン!速攻魔法【月の書】発動!【ライトロード・ビースト ウォルフ】を裏側守備表示にする!」

松村成基 伏せカード:2→1枚。

 

【月の書】

速攻魔法

(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。

 

<早乙女レイのフィールド>

ライトロード・アサシン ライデン ★4 ATK2200 ※チューナー

裏側守備モンスター

 

「むっ、まだだよ!ボクは手札から【ライトレイ ダイダロス】を特殊召喚!」

早乙女レイ 手札:4→3枚。

 

【ライトレイ ダイダロス】

効果モンスター

星7/光属性/海竜族/攻2600/守1500

このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性モンスターが4体以上の場合のみ特殊召喚できる。

1ターンに1度、フィールド上のカード2枚とフィールド魔法カード1枚の合計3枚を選択して発動できる。選択したカードを破壊する。

 

<早乙女レイのフィールド>

ライトロード・アサシン ライデン ★4 ATK2200 ※チューナー

裏側守備モンスター

ライトレイ ダイダロス ★7 ATK2600

 

「ボクは【ライトレイ ダイダロス】の効果発動!そっちの【ゴブリンエリート部隊】と伏せカード、そしてボクの【ジャスティス・ワールド】を破壊だよ!」

早乙女レイ 手札:4→3枚。

 

「うおっ!私の【ゴブリンエリート部隊】と【聖なるバリア-ミラーフォース-】が破壊されたか!」

松村成基 伏せカード:1→0枚。

 

<松村成基のフィールド>

モンスター無し

 

「ボクの【ジャスティス・ワールド】はシャインカウンターを2つ取り除いて効果破壊を免れるよ!」

早乙女レイ SC:3→1。

 

<早乙女レイのフィールド>

ライトロード・アサシン ライデン ★4 ATK2200→2000 ※チューナー

裏側守備モンスター

ライトレイ ダイダロス ★7 ATK2600

 

勝負はついたな。

 

「バトルだよ!【ライトロード・アサシン ライデン】でダイレクトアタック!」

 

ライトロード・アサシン ライデン ATK2000

 

「うおぉぉっ!」

松村成基 LP:4000→2000

 

「これで終わり!【ライトレイ ダイダロス】でダイレクトアタック!」

 

ライトレイ ダイダロス ATK2600

 

「うわぁぁぁっ!」

松村成基 LP:2000→0

 

 

 

デュエルが終わり、レイちゃんが対戦相手に一礼した後、試験コートから退場していく。

 

「よし!レイが勝ったな!」

 

「松村教諭も弱いわけじゃないんだけど、【ライトロード】が相手じゃなぁ」

 

セレナはレイちゃんの勝利を自分のことのように喜んでいる。こういうところが彼女の良いところだよな。

 

「クロト先輩!セレナ先輩!ボク、勝ったよ!」

 

「レイちゃん、おめでとう」

 

「見てたぞレイ!やったな!」

 

「うん!」

 

レイちゃんが観客席にやって来て、セレナと二人でハイタッチを決めながらさっきのデュエルについて話している。

 

その後は特に何も問題なく事が進み、閉会式が終わった後、俺はセレナとレイちゃんと一緒に会場を後にした。

 

「それで、何でレイは男装しているんだ?」

 

「亮様に会う時のサプライズだよ!」

 

俺とセレナとレイちゃんが編入試験の勝利祝いに近くの喫茶店に入って遅めの昼食を取っていると、セレナが男装のことについて話を切り出した。そう言えばさっきは説明しきれていなかったな。

 

「亮様?サプライズ?」

 

「そう!恋する乙女に不可能は無いの!」

 

「クロト、どういう意味だ?」

 

レイちゃんは丸藤亮の話になると基本的に会話にならなくなるので、俺が代わりに今回の編入試験までの経緯を説明することにした。

 

「レイちゃんは俺より2つ年上の丸藤亮と言う青年に恋をしているんだ」

 

「そう!亮様は最高に格好いいんだよ!」

 

「うん。それで?」

 

セレナは早くもこの状態のレイちゃんの扱い方を覚えたらしく、俺の話の続きを催促して来る。

 

「亮さんは今デュエルアカデミアの3年生で、カイザー亮と呼ばれるくらいに強いデュエリストなんだ」

 

「そう!亮様はカイザーなんだよ!」

 

「うんうん。それで?」

 

「今年を逃すと亮さんは卒業してしまうので、それまでにレイちゃんは自分の想いを打ち明けたいと考えているんだ」

 

「そう!恋する乙女の想いを受け止めて欲しいの!」

 

「へぇ~」

 

「でもレイちゃんはまだ小学校5年生。そこで、年齢と性別を誤魔化して編入試験を受けてアカデミアに潜り込もうとしているんだよ」

 

「そしてそこで亮様に告白して2人は結ばれるんだよ!」

 

「そうなんだ。…いやいや、待て待て。何を平然ととんでもないことをしようとしているんだ!」

 

俺がそこまで話すとそれまで相槌を打ちながら聞いていたセレナが突っ込みを入れてくる。

 

「レイちゃんのご両親にも了承は得ているぞ。何故か俺も一緒にレイちゃんの両親を説得させられたがな」

 

「頑張った!」

 

「違う。そうじゃない」

 

セレナは頭を押さえ出して首を横に振る。

 

「ちなみに、海馬コーポレーションの海馬社長やモクバ副社長、I2社のペガサス会長、アカデミア倫理委員会やアカデミア実技最高責任者のクロノス教諭にも話は通してある」

 

「クロト先輩って実は凄い人だよね!」

 

「凄いけど!凄いけどな!?私がおかしいのか!?」

 

とうとうセレナは頭を抱え出した。言いたいことは分かるけどね。

 

「ペガサス会長からは笑顔でOKを貰ったし、倫理委員会には正式にレイちゃんの訪問申請を提出して2週間の滞在許可証を得ている。この許可証があるのでクロノス教諭は何も言えなかったな」

 

「でも海馬コーポレーションの社長さんからは条件を出されたの」

 

「それがさっきの編入試験だったわけか」

 

「海馬社長からは、『ふぅん。恋だか何だか知らんが、デュエリストなら己が欲望を叶えたいのであればその実力を示せ!』と言うありがた~い言葉を頂いたので、文字通り編入試験でレイちゃんの実力を示したわけだ」

 

「恋する乙女は最強なんだから!」

 

「ちなみに、今回の件でレイちゃんが男装する必要は一切ない。ただ単に、亮さんの目の前で男装を解いて彼を驚かせたいだけらしい。だから彼女は先ほど『サプライズ』と称したわけだ」

 

「無茶苦茶だ…」

 

ともかく、2週間だけだがこれで正式ルートでレイちゃんがアカデミアに滞在する期間を作れた。滞在する時期や場所、食事や着替え辺りの細かい部分については今後詰めていけばいいだろう。

 

レイちゃんは亮さんと結ばれてハッピー。俺は放っておいたらヘルカイザーになってドMベルトを装着して命を燃やし尽くしそうな亮さんのフォロー役を見つけられてラッキー。両者Win-Winな関係なのだ。

 

彼らが結ばれるかどうかは分からないが、今のあの島には愛の伝道師の天上院吹雪さんが居る。彼に相談すればきっといい知恵を貸してくれるだろう。

 

~~~

 

GWもあとわずかとなった頃、ようやく魔力が回復した俺はハノイスタイルで童実野町にあるモーメントを開発している施設へ侵入していた。

 

最初は海馬コーポレーション辺りに依頼して正式にアポイントメントを取ってから堂々と施設を見学しようかと思ったのだが、訪問する際の正当な理由が思いつかなかったのだ。

 

『このモーメントは遊星粒子が人間の負の感情に反応して逆回転を起こし始め、来年には暴走してゼロリバースと言う大規模災害を起こすかもしれないから見に来ました』

 

『開発機関MIDSに所属しているルドガー・ゴドウィンが既にイリアステルに接触してダークシグナーになっているかどうかを確認しに来ました』

 

『不動博士がモーメント開発を中止しして、開発機関MIDSの最高責任者から除名されているかどうかを確認しに来ました』

 

『モーメントの制御装置となっているシグナーの竜のカードの代わりに俺が持っているカードが制御装置の代わりにならないかを確認しに来ました』

 

門前払い確定である。

 

アニメ5D'sでは、モーメントが奇妙な音を上げて逆回転を始めるのは不動遊星が誕生してからの話だが、GX世代にモーメントが開発されているようなこの世界ではアニメ同様の展開になってくれるとは限らない。

 

モーメント開発が早まり、不動遊星の誕生が早まった今、ゼロリバースの発生が早まっていても不思議ではないのだ。

 

「…とかなんとか思っていたんだが、今回ばかりは杞憂のようだな」

 

侵入してまで調査して分かったことは以下の通りだ。調査結果は上々と言っていいかどうかは微妙だな。

 

①不動夫妻はまだ開発機関MIDSに所属していて、不動博士はまだ開発最高責任者であること。

 

②不動博士とその助手のゴドウィン兄弟は順調にモーメント開発を進められていること。

 

③モーメント周辺で異常気象が発生しておらず逆回転現象も起こっていないこと。

 

④ルドガーの眼が黒くなったり、片腕が機械になっていたり、性格が悪くなったりしてダークシグナーっぽくなっていないこと。

 

⑤モーメントの制御装置は完成しているが、キーカードとなる4体のシグナーの竜のカードはまだ存在していないこと。

 

「とりあえず大丈夫そうか」

 

「…何が?」

 

「うおっ!誰だ!…レインか」

 

「…うん」

 

モーメントそのものの状態を確認し終えて施設を出て少し歩いた後、俺の独り言に反応するように突如背後から現れたレインが声を掛けてきた。

 

「全く気付かなかったんだが…」

 

「…ステルスを強化した」

 

「いや、何してんの?そんなことしなくていいよ?」

 

どうやら以前、旧特待生寮でステルスを見破ったことと、ダークネス世界に向かう際に尾行を振り切ったことが彼女の何かを刺激したらしく、ステルス機能を強化したそうだ。…これでまた彼女のステルス機能を見破ることが困難になった。

 

「…詳細を」

 

「あぁ、はいはい。ここに来た目的を話せってことね。イリアステルなら当然分かっていると思うから別にいいんだけどさ」

 

レインに俺がここに来た目的を話すと、彼女は少し何かを考えるような様子を見せた後、状況が更に混迷する言葉を放った。

 

「…私たちは、モーメント関係者に接触していない」

 

「そうみたいだな。まだルドガーも正気みたいだし、モーメント開発も順調そうだったからな」

 

「…私たち以外で、ルドガーに接触しようとする勢力はいる」

 

「えっ?」

 

詳しく聞いてみると、ゴドウィン兄弟の周囲にディアブロが何体か常に配置されているらしく、彼らを監視または護衛しているように見えるそうだ。彼女とゴースト達はその調査に来ていたところ、偶然に俺を発見したらしい。

 

「ディアブロ、居た?」

 

「…居た」

 

「施設内に?」

 

「…そう」

 

「ちなみに、今日は何体くらい居た?」

 

「…5体」

 

全く気付かなかった。ヤバいな。ディアブロってゴースト達と殆ど変わらないはずだから見かければ一発で分かると思っていたんだけど…。

 

「チーム5D's達の彼らがディアブロと対峙した時よりもディアブロの擬態性能が上昇しているわけか」

 

「…そう」

 

「もしかして、俺の侵入も連中にバレてる?」

 

「…多分」

 

ガッテム!えぇ…マジかよ。それじゃあつまり、今日の俺の行動ってただ単にディアブロを使役する組織に目を付けられただけじゃん?

 

はぁ、やってられん。酒!飲まずにはいられない!

 

「今日はもう疲れた…。さっさと帰って、夕食食べて、お風呂入って、酒飲んで寝よ」

 

「…未成年の飲酒」

 

「心はオッサンだからセーフ」

 

「…アウトだと思う」

 

結局、この日は調査の終わったレインと一緒にかがやき市に帰った後、道中でコナミへの土産の話を思い出したので、一応それを買ってから孤児院へ戻った。

 

夕食を食べてから風呂から出た後、シスターから分けて貰った梅酒を炭酸水で割った物をちびちび飲んで不貞寝した。

 

~~~

 

GW最終日の昼、俺は再びアカデミアへと帰って来た。

 

「よっす!おかえりクロト!」

 

「おっす。ただいまコナミ。ただいまで合ってんのか?」

 

「知らな~い」

 

フェリーから降りた俺は、船着場で待っていたコナミと合流した。

 

「ほらよ。頼まれていた土産だ。本土で売っているドローパンだぞ」

 

「うっひょ~!サンキュークロト~!」

 

コナミに頼まれていた土産を渡すとコナミは早速封を開けてドローパンにかぶりつく。…金の卵パンだと!?

 

アレってアカデミア校内の購買でしか販売されていないはずだぞ!?どうなってんだ!チートか!コイツの存在がチートそのものだったな!

 

「なぁなぁクロト!聞いてくれよ!サイコショッカーの精霊が出たんだよ!それも2体!」

 

「へぇ~」

 

「学生の大半が帰省して暇だったから十代たちとデュエルしていたんだけどさ、そうしたら突然…」

 

俺がアカデミアを離れていた間、セブンスターズたちに新たな動きは見られなかったみたいだが、アニメGXのストーリー通りにサイコショッカーの精霊が出現したらしい。何故か2体も。

 

アニメGXではサイコショッカーの出現は冬休みだったが、タッグフォースをベースにしたこの世界だとGWに発生することになったみたいだな。

 

「それから十代がサイコショッカーを追いかけて行ってさ!それに付いて行った先にあった発電所でサイコショッカーの精霊2体と闇のデュエルすることになったんだよ!」

 

「ほぉ~ん」

 

十代とコナミでサイコショッカーの精霊2体とタッグデュエルをして彼らを倒したら、サイコショッカーの精霊が現世に復活するための生贄にされそうになっていた高寺オカルトブラザーズ(高寺、向田、井坂)3名の救助に成功したらしい。大体アニメ通りの展開で何より。

 

他にもアカデミアの居残り組に対して十代と一緒にタッグデュエルを仕掛けまくったりしたそうだ。

 

「島に残っていた響先生にもデュエルを挑んだんだけどさ、クロトとの制裁デュエルの頃より遥かに強くなっていて、オレも一回負けちゃったぜ。もちろんその後は勝ったぞ」

 

コナミに一勝できる時点でこの世界では有数のデュエリストだろうな。

 

「十代は何度もコテンパンにされた後、定期的に先生にデュエルを挑むようになったな」

 

「ふぅ~ん。遊城も思うところがあったのかもな」

 

十代の場合、実技の方はそこそこ成績がいいのだが、筆記の方が最悪っぽいので、こちらをなんとかしないとこの世界の今後のアカデミアの方針次第では普通に退学(=女神爆笑&俺の死)になりそうで怖いんだよな。頼むから勉強してくれ。

 

俺はそんなコナミの話を聞きながら自分の寮へと戻っていった…。




オリ主の自業自得感もありますが、それでも海馬社長の無茶ぶりが凄まじいことになっていますね。コイツ、いっつも退学されかかってんな。

早乙女レイのデッキは【ライトロード】です。前回に比べると、タッグフォース4以降の新規ライトロードやトワイライトロードが加わっているのでより凶悪なデッキになっています。

教師の松村成基のデッキは【地属性グッドスタッフ】です。賢者ケイローン、ゴブリンエリート部隊などの優秀な地属性モンスターが多く投入されていて、当時のデッキとしては結構強めです。相手がライトロードでなければいい勝負が出来たと思います。

モーメント関連も少々きな臭くなってきましたね。オリ主は少し勘違いしていますが、ルドガーはゼロリバースの少し前にモーメントの逆回転を目撃して何者かの干渉を受けて精神がおかしくなったりしますが、ルドガーが正式にダークシグナーになるのはゼロリバースで死亡して蘇生した後からです。

次回の更新は4/3(土) AM7:00予定です。

戦車様、メイン弓様、誤記報告ありがとうございます。修正しました。

斎王琢磨の運命力は?

  • 原作遵守。強化万丈目に瞬殺される。
  • 原作微強化。強化万丈目を苦戦させる。
  • 原作大強化。強化万丈目を瞬殺する。
  • 原作超強化。ずっと私のターン!
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