【未完】遊戯王GXタッグフォース~2度目の人生は赤帽子の幼馴染~   作:嘘つき熊さん

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日常回です。デュエルは有りません。

ほのぼのを目指した結果、ギャグ回のような何かになってしまいました。


第八十七話 幕間:学園祭

<クロト視点>

 

舞網市の覇王龍騒ぎから1か月が経った中学三年生の10下旬休日の早朝、俺は母校であるかがやき中学校のグラウンドで屋台の準備を行っていた。今日は学園祭なのだ。

 

『バニー!』

 

「こーらバニーラ。その人参は売り物だから食べちゃダメだぞー」

 

『バニィ…』

 

焼きそば用の人参をつまみ食いしようとしていたバニーラをそっと窘めるとシュンとしてしまった。

 

「しょうがないなぁ」

 

『バニー!』

 

あまりに可哀そうな表情をするので1番美味しそうな人参を選んで1本あげた。バニーラはとても喜んでいる。うんうん。良い感じだ。いつ見ても可愛い。

 

売り物用の人参が少し減ってしまったが、客にはこのイマイチそうな人参を細かく刻んで出そう。じっくりと火を通せばなかなか味にうるさいセレナ以外は多分気付かないだろう。

 

「白河先輩、また何もない場所に話しかけてる…」

 

「しっ!見ちゃいけません!」

 

別の屋台の準備をしていた料理部の後輩たちが何やら言っていたようだが、距離があったのでよく聞き取れなかったという振りをした。もう今更だからね…。

 

~~~

 

<ツァン視点>

 

10下旬休日の朝、ボクは隣町にある『かがやき中学校』で開かれる学園祭にやってきていた。ここの学生である白河クロトに体育館で行われるコンサートのチケットを貰ったからだ。それ以上に他意は無い。

 

ちなみに誰も連れがおらず1人で来ているのは訳がある。渡されたチケットは3枚あったのだが、そもそも誘う友達が居ないゲフンゲフン、孤高の存在足るボクが誰かを誘うなんてしたら依怙贔屓になってしまうからね。それ以上の他意はない。

 

「よぉ、ツァン。来たか。アレ?1人か?」

 

「1人だけど?何か悪い!?」

 

わざわざ白河がやっている屋台を見つけて見に来てあげたのに、なんて失礼な奴なのかしら!あの言い方だとまるでボクがボッチみたいじゃない!

 

「い、いや、悪くはないが…まぁいいや。焼きソバかタコ焼き食う?綿アメやリンゴ飴、水あめに羊羹、ビスケットにクッキーもあるぞ」

 

「じゃあビスケットを1袋貰うわ。と言うか白河、アンタ1人で3つも屋台やっているの?」

 

「4つだぞ。後ろのカレー屋も俺がやってる。お勧めは冷やしカレードリンクだ。何処かのツインテ銀髪美少女のお墨付きだぞ」

 

よく見ると、白河は屋台4つに囲まれている状態だった。コイツ、馬鹿なのかな?

 

 

   屋台

 

屋台 クロト 屋台 ツァン

 

   屋台

 

 

「アンタ、馬鹿でしょ?」

 

「ツァン、そういうことは思っていても口に出さないものだぞ」

 

白河本人も多少の自覚はあるようだ。

 

『バニー!』

 

そんな時、何も居ないはずの足元からウサギのような鳴き声が聞こえた。

 

「うひゃぁ!えっ、何っ!?」

 

「どうした?」

 

「今、ウサギみたいな鳴き声がしなかった?」

 

「うん?視えていないのに声は聞こえたのか?」

 

「えっ?」

 

「いや、何でもない」

 

そう言うと白河は首を振って誤魔化す。でも、確かにウサギのような鳴き声がしたと思ったんだけど、ボクの気のせいなのかなぁ。

 

「あの娘たちのライブまではまだ時間があるし、ゆっくり校内を見て回るといい。お勧めは屋上だな」

 

「そうするわ。じゃ、校内を一通り回ったらまた寄ってあげるわ」

 

「おぉ。あぁそうだ。質の悪いナンパには気を付けろよ。ツァンは黙っていると美少女に見えるからな」

 

「なっ!余計なお世話よ!」

 

突然、恥ずかしげもなく恥ずかしいセリフを吐く白河。コイツ、自分の容姿がちゃんと整えれば結構悪くない感じなのを気付いていないせいか、こう言う迂闊な発言が多くて心臓に悪いわ!

 

~~~

 

<三沢視点>

 

10下旬休日の朝、オレは以前知り合った『かがやき中学校』の友人が居る学園の学園祭にやってきていた。ここの学生である白河クロトに体育館で行われるコンサートのチケットを貰ったからだ。

 

友人たちにも声を掛けて校門までは一緒だったのだが、なんでも美少女がたくさんいる!ナンパして来る!などど言って何処かへ行ってしまった。嘆かわしいことだ。

 

「よぉ、三沢。来たか。アレ?1人か?」

 

「よぉ、白河。校門までは2人ほど連れが居たんだが、はぐれてしまってな」

 

「ソイツは災難だったな。焼きソバかタコ焼き食う?」

 

「じゃあタコ焼きを貰おうかな。モグモグ…おぉ、美味いなコレ!」

 

「だろう?自信作だからな。とある黒髪ロングの美少女小学生たちにも好評だったぞ」

 

よく見ると、白河は屋台4つに囲まれている状態だった。彼はアホなのかな?

 

「そう言えば、試験勉強は順調なようだね。ずっとツァン・ディレと言う子と4位争いをしているじゃないか」

 

「まぁな。でもずっと1位のお前が言うと本来嫌味に聞こえそうなものだが、意外とそうでもないな」

 

こう見えて白河は以前オレを完膚なきまでに破った凄腕のデュエリストだ。あれから何度か会ってその度にデュエルしているが、毎回違うデッキを使用するので対策が取れず、一度も勝てたことが無い。

 

そして何故か毎回アイドルカードを主軸としたデッキを使ってくる。何か意味があるのだろうか?

 

「あの娘たちのライブまではまだ時間があるし、ゆっくり校内を見て回るといい」

 

「そうさせてもらおう」

 

「あぁ、そうだ。時間があるなら屋上にあるデュエルスペースに居る赤帽子にデュエルを挑んでみるといい。アイツは俺よりも強いからきっと勉強になると思うぞ」

 

「お前よりも強いデュエリストか。それを聞いて挑まないなんてデュエリストじゃないな!早速行ってみるぞ!」

 

「おぉ~。自然災害みたいなやつだから、負けても気にするなよ~」

 

白河が失礼なことを言っているが、オレは勝って見せるさ!そしてオレは意気揚々と屋上に向かい、数十分後には何度もボロボロに負けた後で屋上に四つん這いになっていた。

 

~~~

 

<明日香視点>

 

10下旬休日の昼前、私は昔なじみの『かがやき中学校』の友人が居る学園の学園祭にやってきていた。ここの学生である白河クロトに体育館で行われるコンサートのチケットを貰ったからだ。

 

兄さんのことで色々と参っていたのだけれど、気分転換にはいいかも知れないと思い、3枚あったチケットをアカデミアでの友人たちである枕田ジュンコと浜口ももえにも渡して一緒に来た。

 

校門辺りでしつこいナンパをしてくる連中が居たが、とりあえずデュエルで黙らせた。

 

「よぉ、明日香。来たか。その2人は友達か?」

 

「こんにちわ、クロト。えぇ、そうよ。私の友人の枕田ジュンコと浜口ももえよ」

 

「枕田ジュンコよ。それよりもアンタ、男子のくせに明日香さんに馴れ馴れしくない?」

 

「すまんな」

 

「浜口ももえですぅ。あら、あなた。う~ん、磨けば光ると言ったところでしょうかぁ」

 

「はははっ、そいつはどうも」

 

ジュンコやももえに対するクロトの受け答えは結構適当だ。彼は自分の興味の引く相手以外にはへらへらしながら適当に相手をすることが多い。彼女たちはまだ彼にとって興味の引く人間ではないのだろう。

 

「とりあえず、それぞれにクッキーを1袋ずつあげよう。1袋目はタダだ。気に入ったら次は金を出して買っていってくれ」

 

「あらっ、ありがとう。モグモグ…美味しい!」

 

「モグモグ…やだ、私が作るのより遥かに美味しい!」

 

「モグモグ…あらぁ、美味しいですわぁ!これはポイント高いですわね!」

 

本当に美味しい。私も料理は嗜むけれど、悔しいけれどここまでの味は出せないわね。

 

「気に入って貰えたなら何よりだ。うちのシスターも絶賛してくれた自信作だ。良ければ買っていってくれ」

 

「シスター?あんたってお姉さんか妹さんが居るの?」

 

「いや、うちの孤児院のシスターの話だ」

 

「ちょっとジュンコ!」

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「うん?何がだ?」

 

人によっては孤児であることを気にする人が居るが、クロトは特に気を悪くした様子は無さそうで安心した。

 

「白河さんと言ったかしら?もしかしてその周囲にある屋台全部をあなたが一人でやっているのですか?」

 

「そうだぞ」

 

よく見ると、白河は屋台4つに囲まれている状態だった。彼は変人で性格が悪いけれど、馬鹿ではなかったと思っていたんだけれど…。

 

「あの娘たちのライブまではまだ時間があるし、ゆっくり校内を見て回るといい」

 

「えぇ、そうさせてもらうわ」

 

「あぁ、そうだ。時間があるなら屋上にあるデュエルスペースに居る赤帽子にデュエルを挑んでみるといい。アイツは俺よりも強いからきっと勉強になると思うぞ」

 

「アナタよりよりも強いデュエリスト?興味あるわね早速行ってみるわ!」

 

「あぁ。もしかしたら運命に出会うかもな」

 

運命?何の話かしら?

 

「あ、明日香さーん待ってくださーい」

 

「では白河さん。私たちはこれで失礼しますわ」

 

「あぁ、じゃあな」

 

彼をして自分より強いとはっきり言わせるほどの実力者!腕が鳴るわね!そして私は意気揚々と屋上に向かい、数十分後には何度もボロボロに負けた後で屋上のベンチで頭を抱えることになった。

 

~~~

 

<瑠璃視点>

 

10下旬休日の昼前、私は『かがやき中学校』の友人が居る学園の学園祭にやってきていた。ここの学生である風祭リンと葉月セレナが体育館で行うと言うコンサートのチケットを貰ったからだ。

 

チケットは3枚あったので暇そうにしていた兄さんとユートを誘って学園にやって来たのだ。校門辺りでしつこいナンパをしてくる連中が居たけれど、兄さんとユートがデュエルで黙らせていたわ。

 

「よぉ、瑠璃。来たか。その2人は彼氏か?」

 

「こんにちわ、クロト。何で彼氏が2人いるのよ。私の兄の隼と、友人の黒鉄ユートよ」

 

「瑠璃の兄の黒咲隼だ。お前が、瑠璃が時々話す白河クロトか。とんでもない女たらしらしいな?」

 

「えぇ…人違いだと思うなぁ。多分、赤い帽子被ってる奴だろそれ」

 

「そんなはずはない!数か月前から瑠璃は貴様の名前ばかりを…ぐはぁっ!!」

 

いつも通り余計なことを言いつつ暴走する兄さんは拳で黙らせておいた。

 

「黒鉄ユートだ。ところで、気のせいかも知れないが以前何処かで会ったことが無いか?」

 

「…同性愛については否定しないけれど、悪いが俺はノンケなんだ。そう言うのは赤い帽子を被っている奴に言ってくれ!」

 

「なっ!?ち、違う誤解だ!!」

 

相変わらず妙な誤解を受けて苦労が絶えない幼馴染を見て和みつつ、屋台で売っている綿アメを購入しようとした。

 

「知り合いサービスだ。とりあえず、それぞれに1個ずつあげよう。1個目はタダだ。気に入ったら次は金を出して買っていってくれ」

 

「あらっ、ありがとう。モグモグ…!この綿アメ、甘くて美味しい!」

 

でもどうやって作っているのかしら…。あっ、屋台の後ろの方でプチリュウが風を起こして一生懸命に綿あめを作ってる。可愛いわね。

 

「むしゃむしゃ…おぉ、この羊羹もイケルな!」

 

「モグモグ…焼きソバも悪くはないけど、なんだか人参が少し硬めだな」

 

「気に入って貰えたなら何よりだ。特に綿アメはリンやセレナにも好評だったから自信作だ。良ければ買っていってくれ」

 

「白河、もしかしてその周囲にある屋台全部をあなたが一人でやっているのか?」

 

「そうだぞ」

 

よく見ると、クロトは屋台4つに囲まれている状態だった。彼は鈍感で変人で性格が悪いけれど、ここまで変な人だとは予想外だったわね。

 

「あの娘たちのライブまではまだ時間があるし、ゆっくり校内を見て回るといい。瑠璃なら控室にも通してもらえるだろうし、控室の場所を教えておこう」

 

「えぇ、そうさせてもらうわ」

 

「あぁ、そうだ。時間があるなら屋上にあるデュエルスペースに居る赤帽子にデュエルを挑んでみるといい。アイツは俺よりも強いからきっと勉強になると思うぞ」

 

「アナタよりよりも強いデュエリスト?って言うか赤帽子ってコナミのことでしょう?まぁいいか。後で行ってみることにするわ」

 

「強いデュエリストか。興味があるな。ソイツが鉄の意志と鋼の強さを兼ね備えたデュエリストか、この目で確かめてやろう!行くぞユート!」

 

「おい!待て、隼!」

 

兄さんとユートは先に行ってしまった。この広い校舎で道に迷わなければいいけれど…。

 

「はい。これがこの校舎の見取り図な。人混みの少なそうな屋上へのルートやリンたちの控室も書いておいた」

 

「ありがとう、クロト。帰る前にまた寄らせてもらうわ。じゃあ、またね」

 

「あぁ、またな」

 

リンたちの控室に言って少し談笑した後に屋上に向かうと、屋上のフェンスに頭を押し付けてどんよりした感じになっている2人を発見した。よく見ると屋上の奥のデュエルスペースでコナミが大活躍していた。

 

他にも屋上の隅でイジけている同年代の少年、ベンチで頭を抱えて友人2人に励まされている同年代の少女が居た。何この地獄絵図…。

 

~~~

 

<丸藤翔視点>

 

10下旬休日の昼前、ボクはあの悪名高き『かがやき中学校』の学園祭にやってきていた。友人たちも誘ったけど、あの2人の狂人が居る中学校と言うことで断られてしまったが、ボクはつい怖いもの見たさでやって来てしまった。

 

校門に辿り着くと、校門にもたれかかってブツブツ呟く少年、校門前で体育座りをしてブツブツ呟く少年、校舎の片隅で半分壁に埋まって顔にバニーラの仮面を付けられているチンピラ風の男性数名など、恐ろしい光景が広がっていた。何故誰もこの光景に違和感を覚えないのだろう。

 

「いらっしゃい。何にしますか?」

 

「えっと、じゃあタコ焼き1箱8個入をお願いするッス。これ、料金の200円っす」

 

「OK…へいお待ち」

 

「早っ!?」

 

目にも留まらぬ早業でタコ焼きを仕上げたこの目の前の黒髪の少年はどうやら同年代のようで、身長は170cmほど。ボクのお兄さんより少し低いくらいかな?

 

「モグモグ…熱っ!?でも美味しい!!」

 

「そりゃ良かった。…ん?もしかして、君って丸藤亮の弟の翔か?」

 

「そうっスけど、お兄さんを知ってるんスか?」

 

「あぁ、数年くらい前にデュエル大会であったことがある」

 

あぁ、確かにお兄さんは何年か前にこの町のデュエル大会に参加したことがあったっけ。

 

「彼の弟なら少しだけサービスしてやろう。ホレ、2つおまけだ」

 

「わぁ、ありがとうっす!」

 

オマケしてもらったタコ焼きは通常のよりも少し大きく、彼が言うにはタコの代わりにチーズが入っているらしい。あとで美味しく頂かせてもらおう。

 

「このチケットもおまけであげよう。午後からここの学生でコンサートをやるんだよ。そのチケットだ」

 

「えっ!いいの!?」

 

「もちろん。本来来るはずの人が来れなくなったらしくて余っていたんだ。むしろ貰ってくれると助かる」

 

「じゃあ貰っておくね」

 

コンサートか。そういうの行ったことなかったから楽しみだなぁ。

 

「あぁ、そうだ。亮さんの弟ならデュエリストだろう?時間があるなら屋上にあるデュエルスペースに居る赤帽子にデュエルを挑んでみるといい。きっと勉強になると思うぞ」

 

「えっ、でもボクそんなに強くないし…」

 

「それならなおさら挑んだ方が良いだろ。強くなるには実践あるのみ。俺の恩人が言っていた言葉だが『負けて勝て』だってさ」

 

「『負けて勝て』か。良し!ボクもその強いデュエリストに挑んでみるよ!ありがとう、屋台の人!」

 

「あぁ、健闘を祈る」

 

ボクは意気揚々と屋上に向かい、デュエルスペースに居る赤い帽子の少年にデュエルを挑み、数十分後には何度もボロボロに負けた後で屋上の壁に手をついて反省のポーズを取り続けるのだった。

 

~~~

 

<クロト視点>

 

昼過ぎ、ようやく屋台の客が全員いなくなって落ち着いた。午後はコンサートの手伝いがあるので、そちらが終わるまでは料理部の後輩たち4人と交代だ。それにしても流石に屋台4つ掛け持ちはキツかったな。

 

レイン、ツァン、レイちゃん、三沢、明日香、瑠璃と色んな知り合いが来てなかなか面白かったな。トマト君たちも誘っても良かったが、舞網市はそこそこ遠いからな…。そしてまさか丸藤翔がこの学校に来るとは思わなかったな。

 

とりあえず全員をかがやき中学校の学園祭名物、通称『NTRの屋上』へ送っておいた。

 

毎年、学園祭になるとコナミが屋上を占拠してデュエルコーナーを勝手に作って、やってきた人間を次々にデュエルで叩きのめすというとんでもないイベントを開催するのだ。

 

同性同士で来た者たちは敗北の後、お互いの敗北の傷を舐めあって慰めあうだけで済むが、カップルできた場合は悲惨だ。彼氏がほぼ100%デュエルで負けて、その後そこそこの確率で彼女がコナミに靡いてしまうのだ。恐ろしや~。

 

この学校の生徒である鈴木、佐藤、田中は当然知っているので、進めても絶対に行こうとはしない。

 

「モグモグ…くっそ~!2回も負けた~!」

 

そして、目の前で悔しがりながら焼きそばの余りを頬張っているのがその元凶、通称『デュエルお化け』のコナミである。

 

「あの銀髪ちゃんの【黄金卿エルドリッチ】とか言うモンスター強すぎるだろ~!」

 

「あぁ、レインか。どうやら上手くエルドリッチを使いこなしているようだな」

 

「クロト~やっぱりお前の仕業か~!じゃああの六武衆のピンクちゃんもそうか?」

 

「ツァンのことか。なんだ、【六武の門】を2枚くらい貼られたのか?」

 

「やっぱりそっちもか~」

 

他のデュエリストには全勝しているくせによく言う。デッキ相性的にレイちゃんなら勝てるかと思ったが、まだコナミの相手は厳しかったか。

 

「どうせ【機械天使】の娘や【ライトロード】の娘、【LL】の娘もクロトの知り合いだろ~」

 

「バレたか。【ウォータードラゴン】使いも俺の知り合いだな。彼女たちも強かっただろ?」

 

「何度か挑まれたけど毎回ギリギリで勝ったよ。いやぁ、楽しかったな~!」

 

デュエルになると理由が無い限り一切手加減無しで相手をボコボコにする上、スタミナが半端なく何連戦しても疲れを見せないその姿からこいつは『デュエルお化け』と呼ばれてこの界隈では恐れられてる。

 

そして、幼女であろうが彼氏持ちであろうが人妻であろうが熟女であろうが男であろうが構わず自前のコミュ力で攻略してしまうことから別名『人たらし』『赤帽子』とも呼ばれている。現在学園内だけでも50股くらいしているクソ野郎である。

 

「コナミ、この後の予定は分かっているよな?」

 

「ユーゴ達のコンサートを手伝うんだろ?分かってるよ」

 

そう。俺達は昼食後に行われるユーゴ、リン、セレナのコンサートのキーボードとドラム担当にされてしまっているのだ。以前、JRDGでセレナたちと約束した件の内、ユーゴとの約束である。

 

「良し。食べ終わったぞ」

 

「こっちも後輩たちへの引き継ぎは終わった。後はお前が歯を磨いたらセレナたちに合流するか」

 

「おぅ!」

 

そうして俺達は屋台を後にして体育館へと向かった。

 

~~~

 

<ツァン視点>

 

昼食を白河に奢ってもらったタコ焼きで済ませたボクは、本来の目的であるコンサートを見る為に体育館へとやってきていた。体育館内はパイプ椅子が整然と並べられており、席も既に8~9割ほど埋まっていた。壇上には暗幕が下りていて、その奥を見ることは出来なくなっている。

 

今日ここでコンサートを行うのは5組のグループ。そしてそのトップバッターは少し前にJRDGで優勝した最年少チームYRSのメンバーだ。どうやら白河は彼らの知り合いらしく、そのツテで本日行われるコンサートの観客席チケットを貰うことが出来たと言っていた。

 

「ここ、結構いい席よね」

 

ボクの席は壇上のステージより少し前、体育館の真ん中あたりに位置するその場所はステージ全体が見渡しやすく声も十分聞こえる場所だった。ここが白河から貰ったチケットの場所である。恐らく、白河からチケットを貰った人たちは全員この列なのだろう。

 

左右を見てみれば、落ち込んでいるオールバックの髪型の少年と別の理由で落ち込んでそうな彼の友人と思われる2人の少年、落ち込んでいる茶髪の少女を慰める2人の少女たち、屋台で売っていた冷やしカレードリンクをちびちび飲んでいる銀髪の少女、友達2人とおしゃべりに興じている小学生くらいの黒髪の少女、落ち込んでいる少年二人を慰めている黒髪の少女、落ち込んだ様子で眼鏡を拭いている小柄な青髪の少年と個性的なメンツが揃っていた。

 

もしかして、この人たちって全員が白河の知り合い?アイツって意外と顔が広いのね。…可愛い女の子が多いのが気になるけれど。

 

そんなことを考えていると、コンサート開始のアナウンスが放送され、体育館の照明が落とされる。そしてステージ上の暗幕が上がり、ステージ上のみに照明が照らされて、今は壇上に置いてあった3つのマイクのみがその照明を浴びている。いよいよコンサートが始まるようだ。

 

そして、ステージ奥から、金髪の少年、緑髪の少女、青髪の少女がそれぞれの楽器を持って現れる。その瞬間、観客席が歓声に包まれる。

 

「みんなー!今日はわざわざここに集まってくれてありがとうー!」

 

『ユーゴくーん!!』

 

『キャー!ユーゴくーん!素敵ー!!』

 

『こっち向いてー!』

 

『ユーゴくーん!新しいバナナよー!!』

 

チームYRSのリーダーである速水ユーゴが挨拶をする。メンバー唯一の男子で金髪のイケメンだ。チームの女性ファンの大半は彼推しらしい。以前、白河から見せて貰ったチームYRSのファンサイトでは、『普段の緩い感じも可愛くて良いけれど、デュエルする時にはキリッと表情が引き締まり、熱い心を持ちながら冷静に高度な戦術を披露するギャップがたまらない!』『黙っていればイケメン、喋ってもまた別のタイプのイケメン』『バナナで釣れる』だそうだ。

 

「今日は私たちのステージを存分に楽しんでいってねー!」

 

『リンちゃーん!今日も可愛いー!』

 

『リンちゃーん!結婚してくれー!』

 

『やっぱりデケェ!!』

 

『ユゴリン、キテル…』

 

続いてチームYRSの風祭リンが挨拶をする。メンバーのまとめ役である緑髪の美少女だ。チームの男性ファンの多くは彼女推しらしい。ファンサイトでは、『コミュ力が高くて誰とでも友達のように接することが出来る正統派美少女で、明るく強気な性格の中にある面倒見の良さがたまらない』『同じチームのユーゴと話している時は普段とまた違った魅力が見え隠れする』『オッパイが大きい』だそうだ。…誰だ最後の記事を書いた奴は。

 

「待たせたな!!」

 

『セレナお嬢様ー!ファイトですよー!!』

 

『キャー!セレナちゃーん!!』

 

『セレナちゃーん!付き合ってくれー!』

 

『俺を罵ってくれー!』

 

『ブヒュィィィ!』

 

最後にチームYRSの葉月セレナが挨拶をする。メンバーのムードメーカーと呼ばれている青髪の美少女だ。ファンは男女ともに多めらしい。ファンサイトでは、『普段強くては格好いい感じの小柄なクール系美少女だが、たまにポンコツをやらかすところが尊い』『同じ学校のあの狂人と話す時は犬耳と尻尾が幻視できる』『オッパイが小さい』だそうだ。…誰だ最後の記事を書いた奴は。

 

「よっと。流石にドラムはそこそこ重いな…」

 

彼ら三人が所定の位置に立った後、更にステージ奥から自分が使用するであろうドラムを担いで現れた赤帽子の少年が現れて、チームYRSの後方で機材のセッティングを始めた。

 

ドラムを担いできた少年を見ると、それまでの歓声はピタリと止まり、辺りがざわつき始めた。

 

『おい、あれって…』

 

『キャー!!コナミ先輩ー!!』

 

『あの赤帽子は間違いない!かがやき中学校のやべー奴の1人『デュエルお化け』だ…!』

 

『コナミ先輩ー!好きですー!』

 

『ひぃぃぃ!、『人たらし』だ!男も女も関係ねえ!ね、寝取られるぞ!!』

 

あれがあの有名なかがやき中学校の2大狂人の1人『赤帽子』。卒業式の日、男女問わずに50人以上の生徒に告白されて、全員をデュエルでボコボコにした後で振ったって言う女の敵。今日初めて見たけれど、噂通りだったわ。屋上の惨状は思い返したくない…。

 

「「「「「うわ、出た」」」」」

 

隣の席の人達は恐ろしい物を見たかのような表情で言葉を漏らしていた。あぁ、彼らも屋上のアレに挑戦してしまったんだね…。

 

「おいコナミ。お前の場所はもう少し奥だろ」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

そして、ステージ奥から更に自分が使用するであろうキーボードを担いで現れたウサギ仮面を付けた黒髪の少年がやって来て、赤帽子と話しながら隣で機材のセッティングを始めた。

 

キーボードを担いできたウサギ仮面の少年が現れると、ざわめきがさらに大きくなり、各所から悲鳴まで聞こえ始めた。会場は阿鼻叫喚と言った感じだ。

 

『うわぁぁぁ!『バニーラ卿』だー!!』

 

『あれが『バニーラ卿』!?かがやき中学校のやべー奴の1人の!?嫌だぁぁぁ!死にたくないー!!』

 

『辻斬りコワイ辻斬りコワイ辻斬りコワイ』

 

『校庭の隅で壁に突き刺さったチンピラどものように、腹パンされて壁に埋められるぞ!!』

 

『助けてママー!!』

 

あれがあの有名なかがやき中学校の2大狂人の1人『バニーラ卿』!?アレが一年で市の不良全てを駆逐し、その全員にバニーラの仮面を付けて回ったという伝説の狂人!?でもなんだろうこの既視感。何処かで見たことがあるような…。

 

「白河、彼は一体何と戦っているんだ…」

 

「クロト、貴方って人は…」

 

「…中身はともかく、仮面は可愛い」

 

「先輩ー!結構似合ってますよー!!」

 

「あっ、足元でバニーラとプチリュウが機材のセッティングを手伝ってる。可愛いわねぇ」

 

「ギャー!『バニーラ卿』っす!ボクまだ死にたくないっすー!!」

 

隣の席からは意味深なセリフが聞こえてくる。えっ、もしかしてアレって白河?アイツ、何やってんの?

 

「良し!メンバーも揃ったことだし、早速始めていくぜ!」

 

「最初の曲はこの曲よー!!」

 

「トップバッターは私だな!良し、行くぞ!!」

 

会場の空気を一切気にせずにコンサートを開始するチームYRSのメンバーたち。まるでこの混沌とした状況はいつも通りかのような振る舞いだ。

 

「♪~」

 

曲が流れ、歌が始まるとそれまでの悲鳴飛び交う喧騒は次第に止んでいき、徐々に歓声が戻ってきた。

 

あれ?この曲って少し前に白河が図書館で口ずさんでいた曲ね。確か、GXの第二期OPとかって言ってたっけ。何のことか分からなかったけれど。

 

壇上で歌う青髪の少女の表情はとても楽し気で、その歌声は透き通っており、会場を魅了していった…。

 

~~~

 

<クロト視点>

 

夕方前、コンサートを終えたユーゴ達とコナミはD-ホイール部の部室に集まって打ち上げを行っているが、俺は屋台の引き継ぎと片付けをするために校庭へ戻ってきていた。

 

「どの曲もいい曲でしたね!」

 

「ははっ、ありがとうレイちゃん。彼らも喜ぶと思うよ。はい、羊羹をあげよう。友達みんなと分けて食べてね」

 

「わぁっ!ありがとうございます!」

 

早速屋台にやって来たレイちゃんたちに余っていた羊羹を渡す。どうやらコンサート中は体育館に人が集中してしまい、屋台の売れ行きはイマイチだったようだ。

 

「はぁ~ユーゴ先輩、格好良かった~」

 

「コナミ先輩もね~」

 

レイちゃんの友達たちはユーゴやコナミに夢中のようだな。

 

「先輩!チケットをくれてありがとう!」

 

「楽しんでもらえたなら何よりだよ。じゃあまた今度ね」

 

「はい!」

 

そう言うとレイちゃんは友達2人を連れて屋台を去っていく。彼女たちの地元はここからそこそこの距離がある。キャンプファイヤーに参加できないのは残念そうにしていたが、今から帰らないと日が暮れて親御さんを心配させてしまうから仕方ないね。

 

「…クロト」

 

「おぉ、レインか。コンサートはどうだった?」

 

「…面白かった」

 

そんな会話をしながら、レイちゃんたちと入れ替わりに屋台へやって来たレインに大量に余っている冷やしカレードリンクを渡す。売れると思ったんだけど、そこそこ残ってしまったので在庫処分を手伝ってもらうつもりだ。幸い、彼女には好評だからなコレ。

 

「…クロト達のグループの曲は、歴史上存在しない曲ばかりだった」

 

「あぁ、俺の前世で聞いたことのある曲をこちらで再現したからな。そりゃ聞いたことないんじゃないか?」

 

今日コンサートで彼らが歌ったのは、GXの第二期OP、DMの第五期OP、5D'sの第五期OPの3つだったかな。なるべく明るめの曲をチョイスしたつもりだ。ZEXALやArc-V、VRAINZやSEVENの曲も再現してあるので、やろうと思えばもっと色々と出来たが今回は他のグループも居たからな、

 

「…ズルい。著作権って知ってる?」

 

「ズルくない。この世界に存在しないものだからその辺りもセーフ」

 

冷やしカレードリンクをちびちび飲みながらジト目で睨んでくるレインを華麗にスルーし、余っていた材料でタコ焼きを作ってレインに渡す。

 

「ほら、出来たぞ。キャンプファイヤーは参加しなくても見物はしていくんだろ?」

 

「…うん。ありがとう」

 

タコ焼きを受け取るとレインも屋台から去っていく。あの娘はせっかく学生として過ごしているのにイベント事は全て不参加していたからな。今日は結構楽しんでいたみたいだし、今回は無理にでもチケットを渡した甲斐があったかな。

 

「白河、アンタねぇ…」

 

「よぉ、ツァン。コンサートは楽しめたか?」

 

レインが居なくなって少しすると特徴的なピンク頭の少女ツァンがやって来た。なにやら呆れている様子。さて、どれのことだろうね。

 

「アンタがあの悪名高い『バニーラ卿』だったなんてね」

 

「その話か。自分で名乗った覚えはないんだけどな」

 

この中学校に入学した際のここの治安は最悪だった。タバコや酒は当たり前、暴力沙汰もそこそこの頻度で起こり、それらに対してここの教師は見て見ぬふりだった。童実野町かと思ったぞ。

 

こんなところにセレナやユーゴたちを通わせるわけにはいかないと思い、バレットやユーリたちに手伝ってもらって、様々な方法を使って丸1年かけてこの地域の不良と呼ばれる生き物を全て駆逐した。毎回彼らの顔が『見せられないよ!』って具合になるのでそれを隠す為に俺が付けていた可愛らしいバニーラの仮面の予備を被せておいたのだが、それが名前の由来らしい。

 

教師たちには特に何もしていないのだが、料理部の顧問を除く教師全てが俺の顔を見る度に怯え震えるようになってしまった。失礼な話だ。結局、毒にも薬にもなら無さそうなので彼らにはノータッチ。正直どうでもいい。今日も何人か校舎に埋めたけど、あのクソ教師共は何も言ってこないしな。

 

『バニー!』

 

「うわわっ!ちょっと、白河!変なイタズラしないでよ!」

 

ツァンの足元に居るバニーラが一鳴きすると、ツァンが驚いてこちらに抗議して来る。どうやら俺が何らかの方法でバニーラの声を出しているのだと思っているのだろう。

 

「やっぱり聞こえるんだな」

 

「はぁ?そりゃあれだけ大きな声なら聞こえるでしょ」

 

彼女は気付いていないだろうが、今バニーラは実体化していないので、普通の人間にはその姿は見えないし声も聞こえない。恐らく彼女は他の人達より潜在的な魔力が高めなのだろう。アニメGXの前田隼人のように、精霊を見えずともその声だけ聞こえるタイプなのだろう。

 

「このネックレスを握って足元を見て見なよ」

 

「うわっ、高そうなネックレスね。…うわわわっ!ば、バニーラがいる!?」

 

『バニー!!』

 

案の定、潜在魔力を少し引き出すことが出来るオカルトネックレスを渡すとカードの精霊の姿を認識できるようになったらしい。

 

「ど、どういうトリックよこれ!?」

 

「見たまんまだ。せっかくだからそのネックレスはあげるよ。今後なにかの役に立つかも知れないしな」

 

『バニー♪』

 

バニーラも自信を認識できる人間が増えて嬉しいらしい。

 

「こ、こんな高そうな物は貰えないわよ!?」

 

「いいからいいから。自作だからそこまで高くないしな」

 

「自作!?」

 

「自作」

 

ツァンはこちらを驚愕の表情で見つめてきて、こちらの言うことにいちいちオーバーリアクションで返してくる。いやぁ、やっぱりこの娘はからかい甲斐があるなぁ!

 

~~~

 

<セレナ視点>

 

夕暮れ時、D-ホイール部の部室で行っていたコンサート後の打ち上げを終えて、ユーゴ達はキャンプファイヤーに向かったが、私が向かう場所は別の場所に向かっていた。アイツは絶対にこの手の行事では表に出ないからな。

 

学校の廊下を一人で歩いていると、階下のキャンプファイヤーの様子がよく分かる。リンとユーゴ、瑠璃とユート、コナミと見知らぬ女生徒、楓と佐藤、ついでに鈴木と高橋先輩。良く知る知り合いたちがキャンプファイヤーの前でフォークダンスを踊っている。オールバックの少年や茶髪の少女が同性の友人と一緒に踊っていたりもした。

 

そんな光景を見ながら歩いていると目的地に辿り着いた。教室の扉付近にぶら下げられた名札に掛かれている文字は『家庭科室』。クロトの所属する料理部の部室でもある。私はその扉をゆっくりと開く。…居た。

 

「クロト、キャンプファイヤーには参加しないのか?」

 

「あぁ、相手も居ないしな」

 

扉を開けた瞬間からコーンスープのいい匂いがする。彼が座る椅子の前にあるテーブルには、ガスコンロの火で温められているコーンスープの鍋が置いてある。恐らくは窓からキャンプファイヤーの様子を眺めている彼が、フォークダンスを終えた知り合いに配ろうと準備している物だろう。

 

「そんなところに突っ立っていないで、中に入ってくれば?」

 

「そうする」

 

家庭科室に入って扉を閉める。クロトは時折コーンスープをかき混ぜながら窓の様子をじっと見ている。そんな彼の隣の席に座り、釣られるように窓の外へと視線を向ける。

 

「今日は楽しかったな」

 

「あぁ、そうだな。コンサートなんて初めてやったけれど、皆で演奏したり歌ったりするのがこんなに面白いとは思わなかった」

 

私たちがJRDGに優勝した後、ユーゴが突然『学園祭のコンサートに参加したい』と言い始めたことが切っ掛けだ。私たちは全員楽器未経験者だったが、歌う曲を絞ることでなんとか学園祭までに間に合わせることが出来た。

 

「俺もいきなり『学園祭のコンサートに参加したいからキーボードを担当してくれ』なんて言われると思わなかったけど、やってみると結構面白かったな。前世の経験が活きたな」

 

前世か。クロトが別の世界から転生してこの世界にやって来たことは何年か前に聞いたことがあったけれど、そう言えば詳しく聞いたことが無かったな。

 

「前世のクロトはどんな奴だったんだ?」

 

「前世の俺?どんな奴かぁ。そうだなぁ。前世での名前は『朝霧涼夜』、転生する直前の年齢は確か32~33歳くらいだったかな。身長や見た目は今の俺と大差なくて、俺がこのまま年齢を重ねていけば多分同じような顔になるな。仕事は電子機器を作ったり直したりするなんてことをしていたよ」

 

「結構オジサンだったんだな」

 

「そうだぞ~。パパって呼んでくれてもいいぞ~」

 

「断る」

 

何がパパだ。

 

「今と同じで幼い頃に両親が事故で亡くなって施設暮らしだったな。最初は馴染めなくて苦労したけど、年上の兄貴分の奴がデュエルに誘ってくれてな?それを通じて周りの連中とも仲良くなれたんだよ」

 

「いい話じゃないか」

 

「初心者相手にヤタロックだのハンデス三種の神器だのマキュラエクゾだの現世と冥界の逆転なんかを仕掛けてくる容赦のない奴等だったけどな」

 

「それはお前もだろ」

 

そうだったと言いながら笑うクロト。当時のことを思い出したのかその横顔は嬉しそうながらも少し寂しそうだった。そして、ふと思いついたかのようにこんなことを言ってきた。

 

「なぁ、セレナ。これは仮定の話なんだが、もし誰かが前世での知識やカードを持ち込めて別の世界に転生したとして、その世界の未来のことが大体分かって、あと半年くらいから3年くらい続く厄介な事件に巻き込まれて自分が死ぬかもしれないと知っていたらどんなことをすると思う?」

 

…それはつまり、クロトはこの世界の未来のことを大体予想出来て、あと半年足らずで死ぬかもしれない事件に巻き込まれるかもしれないという意味だろうか?

 

この流れでそんな言い方をすれば察しない方が無理がある。仮定の話なんだがって、もう少し言い方は無かったのだろうか?何故この男はこんなに口が軽いというか、口下手と言うか、アホなのだろう?

 

「そうだな…。その事件が起こらないように立ち回るか、その事件から遠ざかるように動くか、その事件に巻き込まれても大丈夫なように自身を鍛えるか、だろうか」

 

昔からクロトは各地で何か事件が起こるたびに彼はそこへ急行して戦ってきた。それはきっとその半年後だか3年後だかに起こるとコイツが予想している事件への対応だったのかもしれない。

 

「そうだよなぁ。やはりそれくらいだよなぁ。あーあ、今のこの平和がずっと続けばいいのになぁ」

 

クロトが寂しそうな表情のままチラッと外を見る。私も外を見ると夕日は沈んで空には月が出ている。フォークダンスはそろそろ終わりそうだ。クロトはガスコンロの火を落としてコーンスープの鍋に蓋をする。

 

「クロト。お前が知っている未来がどのような物かは知らないが、困ったら私を頼れ。何とかしてやるとは言えないが、一緒に考えてやることはできる」

 

私が椅子から立ち上がってそう言うと、クロトは私を見上げながら口をポカーンと開けている。何とも間抜けな表情だ。そして少しすると顔を逸らして顔を手で覆い隠した。

 

「…いや、さっきのは俺の話じゃなくて仮定の話だからな?それにセレナは時々ポンコツだからなぁ」

 

「誰がポンコツだ!」

 

クロトは顔を隠しながらそんなことを言ってきた。コイツは本当に失礼な奴だ。

 

「まぁ、なんだ。ありがとなセレナ」

 

そう言うとクロトは椅子から立ちあがって私の頭を撫でてくる。正直、コイツに頭を撫でられるのは嫌いじゃないが…いやそれは置いておいて、こいつは真面目な話を誤魔化す時はいつもこうする。

 

「だから、頭を撫でるな!ヘタレのくせに私を子供扱いするな!!」

 

異性の頭を軽々しく撫でるな。

 

「はっはっは。反抗期かな?それにしてもヘタレは傷つくなぁ。さて、フォークダンスも終わったことだし、コーンスープを配りに行こうか」

 

クロトは私の言葉に真面目に取り合わず、コーンスープの入った鍋を持って家庭科室を出ていく。でも、アイツは先に行かずに扉の前で私が出てくるのを待ってくれているだろう。

 

アイツはそういう奴だ。鈍感で不器用でヘタレで、その、なんだ、放っておけない奴だ。

 

~~~

 

<クロト視点>

 

太陽も完全に落ちた夜、俺はセレナと一緒にフォークダンスを終えてもまだ校内に居て帰っていない人たちにコーンスープを配っていた。

 

「ほらよ明日香」

 

「あら、ありがとうクロト」

 

「熱いから気を付けろよツァン」

 

「ありがと。おっ、あったかい」

 

「レインも要るか?」

 

「…貰う」

 

俺がコーンスープを配るたびに横に居るセレナから妙なプレッシャーを感じる。

 

そんなに心配しなくても、セレナの分のコーンスープは残すつもりなのでそんなに睨まないで欲しい。

 

「クロト~俺もスープくれ~」

 

「ほらよコナミ。零すなよ」

 

「クロト、こっちも2人分貰える?」

 

「ユーゴの分か?ほら、リン」

 

「こっちも3人分貰えるかしら?」

 

「瑠璃か。黒鉄と黒咲の分だな。3人分は流石に持てないだろうからあとでまた来るといい」

 

『困ったら私を頼れ』か。アニメ原作の彼女なら言わないだろうなぁ。

 

最初にあった頃のセレナはポンコツ感満載だったけれど、今はいい意味で変わったよな。

 

「白河、こちらも3人分くれないか?」

 

「居たのか三沢?」

 

「ずっと居たぞ!?」

 

「冗談だ。ほらよ」

 

「屋台の人、ボクにも貰えるかな?」

 

「丸藤か、ほらよ。熱いから気を付けろよ」

 

「わわっと。ありがとうっす!」

 

それにしても、セレナのことは家庭教師なんて偉そうなことやっていて子供の頃から見ているけれど、さっきのセレナは月明かりに照らされて綺麗だったなぁ。妙な色気もあった。正直に言うと、見惚れた。

 

俺でなければ、実はもしかして好意を持たれているのでは?と勘違いしていたかも知れないな。




そろそろ中学生編も終わりを迎えそうなので、日常編を挟んでみました。

今までに登場した人物で、今回再登場させられそうな人たちは大体出せたと思います。そして今後の出番は恐らく少ないですが、ようやくユートに苗字が追加されました。


次回の更新は2/27(土) AM7:00予定です。


白銀神雅魅様、メイン弓様、誤記報告ありがとうございます。修正しました。

オリ主にヒロインは必要でしょうか?

  • 不要だ!そういうのはいいからデュエルだ!
  • いる!原作イメージが壊れないオリヒロで!
  • いる!原作改変ものだし、原作キャラで!
  • いる!TFならモブキャラ攻略でしょ
  • いる!オリ主ならハーレムを目指せ!
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