【未完】遊戯王GXタッグフォース~2度目の人生は赤帽子の幼馴染~ 作:嘘つき熊さん
デュエルはありません。
8月9日。早朝。今日はアメリカに滞在する最終日だ。早めに起きて顔を洗い、ホテルの食堂で朝食を済ませ、歯を磨き、最後の朝風呂を楽しんでいる最中だ。
「ふぃ~。生き返るわ~。既に生まれ変わって転生してるけど~」
「バニ~」
「リュ~ン」
我ながらオッサンみたいだと思うが、前世の頃から風呂は好きなのだ。好きなものは仕方ないよな。バニーラとプチリュウも湯船にぷかぷか浮いている、どうやら彼らも風呂を満喫しているようだ。バニーラはともかくプチリュウは爬虫類(変温動物)じゃないのか?風呂とか大丈夫なんだろうか。カードの精霊は何でもアリってことなのかもな。
部屋を出る時間まではまだ時間があるので、肩まで湯船に浸かりながらリラックスした状態で今回のアメリカ渡航の成果について考えるとしよう。
「今回の依頼のおかげで、アメリカでやっておくべきことはそこそこ終わった。ハートランドシティの時の様に何の関係もない一般市民や町に被害を出すことは防げた。多少は成長できているのかもな。ただ、今回の事件はまだ懸念点はいくつかあるんだよなぁ」
<今回のアメリカ渡航で解決した(と白河クロトが思っている)項目>
①カードが白紙に見えてしまう事件の原因の根絶。
②漫画版GXのラスボス(トラゴエディア)の対処。
③アニメGXの中ボス(DD)の処理。
④【D-HERO Bloo-D】に宿った破滅の光の意思の処理
⑤イリアステルとの邂逅と一時休戦。
「カードが白紙に見えてしまう事件の原因は、プロデュエリストDDの所有する【D-HERO Bloo-D】に宿った破滅の光の意思だっただろうから、その意思を消滅させることが出来たので根本対策は完了だ。あとはまだ結構残っていそうな残党を処理して、それ以上被害が増えなければ終わりと思っていいだろう。残党の討伐についてはMr.マッケンジーとトラゴエディアが自分たちでやると言っていたから問題ないな」
この世界のトラゴエディアは、秘めた魔力は膨大なものの中身はお喋りとデュエルが好きなただの悪ぶったオッサンだったから恐らく問題ないだろう。Mr.マッケンジーとの関係も良好のようだしな。
イリアステルとは昨日のデュエルの後に一時休戦条約を結んである。パラドックス関連の情報を得たら連絡することを条件にしている以上、俺がよほどのことをやらかさない限りは向こうから約束を破ることは無いだろう。
<今回のアメリカ渡航で解決していない(と白河クロトが思っている)項目>
①破滅の光の力が宿ったままの【天空の聖域】カードの処理とカードが白紙に見えてしまう症状の被害者の回復方法。
②残りのプラネットシリーズの行方(列車で戦ったデイビッドに誰が渡したのか?
③列車を降りた後で襲ってきたディアブロと、それらを仕向けてきた勢力。
④【D-HERO Bloo-D】に宿った破滅の光の意思が抜け殻であった可能性の確認(既に斎王に憑依している可能性あり)
⑤自身の実力不足(トラゴエディアがデュエルに応じなかった場合、あっさりやられていた可能性が高い)
「破滅の光の力が宿ったままの【天空の聖域】カードはどう処理したらいいのやら。破滅の光の力そのものをどうやって除去すればいいのかが分からないんだよな。日本に帰ったら師匠と姉弟子に相談してみるしかないだろうな」
一応、師匠たちに協力してもらって作った専用カードケースに封印しているが、長期間の耐久性具合を確認していないので、こんなのを持ち歩きたくない。こうすればよかったんだ!って海に投げ捨てたらダメかな?…駄目だろうな。
「襲い掛かってきたタイミングを考えると、デイビッドを差し向けてきたヤツとディアブロを押し付けてきたヤツは同一勢力だと思う。正直、この時代の人達にとってプラネットシリーズは脅威だろうが、俺としては大したことない敵だ。問題はディアブロだ。【スピードワールド2】環境を押し付けられるのがキツイ」
漫画版GXの敵勢力はトラゴエディアのみだったからこちらの可能性は除外でいいと思う。アニメ5D'sの敵勢力であるダークシグナーは登場があと20~30年は先だろうし、イリアステルではなさそうだった。アークファイブの敵勢力は、ハゲはこの世界だとただの天才親馬鹿ハゲだし、Dr.ドクトルとロジェは処理済みだ。なら後は、アニメGXの敵勢力が考えられる。
アニメGXの敵勢力と言えば、影丸理事長率いるセブンスターズ、斎王琢磨率いる光の結社、ユベルが操るコブラ一派と異世界の精霊たち、そしてダークネスだな。あとは大穴でガラム財団。
影丸は除外していいかな。あの爺さんはアカデミアの孤島に眠る三幻魔による若返りにしか興味無さそうだ。斎王もエド・フェニックスのお付きをしている段階ならまだ大丈夫だろう。ユベルは…分からん。アカデミアごと異世界転移、デュエルゾンビ、人体憑依などなどと、彼女は何でもアリだからな。ダークネスはそんなものに頼らずとも闇磯野ことミスターTの軍団を使えばいいからな。…大穴の様な気がしてきた。
「【D-HERO Bloo-D】そのものに宿った破滅の光の意思については完全に消滅させられたことは何度も確認したから大丈夫だとは思うが、元々の力を知らないから、既に抜け殻かどうかなんて確認できなかったんだよなぁ」
アニメGXだと、エド・フェニックスとDDがデュエルしている際、【D-HERO Bloo-D】に魂を取り込まれていたエドの父がその事実と新たな憑依先(斎王)のことを教えてくれるんだが、赤の他人の俺には何も教えてくれなかったぜ…。
「バニー!」
「リューン!」
「ん?そうだな。そろそろ風呂から出るか」
流石にこれ以上湯船に浸かっているとのぼせてしまうだろう。俺は風呂から出て服を着た後、カードの精霊たちに手伝ってもらいながら忘れ物の最終確認をして部屋を出た。
~~~
8月9日。朝。明日香たちがアメリカ校に留学中に良く利用している喫茶店へとやってきた。レインも姿を隠しながらついて来ている。やはりこの時期に原作キャラクターと遭遇するのはよろしくないらしい。
「おはよう明日香」
「おはようクロト」
「おはようございます吹雪さん、亮さん」
「おはよう!クロト君!」
「あぁおはようクロト」
「おっすオジャ万丈目君」
「誰がオジャ万丈目だ!万丈目さんだ!」
喫茶店に居た明日香、吹雪、亮、万丈目と挨拶を交わしながら、彼らの今回の事件が解決したことと、事件の真相やそれまでの経緯についてを説明した。
列車で襲ってきた連中とディアブロに関しては、伏せておいた。せっかく事件が解決したと思っているんだから、わざわざ水を差す必要も無いだろう。彼らが襲われる可能性も低いはずだしな。もし話す必要があればMr.マッケンジーから説明するだろう。
「私たちもニュースで見て驚いたわよ。まさか『Destiny of Duelist』と呼ばれ、プロリーグの頂点に10年近く君臨したあのDDが強盗殺人未遂犯だったなんてね…」
「ニュースを見た後にマッケンジー校長に呼ばれて簡単に事件の説明もされたからね。それにしても、彼が逮捕されたタイミングで、偶然にも意識不明だった被害者が数年ぶりに意識を取り戻したのは不幸中の幸いだったね」
「被害者の息子であるエド・フェニックスと言えば、最近セミプロからプロへと昇格してプロリーグの順位を怒涛の勢いで駆け上がっている、現在最も注目を集め居ている若手のプロデュエリストだったな」
「そんな彼を10年近く騙して利用し続けていたって言うじゃないか。罪を認めて緊急逮捕されたDDは、仮に良心の呵責に苛まれていたとしても自業自得だな」
既に彼らはニュースやMr.マッケンジーから説明を受けていたらしく、明日香、吹雪、亮、万丈目がそれぞれの感想を述べていた。
「よぉ!待たせたなクロト!」
『待たせたわねクロト』
『クリクリ~』
声がした方を振り返ると、手を振りながらこちらに近付いてくる紅葉とレジー、紅葉の横でフワフワしている白いハネクリボーが居た。
「「「「響プロ!?」」」」
「あれ?言ってなかったっけ?君らとは別の協力者って響さんたちのことだぞ」
「「「「言ってない!」」」」
そうか。言ってなかったか。それにしても面白い反応をするなぁ。全員がいきなり驚愕の表情を浮かべたと思ったら、全員席を立つんだもんな。
「クロト~。ちゃんと紹介しておいてくれよ~」
『あら、コウヨウ。貴方だってよくパパにうっかりしたところを指摘されていたじゃない』
「マック、それは昔の話だろ?今は違うぞ?」
驚いて固まっている明日香たちをよそに、紅葉とレジーは夫婦漫才のようなやり取りをしている。
『クリクリ~』
『バニ~』
『リュ~ン』
ふと横を見れば、白いハネクリボーがバニーラやプチリュウと遊んでいる。実体化していないなら迷惑にはならないだろうし、好きにさせておこう。
「確かマックとは既に知り合いなんだよな。じゃあオレだけか。なら、改めて自己紹介をしようか。初めましてデュエル・アカデミア本校の生徒たち。オレは響紅葉。プロデュエリストだ」
「は、初めまして。天上院明日香です」
「明日香の兄の天上院吹雪です」
「丸藤亮です。…ふふふっ、強者の気配がするぞ…!」
「亮、ステイ」
自己紹介を終えた紅葉に対して、明日香、吹雪、亮がそれぞれ自己紹介を返す。一部ヘルカイザー化しようとした人が居るが、吹雪がなんとか抑えたようだ。
「ぼ、ボクは万丈目準って言います!響プロ!昔から大ファンでした!よろしければサインをお願いできないでしょうか!」
万丈目は何処からか取り出したサイン色紙と油性ペンを紅葉に渡してサインを書いてもらっている。つーかボクって似合わねぇ…。そういや、漫画版GXの万丈目は響紅葉の大ファンだったな。
『クリクリ~』
うん?紅葉のハネクリボーが万丈目の持っている【光と闇の竜】のカードに何かやっているな。あぁ、自分の中にある「マアトの羽」を【光と闇の竜】の中に転送しているのか。
確か漫画版GXであった展開だな。これで万丈目の持っている【光と闇の竜】に精霊の力が宿ることになるんだっけ。
「マックも人が悪いわよ?会いに行く人が居るって、響プロのことだったのね」
『フフッ、ごめんなさいねアスカ。皆を驚かせたかったのよ』
明日香たちとレジーは仲良く話をしているようだ。これは原作にはなかった光景だろうな。漫画版GXでは敵対していたようなものだったし。
そうして一通り落ち着いた後に、合流した紅葉とレジーにも事件のことについて、明日香たちに話した情報をそのまま説明した。彼らもニュースやMr.マッケンジーから説明を受けていたようでそれほど驚いた様子も無かった。
「DDか。出来ればオレ自身の手で倒して頂点を取りたかったんだけど、残念だな」
『あら?それならそのDDを倒したであろう人物を倒せば解決じゃない。ねぇ、クロト?』
寂しそうな眼をしながら言葉を零す紅葉に、レジーが意味深な目をこちらに向けながら話す。
「何の話だ?確かに俺はDDに話を聞きに行ったけれど、到着したころにはDDの屋敷が火事になっていて近寄れなかったし、そのまま会えずじまいになっていたところをニュースで真相を知っただけだぞ」
「へぇ~」
「ふぅ~ん」
「ほ~う」
「フン、そんなことだろうと思ったぞ」
明日香、吹雪、亮がなにやら言いたげな視線を送ってくるがこちらはスルー。この嘘を信じてくれたのは万丈目だけだった。意外と素直な奴だな。
「そう言えばクロト。彼女は一緒じゃないのか?」
『確かに、レイ「あーあーあーあーあー」…どうしたの?』
彼らにはレインが明日香たちに姿を隠していることを説明してなかったな。
「彼女は正体を明かせない事情があるらしくて、響さんやMr.マッケンジー以外には姿と名前を公開したくないらしいです」
「なるほど、そういうことになっているのか。なら黙っていた方がいいか」
『私は会ったけれど…』
「Mr.マッケンジーには公開するから娘のレジーにはバレるだろうから止む無し、だそうだ」
『OK。分かったわ』
何とか納得してもらえたようだ。そしてその後も彼らといろんな話をしていると、そろそろ空港へ向かう時間がやってきた。
「そろそろ時間だから、俺は空港に向かうことにするよ。明日香、吹雪さん、亮さん、万丈目、響さん、レジー。今回の事件の解決に協力してくれてありがとう。俺達だけだとここまで早く解決することは出来なかったと思う。助かった」
「元々私たちも首を突っ込んでいた事件よ。お礼を言われることじゃないわ。むしろ私たちも手伝ってもらったわけだから、私達からもお礼を言わせてもらうわ。ありがとう、クロト」
「そうだね。ボクたちだけじゃ破滅の光が宿ったカードをどうこうすることは出来なかったと思うよ」
「ふっ。こちらもお前には感謝している。礼など不要だ」
「フン、オレは天上院君たちが困っていたから彼女たちを手伝っただけだ。お前に礼を言われることではない」
「オレもMr.マッケンジーに事件の解決を依頼されていた側だ。クロト、こちらこそ助かったぞ。ありがとな」
『私も知っている情報を話しただけだしね』
改めて、明日香、吹雪さん、亮さん、万丈目、響さん、レジーに礼を言う。実際、彼らが居なければ情報を集めたり破滅の光の手下となった連中を倒して回るのにもっと時間がかかった頃だろう。かなり助かった。
『あと、お前もありがとな。白いハネクリボー』
『クリクリ~』
もちろん、紅葉の横に浮いている彼の小さな相棒にもお礼を言っておく。この子が居なければ、トラゴエディアの話を素直に信じられたかどうか怪しかったからな。
「ところで吹雪さん、亮さん。最後に一つ聞いておきたいことがあるんですが…」
「うん?なんだい?」
「オレたちに聞いておきたいこと?」
「『藤原優介』って人、知っていますか?」
「あぁ、知っているも何も同級生だよ。ただ、このアメリカ留学には彼自身が断った為に来ていないな」
「吹雪の言う通りだ。藤原はオレ達と変わらない実力の持ち主で、オレ達と同じく今年の春から特待生用のブルー寮に所属しているぞ。…それがどうかしたのか?」
「いや、アカデミア本校にそんな名前の強いデュエリストが居るって聞いたから、会ってみたいなと思っただけですよ」
吹雪がここに居る時点でそうだとは思ったが…まだ藤原優介はこの世界に居て、この世界の人々から彼の記憶が失われてはいないんだな。藤原優介がオネストと一緒にアメリカに来ていてくれれば両者に対して対処のしようがあったんだが、仕方ないな。
本来の歴史の時系列で言えば、そろそろ藤原優介がダークネスの研究を始め、ダークネスの仮面を作ってその力でダークネスの世界に飲み込まれる時期のはずだ。そしてその後に吹雪がその仮面を渡されてセブンスターズのダークネスに変貌する。ダークネスとなった吹雪が、墓守の世界に行くタイミングは分からないが、その後に影丸やアムナエルに利用され、今から大体2年後くらいに遊城十代に敗れてダークネスから解放される。
ただ、ダークネスで居る期間はロクな目に遭わないらしいし、知り合いをそんな目に遭わせるのも嫌だな。
「吹雪さん、俺が渡したネックレスを少し貸してもらえますか?」
「あぁ、分かった」
俺は吹雪からネックレスを受け取り、そこに今持てる全ての魔力を集約して防御魔術を施す。これである程度は闇の魔力にも抵抗力が増すはずだ。ダークネスの仮面のようなヤバそうなアイテムにどれほどの効果があるかは分からないが、何もしないよりはマシだ。
「少し壊れていたように見えたのですが、気のせいでした。はい、お返しします」
「あぁ。でも、本当にこのネックレスをボクたちが貰っていいのかい?」
「いいですよ。いつまた破滅の光のような理不尽な存在に出会うかも知れません。そんな時に少しでも役に立てば幸いです」
「そうか、ありがとう」
これでセブンスターズ事件が未然に防ぐことが出来れば…いや、悔しいがダークネスの力は俺よりも遥か強いだろうし、多分無理だろうな。
「それじゃ、また縁があれば会おう。じゃあな!」
俺は彼らに別れの挨拶をして、空港に向かった。明日香たちとは1年半くらい先にデュエルアカデミアで再開することになるだろうが、恐らくプロデュエリストを目指さない俺は、紅葉やレジーとはもう会うことはないかもしれないな…。
~~~
8月11日。夜。あの後、結構な時間を列車で揺られてロサンゼルスの空港に到着し、これまた結構な時間をかけて日本に到着し、そこから更に電車に揺られて数年住んでいる故郷の町に帰ってきた。
「ようやくこの町に着いた~長かったな~」
「うん…」
隣のレインも少し疲れたように見えた。デュエルロイドでも疲れたりするのだろうか?
他愛無い話をしながら駅から個人まで徒歩で帰ってきた。レインはこのまま孤児院の正面にあるカードショップに戻るのだろう。じゃあその前に…。
「レイン、これやるよ」
「…?なに、これ?」
「デュエルモンスターズのカード」
「それは、見ればわかる」
当たり前のことを言うな、とばかりに睨まれる。
「アンデットワールド軸で使えそうなカードを集めてみた。【屍界のバンシー】とか【ジャック・ア・ボーラン】とか持って無さそうだったしな」
「これは…?」
「【黄金卿エルドリッチ】。アンデットワールドとは関係なかったかも知れないけど、使えそうだからついてで渡した」
「ついでに渡されるような性能じゃない…」
エルドリッチに頼っているようじゃ俺のプレイングの改善にならないからな。この前、【ドラゴンメイド】とか【電脳堺】 とか使った気がするが、そこは置いておこう。
「あとは、シンクロとエクシーズを少し入れてみた」
「何故、私に?」
理由が分からない、と言いたそうな不思議そうな顔をしている。そんなに不思議か?
「わざわざアメリカまでついて来てくれたからな。他の人達にも感謝しているけど、レインには一番感謝してる。ありがとうな」
「…うん」
「それで、そのカードはそのお礼。もしかして、要らない?」
「貰う」
「そうか、それならいい。受け取ってくれ」
「…うん」
レインは大切そうに渡したカードをカードケースに仕舞った。ふふふっ、今回渡したカードは前世のOCG次元でもかなり凶悪な実績を残したカードが多いからな!デュエリストなら気に入ってくれるだろうと思っていたぞ!
「…クロト、一つ聞いてもいい?」
「いいぞ」
「…この前、抱き着かれてた」
「えっ?あぁ、藤原のことか」
「…ああいう(髪型)のがいいの?」
「あ~、男として生まれたからにはああいう(ハグ)のは好きだよ」
えっ、何これ?気軽な質問かと思いきや、答えづらい内容をぶっ込んできたな。めっちゃ恥ずかしいんだけど。
「そう…分かった」
それだけ言うと、レインはそのままカードショップへと入っていった。一体、何のための質問だったんだろう?
~~~
8月11日。深夜。孤児院に帰るとシスターが遅めの晩御飯を用意してくれていた。コナミ、ユーゴ、リンも起きていて、何故かセレナも居た。どうやら俺が帰ってくるのを待っていてくれたらしい。
お土産を渡してアメリカに居た頃の話を話すとコナミが「やっぱりオレも付いて行けばよかった!」と悔しそうに言っていた。コナミが居たらトラゴエディアやDDの相手は押し付けていただろうな…。
夜も遅くなり、皆は就寝するために自分たちの部屋に向かっていった。セレナは今日はリンの部屋に泊まるらしく、そのままリンにくっついて行った。
俺は最後の一仕事を終える為に、そのまま精霊界へ向かい、師匠たちに計30枚近くに増えた破滅の光の力を宿した【天空の聖域】と【The big SATURN】カードを見せていた。
「これが破滅の光の力か。確かに、眩い光の中に禍々しい力を感じる」
「この光の波動、嫌い」
俺でも分かることは、この2人なら当然分かるので特に詳しい説明はしていない。そのカード達を封印する方法を聞いてみたが…。
「このくらいであれば、封印なんて手間のかかることはせずに、破滅の光の力そのものを払ってしまった方が早いな」
「えっ?」
俺が数日掛けても払えなかった破滅の光に対して、師匠は何でもないことの様に言う。そして、姉弟子がカードに手をかざすと…。
「もう払った」
「えっ?」
あっさり解決した。解決時間は約2秒とか…この人たち、ポテンシャル高すぎない?それとも、俺の魔力と技量、低すぎ?これでも人間界では色んな修羅場を乗り越えてきた自信があったんだけどなぁ。
カードを見ると確かに破滅の光は跡形もなく消えていた。流石は最上級魔術師とその弟子。彼らと比較すれば、俺はまだまだ雑魚だ。流石にこれだけの実力差を見せられると凹むなぁ。
「もしかして、師匠たちの精霊の力があれば、もっと強い破滅の光でも何とかなったりするの?」
「うむ。お前が私たちの力を完全に引き出せるようになれば可能だろう」
「私たちの精霊のカードが入ったデッキで、破滅の光のカードを所持している相手とデュエルして、勝てばいい。あとは私たちが何とかする」
その翌日、Mr.マッケンジーから連絡が入り、カードが白紙に見えてしまう事件の被害者全員の症状が回復したとの報告を受けた。なるほど、破滅の光の影響は距離が離れれば消え去れるのだろう。もしくは俺が精霊界に持ち込んだから次元を超えてまで影響を与えることが出来なかったのかもな。
あれ?これってもしかして、舞網チャンピオンシップやハートランドシティの騒乱の原因となった【パラサイト・フュージョナー】の方も何とかなる?虫洗脳された女の子たちの完全回復や、榊遊勝やDr.ドクトルたちの回復も何とかなるかも?いや、Dr.ドクトルはどうでもいいや。
だが、その為には師匠たちの精霊のカードを使いこなせるようになる必要があるな。なら、俺のやることは決まりだな。またしばらくは精霊界での修行を再開するとしますか。目標達成の期限は、デュエルアカデミア入学まで、いや、来年末までには師匠たちの力を引き出せるようにすることとしよう。
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夏休みも終盤に差し掛かった8月下旬頃、朝から珍しく丸藤亮から電話が掛かってきた。正直、嫌な予感しかしないが、無視するわけにも行かないので応対することにした。
「クロト。落ち着いて聞いて欲しい。吹雪が、天上院吹雪が行方不明になった」
嫌な予感が的中したようだ。そう。この時期だとはある程度予測していたが、やはり天上院吹雪の失踪事件が起こってしまったようだ。渡しておいたネックレス程度では、彼の運命を変えることは出来なかったようだ。
「行方不明、ですか。悪い冗談…と言うわけではなさそうですね」
「あぁ、残念ながら事実だ」
その後、亮から事のあらましを聞いたところ、次のことが判明した。
①丸藤亮や天上院吹雪たちは今年の春からオベリスクブルーの中でも特別優秀な物だけが住まうことを許されるという特別寮に住んでいて、日々を過ごしていた。
②ただ、この特別寮からは行方が分からなくなる生徒が数十名出てきており、アカデミア本校の鮫島校長に問い合わせても『海外留学に出ている』と言う回答しか得られなかった。
③今年の夏、実際に亮と吹雪は勉学の為以外にも、この行方不明になった生徒たちのことを調べるつもりで海外留学してアメリカ校へ向かったが、先に海外留学にしていると言われていた生徒は誰1人として見つからなかった。
④アメリカ校校長(Mr.マッケンジー)に問い合わせても、『君たちが初の海外留学生であり、君たち以外の生徒をを受け入れたことはない』とのことだった。
⑤海外留学先で発生していた『カードが白紙に見えてしまう』事件を解決後、海外留学期間が終了したので帰国してアカデミア本校に戻った。
⑥本校に戻って数日後、天上院吹雪が行方不明となり、鮫島校長に問い合わせても『分からない』『書類上は海外留学に言っていることになっている』『私の方でも調べてみる』と言う回答を貰うのみだった、
⑦もしかすると、吹雪を含む行方不明者はアメリカ校で経験したようなオカルトチックな事件に巻き込まれたのかもしれないと思い、その道に詳しい俺に連絡を入れた。
なるほど。今回、彼らが海外留学していたのはそういう理由もあったわけか。
それにしても、鮫島校長は原作と同じであてにならなさそうだな。その行方不明事件に影丸理事長が関わっているだろうことは薄々気付いているだろうに。
「申し訳ないですが、現状の情報だけでは力になれそうにありませんね」
「そうか…」
明らかに落胆した亮の声が電話越しに聞こえてくる。済まないな。力になってやりたいんだが、今の俺が出来ることはほぼ無いんだ。そして、今の段階で亮に事情を説明することもできない。亮が影丸やアムナエルに消される可能性があるからな。
「明日香にはまだこの件は黙っているが、気付くのは時間の問題だろう」
「彼女自身が気付くよりも、こちらから教えてあげた方がまだマシでしょう。話しづらいなら、俺から話しましょうか?」
「いや、オレから話そう。一番吹雪の近くに居たのはオレだ。オレが話すべきだろう」
「念のために言っておきますけど、今回の吹雪さんの件は、ほぼ間違いなく亮さんの責任ではないですからね?あまり自分を責めるのは止めて下さいよ」
「…フッ、オレの心配をしてくれているのか?その気持ちだけ受け取っておこう」
俺なりに励ましたつもりだが、多少の効果はあったようだ。さて、状況的にはほぼ確定なんだが、確認しておくか。
「最後に一つ確認しておきたいのですが、行方不明者の中に『藤原優介』と言う生徒は居ませんでしたか?」
「藤原優介?いや、そんな名前はオレがアカデミア中等部に入学してからこれまで一度も聞いたことが無いな。知り合いなのか?」
「えぇ、そんなところです」
亮の問いに対して適当に濁しつつ、亮との電話を終えた。亮はこれから明日香に事情を説明するのだろう。親友を失った彼も相当参っているだろうに…。
先日まで友人だと言っていた藤原優介を覚えていないか。確定だな。藤原優介はダークネスに呑まれて、彼の記憶はこの世界の住人全てから失われたのだろう。俺がその影響を受けずに覚えている理由は、オカルトに耐性が出来ている為か、元々この世界の人間ではない上に女神様による前世知識チートのお蔭だろう。
天上院吹雪は、藤原優介がダークネスと契約を結んだ後に彼からダークネスの仮面を受け取り、影丸理事長の指示を受けたアムナエルの特別寮での実験にてその仮面を使用してしまい、その仮面の力でダークネス世界に飲み込まれてしまったのだろう。今頃はダークネスの仮面の力を借りて必死に生き延びようとしているはずだ。
彼とは親交もある。助けに行ってやりたいのはやまやまだが、仮にアカデミア本校の特別寮に辿り着けたとして、ダークネスの世界に行く方法も、ダークネスの世界から彼を救出する方法も思いつかない。彼を助けられるのは今から1年半後、アニメGXの原作ストーリーが開始されてからになるだろう。
亮との電話が終わった数時間後、亮から兄が行方不明であることを知らされた明日香から電話があって先ほど亮から聞いた話をもう一度聞かされることになった。
明日香は普段の冷静な態度からは想像もつかないほど酷く混乱し、取り乱していた。電話から聞こえる声はすっと涙声で、時折嗚咽が聞こえる。それに対して俺は在り来たりな慰めの言葉を掛けることしかできなかった。こういう時は自分の口下手振りには本当に腹が立つ。俺の力はやはり無力だ。もどかしいな。
アニメ原作通りに順当に行けば、遊城十代によって天上院吹雪は救われるだろう。だが、この世界は俺と言う異物の所為で色々と変化している。原作の本筋に影響を与えない程度に俺が介入して軌道修正していくのがベターだろう。その為には、やはり力が必要だ。この世界の理不尽を跳ね返せるだけの力が…。
明日香たちや紅葉達と別れ、ようやく日本に帰ってきました。
帰ってくる際にレインを強化してみました。この時代でエルドリッチとか、相手は泣いていい。
ここでようやく、今まで人の手の届かないように封印して放置するしかなかった破滅の光に対する根本対策もようやく形が見えてきました。
そして、天上院吹雪の失踪事件。恐らく発生タイミングはアニメ原作よりも少し遅いくらいです。
あと一話の幕間を挟んだら新章突入です。
次回の更新は2/6(土) AM8:00予定です。
戦車様、メイン弓様、神薙改式様、誤記報告ありがとうございます。修正しました。
オリ主にヒロインは必要でしょうか?
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不要だ!そういうのはいいからデュエルだ!
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いる!原作イメージが壊れないオリヒロで!
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いる!原作改変ものだし、原作キャラで!
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いる!TFならモブキャラ攻略でしょ
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いる!オリ主ならハーレムを目指せ!