聖剣を抜いた親友と、抜けなかった俺   作:雷神デス

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めっちゃ疲れた上に性癖あんまり入れられなかった、死にたい。
あ、質問多かった主人公の行儀が悪い件についてですが、ルストの行儀が一部DIO並みに素晴らしかった&主人公が前世でもあんまり器用じゃなく間違ったスプーンの使い方してたのでそれが癖になっちゃってる感じです。
設定とか割と取っ散らかってますが好きなシチュエーション書きたいがために書き始めた練習作なので許してくれると嬉しい


受け入れられた者

「―――何が、起きている?」

 

 

 父である魔王の元から姿を消した、滅びの魔力を扱えぬ出来損ないの愚妹。

 もう見ることは無いだろうと思っていたその女は、ある日突然一人の人間の騎士を連れ自身が治める領地にやってきてこう言った。

 

 

『マモンお兄様、この領地を私にくださりますか?』

 

 

 何を馬鹿なと嘲笑し、蟻を潰すように自身が育て上げた最高の兵隊達で愚かなことを宣った反逆者を圧殺する―――はずだった。

 だと言うのに、なんだこれは?

 

 

「その男は、何なのだ……!?」

 

 

 騎士が剣を振るう度、冗談のように精鋭達が首を落とされ屍を晒す。

 城を守る堅牢な鉄の扉は魔力を纏わぬただの斬撃で両断され、魔法使い達が放った魔法すらその剣の前に何の意味もなさなかった。

 魔法を剣で切れる訳が無い、そんな常識が目の前の男により打ち砕かれた。

 

 

「何、と言われましても。この騎士は私の右腕でございます。実に頼りになるでしょう?」

 

「ふざけるな、そんなことを聞いているのではない!!何故その男は人間でありながらそこまで強い!?何故魔法を斬れる!?何故それ程の男がお前に仕えている!?あまりにも道理が通らんだろうが!」

 

 

 人間にも強い存在がいるのは知っている、勇者等その最たる例だ。そこはまだ看過できる。

 しかし、魔法を斬る等聞いたことは無い。魔力を纏わせているのならば別だが、それをする様子も無くただ剣を振るだけで魔法を斬っている、意味が分からない。

 何より、一目見ただけでも分かる程の才と強さを持つ魔物から見ても規格外なこの男が、魔力も持たず力も無い、ましてや王の器すらないこの女に仕えていることこそが最も納得がいかない。

 

 

「まあまあ、お待ちになってください。一つずつ答えて上げましょう。まず、この騎士がここまで強い理由ですが」

 

 

 無駄話をしている間に後ろ手に滅びの魔力を圧縮させ、騎士を殺すための隙を伺う。

 この男と正面から戦って勝てないのは今までの戦いを見て分かっている、故に狙うはほんの一瞬の隙を突いた不意打ち。

 そうまでしなくてはならぬほど追い詰められたことにプライドを傷つけられるが、今はそんなことを言っていられる状況では無い。

 

 

「これに関しては才能としか言えません。世界はあまりにも残酷ですね?私には何の才能も与えてはくれなかったというのに、マモンお兄様はこの領地を治められる程の器を持ち、私に仕える騎士はそんなあなたを殺せるほどの剣才を持っている。ほんの少しでもその才能を分けてもらいたかったくらいです。およよ」

 

 

 わざとらしく泣き真似をする腹違いの妹に気色の悪さを感じながら、無言でその時が来るのを待つ。

 

 

「そして魔法を斬ることに関してですが―――実はそれに関しては私のおかげなんですよ?」

 

「なんだと?」

 

 

 妹が発したその一言に思わず反応してしまう。

 自分は妹に負けたのではなく、この騎士に負けたのだと思い込み自分のプライドを守っていた。

 故に、自身が妹に負けたとでも言うようなその発言に苛立ってしまった。

 

 

「何を馬鹿なことを!貴様は何の力も無いはずだ!力が無い故に父は、魔王アスタロトは貴様を捨てた!それが今更になって力を持って帰ってきた?そんな都合の良い、夢物語のようなものがあるはずもあるまい!」

 

「ええ、そうですね。私は一人では何もできません。故にこの力は私には使いこなせぬものでした。ですが、お兄様も知っているはずでしょう?私が生まれ持って魔力を持たない理由を」

 

「ああ、知っているとも。貴様は魔力を拒絶する身体に生まれ、魔力に触れればそれが霧散する。故にお前は、魔法を使え、ず……」

 

 

 そして、気づく。

 ローブに隠れて気づかなかったそれに今ようやく気付いてしまった。

 妹の重心は以前見た時と違い明らかに左に偏っていた。

 まるで右についてあった重りが外れたかのように、まるで、そうまるで。

 

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「ああ、気づいてくれたのですね!良かった、私の頑張りをマモンお兄様に見せられて!」

 

「貴様、正気か……?」

 

 

 信じられない、理解できない、何がお前をそうまでさせる?

 その女は、そう、右腕を自ら切り離したその女は、文字通り。

 自分の右腕を剣にしたのだ。

 

 

「ずっと考えておりました。自分だけが持つこの力は、どうすれば上手く使えるのかと。お兄様達が馬鹿にし、蔑んだこの身体はどのようにすればあなた達に、お父様に認められるのかと!あなた達の元からいなくなった後、ずっとずっとず~っと!身を削って研究して、魔法についても気が遠くなるほどの時間調べ続けて!」

 

 

 分からない、なんだこの女は、何のためにこんなことをしている?

 復讐か?嫌悪か?憎悪か?怒りか?いいや、そのどれでもないだろう。

 その目は光に満ち溢れている。自分達を見てすらいない、まるで何か希望溢れる未来でも見るように、身の毛がよだつ程の正気を持っている。

 ずっとそうだった、そんな体に産まれて何故そこまで笑えるのか不思議な程に、その女から笑顔が消えたのを見たことが無かった。

 

 

「私の体は魔力は持たない代わりに魔力を通さない、魔法に対して強い防御力を持ちます。けどこれだけじゃ不十分だった。だって私は叩けば壊れるほど脆いです。私が人間なんか殴れば、逆に私が壊れちゃう程に私のこの身体は脆く弱い。魔法限定の盾くらいなら使い道があるかもしれません、けどそれだって欠点があります。魔力は消せても魔法によって生じた他のエネルギーは防げない。例えば魔法により爆発が発生した場合、魔力を伴わない物理的現象であるそれに私は成すすべもない。故に私自身が戦うのは到底不可能」

 

 

 その生き物であるかすら疑わしい何かは、どこまでも笑顔で、無邪気に、嬉しそうに。

 まるで親に褒めてもらうことを強請る幼子のように。

 

 

「だから私は他の人にこの身体を使ってもらうという方向性に切り替えました。けれど見ての通り私の体は一つ。それに乱暴に扱えばすぐ壊れちゃう欠陥品です。例え剣にしたところで少しでも衝撃を与えてしまえば、すぐに役立たずになってしまう。だから見つける必要があったのです。そんな脆い剣でも折らず壊さず、爆風も風も骨も鉄も鋼も人も、全てを両断する最高の剣士を。私の右腕に足りる存在を。そして見つけました!」

 

 

 気づく、いつの間にか騎士がいないことに。

 嫌な予感と共に振り向こうとして、ぐらりと手足に力が入らず倒れてしまう。

 四肢に感じる激痛、自身の関節が斬られたと気づくのに時間がかかった。

 

 

「どうですか?お兄様。私だって使い道はあるでしょう?」

 

「正気か貴様は!?このようなことをしでかしたのだ、父上が貴様に報復するぞ!」

 

「はい、それが今回お兄様を襲った目的ですから!」

 

 

 ダメだ、こいつはダメだ。

 まともではない、正気ではない、父上は何故こんな奴を殺さずに捨て置いたのだ!?

 

 

「魔物の王たる父上に反逆するつもりか!?貴様には親への情が無いのか!?」

 

「……?これは異なことを仰りますね、お兄様」

 

 

 心底不思議そうな顔で、その女は首を傾げる。

 まるで何を言っているのか分からないとでも言うように。

 

 

「これはお父様のためにしていることですよ?」

 

「なんだと……?」

 

「私がしたいことはとても素敵なことなんです」

 

 

 その未来を思い浮かべ、精練に整った顔を紅潮させる。

 それこそが最高の結末だとでも言わんばかりに幸せそうな表情を浮かべて、そいつは言った。

 

 

「私はお父様とお母様を再会させたいんです。お父様が最も愛したあの人と!そしてお父様とお母様と皆で楽しく暮らすんです!ああ、それはきっと―――」

 

 

 針のようなものを首筋に突き立てられ、脳を無数の言葉が支配する。

 『勇者を殺せ』

 どれだけ逆らおうとしても無駄だった、体が再生し動けるようになってももはや自分の意思で動くことは叶わなかった。

 自分は既に、この悪魔に。

 

 

「世界で一番美しいハッピーエンドなんですから!」

 

 

 もう何も聞こえない、喋れない、見えない。

 

 

「だからマモンお兄様も手伝ってくださいませんか?お父様のために、その身を挺して」

 

 その言葉を最後に、我の意識は消滅した。

 

 

 

 

 

☆〇☆〇☆

 

 

 

 

 

『〇〇は凄いねぇ。きっと将来、凄い子になるよ』

 

『うん!俺、おばあちゃんが天国で自慢できるような大人になるよ!』

 

 

 人生とは、『こんなつもりじゃなかった』ことばっかりだ。

 

 

『あいつ、付き合い悪いよな』

 

『俺らのこと見下してるんだぜきっと。喧嘩強いからってよ』

 

『剣道部の顧問からも嫌われてんだろ?世渡りってもん下手だよなぁ』

 

 

 中途半端に正義感を持っている癖に、それに見合う程の強さも経験も持ってなくて。

 

 

『君、そんな気持ちで社会人やっていけると思ってるの?』

 

『ここでやっていけなけりゃどこ行っても無理だよ!』

 

『お前みたいなのを雇ってくれるの、ここだけだよ?』

 

 

 きっと辛いのは自分だけじゃない、皆がそれに耐えて生きている。

 その先にある幸せを掴むために足掻いて這い上がって、そして諦めず頑張り続けてようやく普通の人並みの生活ってもんを手に入れることができる。

 誰だって、俺だってそんなことは分かってる。

 

 

『困ったことがあれば相談してもいいんだよ?』

 

『君は一人じゃない』

 

『辛くなったら逃げていい』

 

 

 自分に手を差し伸べてくれた人も、助けようとしてくれた親もいた。

 きっと自分はまだ恵まれていたんだろう、自分より辛い人も一杯いたんだろう。

 けど俺はどうしようも無く馬鹿で要領悪くてクソ野郎で、誰かに助けを求めることも、夢を持つ勇気も、楽しく生きる方法も知らなくて。

 

 後ろから来た人に追い抜かれて、その人に手を伸ばすことも出来ずに転んで動けないままで。

 約束した凄い大人になる方法も分からずに、ただただ人生を浪費して。

 ある日、ふとしたきっかけ一つで全てを捨てて逃げ出したくなって。

 ロープと台を持って、自分の部屋で―――。

 

 

『おお、僕達の子が産まれた!元気な泣きっぷりだなぁ!』

 

『ちょっと泣きすぎな気もするけどね。けど、私達の子供はこれくらい元気な方がいいんじゃないかしら?』

 

 

 気づいたら、知らない女の人に抱きしめられて泣いていた。

 自分が転生したと気づくのに長い時間がかかった。

 それまでは訳も分からず、そもそもまともな思考すらできないまま赤ん坊時代を過ごした。

 母さんの乳を吸った記憶とかも覚えてない、覚えてないったら覚えてない。

 

 知識も才能も経験も、全てが強くてニューゲームなイージーモード。

 夢見たはずだ、異世界に転生してやること成すこと全部上手く行くそんな人生を。

 けれど、俺に微笑んでくれる両親を見る度に思ってしまった。

 

 

 それじゃあ、エンヴァ(体の持ち主)は一体どこに行った?

 

 

 俺は本当にこの両親の息子なのか?だって俺には前世の記憶というべきものがある。

 前世の俺にも家族はいて、今世の俺にも家族がいる。

 だとすればどちらが俺にとっての家族だ?

 そもそも俺はエンヴァを名乗っていいのか?

 本当にこの身体は俺が持っているべきものなのか?

 俺は―――エンヴァという才能溢れる人間の人生を奪ってここにいるんじゃないか?

 

 

『ハッハッハッ!馬鹿なこと考えるなぁ、この子は!』

 

 

 泣きながら俺のことを両親に伝えたら一蹴された。

 信じられてない!?とショックを受けたが、両親は信じた上で俺の言ったことを笑い飛ばしていた。

 

 

『そんなものがあったとしても、君はずっと僕らの子供さ』

 

『ええ。だって大人ぶろうと背伸びしてる所や褒めてもらおうと頑張ってる所なんて、子供そのものだものね。それに幾ら言っても食事中にご飯こぼすし、注意したら不貞腐れるし』

 

『片付けも未だちゃんと出来てないしね』

 

『それに。それで悩んで、傷ついて。いたかも分からない誰かのために涙を流し続けたんだろう?夜中にすすり泣く声がずっと聞こえて少し怖かったくらいだよ』

 

『そんな涙を流せる優しい子、他の誰かやあなたがなんと言おうと私達の息子に違いない。だって私の夫はとっても優しい人で』

 

『僕の妻は誰かのために涙を流せる人なんだから』

 

 

 ずっと、ずっと泣いて、涙が出なくなる程泣きはらしたのは初めてだった。

 その時初めて自分がこの世界にいていいんだと、エンヴァとして生きていいんだと肯定された。

 その日から俺は、二人を自分の両親だと胸を張って言えるようになった。

 今度こそは、必ず。

 この二人が胸を張って自分の息子だと言えるような。

 名前の通り、皆から憧れられる、誰かから目標にされるような。

 そんな、立派な奴に。

 誰かの期待に応えられる、そんな奴に。

 

 

 

 

 なれなかった

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 どれだけ身体や技を鍛えても、結局の所自分は前世と変わらぬままで。

 楽な方に逃げて、逃げて、逃げて。

 自分の弱さに目を背けて、誰かの強さに羨望して、それに手を伸ばすことも出来ず。

 弱いままで良いと、自分に居場所をくれた人にまたしがみついて。

 

 

「あら、エンヴァ。そんなところでどうしたのです?……随分と年季が入った本」

 

「ソフィート様……」

 

 

 かつて両親に買ってもらった誕生日プレゼント、俺が勇者を目指す切っ掛けとなった聖剣を手にし魔王を倒した勇者の自伝。

 それを読んでいた俺の隣にちょこんと腰かけたソフィート様は、十年以上持ち歩き読んできた本を物珍しそうに眺めていた。

 

 

「大事な物なんですね。見ただけでも分かるくらいに大事に読んでましたもん」

 

「はい。昔、両親に買ってもらった大事な宝物なんです」

 

 

 ピクリ、とソフィート様の肩が揺れた。

 ソフィート様はマモンに『母親と父親を再会させたい』と言った。

 けれど、その方法が具体的にどのような物かはまだ聞いていない。

 そもそも、ソフィート様が何故それをしたいのかも、俺は知らない。

 勿論何度も聞こうと思った。

 

 

「……そうですか。それはとても大事でしょうね」

 

「はい。……結局、二人の期待に応えられず、ずっと反抗してばかりでした。あの時も、二人の言うことを聞いていれば―――」

 

 

 自分が聖剣を抜きに行きたいと言ったとき、二人からは猛反対を食らった。

 理由は単純明快で、『勇者は辛くて大変だからお前には無理だ』という、親としては当然の反論だったし、そもそも距離とかを考えれば簡単に行けるはずが無い。

 けれどあの時の俺は、両親から期待されていないと思ってムキになってしまった。

 

 

『勇者以外にも、色々とやれることはあるはずだろう?憧れるのは分かる、けど他にもお前がなりたいものが見つかるかもしれない。まだ決断するには早いんじゃないか?』

 

『子供の内から行く必要なんて無い。もう少し色んな経験を積んで、大人になってから改めてどうするか決めればいい』

 

 

 その言葉を素直に受け入れられず、書置きだけ残して家を飛び出して行った。

 家を出てから、もう一年と半年程が経つ。

 二人は今どうしているだろうか、なんて考えて。

 それを自分が思う資格なんて無いだろうと自嘲する。

 

 

「そんなに親のことを思えるなんて、エンヴァの両親はきっととても素晴らしい方だったんでしょうね!」

 

「……そうですね」

 

 

 ソフィート様の目が一瞬だけ変わったのを、俺は見逃せなかった。

 黒く濁った、何を考えているのか分からない不気味な目。

 俺が彼女の親について、魔王について聞こうとする度に浮かべるその目を見て、俺は今まで何も言えないでいた。

 ―――けれど、そろそろ向き合わなければいけないだろう。

 

 

「ソフィート様の両親は、魔王とはどんな人だったんですか?」

 

「……私の両親、ですか」

 

 

 思ったよりソフィート様に変化は無く、いつも通りの笑顔で語り始める。

 

 

「誰よりもお互いを愛し合った二人でした。お父様は魔物であり、お母様が人間であった以上、別れが来るのは当然でしたけど」

 

「母親が人間だったんですか!?」

 

「はい。珍しいことではありますが、あり得ない話ではないでしょう?魔物の中には人間と同じような姿と機能を持つ者も少なくは無い。私自身、こんな体ではありますけど人間との間に子供を産めますし」

 

「そ……そうですか」

 

「そんな二人の間に産まれましたので、お父様は最も愛する妻との間に出来た私を次の魔王にしたいと考えていたようなのですが、ご覧の通り私はこのような体。滅びの魔力も持たず、体も弱い。だからお母様が死んだ後、すぐに殺されかけて捨てられました」

 

「……自分の子供を、ですか?」

 

「魔物とはそういうものですから。けれど、お父様は母上がいた時は私を傷つけませんでした。だから私はお母様がいたからこそ私は受け入れられたのではないか、と思ってお母様とお父様を再会させようと思ったんです。これが私のやりたいことです」

 

「……」

 

 

 話をし終わってから、ソフィート様は立ち上がった。

 

 

「そろそろ勇者達が来る頃ですね。エンヴァ、手筈通りに頼みますよ?」

 

「……はい。行きましょう、ソフィート様」

 

 

 ―――多分、俺に話してくれた話は殆どが嘘なのだろう。

 

 人の顔ばかり見て生きてきたからか、無駄に発達した観察眼がそう導き出す。

 けれど、そんなことを思いながらも何の追及もせず、関係を壊したくないからただ黙ってついていくだけの俺はやっぱり昔と何も変わっちゃいないのだろう。

 

 

 

 

 

☆〇☆〇☆

 

 

 

 

 

「……到着しました、勇者様」

 

「うん、ありがとう。皆、気を付けてね」

 

「おう。次はあいつに後れを取ったりしねぇ!ぶん殴ってあの悪趣味な鎧剥ぎ取ってその面拝んでやらぁ!」

 

「イヤル、あなたは少しは落ち着きなさい。そんなんだから毎回勇者様の手を煩わせるのよ」

 

「んだとぉ!?」

 

 

 目的地の廃村に到着したが、魔物の姿は未だに見えない。

 奇襲を仕掛けてくるのかと思い周囲を警戒するがそんな様子も無く、不気味な静寂だけが広がっていた。

 

 

「……勇者様、少々違和感が」

 

「分かってる。君たちは周辺警戒と援護をお願いね?基本戦うのは僕がするから」

 

「おいこら!俺達もあいつと―――!」

 

「ごめん、多分邪魔になる。だから、ね?」

 

「ッツ!……ッチ、分かったよ」

 

 

 煩いイヤルを黙らせ、意識を集中させ聖剣を抜く。

 

 

「そこにいるんだろ?出てきなよ」

 

 

 そう言うと、廃屋から一匹の女の魔物と、先ほど戦った騎士が現れる。

 騎士は相変わらずの威圧感で私を睨み、おそらくは魔法のアイテムで変えられているのであろう声を出す。

 

 

「来たか。魔導士リージェ、騎士ジャスティ、拳闘士イヤル。そして……。……勇者ルスト」

 

「君には幾つか聞きたいことがある。けどその前に―――君が言っていた主とやらはどこだい?」

 

「あら?もしかして私、部下とかその辺りで見られているのでしょうか?悲しいです、およよ」

 

 

 わざとらしく泣く仕草をする女の魔物。

 何故だか分からないが、こいつが行う仕草一つ一つが腹立たしく、そして傲慢に見えた。

 

 

「こいつが?……胡散臭さの塊みたいな人だね、君の主」

 

「……貴様が、貴様がそれを言うのか、貴様が―――!」

 

「はい、ストップです私の右腕。まだ自己紹介が済んでいないでしょう?」

 

 

 水晶の身体をした魔物はまるで貴族が行う礼のように優雅に頭を下げた。

 

 

「初めまして、勇者とその一行様。私の名はソフィート。あなた達に話があってきました」

 

 

 そう言って、魔王の娘は微笑んだ。

 

 




次回だ……次回こそ自分の身に宿る性癖を吐き出して見せる!
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