【未完】遊戯王GXタッグフォース~2度目の人生は赤帽子の幼馴染~   作:嘘つき熊さん

126 / 167
前回のあらすじ:脳筋の極みワイトキングとひょっこりエルドリッチさん。

今回はデュエル無しのダイジェスト版です。次の話の為の前置き回となります。


第百二十二話 幕間:ラブデュエル

昨日、十代たちが最後のセブンスターズであるアムナエルを撃破したことが学園内に広まり、翌日の早朝から十代たちは他の生徒たちから学園の英雄扱いを受けていた。

 

具体的に言うと、本校舎前の道の両端に生徒たちが集まってその中央を十代、コナミ、翔、隼人が歩いていて周りから称賛の声を浴びていた。

 

野球の優勝パレードみたいだな。

 

「スゲーな遊城十代と赤羽コナミ!ついにセブンスターズを蹴散らしたんだってな!」

 

「オシリスレッドにしておくのはもったいないぜ!」

 

アニメと違って生徒の中でセブンスターズを倒したのは十代とコナミだけだ。同年代の生徒が危険な闇のデュエリストを倒したともなれば、他の生徒たちからしてみればこの扱いは妥当だろう。

 

俺も闇堕ちハゲ校長を倒しているが、名目上はハノイの騎士が倒したことにしているから俺がちやほやされることは無いが、俺は今の十代たちのような扱いをされるのは御免なので問題ない。

 

明日香や亮さんたちはセブンスターズの1人をハノイの騎士(俺)が倒したことを知っているが、そのセブンスターズが鮫島校長だったことまでは知らないはずだ。

 

「ありがとー!そんな大したもんじゃないからー!」

 

「なんて言いつつも、十代嬉しそうだな~」

 

「へぇ~。七精門の鍵を巡る戦いのこと、皆知ってるんだ~」

 

「こんな狭い島で派手に戦ってたんだもんナァ」

 

十代、コナミ、翔、隼人はそんな話をしながら校舎へと入っていった。ちなみに十代の首元には七精門の鍵はぶら下がっていない。

 

倫理委員会の調査によりアムナエルの研究室から発見された奪われてしまっていた5つの鍵、響先生が守護していた鍵、十代がアムナエルの遺物の中から見つけた鍵、計7つの全ての七精門の鍵は倫理委員会により厳重に管理されている。

 

明日には本土に移送することが決まったらしいので、間違ってもアニメの様に万丈目や吹雪さんが忍び込んだだけで奪われることは無いだろう。

 

「遊城十代か。クロノス先生や響先生と比べるとそんなに強いとも思わないんだけどなぁ」

 

「彼はツァンちゃんとのデッキ相性、悪そうですからね」

 

「先攻取られてシエン立てられたら融合使いに限らず大体誰でも苦労するだろ。第一、あの二人の先生は別格に近いからと比べてやるな」

 

他の生徒たちに交じって十代たちの凱旋の様子を見ていたツァンと紬には、今の十代はそこまで強そうには見えないらしい。

 

アニメとは違い、この世界の今のアカデミアには十代以外にも強いデュエリストがゴロゴロ居るし、彼女たちは制裁デュエルでのクロノス先生(強化版の【古代の機械】)や、セブンスターズ戦での響先生のデュエル(強化版の【堕天使】)を間近で見てしまっているからそう思うのは仕方ないだろう。

 

俺もコナミならともかく、今の十代なら例えアニメ版【賢者の石-サバティエル】を持っていたとしても多分勝てる。十代が本格的にネオスデッキを使い始めた上でディスティニードローしてくるされるのであれば…メタるしかないがな!

 

「白河様、つかぬことをお伺いいたします。今日の放課後のお時間を頂けますでしょうか?」

 

「紫がボク達にデッキ相談に乗って欲しいんだってさ」

 

「あ~、海の家のアルバイトの後であれば構わないぞ」

 

「「海の家?」」

 

そう。海の家だ。

 

~~~

 

終業式間近と言うことで午前中しかない授業が終わった放課後、俺はクロノス臨時校長に申請していて受理されたアカデミア島内の浜辺にある海の家でのアルバイトに勤しんでいた。

 

「店員さ~ん。焼きそば2つ~」

 

「あいよ~」

 

七月に入ってからアカデミアの浜辺では海開きが始まり、樺山先生が授業が終わった放課後に経営する海の家でアルバイトを募集するようになるのだ。

 

終業式まであと2日しかないが、セブンスターズの件が一段落した今はやることが無いので、俺は小銭稼ぎのためにアルバイトを始めたわけだ。

 

学校指定のジャージの上から店のエプロンを付けただけの恰好だが、今は真夏である。魔術により外部からの熱を和らげることのできる俺以外にこんな過酷なバイトをする物好きは居ないようだ。

 

調理に関しては孤児院ではシスターの手伝いで食事は作っていたし、中学時代は料理部に属していてそこそこの料理経験はある為、この海の家で出すくらいのメニューであればまぁまぁの出来の物を提供できる自負がある。実際、事前に試食してもらった樺山先生からはOKを貰ったしな。

 

「ヘイお待ち。焼きそば2つだ」

 

「美味しそうですね」

 

「相変わらずアンタって見かけによらず料理上手いよね」

 

「一言余計だ」

 

ツァンと紬は何処から調達したのか学校指定の水着ではない露出度は控えめな赤と緑の水着を着ていた。2人とも顔もスタイルも優れている為、他の男性客の視線を釘づけにしているが当の本人たちは気付いていない。更に俺に対して怨嗟の視線も感じるがこちらは気付いていても無視だ。

 

それにしても赤と緑か。前世で散々聞いたあのカップ麺のCMを思い出すな~。

 

「大変美味でございました」

 

「ご馳走様でした。さて、ボクたちはこのままひと泳ぎした後、女子寮に戻って着替えてから図書室に向かうから、そこで合流ってことでいい?」

 

「分かった」

 

ツァンたちは食べ終えた後の食器を返却口に戻した後、海へと泳ぎに行った。それを見計らって店内にいた男子生徒たちもここぞとばかりに海に向かっていったが…彼女たちには全然相手にされていないようだ。合掌。

 

彼女たちから少し離れたところでは、ウェットスーツに身を包んた吹雪さんは海でサーフィンを満喫していて、その様子をずっと見ている枕田ジュンコや浜口ももえたちも露出度控えめの水着を着用している。

 

いつもの黒い制服のまま砂浜に体育座りしている万丈目は見なかったことにしよう。

 

「はっはっはっは!」

 

「「キャー!吹雪様~♪」」

 

吹雪さんの華麗なサーフィンのライディングテクニック(確かチューブライディングだったかな)を見たジュンコとももえの2人はキャーキャー言いながらサインを貰った後、吹雪さんのいつものアレを間近で見てしまい、喜びの余り失神した。

 

失神だよな?熱中症とかじゃないよな?

 

前世で自動車免許取得の際に救命講習を受けて応急救護くらいはできるが、ライフセーバーの資格は持っていないから、もしヤバそうなら樺山先生に丸投げた後で鮎川先生を呼んで来よう。

 

「師匠!この万丈目準に力を!」

 

「うん?」

 

吹雪さんの異性を魅了する力に感服した万丈目は吹雪さんの前で土下座して弟子入りを始めた。アニメ通りなのだが、端から見ると夏の暑さで頭がやられたようにしか見えない。

 

アニメ通りだとこの後は、吹雪さんの提案に乗った万丈目が七精門の鍵を盗んで明日香にラブデュエル(笑)を仕掛けることになる。ちょっと見たい気もするが、このデュエルを最後のトリガーとして三幻魔のカードが復活してしまうので阻止しておくべきかどうか悩む。たまたまタイミングが悪かっただけのはずだからな。

 

今回に限っては倫理委員会が管理する七精門の鍵を万丈目たちが盗み出すことはほぼ不可能だろう。倫理委員会の連中は普通の人間相手には滅法強い。俺が特にやることもないわけだ。

 

「白河君、そろそろ客足が落ち着いてきたから今日はもう上がっていいよ」

 

「そうですか?じゃあお言葉に甘えて今日はもう上がりますね」

 

樺山先生から休憩を貰ったので、俺はツァンたちに合流するためにまずはラーイエロー寮で着替えを済ませに戻るのだった。

 

~~~

 

ラーイエロー寮の自室で軽くシャワーを浴びて制服に着替えた後、夕日が差し込む本校舎の図書室に到着してツァンたちと合流した俺だが、紬のデッキを見てその完成度の高さに驚いていた。

 

「てっきりレッド、グリーン、イエローの三種を入れた「6ガジェ」か「9ガジェ」の【除去ガジェット】か【代償ガジェット】辺りだと思っていたけど、【ゴールド・ガジェット】に【シルバー・ガジェット】まで揃っているとはな」

 

「ボクは初めて見るガジェットだけど、この金と銀のはそんなレアカードなの?」

 

「私は両親からの貰い物ですから何とも言えませんが、珍しい物なのでしょうか?」

 

「珍しいなんてもんじゃないぞ。海外先行発売のカードでまだ日本語版は世界に十数枚しか存在しないはずだ」

 

「「世界に十数枚!?」」

 

【ガジェット】はデュエルキング武藤遊戯が使用したカードの1つだからな。サイレントシリーズと違って希少価値は低めだが、デュエリストからの人気は高いから新規ガジェットが出たとなれば相当な価値となるはずだ。

 

そう言えば紬でいいところのお嬢様らしいからな。彼女の両親がI2社にコネとかあるのかもな。

 

彼女のデッキはEXデッキの方もエクシーズモンスターがそこそこ揃っているし、メインデッキに【ブリキンギョ】や【カゲトカゲ】と言ったレベル4エクシーズしやすいモンスターを投入している使いやすいデッキになっている。

 

「このデッキならツァンともいい勝負できるんじゃないか?」

 

「実際にボクと紫は一度デュエルしたことあるけど、結構苦戦したね」

 

「かなり堅実なデッキに仕上がっていると思うが、どんな感じに変えたいんだ?」

 

「全体的な火力を上げたいらしいよ。単純に考えるなら、フィールド魔法や装備魔法で強化するか、EXデッキのモンスターを追加するか辺りだね」

 

「はい。もしくは、相手に高速でアドバンテージを稼がれ続けると物量で負けてしまうことがありますので、そちらに負けぬように展開力を上げるのも検討中でございますね」

 

火力強化に展開力強化ね。

 

「なら、この辺りのカードはどうだ?」

 

「【緊急テレポート】とサイキック族チューナーか。シンクロ召喚のギミックを組み入れるのが狙いだね」

 

「その通り」

 

1つ目は【シンクロガジェット】。不足気味な火力をシンクロモンスターで底上げするデッキ強化案だ。

 

「こちらは【音響戦士ギータス】に【音響戦士マイクス】。ペンデュラムモンスタァでございますね」

 

2つ目は【ペンデュラムガジェット】。特殊召喚でも効果を発揮できるゴールドとシルバーが居るからこそ構成可能な展開力を強化したデッキ強化案だ。【ダイナミスト】辺りを混ぜるのも手だな。

 

「最後のは【起動兵長コマンドリボルバー】、【起動提督デストロイリボルバー】…えっ?何これ?強くない?」

 

「【起動指令 ギア・チャージ】、【起動指令 ギア・フォース】、【機動砲塁 パワー・ホールド】…どれも見たことのない強力な札ばかりでございますね」

 

3つ目はシンプルに新規ガジェットカードを追加して現状のデッキを総合的に強化する案だ。言い換えるならカードパワーでゴリ押しだ。

 

本当ならリンクモンスターの【プラチナ・ガジェット】辺りも見せてやりたいが、この世界の今の時代だとリンク召喚自体が存在しない上に強すぎるカードが多いから自作のオリカ扱いされるからな…。

 

「とりあえず全部あげるから、夏休みの間に色々と考えてみればいいんじゃないか?」

 

「これらのカードを、全部、あげる!?」

 

「アンタねぇ。前にも言ったと思うけど、これらのカードの資産的価値を考えて言ってるの?」

 

「1パック5枚入りで500円なんだから、1枚なら100円だろ」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

また面倒な話になって来たなぁ。俺としては数枚カードを上げたところでまだ3枚以上同じカードを持っているから何の問題もないんだけどなぁ。また何か適当に条件付けるか。

 

「じゃあこうしよう。紬、君なら和菓子の美味しい店とか知っているんじゃないか?」

 

特に理由や根拠は無いが、和服とかに会いそうな娘だからな。見た目で判断した。

 

「えっ?えぇ。両親が好みらしく、時々連れて行ってもらう店がございますが、そこの生八ツ橋は非常に美味だと断言できる店を存じておりますね」

 

「生八ツ橋!いいねぇ!それならカードの対価として、今度の夏休みにでも俺たちをその店に案内してくれよ。奢れなんて言わないからさ」

 

「えぇっ!?そ、それだけで良いのですか!?」

 

「良いよ良いよ。これで等価交換だな」

 

「等価とはとても思えませぬが…」

 

「そう言えばボクがカードを貰った時も友達になってくれって言われただけだったね」

 

去年の春くらいだっけ。正確には歴史の勉強を教えてくれって話だったと思うんだけど、大した違いじゃないから別にいいか。

 

「ツァンちゃんも白河様からカードを頂いたのですか?」

 

「うん。そうだよ」

 

「あぁ、だからツァンちゃんはそのデッキをいつも大切そうに扱って、時々ニコニコしながら眺めたりしているんですね」

 

「なっ!?ち、違うし!?そんな顔してないし!?ボクはただ侍が好きなだけだし!?白河から貰ったとか関係ないし!?か、勘違いしないでよね!」

 

ツァンのそのフレーズ、最近丸くなっていたから久々に聞いたな。俺はモテる事なんてないからな。鈴木や田中じゃあるまいし、勘違いなんてするわけない。

 

ツァンが渡したカードを大事にしてくれているのは初めての友達から貰ったプレゼントだからだと言うのは大体分かっているのだ。

 

ともあれ、ここはノルしかないよな、このビックウェーブにさ!

 

「いやぁ、そうだったんだ。照れるなぁ」

 

「ち、違うって言ってんでしょ!」

 

「そんなに大切にしてくれているならあげた甲斐があったなぁ」

 

「だから違うって…」

 

「ツァン、ありがとな」

 

「~~~!」

 

あっ、やべっ。ツァンの顔が真っ赤になってるじゃん。耳まで真っ赤にして俯いてしまい、顔を上げようとしなくなってしまった。

 

からかいすぎたかな?

 

「白河様は酷いお方ですね…」

 

「えぇ…そこまで酷かったかなぁ」

 

若干理不尽に感じるジト目の紬の言葉はさておき、なんとか紬にカードを渡すことには成功したな。余っているカード何枚か渡すだけで美味しい和菓子の店の情報が手に入るとか、この世界はこういうところがチョロいなぁ。

 

~~~

 

夕日が落ちて夜となり、図書室の利用時間を過ぎてしまったため、俺達は寮へ帰ろうと本校舎内の通路を歩いていた。

 

「ツァンが騒ぐから図書委員の人に怒られちゃったじゃん」

 

「アンタのせいでしょ!」

 

「ふふっ、私は楽しい時間でしたよ」

 

俺達が校長室の前を通り過ぎた頃に、正面から茶髪でスクエアタイプの眼鏡を掛けた白スーツの青年が歩いてきた。

 

「なぁ、そこの学生たち。この学園の校長室ってどこにあるか教えろよ」

 

光雄君じゃん。そう言えば君、今まで出て来てなかったねぇ。セブンスターズ襲来のせいで警備の倫理委員会のメンバーが一時的に激減しているとはいえ、良くここまで侵入出来たね?

 

あっ、明日香から盗んだ赤いスカーフが胸元から見えているな。もうセブンスターズとの戦いは終わったけど、今更何しに来たの?明日香にスカーフ返しに来たとか?

 

「は?何なのアンタ?」

 

「どなたでしょう?」

 

いきなり高圧的な態度で問われ、ツァンは明らかに不機嫌な表情となり、紬も警戒しているようだ。セブンスターズの件があったから、このどう見ても不審者な青年の態度に過敏に反応してしまっているのだろう。

 

「校長室ならこの先を少し進んだところ、と言うかそこの扉がそうだぞ」

 

「フッ、ありがとよ」

 

光雄君もといボーイは、俺の答えを聞くと俺達の横を通り抜けて校長室へと入っていった。

 

これは、あれか。アニメ同様に三幻魔の噂をカジノ戦で聞きつけて自分を売り込みに来たのか。アニメと違って既にセブンスターズの戦いが終わったことは知らないんだろうな。

 

「何なのあの態度、ムカつくなぁ」

 

「あまり感じの言い方ではありませんでしたね」

 

「デュエルアカデミア名物、良く居る不審者だろ?」

 

「名物って…でも、確かにこの学園は不審者が多いね」

 

「黒服の大男、船に密航してきた自称ジャーナリスト、そしてセブンスターズ…。月に1度は不審者の噂を聞いている気がします」

 

「俺たちに関わりが無いならどうでもいいさ。不審者のことは忘れてさっさと帰ろう」

 

「そうだね」

 

「そうですね」

 

俺達がそのまま階段を降りようとした時、遠くの校長室からわずかに声が聞こえてきた。

 

『だ、誰ナノーネ!?、不審者ナノーネ!?』

 

『違う!オレの名はボーイ!どうだ?このオレを…』

 

『不審者は捕縛するノーネ!実力行使デス―ノ!倫理委員会、カモーンなノーネ!』

 

『この不審者め!大人しくしろ!』

 

『この…てやっ!』

 

『カード手裏剣のつもりか!効かんな!』

 

『馬鹿な!?全員が素手であの速度のトランプを掴んだだと!…うぉっ!は、離せ!』

 

『クロノス臨時校長、不審者の捕縛完了しました』

 

『お疲れ様ナノーネ。私は例の件の後始末で忙しいので後の処理は任せるノーネ』

 

『了解です。さぁ歩け不審者!』

 

『HA☆NA☆SE!オレの話を聞け!』

 

『話は取調室でみっちり聞いてやる!行くぞ不審者!』

 

アニメではボーイ(光雄君)の放ったトランプで倫理委員会のメンバー4人は全員あっさり敗北するのだが、この世界の倫理委員会のメンバーはあの海馬コーポレーションの特別養成カリキュラムと言う名の地獄を超えてきた者たちだ。面構えが違う。

 

多分、俺でもメカレオンのステルス技能を使わずに正面から段ボールを使って潜入しようとしたり、エロ本を囮にして突破しようとしたとしても恐らく捕縛されてしまうだろうな。

 

~~~

 

ツァンたちをブルー女子寮前まで送って行った後にハノイの騎士用PDAを確認して見ると、『不審者の捕縛情報』と言うタイトルのメールが送られてきていた。

 

メールを開いてみるとさっき会ったボーイ(光雄君)の顔写真が添付されていた。まぁそうなるよな。

 

「ただ、明日香の大切にしていた赤いスカーフはまだ光雄君に盗まれたままで返却されていないんだよなぁ」

 

あの赤いスカーフ明日香が母親から貰った大切な物らしい。俺には前世・今世どちらも両親の記憶は殆ど残っていないからいまいちピンと来ないが、親から貰った物と言うのは恐らく大切な物なのだろう。それなら何とか取り返すチャンスは与えてあげたいと思うのが人情だろう。

 

アニメでは明日香と光雄君がデュエルして取り返すのだが、このままだと光雄君は明日香と会わずにそのままスカーフと一緒に豚箱行きだ。

 

そうなる前にハノイの騎士としてなんやかんやと理屈をつけて明日香とのデュエルをセッティングしてみよう。

 

~~~

 

翌日、午前中の授業が終わった放課後に砂浜で明日香とボーイがデュエルを開始していた。

 

元々彼はたまたまデュエルアカデミア近海を移動していた大型カジノを内包する豪華客船にて三幻魔の噂を知り、セブンスターズとの戦いの為に単身で自身を売り込みに来ていただけということが倫理委員会の調査で判明していた。

 

今回のデュエルは、念のために自身を売り込みに来るレベルのデュエルの腕前であったかどうかを確認すると言う建前を作り、ハノイの騎士の名前を使って明日香をデュエルの相手として推薦し、彼女にも事前の連絡を入れて承諾を得ておくことで実現したのだ。

 

 

「うわぁぁぁっ!」

ボーイ LP:1700→200

 

 

明日香のいつも通りのサイバーエンジェルに対してボーイはかなりの善戦をして粘っていたが、彼のギャンブルデッキの布陣はもうボロボロで彼のLPは風前の灯火だ。

 

【セカンド・チャンス】のやり直しによる【モンスターBOX】の効果が決まっていなければ後攻1ターンキルだっただろう。

 

「店員さ~ん、焼きそば2つ~」

 

「あいよ~」

 

「店員さ~ん、素敵な彼氏を紹介して下さ~い」

 

「すいません。それ来世からなんですよ」

 

「店員さ~ん、たこ焼き2つ~」

 

「あいよ~」

 

「店員さ~ん、素敵な彼女をプリーズ~」

 

「鏡と現実を見てくたばれ」

 

「店員さ~ん、ホットドック4つ~。あとコーラも4つお願いしま~す」

 

「あいよ~」

 

俺はそのデュエルを海の家でアルバイトをしながら見ていた。当然、明日香とボーイがこの場所でデュエルしているのはハノイの騎士として俺がこの場所を指定したからである。その理由も簡単で、俺がバイトをしながらデュエルの結果を知るためである。

 

職権乱用?知らんなぁ?そもそも俺はハノイの騎士としては給料すら貰ってないんだから職員ですらないのだ。これくらい構わんだろう?

 

 

「【モンスターBOX】の効果が決まればそちらのモンスターの攻撃力は0となる!天上院、お前に大ダメージが入るんだぞ!?」

 

「【セカンド・チャンス】を失った貴方に当てられるかしら?貴方は一度目のコイントスは必ず外している。貴方にギャンブルの才能は、無い!」

 

 

ボーイと明日香の会話を盗み疑義していると、何やら耳の痛い話が聞こえてくる。

 

俺は【セカンド・チャンス】があったとしてもこの世界でコイントスが成功した確率は10%を切るくらいだからな…。前世ではこんなに酷くは無かったのだが、どうしてこうなったのやら。

 

「ホットドック4つとコーラ4つ、お待ちどうさまで~す」

 

「おぉっ!美味そうじゃん!頂きまーす!」

 

「うん、美味いな。相変わらずクロトは料理上手いなぁ」

 

「白河君の料理を食べたのは去年の白河君の屋台以来だけど、去年よりもさらに美味しくなってるッス!」

 

「ボリュームもあっていい感じなんだナァ!」

 

「そりゃどーも」

 

俺と同様に明日香のデュエルを海の家で見物している十代一行から受けた注文を渡してDPを受け取る。

 

この海の家のアルバイト代はまさかの歩合制だ。俺以外にバイトは居ないので、売れれば売れるだけ俺の収入が増えるのだ。

 

明日香とボーイがデュエルを行うことは学園内に知れ渡っていたので、砂浜にはアカデミアの女王に挑む無謀な挑戦者とそのデュエルを見る為に大勢の観客が押し寄せてきていた。もちろん、海の家も大繁盛していた。

 

計画通り。うぇっへっへ。ぼろ儲けだぜ。

 

 

「【サイバー・エンジェル-伊舎那-】で【サンド・ギャンブラー】に攻撃!」

 

「【モンスターBOX】の効果発動!コイントス…外した!?うわぁぁぁっ!」

ボーイ LP:200→0

 

 

デュエルに目をやると、ボーイは【モンスターBOX】のコイントスを外し、ボーイの【サンド・ギャンブラー】が【サイバー・エンジェル-荼吉尼-】に胸ぐらを掴まれて往復びんたを食らった後にアッパーカットをお見舞いされ、ボーノのLPともども天に召されていた。

 

どうやらちょうどデュエルの勝敗が付いたらしい。明日香が負けるとは思っていなかったので、ボーイには悪いが残当の結果だ。

 

「ボーイか。腕前は悪くなかったが、運のみで明日香に勝てるわけがなかったな」

 

「そうですね」

 

十代たちは別のテーブルについてデュエルを見ていた亮さんと話してみたが、明日香が負けるとは露程にも思っていなかったようだ。

 

「でも、ギャンブルデッキは面白いコンセプトだよね」

 

『マスターはギャンブルにハマりすぎないようにしてくださいね』

 

亮さんと同じテーブルについている藤原先輩とそして彼のカードの精霊オネストも明日香が負けるとは思っていなかったようだな。

 

「持って行けよ。オレの大事なものだ。好きだった娘が持っていたスカーフ。どうしても欲しくてさ。返すよ」

 

「あっ…」

 

明日香が母親から誕生日に貰ったという大切な赤いスカーフがボーイから明日香に返却される。ボーイの殆ど告白と言えるセリフは完全にスルーだ。

 

イケメンからの渾身の告白をアッサリとスルーする明日香さん、男前すぎる。

 

「これでもう一か八かの賭けは出来なくなっちまうけどな。頑張れよ。ま、天上院なら心配ないか」

 

「光雄君…」

 

「光雄じゃねえ!ボーイだよ!ま、どっちでもいいけどよ」

 

ボーイは失意のまま砂浜の先で待機していた倫理委員会と合流したようだ。

 

初恋にもデュエルにも敗れてしまったな。彼には強く生きて貰いたいものだ。

 

「前座のデュエルは終了したようだね。さぁ天上院君、今度はボクとのデュエルを受けて貰うよ!」

 

「良いよ万丈目君!今の君は輝いている!胸きゅんポイント追加だ!」

 

「ありがとうございます、師匠!」

 

そして、ボーイが立ち去った後に遊馬の前に現れたのはアロハシャツ姿の吹雪さんと、彼にそそのかされたいつもの姿の万丈目だ。

 

ボーノとのデュエルが終わるのを律儀に待っていた万丈目とイケメンにモテまくりの明日香のラブデュエル(笑)が始まる。

 

もちろん、アニメとは違って万丈目の首元には七精門の鍵は存在しない。鍵は今、倫理委員会が本土に運送するために砂浜に止まってあるトラックに積み込んであるらしい。

 

倫理委員会のメンバー二十人体勢での警備をしているらしく、オカルト関連の相手で無ければ彼らを突破できるものはそう居ないだろう。

 

「先ほども思ったが、あの男は天上院とどんな関係なんだ!気になる!」

 

「ボーイ。そろそろ本土に向かいたいのだが?」

 

「待ってくれ!せめてこのデュエルが終わるまでは待ってくれ!」

 

「はぁ…このデュエルが終わるまでだぞ?」

 

「助かる!」

 

トラック前にはボーイと倫理委員会の姿がある。ボーイが自身の後に明日香に挑む万丈目が気になるらしく、万丈目のデュエルを見届けた後に本土に向かうように頼んだみたいだ。

 

 

「ボクは手札から魔法カード【恋文】を発動!さぁ天上院君!ボクのフィールドのモンスターのコントロールを得るか!それともボクの伏せカードをそちらにセットするかを選んでくれ!」

 

「【おジャマイエロー】を貰うよりは…セットカードを頂くわ」

 

 

ボーイとのデュエルもそうだったが、万丈目とのデュエルもアニメに近い展開となっている。

 

ただアニメと違って明日香がガチガチのサイバーエンジェルデッキを使用しているので、万丈目のLPはいつ吹き飛んでもおかしくない。

 

 

「戦闘でダメージを受けたこの瞬間、罠カード発動!【運命の分かれ道 ドラマチック・クロスロード】発動!君はまた選択しなければならない!手札から1枚カードをランダムに捨てる!もしくは君の手札をボクに公開し、そこから1枚選んでボクの手札に加える!」

 

「…」

 

「天上院君、ボクの想いを受けれてくれるなら、手札を見せて欲しい。君の全てをボクは見たい。そして君の手札とボクの手札でこのラブデュエルを完成させるんだ!これがボクたちの初めての共同作業になるんだよ!」

 

「…」

 

「天上院君、お願いします」

 

万丈目がなにやら体中がかゆくなるようなセリフを乱発しているが、明日香の様子は特に変化がない。これには吹雪さんも予想外だったらしく…。

 

「残念だが、万丈目君のラブライフは既に0…」

 

「ごめんなさい万丈目。私はカードをランダムに捨てる方を選ぶわ」

 

「そんなー!」

 

「私はデュエルを裏切れない。私は、デュエルに恋しているの」

 

 

万丈目は轟沈した。もう、完膚なきまでに終わった。

 

イケメンからの渾身の告白を迷うことなくまたもやバッサリ断る明日香さん、男前すぎる。

 

ただ、こんなアホなやり方を取ったとはいえ彼の勇気には敬意を表したい。異性に告白するなんてとても勇気のいることだ。俺には出来ないかな。

 

俺には告白する相手も、告白されることも今までの人生で一度もなかったんだけどさ!

 

「万丈目君、済まない!タオルだ!」

 

「まだだ!こうなったらデュエルに勝つことで君の心を奪う!」

 

「万丈目君…!」

 

万丈目は復活した!もう駄目だと駆け寄った吹雪さんも感動している!

 

なんて奴だ!あれほどバッサリ振られたにもう立ち上がるとは…!三沢と言い万丈目と言い、恋に狂った連中は一味違う!奴らこそ漢の中の漢だな!

 

 

「「おジャマトークン」は破壊されたら1体につき300ポイントのダメージが入るはず…!」

 

「破壊じゃないわ。これは儀式魔法の為のリリース」

 

「あっ」

 

「【サイバー・エンジェル-弁天-】で【おジャマ・キング】を攻撃!」

 

「うぅ…戦闘ダメージと効果ダメージでボクのLPは0…」

万丈目 LP:2000→0

 

 

万丈目、負けちゃったけどな。トリッキーな【おジャマ・キング】と【おジャマトリオ】のコンボでかなりの妨害性能を発揮していたんだが、惜しかったな。

 

序盤はデュエルに勝利することが最優先ではなかったとはいえ、色ボケしすぎて意味不明なプレイングが多すぎた。いくら万丈目とはいえ、その状態で明日香に勝つのはほぼ無理だろう。

 

「オレは…一、十、百、千、万丈目サンダー…」

 

「明日香!こんな格好いい万丈目君に、何故惚れない!?」

 

「万丈目君…」

 

打ちひしがれる万丈目とこの結果を嘆く吹雪さん。傷心の彼らには後でタコ焼きくらいは奢ってやろうかな。

 

そんな時、それは起こるべくして起こった。

 

「こ、これは…!」

 

突如、島全体を揺るがすような地鳴りが発生し、その場にいた人々はパニック状態に陥っていた。俺も海の家の食器が割れない様にするので手一杯だ。

 

ふと視線を移せば砂浜の端の方に止まっていたトラックの荷台が内側から破られており、そこから金色の金属のような物が島の中心付近に向かって飛来していくのが見えた。間違いなく七精門の鍵である。

 

マジかよ~。今まで結構アニメとは違う感じだったのに、ここはアニメ通りに三幻魔復活するの~?




セブンスターズも全員倒れたので、これで三幻魔の復活は阻止できましたね!と上手く行けばよかったんですけどね。

【ガジェット】自体は過去に別キャラで登場させてしまったので、紬さんには強化版を使用してもらう予定です。また一つ、デュエルアカデミアの上位陣への壁が高く厚くなりますね。

ボーイこと光雄君は、セブンスターズとの戦いが思いのほか早く収束してしまったので出るタイミングを逃してしまいましたね。ただ、彼もタッグフォース3での登場キャラですが、デュエルはダイジェストとなりました。サイバーエンジェルに善戦する姿が想像できなかった…。

万丈目のラブデュエルもダイジェストになりました。使うデッキが特殊で面白そうかとも思いましたが、サイバーエンジェルに善戦する姿が(以下略)

次回の更新は5/15(土) AM7:00予定です。

きりぼし様、カードパックの金額についてのコメントを頂きましてありがとうございました。参考にさせて頂き本編を微修正させて頂きました。

メイン弓様、誤記報告ありがとうございました。修正しました。

今後のアカデミア校長は? ※多分、本編にそこまで影響ないです。

  • 鮫島校長
  • ナポレオン校長
  • クロノス校長
  • オリキャラ校長
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。