【未完】遊戯王GXタッグフォース~2度目の人生は赤帽子の幼馴染~ 作:嘘つき熊さん
今回はデュエル無し。次の話への布石です。
<天上院吹雪視点>
8月中旬、お盆休みに入って数日経った今日はいよいよJRDGの初日が始まる日だ。
ボクは妹の明日香と共にJRDGが開催されるデュエルサーキット前の公園へとやって来ていた。会場にはクロト君が持っているチケットが無いと入れないから事前に待ち合わせをすることになっている。
「おはようクロト君、コナミ君」
「おはようクロト、赤羽君もおはよう」
「おはよう2人とも」
「おはようだ!2人とも!」
朝の公園の入り口には顔見知りが二人、白と黒を基調とした私服姿のクロト君といつも通り赤い帽子に赤いジャケットを羽織ったコナミ君がボク達を待っていた。
「あら?私たちが最初なの?」
「そうみたいだね。クロト君たちを除けばボク達が一番この町に近い場所に住んでいるからね」
「それもありますが、集合時間まであと30分以上ありますよ」
「さっき十代や翔たちから連絡があって、もう家を出たみたいだからもうすぐ来ると思うぞ」
「藤原先輩からも連絡がありましたよ。藤原先輩たちももう少しで到着するみたいです。万丈目は…連絡先を聞いてなかったな。切符の買い方が分からないなんて落ちは無いよな?」
「流石にそれは無いと思うわよ」
集合時間まではまだ十分に時間はある。彼らなら間に合うだろう。
「明日香たちは駅からずっと歩いて来て疲れているだろ?そこのベンチで休んでいたらどうだ?」
「えぇ、そうさせてもらうわ」
「そうだね。お言葉に甘えさせてもらうよ」
クロト君に勧められるまま、明日香と共に公園の中央付近にあるベンチへと腰を下ろす。どうやら思っていたよりも疲労が溜まっていたらしく、ふぅ、っとため息が出てしまった。
この場所は屋根がついており、8月の直射日光から身を守ってくれているおかげでかなり涼しい。公園を囲むように生えている周りの木々もここ一帯の温度を下げるのに一役買っているらしく、休憩するのには最適な場所だろう。
「明日香、吹雪さん。これを飲むといい。熱中症対策だ」
「ありがとう」
「助かるよ」
クロト君はボクたちに飲料水が入ったペットボトルを渡すと公園の入り口へと戻っていった。
渡された飲料水を口に含みながら周囲を見回すと、視界にはちらりとJRDGで使用される巨大なデュエルサーキットが見える。
ただ、それ以外の光景は何処かで見たことがあるような、何となく既視感を覚えるような…思い出した!ここは、ボク達が初めてクロト君と出会った公園じゃないか!懐かしいな!
「あの時のクロト君を見て、ボクは実に珍妙な格好をした面白そうな少年だなと思って、声を掛けたんだったな」
「あの時?…あぁ、この公園って私たちがクロトと初めて会った公園ね。今思い出したわ」
ボクの独り言に明日香が相槌を打ってくれる。
「あの頃はあんなデュエルコートは無くて、この公園も全然人気が無かったよね」
「そうね。あの時は私はまだ小学校2年生で、この公園を兄さんと散歩していたわ。するとこのベンチで小休止する灰色の外套を着込んだクロトを見つけたのよね」
「ハノイの仮面をベンチの横に置いて、素顔を晒してたね」
「ふふっ、あれじゃ変装の意味が台無しだったわ。そんなクロトに兄さんはいつものアレを見せたのよね」
「君の瞳に、何が見える?」
「やらなくていいからね?」
当時を思い出したのか、明日香はくすりと笑った。ボク達と彼との関係はここで彼とデュエルし、敗北することから始まった。実は年下の子に負けたのは初めてだったから、少しショックだったんだよね。
まさか、あの時に出会った少年とこれほど長く付き合うことになるとは思いもしなかったけどね。
「あれからデュエルアカデミアに入学して、色々あったなぁ。アメリカに留学したり、異世界に行ったりしたりね」
「とんでもない経験よね。兄さん、行方不明になっちゃうし」
「その件については本当に申し訳ないことをしてしまったね」
「ごめんなさい。責めるつもりなかったの。兄さんは無事だった。それで充分だわ」
アメリカで偶然クロト君と再会し、クロト君の協力のお陰でアメリカのオカルト事件は解決した。そして、その時の彼の助言と彼から貰ったいくつかの道具のお陰でボクはダークネスの世界から無事に藤原を助け出すことが出来た。
ボクの感覚では異世界に言っていたのは1週間ほどだったのだけれど、こちらの世界では約2年が経過していた。その間、ボクは行方不明扱いになっていたらしく、明日香や両親を酷く悲しませてしまった。そんな時、明日香を支えてくれた亮やクロト君には感謝しきれない恩があるな。
「改めて考えて見ると、クロト君って本当に不思議な少年だよね」
「あれを不思議の一言で済ませていいのかは疑問だけれど、その通りね」
幼き日からハノイの騎士として日本各地を回り、何処からか手に入れた様々なカードとまるで何人もの人間が知恵を出し合ったかのような戦術を用いてデュエルの大会を荒らしまわったと聞いたことがある。
そしてあの留学先のアメリカで起こった破滅の光事件。現地の警察やアメリカ・デュエルアカデミアがお手上げの状態で海馬コーポレーションを頼った際に単身派遣されて来たのが当時まだ中学生の彼だった。最初の事件発生から半年間、警察機構がほぼ手がかりすらつかめていなかった案件を彼は渡米してから一週間ほどで解決してしまった。
更に、詳しくは聞いていないけれど、ハートランドシティでのテロ事件や舞網市でのリアルソリットビジョンシステムの暴走事件の解決にも噛んでいるらしい。
「彼は一体何者なんだろうね?」
「それは私には分からないわ。私が分かるのは一つだけ」
「それはなんだい?」
「彼は、白河クロトは私達の友人であるということ。これだけは分かるわ」
「ふふっ、そうだね」
そこまで話すと、クロト君たちが公園の入り口からこちらに向けて手を振っているのに気付いた。
よく見ると手招きをしているみたいだ。恐らく他のメンバーが到着したのだろう。
「皆、到着したみたいだね。じゃあ、行こうかアスリン」
「アスリンは止めて」
ボクは少し不機嫌になってしまった愛しの妹と共に、クロト君たちのいる公園の入り口へと歩き出した。
~~~
<前田隼人視点>
8月中旬、お盆休みに入って数日経った今日はいよいよJRDGの初日が始まる日だ。
オレと十代は待ち合わせ場所であるJRDGが開催されるデュエルサーキット前にある公園へと向かっていたのだが、その道中で珍しい人物と合流することになった。
「十代?それに隼人か。貴様等、こんなところで何をしている?」
「あっ、万丈目なんだナァ」
「万丈目?お前こそ何をしてるんだ?」
「万丈目、サンダー!」
オレたちはJRDG会場に向かう為に電車を乗り継いでいると、切符の券売機の前で立ち往生している万丈目を発見したのだ。
デュエルアカデミアではもう恒例となりつつあるやり取りをしつつ、十代と万丈目は仲良く話をしている。(万丈目はきっと否定するだろうが)
それにしても一体何をしていたのだろう?まさか、いくら万丈目グループの御曹司とはいえ、切符の購入方法が分からないとか?そんな漫画やアニメみたいなことがあるだろうか?
「オレたちはこれからJRDGを観戦しに行くんだナァ」
「何?貴様たちもか?」
「そうだぞ」
どうやら彼もJRDGの観戦に行くようだ。万丈目は日本でも有数の万丈目グループの三男坊だから、もしかしたらオレ達とは違ってゲスト枠として呼ばれているのかもしれない。
「それよりも万丈目、もしかして切符の買い方が分からないのか?」
「なっ!?馬鹿を言うな!」
「こうやって買うんだぜ」
「それくらいオレだって知っている!」
「お礼は言わなくていいぜ」
「誰が言うか!」
「痛たたたたっ!締まってる締まってる!ギブギブ!」
「やかましい!」
駅のホームど真ん中でじゃれあう二人と他人の振りをしつつ先に切符を買ってホームに向かった後、彼らがやって来るのを待っている間にオレは彼らのことについて考えてみた。
遊城十代。入学試験でデュエルアカデミア実技最高責任者のクロノス・デ・メディチを破ったオシリスレッドの生徒にしてオレと翔の友人兼ルームメイトだ。
デュエルを心から楽しむことのできる奴で実技に関しては同年代でもトップ10には入っているはずだ。セブンスターズや三幻魔などの事件においても功労者であり、赤羽コナミと並んでその名前を知らないアカデミア本校生は居ないと言っていいだろう。その一方では(最近はかなり改善しているが)筆記などの成績は悪く、授業では時々寝ていたりして授業態度もあまり良くない。その姿勢は賛否両論だろうが多くの人間に影響を与えてきただろう。オレもその一人だ。
万丈目準。デュエルアカデミア中等部からの生え抜きエリートであり万丈目グループの三男でもある、元オベリスクブルーの成績上位者で現オシリスレッドの生徒だ。
デュエル技能もデュエル知識も高くこちらもやはり同年代でトップ10の実力者だ。それよりも特筆すべきはそのカリスマ性だろうか。入学してすぐの頃は調子が悪かったらしく十代や三沢に敗北してデュエルアカデミアを去ることとなり、その後はノース校を渡ったらしくそこで持ち前のカリスマ性とデュエル技能により瞬く間に彼らの心を掴み、対抗戦では三沢にリベンジを成功させてデュエルアカデミア本校へと帰還したとんでもない男だ。
「隼人、置いて行くなんて酷いぜ」
「全くだ!」
「ああいう時は他人の振りをするのが一番なんだナァ」
十代たちからは非難されたが、あのじゃれあいを止める理由が特に無かったので問題ないだろう。
十代たちと合流して電車に乗ってJRDPの会場を目指す。その際、なんだかんだで万丈目も途中まで一緒に行くことになった。やっぱりこの2人は仲が良いと思う。
「十代、さっきからご機嫌なんだナァ」
「分かるか?」
「そんなにニヤニヤしながらカードを見ていれば誰でも分かる」
「それは、この前コナミや翔たちと一緒に買いに行ったカード?」
「そう!オレのニューヒーローたちだぜ!」
十代が電車の中で自身のカードを取りだしてニヤニヤし始めた。恐らくはこの前カードを買いに行ったときに当たったヒーローを眺めているのだろうと思ったら案の定だった。分かりやすい。
「エアーマンにブレイズマン、プリズマーにシャドーミストか。先日の響プロの試合で見た強力なHEROモンスターだな」
「おっ、お前も見たのかあの試合!凄いよな響プロ!オレ一発でファンになっちゃったぜ!」
「プロデュエリストを目指すのであれば当然だな。うん?よく見れば以前オベリスクブルー女子の宮田が使っていたカードもあるな」
「格好いいだろ?響プロのパックとは別にいくつか買ってみたら入っていたんだぜ!」
電車を降りてからもこの2人は十代の新たなHEROモンスターについて話し合っている。プロデュエリストの話やカードイラストの話ならともかく、デュエルの戦術の話になるとオレはこの2人の知識に付いて行けない。
この2人に限らず、デュエルアカデミアには明日香さんや三沢、コナミや白河など同年代でも群を抜いて他を寄せ付けない強いデュエリストが居る。情けない話だが、オレは彼らに何度も嫉妬したことがある。
何故オレはこんなに負けるのに彼らはずっと勝ち続けていられるのか?そんな気持ちは恐らくオレの同級生なら誰しもが感じたことがあるだろう。もちろん努力もしているだろう。生まれ持った才能の差もあるのだろう。明確な答えはまだ出ていない。
言い訳に聞こえるだろうが、実はそもそもオレはそこまで自身が行うデュエル自体はそこまで好きではない。ただ、デュエルモンスターズそのものについてや十代たちが楽しそうにデュエルする姿を見るのは好きだ。
一度は挫折し、父と十代たちのお陰で再起したオレだが、オレはきっと純粋なデュエリストには向いていないのだと思う。ならば、今後オレが選ぶべき道は…。
「おーい、隼人!急に立ち止まってどうしたー?」
「ふん。ぐずぐずしていると置いて行くぞ!」
気が付くと考え込んで立ち止まってしまっていたようだ。幸い、十代たちも待ってくれていた。急いで彼らに合流する。
「考え事をしていたんだナァ」
「考え事?」
「するなとは言わないが、歩きながらだと危ないから止めて置け。車にでも轢かれたらどうするつもりだ」
「そうだぞ」
「ゴメンなんだナァ」
合流してから歩いて数分後、もう待ち合わせの場所の公園は目の前で、入り口にはコナミがこちらに気付いて手を振っている。何故か白河も一緒に居て、誰かを待っているようだ。
「十代!隼人!待ってたよ!」
「おっすコナミ!数日振り!」
「おまたせなんだナァ」
どうやら白河が待っていたのは万丈目だったらしい。オレ達の隣に万丈目の姿を確認した白河はホッとした表情を見せていた。
正確には彼は万丈目を含む5人を待っているそうだ。
「思ったよりは早かったな万丈目。切符はちゃんと買えたのか?」
「ええい、貴様もか!当たり前だ!全く!なんて失礼な奴らだ!」
デジャヴュのような光景を目の当たりにしながらも、こうしてオレたちはコナミ達と合流した。
~~~
<藤原優介視点>
8月中旬、お盆休みに入って数日経った今日はいよいよJRDGの初日が始まる日だ。
ボクはオネストと共にJRDGが開催されるデュエルサーキット前にある公園へと向かっていた。そこで白河君や吹雪たちと待ち合わせをしているのだ。
「行ってきます」
「あぁ、行ってらっしゃい」
「優介、車に気を付けるのよ」
「分かってるよ」
『マスターの安全はお任せください』
少し前まで記憶喪失だった父と母に声を掛け、ボクに長年連れ添ってくれているカードの精霊オネストと共に家を出た。
家から駅までの景色は、デュエルアカデミアに入学する前のボクの記憶とほぼ変わらないがそれでもやはりどこか少しずつは変化があり、その変化に気が付くたびに月日の流れを感じる。
誰にも忘れられたくない、誰も忘れたくないと願ってダークネス世界に行き、世界中の人間がボクのことを忘れる中で唯一忘れないでいてくれた吹雪がボクを迎えに来てくれて…。
「そう、あの時にボクは吹雪とデュエルしてそれから…十二獣、モルモラット、ブルホーン、ネズミ、うっ、頭が…!ネズミ、ネズミ…うわぁぁぁぁっ!」
『マスター!?しっかりしてください!』
「はっ!ボクは一体何を…」
『マスター…おいたわしや…』
気が付くと少し錯乱していたらしく、周囲の人たちが胡乱げな表情でこちらを見ている。オネストもこちらを心配そうな表情で見ている。あぁ、また彼には心配をかけてしまったな。
えっと、何か考え事をしていたような…あぁそうだ。人間界へ戻って来ると既にこちらでは2年の月日が流れていて、その変化を目の当たりにして感傷に浸っていたんだったかな。
「この町も少し変わったよね」
『はい。あの店なんかはマスターがアカデミアに入学する前は無かったはずですね』
「そうだね。何の店だろう、タピオカ?ミルクティー?」
『少し前にそんな飲み物が流行ったことがあると白河から聞いたことがあります』
「そうなんだ。じゃあボクも飲んでみようかな」
すっかり寂れてガラガラになっていたその店でドリンクを購入した後、徒歩移動で最寄り駅に到着して電車にて数駅ほど移動した。
目的地に着くには電車を何本か乗り換えなければならないので、乗り換えの為にホームを移動しているとオネストが見慣れた顔を発見したようだった。
『おや?マスター、あの後ろ姿は三沢大地ではありませんか?』
「本当だ。三沢君。おはよう」
「藤原先輩?おはようございます。こんなところで奇遇ですね」
薄い黄色のジャケットに緑のインナーと言う服装をした三沢君がそこに居た。彼の容姿は優れているので周囲の女学生たちがちらちらと彼の横顔を覗き見しているようだが、彼自身は気が付いていないみたいだ。
彼もどこかに出かけるのだろうか?
「藤原先輩もJRDGの観戦ですか?」
「うん。白河君に誘われてね。何でも彼が持っているチケットがあれば5人まで無料で入場できるそうなんだよ。ボクもってことは、君もそうなのかい?」
「えぇ。オレの場合は赤羽に誘われたんですけどね」
「赤羽…あぁ、コナミ君のことだね」
「はい」
よくよく話を聞いてみると待ち合わせの場所や時間も同じらしく、それならばと言うことで彼の提案により道中を一緒に行くことになった。
会場近辺の地理には明るくなかったのでこの提案は助かる。
それから三沢君と最近注目しているプロデュエリストの話やデュエル理論の話、尊敬している数学者の話など他愛無い話を続けた。
デュエルアカデミアでも吹雪や亮に次いで彼とはよく会話する。ボクはダークネス世界での件があって2年ほど留年しているので顔なじみが少なく、同学年で話す相手があまりいないのだ。三沢君を除けば白河君や吹雪の妹の明日香さんくらいだ。
「へぇ、舞網市のデュエル大会にも参加したことがあったんだね」
「えぇ。結果は散々でしたがいい経験になりました。ペンデュラム召喚、融合召喚、シンクロ召喚、エクシーズ召喚、そのどれかを極めたエキスパートたちが集まった非常にレベルの高い大会でしたね。恐らく、今のトッププロデュエリストに並ぶ実力の持ち主ばかりだったと思います」
「それほどだったのか」
「赤羽とはそこで出会いました。アイツは参加者の中でも特に強く、当時も全く歯が立ちませんでしたね」
「彼はボクが知る限り、唯一白河君を倒したデュエリストだからね」
「白河ですか。アイツもまた優れたデュエリストですね。アイツと初めてデュエルした際に使用されたデッキのドラゴンたちは今でもオレの最大最強の仮想敵の1つですよ」
三沢君が今までに経験してきた中で思い入れの深いデュエルの話などを聞いていると、その流れでデュエルアカデミアの話になるのは自然な流れだっだ。
「カイザーと呼ばれた丸藤亮の実力は本物でした。入学したてのオレでは手も足も出ずに負けてしまいましたね」
「亮はボク達の中でも突出して勝利を目指していたからね」
「そして、彼に並び評される吹雪先輩や藤原先輩もまたオレの中では超えるべき大きな壁ですよ」
「吹雪はともかく、ボクもかい?流石に買いかぶりすぎだよ」
「いえ、実際にデュエルして敗北した時に、流石はアカデミアの三天才と呼ばれた人たちだと実感しましたよ。いずれは勝たせてもらいますがね」
「ははっ、その時はお手柔らかに頼むよ」
三沢君は先日のセブンスターズの事件以降、自身の実力を高めようと必死だったらしく、アカデミアに所属している強いデュエリストに片っ端からデュエルを挑んだみたいだ。
コナミ君、遊城君、白河君、明日香さん、万丈目君、亮、吹雪、そしてボク。他にも何人かオベリスクブルー女子に挑んだみたいだけど、そちらは詳しくは知らないかな。
白河君から貰ったデッキをようやく自在に使いこなせるようになってきていた時期だったので、辛勝ではあるが何とか勝利して先輩としてのメンツを保つことが出来たが、彼の鬼気迫るデュエルは今でも忘れがたいものがあった。きっと彼は今後もっと強くなるだろうな。
「見えてきましたよ」
「そうみたいだね。公園の入り口で白河君と話しているのは…遊城君たちだね」
待ち合わせ場所である公園の入り口には白河君とコナミ君以外に、遊城君やその友人である前田君と万丈目君も居るようだ。何やら万丈目君が驚いているようだが、この距離では聞き取れなかった。
そんな様子を見ながらボクたちは彼らに合流した。
~~~
<丸藤翔視点>
8月中旬、お盆休みに入って数日経った今日はいよいよJRDGの初日が始まる日だ。
ボクはお兄さんと共にJRDGが開催されるデュエルサーキット前にある公園へと向かっていた。そこでボクはコナミ君たちと、お兄さんは白河君たちと待ち合わせをしているのだ。
「そうか。翔もデュエルアカデミア入学前にクロトに出会っていたのか」
「うん。白河君やコナミ君たちの母校のかがやき中学校の学園祭で会ったのが初めてかな。その時にお兄さんの弟だってことでタコヤキをおまけして貰ったよ」
「アイツは何かと人の世話を焼きたがるような気がするな」
お兄さんも白河君からJRDGの入場チケットを貰っていたらしく、今日は天上院兄弟や藤原さんたちと一緒にJRDGを観戦するみたいだ。
ボクもコナミ君のチケットで一緒に入場させてもらえることになっていることを告げたら「じゃあ、会場まで一緒に行くか?」と声を掛けられたのだ。
この言葉にボクは驚いた。答えは当然OKだった。
こうしてお兄さんと一緒に出掛けるなんて小学校低学年以来だ。あの頃は優しいお兄さんに甘え、色々と我儘を言ってお兄さんを困らせたものだ。今もきっとボクがオシリスレッドの生徒であることで心配をかけていなければいいけれど…。
「ほう、クロトは中学校時代からそんなことをやっていたのか?」
「うん。『バニーラ卿』なんて呼ばれていたらしいよ」
「1年で住んでいる地域の不良全てをデュエルで叩きのめすか。ふっ、アイツらしいと言えばアイツらしいな」
お兄さんはサイバー流道場に通うようになってから少し変わった。もちろんいい意味でだ。
デュエリストとして元々強かったその強さも格段に上昇していった。その代わりと言っては何だけど、その強さと反比例するように話しかけづらい存在になっていった。
強くて冷静で背が高くてハンサムで、自身の強さに奢らずに努力を忘れずそれでいて相手をリスペクトする精神を忘れない雲の上の存在、それがボクの自慢のお兄さんの姿だった。
「今日出場する前回大会優勝者のチームYRSのメンバーとは幼馴染らしいね」
「つまり、幼少期からアイツや赤羽とデュエルしてきたわけか。どうりで強いわけだ」
「毎日のようにコナミ君や白河君とデュエルしていたらしいね。むしろよく心が折れなかったものだと思うよ」
「そうだな。ただ、アイツに負けると何故か『次は必ず勝ってやる』と思わせられる。きっと彼らも同じ気持ちになったのだろうな」
だけど、ある時を境にお兄さんの様子は一変する。
お兄さんはサイバー流継承者として腕試しに参加したとある大会で、年下の男の子に敗れたそうだ。その相手はリスペクト精神など欠片も持ち合わせていない相手だったが非常に強いデュエリストだったらしい。
以前の様にいつでも冷静で相手をリスペクトする気持ちを大事にしていた姿は消え失せ、常に勝利を追求すするようになった。それまで通っていたサイバー流道場も師範代を破った際に破門されたらしい。
今までは白を基調とする服装を好んでいたが、その当時は黒い服を好むようになったのも分かりやすい違いだった。そしてその姿が、ボクが今年デュエルアカデミアでお兄さんに再会する前に見た姿だった。
「えっ、まさかお兄さんが昔負けた相手って…」
「さて、な?」
今年ボクもデュエルアカデミアに入学して再会した時、ボクはお兄さんの更なる変貌した様子に驚いた。ボクが最後に会った時はまだ勝利をリスペクトする姿のままだったのだが、再会した時のお兄さんはまるで昔のお兄さんのようだったのだ。
昔のようにクールなだけでなく、少し前の様に貪欲の勝利を追い求めるだけでもなく、なんというかサイバー流道場に通う前のお兄さんに戻ったような、そんな感じになっていたのだ。
お兄さんはデュエルアカデミアに入学してすぐにとある大会に出場し、以前負けた相手にリベンジマッチを挑んでまた敗れたらしい。そしてその対戦後に相手と話す機会を得て和解したと言っていた。恐らくその時に今のような姿に変わったのだろう。
「サイバー流道場に通っていた頃は、自身と相手の全力を出しあえさせすれば勝敗はどうでもいいと思っていた」
「うん。そう言っていたね」
「あの大会でアイツに敗れた後は、『負けたくない。勝ちたい』と言う気持ちに支配されて周りが見えなくなっていた時期もあった」
「うん、そうだね」
「そして数年後にアイツと再会して再戦してようやく自分の求めていた物が少し理解できた気がする。オレが求めていた物、オレの見出したリスペクトデュエル。まだ、言葉にするのは難しいのだがな」
ボクと並んで歩いているお兄さんは、少し嬉しそうな表情でそう言った。
ボクもいつの日か、お兄さんに並び立てるようなデュエリストになれるだろうか?お兄さんの様に自分のリスペクトデュエルを見つけられる日が来るだろうか?
そんなことを考えていると、ボク達は目的地へと到着したのだった。
~~~
<白河クロト視点>
待ち合わせ時間となって全員そろっていることを確認した俺はJRDG会場にて受付を行った。彼らは勘違いしていたらしいが、残念ながら俺は観客ではなく関係者枠なんだ。当然、入出管理するための関係者用ネームプレートも持っているから会場に入るための入場チケットも不要だ。
なんなら受付嬢ですらI2社勤務の十年来の知り合いだったりするわけで、やろうと思えば顔パスでもたぶん行ける。ただこの人、昔から相変わらず口が軽いから俺が直接受付しないと何を言い出すか分からなくて怖いんだよ。
受付を終えた俺は彼らをVIP専用チケットでのみ入ることが許される特別観客席へと招待した。VIP専用と言うこともあってそこには先日パーティで招待されていたようなプロデュエリストやら各界の大物がズラリと並んでいて、知る人ぞ知る魔境となっている。
えっ、聞いてないって?知らんなぁ。そもそも聞かれていないし言ってないから知らなくて当然なんだよなぁ。
そこには既にセレナが招待していた柊柚子たちアークファイブの舞網市組(方中ミエルは居ないっぽい)や、リンたちが招待していた瑠璃たちアークファイブのハートランド組(黒咲隼はプロ枠っぽい)も居て、更にはユーゴがいつの間にか知り合っていたアークファイブのネオドミノシティ組(コモンズ組)も居た。何と言う混沌っぷり。
うわっ、赤馬の奴。この部屋が冷暖房完備とはいえ外はクソ暑いのに例の赤いマフラー巻いてるよ。一体何着持っているんだろうな。
「おぉっ!すげぇ場所だな!まるでVIPルームだぜ!」
「ば、馬鹿!静かにしていろ!」
「兄貴ぃ、多分ここってそのVIPルームその物っスよ…」
「と、とんでもないところに来てしまったんだナァ」
「ははっ、お前たちもVIPルームだと知らされずに呼ばれたくちか?」
「そう言うお前らは?」
「自己紹介がまだだったな。オレはシンジ。シンジ・ウェーバーだ。よろしくな」
「デイモン・ロペスだ」
「トニー・シモンズだぜ」
「オレは遊城十代だ。よろしくな!」
「あれ?なぁ柚子。もしかしてあの赤い服の人ってネオス仮面の人じゃあ…」
「えっ、確かに遊矢の言う通り、後ろ姿とかは似ているけど…」
「他人の空似ではないか?」
「ボクは映像でしか見てないから何とも言えないかな」
「よぅ!榊、柊。権現坂に紫雲院も居るのか」
「やっほー」
「三沢にコナミ!久し振りだな!」
「2年ぶりくらいだったかしら」
「元気そうで何よりだ」
「ウォータードラゴンの人と赤帽子の人か。久し振りだね」
「貴方たちも来たのね」
「響先生!?それにもしかしてその隣に居る人は…!」
「初めまして。プロデュエリストの響紅葉だ。君たちは姉さんの教え子かな?」
「初めまして。丸藤亮と申します」
「藤原優介です」
「天上院吹雪です」
「て、天上院明日香です」
今回招待したデュエルアカデミアの面々は、元々知り合いが居たり生来のコミニュケーション能力の高かったりしたおかげで特に問題なく場に馴染めたようだな。
さて、これで俺もようやく本来の目的の為の準備に取り掛かれそうだな。
「おはようクロト。早速だけどリンたちが探していたわよ?」
「ユーゴやリンも呼んでいたな。全員怒っていたみたいだから、早めに向かった方がいいんじゃないか?」
「あ~、やっぱりか。今から行くよ」
瑠璃たちからリンたちが俺を探していた話を聞き、それを理由にVIPルームを退出した。
今日はセレナたちのバックアップを手伝うと言っていた日だからな。それを無断で抜け出したわけだからそりゃ怒るわな。後で謝っておかないとな。
だがこれで俺がこの部屋に居ない理由作りも大体できたわけだな。
今回の出場者は強豪も多いものの、やはりセレナやユーゴ達に比べれば見劣りする連中ばかりだからな。ほぼ間違いなくセレナたちが優勝するだろう。
そして彼らが優勝したその時こそ、このドッキリは成功が確定するわけだ。やるからには間違いなくセレナたちには更に怒られることになるだろうから、どうせ怒られるなら派手にやらないとね?
今更ながら登場人物多すぎですね。
次回からは夏休み編のクライマックスへと向けて一直線となります。JRDGの試合全てを詳細に描くと本編上そこまで重要でもない話を過去最長の長さで描写することになるのでほぼダイジェストになります。
次回の更新は6/26(土)AM7:00予定です。
終焉齎す王様、メイン弓様、誤記報告ありがとうございました。修正しました。
今後のアカデミア校長は? ※多分、本編にそこまで影響ないです。
-
鮫島校長
-
ナポレオン校長
-
クロノス校長
-
オリキャラ校長