【未完】遊戯王GXタッグフォース~2度目の人生は赤帽子の幼馴染~   作:嘘つき熊さん

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前回のあらすじ:ツァンが変な称号を手に入れた。

今回はデュエル無し。アニメGX第3話、オリ主視点での十代と明日香のデュエルの直前の話となります。


第九十二話 幕間:廃寮調査

<鮫島校長視点>

 

それは今年度の新入生を迎え、歓迎会が終わった翌日に起こった。

 

「無い!?七星門の鍵とそれを仕舞っていた箱が無くなっている!?」

 

私は毎朝の日課である植木鉢の底に隠してある七星門の鍵の安否確認を行っていたのだが、昨日までは間違いなくあったはずの七星門の鍵が無くなっていることに気が付いた。

 

「まさか、影丸理事長が用意したというセブンスターズの仕業…!?いえ、そうであれば既に七星門の封印が解かれて三幻魔が復活してしまっているはずですね」

 

では、一体誰が?七星門の鍵の存在を知る人物は、私と影丸理事長、そして影丸理事長の配下であるセブンスターズのみのはず。もしやそれ以外の何者かが島の伝承から三幻魔の存在や七星門の鍵のことを嗅ぎ付けたのだろうか?

 

「そう言えば1~2年ほど前、何の前触れもなく唐突に海馬コーポレーションから監査の為の人間が送り込まれてきていましたね。もしや海馬コーポレーションの人間が七星門の鍵の存在を知って奪取を試みたのでしょうか?」

 

それならば犯人は成人している教師陣の誰かだろうか?確かに彼らならば校内を巡回する警備員たちの巡回ルートと時間帯を把握できるだろうし、屋外に設置してある監視カメラの位置も分かる。この校長室に侵入して鍵を奪うこともできるかも知れない。

 

ただ、彼らの誰かが犯人であるならばこのタイミングである必要が無い。もっと早くから計画を実行できたはずだ。

 

そうなると、他に考えられるのは昨日からこの島にやって来た新入生?いや校長として彼ら生徒を証拠も無しに疑う訳にはいかない。

 

アカデミア倫理委員会に調査を依頼したいところだが、今年の彼らは信用できない。何故なら彼らは海馬コーポレーションのモクバ副社長の手によって去年まで居たメンバーの大半が異動させられている。

 

今年から新しくやって来たアカデミア倫理委員会のメンバーの中に今回の犯人が居るかも知れない。そしてその中には影丸理事長の手の物が隠れている可能性すらある。迂闊な動きは出来ない。

 

各界に影響力がある影丸理事長をいたずらに刺激すれば、どのようなことを仕掛けてくるか分からない。これまで学園の生徒が行方不明になった件を私がもみ消してきた様に、なるべく事を荒立てない様に行動しなればならないだろう。

 

しかしそれなら一体どうすればいいのか?今の私が信用できる者は元弟子の亮くらいだが、彼とはサイバー・ダークの件で対立してしまい、少し距離が出来てしまっている。なにより流石に1生徒の彼を巻き込むわけにも行かない。

 

ならば止む無し。

 

「ここはやはり私自らの目と耳で確認していくしかありませんね」

 

幸い七星門の鍵を仕舞っていた箱の裏には目視では気が付かないようなサイズの発信機が仕込んである。今その箱についてある発信機の反応を確認したところ、どうやら灯台付近に隠されているようだ。

 

七星門の鍵の存在がこれ以上広がらないように人目につかないようにして回収しなければならないだろう。

 

鍵の窃盗犯に関してはまだ予想すらつかないが、七星門の鍵が未だにこの島の中にあったことを考えると、残念ながら学園関係者の誰かが犯人なのだろう。今年の学校行事にはなるべく参加して学園全体に目を光らせることにしよう。

 

鮫島校長の受難は続く。

 

ティロリン!鮫島校長のストレス値が1上がった!

 

ティロリン!鮫島校長の警戒値が1上がった!

 

~~~

 

<クロト視点>

 

七星門の鍵を海に投げ捨てた翌日、特に騒動になっていないことに安堵と若干の違和感を覚えつつ、俺は先ほどまでアカデミアで初の授業を受けていた。

 

デュエルアカデミアの理念は『リスペクトデュエルの精神』を持つ『デュエルエリートの育成』だ。デュエルエリートはさておき、俺は『リスペクトデュエルの精神』と言う物に興味があった。

 

何せアニメで結構な頻度で出てきたワードなのに具体的な内容がほぼ明かされていないからだ。前世で初めてアニメGXを見た時はまだ学生だったため、そもそも『リスペクト』の意味が分からず、大人になって見直しても結局不明のままだった。

 

ここに来てようやく『リスペクトデュエルの精神』と言う物の全容を掴めるのではないかと内心楽しみにしていたのだ。サイバー流の後継者である亮さんに聞いても良いんだけど、それだと味気ないからな。

 

「…なんて思っていた時期が俺もにありました」

 

結果から言うと、言い方は悪いがクソみたいな授業だった。色々と最悪だった。

 

まず授業のレベルが低い。

 

この学園に入学しておいて今更「カードの種類を全て答えよ」なんて問題を間違うわけないだろ。この世界だと今や幼稚園児でもデュエルする時代だぞ。問われた明日香も「基本ですから」なんて言いながらアッサリ答えていた。

 

そう思っていたが、何故かオシリスレッドの学生の何人かの顔色が悪い。お前らどうやってあの筆記試験を合格したんだよ。その後すぐにオシリスレッドの丸藤翔が「フィールド魔法について答えよ」と言う問題に口ごもっていたが、これは丸藤翔があがり症なだけで内容は理解しているのでセーフ。

 

世の中では融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムと言ったヤバいカードが群雄割拠していて、プロリーグでも段々と有用性に気付き始めた上位のプロデュエリスト達の使用者が増え始めている。こんな子供にデュエルを教えるような授業内容を3年も続けられたら人生を3年無駄に過ごすのと変わらないだろう。

 

俺は、卒業後にデュエルに関係ない大学やデュエルに関係ない職業に就職できるように個人で準備しておいた方がいいなと本気で思った。

 

次に教師と一部学生のモラルが低すぎる。

 

教師(クロノス)が出来の悪い(ように見える)生徒(丸藤翔)を率先してやり玉に挙げて笑いものにするとか、見ていてただただ不快だった。まぁ、最初期のクロノスはこんなもんだろう。さっさとカミューラにやられて人形にされたあと、十代と和解して改心して欲しい。今のセブンスターズにカミューラが居るかどうかは微妙なところだがな。

 

生徒も生徒で晒し物にされている生徒に対して言いたい放題。主にブルー男子がクソすぎる。答えられない方もどうかと思うが、この程度のその辺の小学生でも答えられるような問題が分かるくらいで調子に乗れるのがある意味では凄い。「井の中の蛙大海を知らず」っていう言葉が頭をよぎった。

 

最後に、十代も結構酷い。

 

「知識とデュエルの腕は関係ないですよね?」なんて言っていたが、関係ないわけがない。オシリスレッドの生徒に時々いるようだが、自分のデッキに入っているカードの効果すら知らない人間がまともなデュエルをできるわけないだろ。

 

相手のデッキの特性や回し方を知っていれば何処で妨害すればいいか分かるし、相手モンスターの耐性持ちに対する対策方法なども知識が無ければ考えることすらできない。知識のあるなしじゃ勝率はかなり変わるだろう。

 

何より、クロノス教諭に勝利した十代がそんなことを言うと周りに悪影響を及ぼす。やる気も知識も無い生徒は危機感を忘れ、やる気も知識もある生徒は堕落する。アニメ異世界編で佐藤教諭が言っていた通りだ。(あの人はあの人で大概クズだがな)

 

リスペクト(尊敬する、自重する、自尊心をもつ、大事にする、尊重する)精神とは一体…。

 

ただ、大徳寺先生の錬金術の授業は前世の雑学みたいな感じで(将来の役に立つかはさておき)面白かった。鮎川先生の保健体育の授業も前世の一般的な高校レベルの授業なのでそこそこ楽しめた。そう考えると悪いことばかりではなかったな。

 

「お~い、白河~。早く売店に行かないとドローパンが売り切れちゃうぜ?」

 

そうして先ほどまでの授業について考え事をしていると、同じ寮で左隣の部屋に住んでいる『坂倉 真』が話しかけてきた。

 

「そんなに急がなくても大丈夫だろ?」

 

「そうだけどさ、せっかくアカデミア名物ドローパンを食べられるんだから、早く行ってみたいだろ?」

 

なるほど。ドローパンはアカデミア以外でも売っているところはあるが、売っている場所はそこまで多くない。恐らく彼は今まで食べたことが無いのだろう。

 

「ドローパンだっけ?そんな何が入っているか分からないパンなんて…」

 

坂倉と話をしていると、今度は同じ寮で右隣の部屋に住んでいる『愛怒瑠夫』が話しかけてきた。

 

「そんなこと言っても気になるじゃん?なぁ?」

 

「坂倉の言う通り、分からなくは無いな」

 

そんな話をしながら、俺たち3人は誰も居なくなった教室から出て売店へ向かって歩き始めた。

 

「ドルオも気になるだろ?」

 

「ふん、下らん。…幾らするんだ?」

 

「なんだ。ドルオも興味津々じゃん。200DPだってさ」

 

「他の地域でも時々売っているけど、ここのドローパンは結構格安だよな」

 

この学園ではデュエルをすることで学園指定のPDAにDP(デュエルポイント)と呼ばれるポイントが溜まる。DPはこの学園内でリアルマネー以外に消費して買い物することが出来る電子マネーのようなものだ。授業で高い知識や技術を披露したり、筆記・実技のテストで好成績を残すと貰えたりもする。

 

200DPか。過去にコナミへの土産として何度か買って帰ったことは有るが、自分で食べたことは無かったな。俺もこの機会に食べてみるか。

 

「どうせなら噂の黄金の卵パンを引き当てたいよな」

 

「ふん、どうせそれを引き当てるのはボクだよ」

 

「白河もドルオもそんなに考えることじゃないだろ?何でもいいのさ、美味ければな。はははっ!」

 

この後、ドルオは納豆パンを引いて絶句し、坂倉はドリアンパンを引いて大笑いし、俺は普通のブドウパンを引いてコメントに困った。

 

~~~

 

<クロト視点>

 

今日の授業が全て終わったけどイエロー寮の晩御飯までまだまだ時間があるので、俺は島の各地に散って周囲の調査をしているワイト達の一部からの報告を受け、天上院吹雪が失踪した現場であろう場所である、かつては特待生寮と呼ばれていた廃寮へと向かっていた。

 

「なるほど。廃寮はそんなところにあったんだな。優等生を集める為の校舎がこんな森の奥深くにあるとか、通いづらいと思うなぁ」

 

『バニー!』

 

『だね~』

 

『ワイトもそう思います』

 

一緒に歩いているバニーラやキーメイス、ワイトも同じ意見のようだ。

 

『クロトや。この先からその廃寮までの道を見てきたが、先ほど言っていたカンシカメラ?なるものは特に見当たらかったのう』

 

『然り然り。拙者も同行したが、寮の入り口以外には特に見当たらなかったでゴザルよ』

 

「そうか。助かったよ、ありがとう2人とも」

 

深い森の中にある廃寮への道のりを歩いていると、先行してもらっていた斬首の美女と伝説の剣MASAKIが戻って来た。彼らが戻ってきたのなら廃寮まではもう少しのはずだ。

 

『それにしても深い森ですね。エルフの里と同じくらいでしょうか』

 

『流石にそこまで深くは無いだろう。おや?廃寮とはあれではないか?』

 

「あれだな」

 

ホーリー・エルフとエルフの剣士が周囲の木々を見回していると、どうやら廃寮まで辿り着いたらしい。

 

『ここでボクの出番だね。そ~れ』

 

「ありがとな」

 

俺が言うまでもなく、メカレオンが俺をステルス状態にしてくれる。流石に付き合いが長いと話が早くて助かる。

 

『リュ~ン』

 

「そっちに鍵が開いたままの窓があるのか?じゃあそこから入れそうだな」

 

プチリュウが正面玄関以外に寮内に侵入できそうな入り口を探して入れくれたらしく、俺はその窓から寮内に入った。

 

「ワイト、頼んだ」

 

『『『任されましたぞ!』』』

 

「鍵付きの部屋があるかも知れないからキーメイスも一緒に行ってやってくれ」

 

『OK』

 

「もしかしたら外敵が居るかも知れないな。斬首の美女と伝説の剣MASAKIも彼らへの同行を頼む」

 

『うむ、よいぞ』

 

『任されたでゴザル』

 

この廃寮はなかなか広い。ワイト達に分散して調査を頼みつつ、キーメイス、斬首の美女、伝説の剣MASAKIにも同行してもらったので彼らに危険は少ないだろう。俺も今いるリビングらしきエリアから順番に探索を行うことにした。

 

廃寮を見て回っている途中、資料室らしき部屋では古代エジプト時代に制作された7つの千年アイテムについて記された石板がちらほら見られたが、今はあまり役に立たないな。と言うか、こんな危ない情報が記された危険物を気軽に放置しておかないで欲しい。

 

「これは、吹雪さんの写真だな。『10-JOIN』なんて直筆サイン入りだ。良いセンスだな」

 

資料室には、アニメGXで十代たちが見つけた天上院吹雪の写真が飾ってあった。斜め45度の角度から撮影されたブルー生徒の制服を着て腕を組んだ吹雪さんの姿が映っている。黙っていると本当に超一流のイケメンだよな。喋ってお調子者の側面を見せてもなお一流のイケメンなのは反則だと思う。

 

俺がリビングに戻ってくると、俺より先に寮で調査をしていたアクエリアがやって来た。どうやら何か見つけてきたようだ。

 

『ザコザコ君は探索が甘いなぁ。私なんてもう手がかりを見つけちゃったよ?』

 

ほらほら!なんて言いながらいちいち人の頬を人差し指で突いてニヤニヤした表情で精神的マウントと取ってくるが、これでいて本当に有能だから怒るに怒れない。それに、この態度も慣れると可愛いものだ。

 

『ほら、これ!僅かだけど精霊の力の残滓を感じるし、精霊が宿ったカードを仕舞っていたカードケースのようね』

 

アクエリアが渡してきた青い宝石に付いた赤い箱もアニメで見覚えが有る。これは藤原 優介が所持していてオネストの精霊のカードを収納していた箱だが、既に中身のカードが無い。このカードは本来ならば2年後に遊城十代によって持ち出されるはずなんだが…。

 

「こんな所か。後はワイト達が見つけて先行している地下に何があるかを確認しに行くかな」

 

藤原の箱はリビングに置きつつ、吹雪さんの写真だけ持ってきていたカバンに詰め込み、アニメGXでダークネスの儀式を行っていた地下のデュエルリングへと向かう。

 

それにしても吹雪さんの失踪事件を未然に防ぐことが出来なかったのが未だに納得できない。

 

アメリカの事件後に彼に渡したオカルトネックレスは当時の俺が後先考えずに全力で魔力を付与したものだ。本物の【パラサイト・フュージョナー】クラスの破滅の光でもしばらくは持ちこたえられるくらいの力はあったはずだ。

 

そして彼に渡していた『よほどのことが無い限り使用しないで欲しい』と念を押して渡したあのデッキを使用してもダークネスに及ばなかったのだろうか。

 

地属性・獣戦士族で統一され、前世で2016年の秋頃に初登場した頃から凄まじい性能で環境を席巻して、それまで環境トップだった【ABC】等を瞬く間に駆逐していったあの干支をモチーフにした極悪デッキ。今の俺でもガチデッキを組んで戦っても苦戦必至なんだがなぁ。

 

~~~

 

<クロト視点>

 

周囲に岩肌が見えた坑道のような地下道を懐中電灯で照らしながら暗闇を歩いてデュエルリングへ向かう最中、俺はその言葉と共に後ろを振り返る。今でもほぼ何も感じないが、これだけ狭い空間で今の俺の魔力探査であればなんとか感知することが出来た。間違いなく誰かがそこに居る。

 

「それで?いつまで隠れて付いてくるつもりだ?」

 

そして誰も居ない空間に向かって声を掛ける。背後から微かに感じた気配には覚えがある。恐らくはイリアステル製のステルス装置により姿を隠しているのだろう。そこに居るのは、俺の予想が正しければきっと…。

 

「…いつ、気付いたの?」

 

30秒ほどの沈黙が場を包むが、突如、何もないはずの空間から銀髪ツインテールの少女が姿を現す。言わずもがなレイン恵だ。大方、イリアステルのZONEの指示で俺の監視をしていたのだろう。虚空に向かって話しかける変人にならずに済んだようだ。

 

「この廃寮に入った瞬間から違和感は感じていたさ。人間は成長するんだぜ?いつまでもイリアステル製のステルス装置で誤魔化せると思うなよ?」

 

「…むぅ」

 

得意げに語る俺の言葉にレインは不服そうだったが、それ以上は彼女は何も言わなかった。俺もそれ以上特に追求せずにデュエルリングへと向かうことにした。

 

ステルスを見破ったら退散するのかと思えば、レインは特に何事も無かったかのように悪びれも無くステルスを解除した状態で俺の後ろを普通に付いてきた。

 

「いや、そのまま付いてくるのかよ」

 

「…ダメ?」

 

俺の問いに首をかしげて心底不思議そうな表情をするレイン。ほぼ無表情だが容姿が整っているのであざと可愛らしい姿になっている。

 

他の人間ならともかく、イリアステル所属の彼女ならこの先に何があるかは知っているだろうし、特に問題は無い。

 

そもそも彼女の立場上、俺が同行を拒否してもこっそり付いてくるだろう。それならば見える範囲に居て貰った方が無難だ。

 

「俺の邪魔をしないなら、駄目ってことは無いかな」

 

「…なら、いいはず」

 

レインは同意は得たとばかりに俺の隣に並んで歩き始めた。デュエルリングに到着するまでまで少し時間があるし、気になる点を聞いておこうかな。

 

「もしかして、昨日の昼から監視していた?」

 

「…うん」

 

あっさりと肯定するレイン。やはり校舎前でツァンとタッグデュエルをしていた際に聞こえた声はレインだったか。

 

「…ツァン・ディレに、不埒な行為をしていたのも見てた」

 

「そう見せただけで実際にはしていないぞ」

 

「…七星門の鍵を、箱ごと海に捨てたのも見てた」

 

「げっ!…そっちは忘れてくれると助かるなぁ」

 

「…無理。もう上に報告した」

 

「デスヨネー」

 

イリアステルとは休戦状態だ。パラドックスの件で貸しもある。流石にこのタイミングで干渉してくることは無いだろう。…干渉されると大いに困るので止めて頂きたい。

 

~~~

 

<クロト視点>

 

なんやかんやでようやく地下のデュエルリングに辿り着いた俺とレイン。

 

岩肌をくりぬいたようなドーム状に開けた空間の中心にデュエルリングがあり、その周囲を蛇のような彫像が何体かリングの中央を向くようにして置かれている。リングの地面にはよく分からない幾何学模様のような図形が描かれ、その中心にはある黒い丸模様を挟み込む形で人間2人が立つための目印となる模様がある。

 

「ここが例のデュエルリングか。アニ…前世で得た情報とほぼ合致するな」

 

「…そう」

 

本来の歴史通りであればこの場所で、人々に忘れ去られることを恐れた藤原優介が永遠の命と人を超えた力を望んでダークネスの仮面を装着し、自身の魂を捧げてダークネスと契約する。そしてその現場に偶然立ち会うことになった天上院吹雪と一緒にダークネスの世界の入り口に到達し、そこで藤原優介は天上院吹雪にダークネスの仮面を渡した後に1人ダークネスの世界へと消える。

 

その後、大徳寺先生(アムナエル)とのテストデュエルの最中に天上院吹雪はダークネスの仮面を装着してダークネスの世界へと迷い込むことになり、仮面の力を借りることでその世界を生き残る、はずだ。

 

「流石に今もここに吹雪さんが居るなんてことは無いか」

 

ちなみにダークネスの世界は12次元を結ぶ隙間に小さく存在しているらしく、三幻魔やら破滅の光やらを放置すれば大体二年後には大きく拡大して各次元へと侵食していき、この人間界にもデュエルモンスターズの精霊のカード以外のカードを闇に染め始める。

 

闇に染まったカードはデュエルディスクに反応しなくなり、そのカードが一定数を超えるとダークネスの進行が本格化し始め、闇イソノことミスターTが人間界のデュエリストを闇に取り込み始める。彼らの力の源は世界中のデュエリストの心の闇らしく、闇に取り込まれて同化したデュエリストが増えれば増えるほど敵は強大さを増すそうだ。

 

元々が残機ほぼ無限のラスボスみたいな存在のくせに常時世界中の人間の力を集めてミナ〇ィンとか元〇玉の力を振るえるとか、そんなもんチート持ちの俺でも勝てるか!そうなると恐らく俺はワラワラ出てくる闇イソノことミスターTの物量に敗れてダークネスに取り込まれ、永遠の悪夢と仮初の救いを得るのだろう。他のアニメで例えるなら無限月読に囚われるような状態に近いだろうか。

 

そんな状態になったらあのクソ女神は嬉々として俺をゲームオーバー状態とみなし、ゲラゲラ笑いながら俺に不可避の死を送ってくるだろう。そんなバッドエンドは御免である。

 

「おや?」

 

周囲を見回しながらデュエルリングの中心へと歩いていた俺は、リングの中心に僅かに黒ずんだ空間の歪みがあることを発見する。その歪みに向けて手をかざして魔力を込めるとその歪みは大きくなっていく。

 

「…クロト、止めた方がいい」

 

普段、こちらの行動を制限するような発言をしないレインが珍しく口を挟んでくる。どうやらかなりヤバいことをしようとしていたらしい。手を遠ざけて魔力を送るのを止めると歪みは元の大きさに戻った。

 

「これは、もしかしてダークネスの世界への扉か?」

 

「…多分、そう」

 

もしあのまま魔力を込め続けていたらダークネス世界のへの扉を開いてしまったかもしれない。何の準備も無しに入ったら即ゲームオーバー確定=俺の死、になりそうだ。今は触らないでおこう。

 

「ここに関してはこんなものか」

 

あまり長居をして、ここのデュエルリングの装置が動き出したら闇のゲームをさせられてしまうかも知れない。さっさと移動しよう。次はアムナエルの研究室だ。

 

~~~

 

<クロト視点>

 

俺とレインはアニメ原作同様に地下のデュエルリングへ向かう道の途中にある隠された通路の先にある鉄製の扉を開き、アムナエルの研究室兼実験室へと辿り着いた。

 

先ほどのデュエルリングと同様に岩肌をくりぬいたドーム状の空間には、その中央に先ほどとは異なる模様が描かれた円形のデュエルリングがある。そして正面の壁には三幻魔の石板があり、その他の壁の周辺には球体の蒸留窯や、恐らく錬金術に関する本が収められているだろう本棚がある。周囲に散乱してある多くの機材に関しては名前も用途も分からない。錬金術に詳しい精霊が居れば何かわかるのだろうか。

 

「ここも大体は前世の記憶と同じ感じだな」

 

「錬金術。これが、私の…」

 

レインも周囲を確認しているようだ。知識としては知っていても直接見るのは初めてだろうからな。興味深いのかもしれない。

 

「で、やはりこれもあるのか」

 

「石造りの棺桶。恐らくこの中には…」

 

俺が棺桶の蓋を外してその中身を見る為に懐中電灯の光を差し込むと、そこには白いカッターシャツに赤いネクタイを着用した30~40代くらいの黒髪長髪の眼鏡を付けた男性のミイラが眠っていた。ミイラが着用しているシャツの胸元には『DAITOKUJI』と名前が書かれてある。今現在、アカデミア本校で錬金術の授業を受け持つ教師にしてオシリスレッドの寮長をしているはずの大徳寺のミイラである。

 

「不治の病に侵された自分の肉体を捨て去り、錬金術で新たな生命体ホムンクルスを創造してそこに自身の魂を送り込んで宿らせる、か。新しい肉体の劣化が始まる前に次に肉体の創造が間に合うサイクルを作り出せれば永遠の命を得たような物だろうな」

 

もしかして、この技術さえ手に入れればクソ女神に殺されても生き返られるのでは?いや、生き返るたびに殺されそうだ。残念ながらこの案は却下だな。

 

「この技術があれば、マスターも…」

 

レインもなかなか危ない発想をしているようだが、ZONEはやるなら他のメンバーと同じようにサイボーグになるんじゃないかな。

 

「錬金術の本か。書いてある言葉がまず俺の知る言語じゃないし、内容も理解できなさそうだ」

 

本棚から何冊か取り出して確認してみたが、俺の頭では理解することは困難のようだ。俺は手に取っていた本を本棚に戻して周囲を見渡す。

 

「これ以上はここに居ても収穫はなさそうだし、戻るか」

 

「うん」

 

やはりここには吹雪さんはいなかったか。アニメ原作よりも早い段階で来ればもしかしたら…とも思ったが、そう上手くは行かないらしいな。さて、寮に戻ったら今回の調査結果のまとめと今後の方針を決めておかないとな。

 

そんなことを考えながら、俺はなるべくこの部屋に入った時の状態に部屋を戻した後、レインと一緒に研究室を後にした。




今回はアニメGX第三話の主人公視点でのストーリでした。話が長くなったので3話構成に分けたところ、今回はデュエルが無くなってしまったので、次の話も本日中に連続投稿予定です。まだまだ原作ストーリーは崩壊していませんね。

学園外も学園内も敵だらけで疑心暗鬼に陥りそうな鮫島校長は、果たして生き残ることが出来るのか?それはまだ誰にも分かりません。

タッグフォース内でお金の代わりとして使用されていたDPを採用して見ました。特に大きな意味はありません。現金のやり取りをするよりはまだ健全に見えるでしょう。

アカデミア本校でオカルト的にもっとも危ないスポットである廃寮。ここを調査しないわけにはいかないので、真っ先にやってきましたが、結果はある意味では上々と言ったところですね。

次回の更新は3/10(水) AM7:00予定となります。

メイン弓様、誤記報告ありがとうございました。修正しました。

斎王琢磨の運命力は?

  • 原作遵守。強化万丈目に瞬殺される。
  • 原作微強化。強化万丈目を苦戦させる。
  • 原作大強化。強化万丈目を瞬殺する。
  • 原作超強化。ずっと私のターン!
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