仮面ライダー龍騎 Bloo-dy Answer   作:ホシボシ

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龍騎の世界に残り続ける

 

「いや――、まだだ」

 

辰巳シンジがそう呟いたのには理由がある。

ライダー裁判が終わり、アイは無罪となった。

だというのに、この女、こともあろうに、こう叫んだのである。

 

「ボクがやったんだ!! ボクが犯人なんだよ!」

 

はて、なぜだ?

答えはただ一つ。アイが異世界人だからだ。

アイは自分に大いなる使命があると思っていた。

そうでなければならなかった。

 

だからこそあの時、トリガーマグナムを撃ったのだ。

やるべきことがある。なのに、そのはずなのに――なにもできなかった。

なにもできず、また『自分』が不幸になった。

 

そんなことが、あっていいはずがない。

なにもできずにこの先の時間を浪費することが正しいはずがない。

でなければなんのために死ななかったのか。

ただ、ただ――

ただ、守りたかった。

 

「……っ?」

 

違和感。

おかしいと、心が叫んでいる。

なぜまだアイが泣いているのか。

なぜまだ桐野が泣いているのか。

裁判は終わったんだぞ。なのに、なぜ?

 

「………」

 

シンジは胸のあたりを掴んだ。

このざわめきは、なんだ?

考えろ。わかるはずだ。自分なら。

 

「……!」

 

思い出した。シンジの懐には、デッキがある。

ユダには返していない。これは彼女のものではないからだ。

そうか、そうだな。このざわめきの正体――

龍の咆哮の意味がやっとわかった気がする。

 

「まだだ! まだ終わっていない!」

 

辰巳シンジは強く叫び、ユダを指した。

 

「今ここに! 八咫メルト殺害の真相がわかった! ならその罪を裁かない理由がない!」

 

『どういう意味ですか?』

 

「真犯人は折原相衣だ! 彼女の裁判を始めることを提案したい!」

 

ユダは訝しげな表情を浮かべた。

シンジの言っていることがよくわからない。

だが、一理はある。よってすぐに『鏡』を用意した。

近くにいたイツカたちはそのまま歩いてきたし、遠く離れていたものたちは近くにあった鏡をくぐり抜ければ裁判所にワープできるようにした。

こうして一同は再びテミスの間へと招かれる。

 

「気持ちはわかるけど、これから正式の捜査が始まる。まだ早いだろ」

 

加賀はそう言うが、王慈は表情を歪めた。

 

「そもそも、子猫ちゃん――この世界の折原相衣はおそらくもう……」

 

シンジは首を振った。

 

「死んでいようが逃げていようが関係ない。目撃者である桐野さんがいるんだ」

 

「待て待て、まだ桐野たちが嘘をついている可能性もゼロじゃない。本物の折原相衣を殺した可能性だとかな」

 

同じくテミスの間にいた桐野はギョッとする。

傍にいたアイは相変わらず焦ったような顔をしていた。

 

「いや、そもそもユダが現場を見ているはずだ」

 

シンジに睨まれ、ユダは肩を竦めた。

 

『人間に肩入れしすぎるのはミラーモンスターとしては……まあですが、今回は異世界というあまりにも異常事態ですしいいでしょう。ええ、たしかに八咫メルト殺しの犯人は折原相衣さんで間違いありません。私がオーディンに変身しタイムベントで現場を確認しましたから』

 

「毎回そうしてくれると警察としても助かるんだけど……」

 

『ライダーの力を現実世界で使うのは大きな処罰対象としていますから。運営側がおいそれと使うのも』

 

とにかくと、改めてシンジは宣言する。

折原相衣の罪を決める裁判をするべきであると。

 

「余罪の可能性もあるだろ。話を聞いてみないと」

 

「減刑の余地もね」

 

湯川と王慈が難色を示すなか、レンでさえ複雑そうな表情を浮かべている。

 

「そもそも彼女がもしも亡くなっている場合、この裁判で罪を決定する意味があるのか?」

 

「レンさん。本人ならいるよ」

 

「?」

 

「そこにいる」

 

シンジはそう言って、アイを指した。

 

「え? もしかしてまた入れ替わってるんですか?」

 

イツカの問いかけにシンジは首を振った。

 

『アイ氏を代理人とするということですか?』

 

「代理じゃない。同一だというなら、相衣に課せられた罰を、彼女に与えれば問題ないだろ!」

 

「そんな馬鹿な!」

 

「馬鹿だと思いますか? だったらそれが答えの欠片になる!」

 

「???」

 

シンジがなにを言っているのかわからなかったが、そのなかで二人だけ、なんとなく察することができた。

一人は花京院ミユキだ。

不思議な夢を視るからこそ。辰巳シンジの二個目のデッキの秘密を知るからこそ。アイが目の前にいるからこそ。なんとなく、シンジの『狙い』を察することができた。

正直、乗ることは面倒だと思ったが──

 

「まあ、いいんじゃない」

 

なんて、言ってみる。

そしてもう一人は湖白だ。シンジを近くで見てきたからこそわかる。

かつて感情に任せて失敗したという彼は、そうならないために気を遣い、言ってみれば仮面のようなものを被って自分に接してきたと思っている。

もちろんそれは悪いことではない。ただ時折、レンといるときは、その仮面が外れているような気がするのだ。

湖白と過ごすなかでも、たまに。

 

そういう彼の顔が、今、そこにある気がした。

失敗を繰り返すことや間違いを選んでしまうは怖いだろう。

けれども彼は今、本音を晒そうとしているように思える。

その勇気を湖白は尊重してあげたかった。

 

「やりましょう! お願いします、ユダ様」

 

『………』

 

もはやユダ自身よくわかっていないが──

 

『まあいいでしょう。ディケイドに立ち向かった貴方を認めます』

 

ユダが手を上にかかげ、そのまま振り下ろすと巨大な鏡状のエネルギーが参加者の頭から足元まで通過する。

一瞬だった。一同の姿に鏡像が重なり、別空間へ転送される。

そこはまるでウユニ塩湖だ。青空が広がる空間で、上下が反射している。

上にいる本体はライダーの姿。そして下に写っているのが変身者。

変身者の姿が砕けた。

残っているのは、13人のライダーたちだ。

 

シザース「わあ! ぴっくりしちゃ!」

 

アビス「ん……? なんだこの頭の上の名前」

 

『発言のテンポを速めるため、台本形式を取らせていただきます』

 

ベルデ「なんですかそれ」

 

『発言者が目立つというシステムです。ライダーが同じ場所に集まっていますので。発言メッセージも頭上に浮かぶモニターに表示されます』

 

王蛇「くだらない。どっちにしろライダー裁判、戦えばいいだろ」『ソードベント』

 

ゾルダ「おいキン肉マン、そいつを押さえておいてくれ」

 

ファム「了解いたしました! マッスール!」

 

王蛇「ぐっ! おい! 離せ! なんだこのパワー!」

 

ファム「時に皆さま、筋肉ルーレットで結論を決めませんか?」

 

ゾルダ「いいよ」

 

ファム「やったぁ!」

 

※ファム、筋肉ルーレット中

 

ナイト「だがシンジ、どうするつもりだ?」

 

龍騎「逆にみんなはどうすればいいと思いますか?」

 

ベルデ「えぇ!?」

 

龍騎「お坊さん」

 

インペラー「………」

 

※沈黙中

 

インペラー「空」

 

ガイ「え?」

 

インペラー「我は空」

 

※筋肉ルーレット中

 

インペラー「我は海」

 

アビス「え?」

 

インペラー「人は地に」

 

ベルデ「え?」

 

インペラー「地は天へ」

 

シザース「え?」

 

インペラー「開闢!」

 

シザースガイアビスベルデ「「「「おおー!」」」」

 

ゾルダ「………」

 

龍騎「それで?」

 

インペラー「……え?」

 

オーディン「つまり? という意味ですね」

 

インペラー「……天は海へ」

 

ガイ「お?」

 

インペラー「神は神へ」

 

アビス「ぬ?」

 

※筋肉ルーレット中

 

インペラー「虚空の幻影」

 

ベルデ「むっ?」

 

インペラー「蓮は南無」

 

シザース「ぴ?」

 

インペラー「明星!!」

 

シザースガイアビスベルデ「「「「はぁー!」」」」パチパチパチパチ

 

ライア「結局なんなの?」

 

インペラー「まだ詰めますか?」

 

龍騎「命とは? 貴方ならよくおわかりのはずだ」

 

インペラー「………」

 

シザース「わくわく!」

 

インペラー「夢は夢に(適当)」

 

ガイ「きちゃあ!」

 

インペラー「幻想は幻想に(適当)」

 

アビス「よッ! 十八番!」

 

インペラー「愛は自己へ(適当)」

 

ベルデ「染みるなぁ」

 

インペラー「是空(適当)!」

 

シザース「ZENの道は深いなぁ……」

 

ゾルダ「まだ無駄な時間を! お前のせいだぞ龍騎!」

 

龍騎「同一であることを証明すればいい!」

 

インペラー「それはでないなぁ」

 

龍騎「す、すみません。とにかく! そもそもアイと相衣が同じ人間であるなら、いずれアイも同じ過ちを犯すかもしれないということ。あるいは折原相衣は、折原アイの未来の姿かもしれない」

 

オーディン「二つの世界にどこまで共通性があるということですね」

 

龍騎「そもそも彼女は逃げている間に人を殺していると言っている。相衣と立っている場所は同じと言ってもいい」

 

オーディン「……?」

 

龍騎「オレは彼女に、死刑を求刑する!!」

 

ゾルダ「なにぃッ!?」

 

ファム(筋肉ルーレットの結果が出たけど言える空気じゃなくなっちゃった……)

 

タイガ「どういうことだ記者! お前の言ってることが、いまいち理解できない」

 

龍騎「折原アイは無罪となった今も、自分がやったと言っている。それはもしかしたら折原相衣との融合が始まっている可能性はないでしょうか?」

 

ライア「たとえば──」

 

王蛇「そんなことはどうでもいいだろ。戦い、勝ったものが判決を決める。おい、わかったなら離せ筋肉!」

 

アビス「アンタは黙ってろ! ライアさん、続けてくれ」

 

ライア「たとえばこの世界の折原相衣が死亡している場合、アイが相衣になろうとしているってこと? よくわからないけど、世界がそういう風にさせようとしているとか?」

 

龍騎「ボクはかつて過去の鎌田と未来の鎌田が融合するところを見ました」

 

ベルデ「だれぇ?」

 

シザース「やだなぁイツカちゃん。鎌田も知らないの? ちょきぴーなんだね!」

 

ベルデ「え? 嘘、ごめんなさい。結構常識みたいなやつですか?」

 

シザース「チーズをかけると美味しいやつでしょ?」

 

ベルデ「本当に誰!?」

 

ゾルダ「黙ってろ! 続けろ、辰巳」

 

龍騎「ボクらには異世界の知識がない。仮に折原相衣さんが自殺したとしたら、二つの意思、あるいは自己という概念が同一になる場合がある。むしろ、世界そのものが置き換わるかもしれない」

 

ゾルダ「置換……されるってことか?」

 

ファム「痴漢!? 痴漢はアカンッッ!!」

 

ガイ「文字を置き換えることですよ」

 

ファム「失礼しました。それでは大胸筋使った謝罪をご覧に入れましょう」

 

龍騎「今そこにいる折原アイが何者なのか――」

 

※ファム見事な謝罪のポージング中……

 

龍騎「改めてボクらは考える必要がある。そのためにボクは取材記録を提示する。ユダ!」

 

ユダが、龍騎の持っていた記録をモニタに映す。

 

龍騎「彼女が一人称をボクという風にしていたのは、見ていたアニメや漫画の影響だ。彼女はよく妄想をしていて、昔は一人でニヤニヤしていて気持ちが悪かったと、かつてのクラスメイトが証言しています。不真面目な性格で、勉強もせずに漫画を見ていたそうで、自分に特別な力があると思い込む典型的なアニメオタク、中二病と陰で悪口を言われていたそうです」

 

タイガ「……っ」

 

※ファム、ダブルバイセップス、炸裂。

 

龍騎「最悪、八咫との恋愛関係も妄想で、ただのストーカーだった可能性も考えられる。SNSの裏アカウントには客の悪口を書き綴り、馬鹿な妄想を垂れ流してることが裏付けだ。それは彼女の幼少期よりノートに書き綴られた小説からも見て取れるだろう。今はスマホで夢小説というジャンルをよく執筆して投降していたみたいだ」

 

シザース「うぅぅ、胸の古傷が……ぴちゅぴちゅするよぉ……」

 

タイガ「おい記者! 下衆な真似はやめろ! 個人的な小説をモニタに映す意味があるのか! ましてやここにいない子猫ちゃんを馬鹿にする言動!」

 

龍騎「真実を明らかにする必要がある! これらの要素は、彼女という人間を構築してきたものだ。そこに歪なものがあれば、そこから人となりを察することができる。信用に足るべきか否か、それを判断するのが裁判官だろ」

 

タイガ「レディの心に土足で入り、引き出しを開けるなんて俺にはできない!」

 

龍騎「心の話じゃない! 今そこにいる存在の話をしてるんだ!」

 

タイガ「……ッ!」

 

龍騎「いや、心だって同じだ! 閉ざし続けたままじゃ誰にも見えない! 見つけてもらえない!」

 

オーディン「それは──……」

 

 

 

 

オーディンをはじめとして、何人かはこの裁判の真の狙いに気づき始めていた。

辰巳シンジは、折原相衣と折原アイが『別人』であるということを証明しようとしているのだ。

これはそのための裁判であると。

 

「ふふ」

 

裁判を見ていたアイは思わず、笑ってしまった。

信じられなかった。絶対にそんなことをしてはいけない場面なのに。

龍騎は自分を死刑にするとまで言っているのに!

 

だがそれでも、笑みがこぼれた。

それほどまでに相衣を『凄いな』と思ってしまった。

自分はまだそこまでいっていない。考え付いたかもしれないが、書きはしないのに。

 

「痛いヤツ……」

 

それは自嘲と、同情と、愛しさ。

どんな人生を歩んでいたんだろう?

どんな哀しみだったんだろう? ふと、そう思った。

 

 

 

 

「相衣さんのやった罰をアイさん与えるなんておかしいです!」

 

オーディンの言ったことは正しいと蟹江ピーチュ、本名『波佐見(はさみ)聖子(せいこ)』は思った。

本名があまりにもカニなので、カニをキャラ付けにしてみた。

だから配信でカニが好きと常々口にしているが、聖子はぶっちゃけエビのほうが好きだ。

なんだったら一番好きなのタン塩だ。

 

かつてはどんなバイトもうまくいかず失敗ばかりで悩んでいたが、配信をしたらたくさんのファンがついて、自分も苦しいだとか弱さを打ち明けられた。

そこが自分の居場所になった。蟹江ピーチュはもう一人の自分だ。

でも本当の自分とは違う。

シザースと一緒だ。それは身に纏う、頼もしいスーパーヒロイン。

 

「うううううううううう!」

 

「ッ!?」

 

「ぐー! ちょき! ぴーっちゅ!!」

 

蟹江ピーチュは、アイに向かってほほ笑む。

 

「ねえ、あなたが好きなものはなぁに?」

 

「………」

 

普段なら困る質問だが、相衣の黒歴史が晒されたのだ。

自分も恥をさらす必要があるとアイは思ったので、答えることにした。

 

「やっぱり──」

 

アニメ名と、漫画名を連呼しているなかで、ある一つの作品名が出た時、シザースが叫んだ。

 

「それ! ピーチュ! 聞いたことない!!」

 

 

 

 

シザース「ピーチュ! オタクの味方、ブイチューバー! だからわかるよ! その作品、この世界にはないよね!?」

 

龍騎「ユダ、検索を!」

 

『たしかに、おっしゃる通り、この世界には存在しない作品です』

 

シザース「オタクの血肉はゲームと漫画。肉体を構成する物質が違うなら、それはもう別人だよ!」

 

龍騎「でも今や類似性のない作品を見つけるのが困難なくらいですよね」

 

シザース「ぴちぇ!?」

 

アビス「まあ○○は○○のパクり、こんなものはネットの世界じゃ山ほどとある意見だわな」

 

龍騎「漫画やアニメが好きでたくさん見ているなら、彼女のなかにはその作品と類似しているものが必ずある。その作品だけが彼女のアイデンティティに大きな影響を与えているとは考えにくい!」

 

ベルデ「でも、他にもそういうのあるかも……」

 

王蛇「くだらない。あまりにもくだらないな。なんなんだこの茶番は」

 

龍騎「茶番か……」

 

王蛇「ああ。生きたいか生きたくないか。そんな1+1より簡単なことがわからない人間なんているか。いつまで言い訳してる。察してくださいってか? 見苦しいな」

 

王蛇に睨まれ、アイは震えあがった。

 

王蛇「お前がなにをしたところで、折原相衣の生き死にの輝きは変わらないんだ」

 

龍騎「それは、たしかに」

 

王蛇「ッ?」

 

龍騎「これは茶番だ。わかるだろ、折原さん」

 

タイガ「どういうつもりだ……?」

 

龍騎「答えは彼女自身が持っている」

 

 

 

 

龍騎はディケイドと戦った時のことを思い出していた。

あのとき立ち上がり、走り出したなかで、もう一つのデッキをどのように手に入れたかを思い出した。

すべては花京院からの指示だ。

彼女が夢で視た。

あそこにいけば、『彼』に会えるかもしれない。

そうやって指定された場所は、なんのことはない普通の道だった。

そこで待っていると、オーロラが生まれて、彼が現れた。

 

「手塚に貰った紙に書いてあったんだ。今日、ここに行った方がいいって」

 

「貴方は?」

 

「俺は城戸真司。よろしく」

 

デザイアロワイヤルという戦いを終えた彼は、旅をしているという。

はて、シンジは思わず頭を押さえた。

記憶があいまいだ。靄がかかっているような。会ったことがあるようなないような。

そもそもこんなに年齢が上だったか?

 

「キミは?」

 

「辰巳……シンジ、です」

 

「龍騎なんだろ」

 

「ッ、はい!」

 

「そっかぁ。ま、じゃあこれ、ほら飲んで飲んで」

 

缶ビールを貰った。

 

「例えば……そう、宇宙人!」

 

「え?」

 

いきなりぶっとんだ話題が出たものだから、思わずポカンとしてしまった。

しかし真司はこのたとえに自信があるようで、胸を張りながら口にしていた。

 

「星の向こうからユーフォーに乗ってきた彼らが地球を攻めてきたら、怖いよな?」

 

「はぁ」

 

「でもきっと、助けに来てくれる宇宙人もいると思うんだ」

 

そう言って、龍騎のデッキを差し出した。

 

「これは!」

 

「俺も龍騎なんだ」

 

同じ名前。

その意味をシンジはよく考える。それは真司も同じなのだろう。

デザイアロワイヤルに至るまでに何があったのかはわからないが、どうやらシンジよりは少し先に立っているようだ。

 

「俺たちの知らない何かが悪いものを運んでくるときもあるだろうけど、いいものをくれるときもある。そう、信じたいだろ?」

 

オーロラが生まれる。長居はできないらしい。

彼が来たのは単純な理由だ。

困っている人がいる。そう聞かされていたからだった。

城戸真司はその人を助けに来ただけだった。

 

「これは……!」

 

「いつかまた、返してくれればいい」

 

というより、自然と戻って来るだろうと言っていた。

よくわからないが、そういうものらしい。

ドラグレッダーも心配はいらないという。『死ぬ』ことはない。

 

「でも──」

 

「ん?」

 

「直接返しに行きます」

 

「ああ。ありがとう」

 

「難しいかも、しれないですけど……」

 

「会えるさ。キミが、仮面ライダーである限り」

 

シンジは真司から受け取ったデッキで変身し、オーロラを突破してディケイドを殴った。

 

 

龍騎「たとえ同じ人間だったとしても、辿った人生は違うはずだ!」

 

アイに言っている。

 

龍騎「人間は常に選択し続けている。まったく同じ道を辿るなんてありえない!!」

 

ア衣に言っている。

 

龍騎「それがパラレルワールドが生まれた理由じゃないのか!?」

 

相イに言っている。

 

龍騎「オレは城戸真司じゃない。辰巳シンジだ! アンタもそうだろ! 折原『  』――ッ!」

 

『I』は、目を開いた。

 

龍騎「世界がどうとか、そんなものはここにいる人間には関係ない! それよりも尊重するべき願いがある! 違うか!?」

 

「あ……うぁ」

 

龍騎「救いたかった! それが願いだったんだろ? でもそれはもう叶わない! 折原相衣を助けられなかったんだ! いい加減、そこから目を逸らすなよ!!」

 

「うあぁぁあうあ」

 

龍騎「後悔は願いじゃなくて、どこまでいっても後悔でしかないんだ! キミは一人の人間だ。今胸の中にある願いくらいは答えられるだろ! どれだけ醜くてもいい! それを口にすることが──ッッ! 抗い続けることがッッ!」

 

龍騎は前に出た。

円形に並ぶ仮面ライダーたちの中央に経ち、アイに向かって叫んだ。

 

龍騎「それが、キミに残された最後の闘いなんだ!」

 

アイは頭を掻きむしる。

そのときだった。桐野がアイを抱きしめたのは。

 

「──ほしい……!」

 

アイが、言った。

 

「友達が……ほしい! またあのチキンを美味しいって思いたいッッ!! またあのアニメが見たい! 桐野ちゃんと一緒に! うあぁあぅあぁあああああ!」

 

振り絞るように、掠れる声で叫んだ。

 

「私は! 折原アイは!! 無罪を主張します!!」

 

 

無罪。

 

無罪――?

 

本当に無罪でいいのか?

 

銃弾は正当防衛として認められるか? 殺意は消え失せるものか?

黙秘することは正しかったのか? 嘘をついた罰は?

 

存在の──、意味は?

 

罪、とは?

 

「のわぁ!」

 

王蛇はファムの力が緩んだ一瞬を見逃さない。

一気に力を込め拘束から抜け出した。

 

『ファイナルベント』

 

王蛇が放つ音声が、一斉にライダーたちを突き動かした。

それぞれの意思が、デッキからカードを抜き取る。

 

ナイトがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

シザースがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

ゾルダがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

ガイがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

ライアがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

タイガがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

インペラーがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

ファムがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

アビスがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

ベルデがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

オーディンがカードをセットした。

 

『ファイナルベント』

 

音声に囲まれている。

ライダーに囲まれている。

龍騎はデッキからカードを抜いて、ドラグバイザーへセットした。

 

『ファイナルベント』

 

ドラグレッダ―が咆哮をあげながら、構えを取る龍騎の周りを激しく旋回していく。

 

答えがそこにある。

 

それを掴むため、龍の影を纏い、飛び上がった。

 

 

 






ここで終わりです。見てくれてありがとうございました。
更新は死ぬほど遅いですが、今後もいろいろやっていきたいと思ってますんで一つよろしくお願いします(´・ω・)
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