と言う訳で、第19話です。
「本当にスンマセン……」
「まあ、気にすんな」
海での衝撃体験から2日後、一誠は冥界のとある病室にて匙元士郎と話していた。理由は簡単で、匙の治療のためである。
昨夜、いつもの様に皆の夕飯を作っていた一誠の元にアザゼルからの緊急要請が入ったのだ。内容はSS級はぐれ悪魔の『黒歌』が魔王主催のパーティーに侵入し、リアス・グレモリーの眷族の塔城小猫を拉致。それを阻止しようとした匙、巡巴柄が負傷した。
外傷は『フェニックスの涙』で治癒出来たのだが、仙術と妖術による複合技で身体の気脈が滅茶苦茶に乱されてしまった為に、三大勢力関係者で唯一仙術が使用可能である一誠とヴァーリが呼ばれたのである。なお、巡の方はヴァーリが治癒している。
「失礼します。兵藤君、匙の容態は…」
「ああ、ソーナさん。もう大分治ってますよ、二週間も有れば完治出来ますね」
入室してきたソーナ・シトリーに容態を告げると、ホッとしながらも、無念そうな表情を浮かべる。
「え!? に、二週間も!? ひょ、兵藤! 何とか3日以内に治せねぇッんがぁッ!?」
完治には二週間かかると告げられた匙はベッドから跳ね起きるが、一誠に頭を引っ叩かれてベッドに叩き落とされる。頭を押さえて悶えている匙に、バカを見る目をした一誠が諭すように話しかける。
「バカ野郎。仙術と妖術の複合技で生命力をダイレクトに削り取られたんだ、命があっただけ幸運だと思え」
寿命がゴッソリと持っていかれたのだ、いくら悪魔が長命とは言え、いきなり寿命が削られてマトモに動ける訳が無い。まして身体の気脈はボロボロ、碌に魔力も練れない身体で何をしようというのか。
「そうですよサジ。確かに貴方とトモエが居ないのは痛手ですが、貴方達の体調には変えられません」
「で、でも、会長! 今度の試合は、冥界の重鎮達や、他神話の方達が大勢来るんでしょう!? そこで負けたりなんかしたら、ただでさえ悪い会長の立場が…!」
立場が云々と言う不穏な言葉が聞こえた為に、どうかしたのかと聞いてみれば、6日後に『若手四王』の一人であるディオドラ・アスタロトとのレーティング・ゲームがあるとの事。
どうして匙があそこまで早く治療を終える事に固執していたのか納得した一誠は、ふと考える。ディオドラ・アスタロトは現在『禍の団』の内通者として疑われている容疑者の内、最も黒に近い男。ソーナ達が上手く煽れれば、何か尻尾を出すかもしれない…と。
「…しょうがない」
見かねた様な表情を浮かべながら一誠は口を開く。かなり負荷がかかるが、2週間の治療を5日以内に縮められると。その言葉を聞いた二人は、ガバッと頭を上げ、一誠の顔を見やった。
「で、出来るのですか!? それなら…いえ、しかし…」
頼もうとした所で、ソーナが口ごもる。なにせ、どれ位の危険が及ぶかがまるで分からないのである。2週間の療養で完治出来る傷を治す為に、匙と巡にリスクをもたらすのは『王』として正しい事なのか、ソーナは考え込む。
「大丈夫です会長! 多少の負担ぐらい、全然へっちゃらですよ! 兵藤、本当に5日で動けるようにしてくれるんだよな!?」
「お前達次第だけどな。耐え切れば、動ける様になるのは保証するぞ。その代わり、失敗したらミンチになる。まあ、とりあえず死にはしないぞ」
それでもやるのかと問い掛ける一誠に、匙と、後からやって来た巡は構わないと言い切る。2人の意志を確認した一誠は、ソーナの目を見据えた。あくまでも2人はソーナの眷族であり、一誠の身内では無いため、確認もせずに実践する訳にはいかないからである。
「会長…!」
「お願いします、会長…!」
匙と巡がすがる様な目で懇願してきた所で、ソーナは溜め息を吐く。こめかみに指を当て、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべながら、再び溜め息を吐くと、しょうがないと言いたげな苦笑を浮かべる。
ソーナは襟を正してから一誠の顔を見て、深々と頭を下げる。
「…どうか、二人をよろしくお願いします、兵藤君」
「はいはい。それじゃ、二人は借りてきますね〜」
そして、一誠は二人を連れてどこかへ転移した。
「…大丈夫なのでしょうか…」
「大丈夫、大丈夫。イッセーくんが『死にはしない』って言ったんだから、死ぬ事は絶対無いって! アーシアも居るんだし」
「いえ、あの、死ななければ良いと言う訳では……」
「大丈夫! イッセーくんはその辺シッカリしてるから、最悪肉塊になっても、死んでなければどうとでも出来るよ!」
あっけらかんと言い放つヴァーリに、自分は早まった判断をしたのかもしれないと、ソーナは頭を抱えてしまう。
黒い触手をうねらせながら『会長!』と話し掛けてくる、モザイク必須の赤グロいナニカを想像してしまい、顔を青ざめさせながらガクブルと身体を震えさせるソーナ。
若干パニック気味なのか、魔王だけでは無く、何故か、本来は仇敵である神にさえも二人の無事を祈り始める。
「きゃんっ!?」
当然やってくる頭痛に、ソーナは再び頭を抱えるのであった。
◇◇◇
月日は流れ6日後、冥界に作られたレーティングゲームの特設アリーナ、そのVIP席に一誠は座していた。VIP席には一誠の他にも、燐天使のミカエルとガブリエル。グリゴリ総督のアザゼルと白龍皇ヴァーリ。北欧の主神オーディン。ギリシャの主神ゼウスにポセイドン、ハーデス。そして須弥山の帝釈天等々、尋常では無い猛者達が勢揃いしていた。
なお、ヴァーリは一誠の膝上に座っており、それを見たオーディンのお供のヴァルキリー、ロスヴァイセがギリギリと歯ぎしりをしているのはご愛嬌。この二人、何気に仲が悪いのである。理由は言わずもがな。
「―――それでお前さん、結局どうやってあいつ等を復活させたんだい?」
匙と巡についてヴァーリから話を聞いていたアザゼルは、一体どんな荒療治を施したのかと怖いもの見たさで一誠に問いかけた。
だが一誠はニッコリと微笑むだけで何も語らず。ただ一言、『生命力が足りなければ、足せばいいよね?』とだけ答えた。
その一言から色々と察したアザゼルは、引き攣った表情でモニターに映る二人の顔を見やる。片や、精悍な顔立ちで威風堂々と仁王立ちをしている少年。片や、試合が始まるのを今か今かと、その眼をギラギラ輝かせながら腰の刀に手を添えている少女。
二人共、まるで歴戦の古強者の様な覇気を帯びており、ぶっちゃけて言うとソーナ以上に目立っていた。無論、悪い意味で。
1週間前と比べると、驚きのビフォー・アフターである。
アリーナの中央部にて、ソーナとディオドラが互いに握手を交わし、実況のインタビューに対してそれぞれ自信満々に勝利宣言をする。
沸き立つ観客を余所に、一誠とアザゼル、そしてヴァーリは冷静にディオドラを観察する。各魔王と天使、ゲストである他勢力の神々には事前に連絡を済ませてあり、万が一ディオドラが妙な事をすれば即座に取り押さえる手筈にはなっている。とはいえ、警戒しておくに越した事はないのだ。
実況のセラフォルー・レヴィアタンによると、今回のレーティングゲームのルールはシンプルな全眷族参加形式のサドンデスバトル、ステージは124種類の中からランダムに決定するとの事。解説席には何故か、つい先日遭遇した金髪ツインテールの人魚が鎮座しているが、誰も何も指摘しないのでスルーする一誠。
運営側からの注意事項が提示された後、カウントダウンが始まる。
いよいよゲームが始まるといった瞬間、異変は起こった。会場の内外の至る所で凄まじい爆発が発生し、それと同時に特設アリーナを取り囲む様に無数の悪魔と魔術師、黒い異形の怪物達が現れたのだ。
また、時を同じくしてVIP席にも異常が起こる。一誠とヴァーリの周囲に黒紫色の霧が発生し、その身体をあっと言う間に取り込み、消失したのだ。
更にそれだけでは無く、同じくVIP席に居た北欧の主神オーディンと、ギリシャの主神ゼウスも黒紫色の霧に飲み込まれていったのである。
「な、一誠!? ヴァーリ!? ジジィ!? クソッ、やられた! 連中、先に最高戦力を隔離しやがった!」
アザゼルが憎々しげに叫び、懐から人工神器『堕天龍の閃光槍』を取り出し禁手化しようとした瞬間。
「―――が、はぁ……ッ!?」
突如虚空から現れた白銀の剣にその胸を貫かれた。剣はアザゼルの胸から引き抜かれると、再び虚空へと消え去る。
支えが無くなったアザゼルが地面の血溜まりに倒れ込むのと同時に、数え切れない程の攻撃が飛来。VIP席を粉砕した。
◇◇◇
霧が晴れると、
奇襲を警戒しながら即座に禁手化、アロンダイトを地面に突き刺し、そこを起点にして周囲に魔力の波をソナーの様に放つ。
魔力波は衝撃を伴いながら音よりも早く周囲に拡散していくが、200メートル程進んだ所で掻き消される。なるほど、あの辺か。
「術式開放【紅蓮蜂】」
事前に仕込んでおいた遅延呪文を発動。周囲に無数の紅色の雀蜂が現れる。なるほど、呪文は使えるみたいだな。てっきり魔力を分解する空間にでもしてるかと思ったんだけど。
とりあえず、周囲の蜂をソナーが消された地点に向かわせ、起爆。1匹につき十数メートルは吹き飛ばす爆弾数百匹が一気に爆発したのだ、相手が何であれ、無傷と言う事は無いと思う。
なんて事を考えていたら、爆炎の内部から凄まじい速度で槍の穂先が伸びてきた。それどころか、一拍遅れて魔術やら矢やら剣やら銃弾やら、果てはミサイル等々、様々な攻撃がすっ飛んで来た。うん、まあ、完全にフラグだったもんげ、ちかたないね。
とりあえず、もう目と鼻の先にまで迫って来てるメチャクチャ神々しい槍を対処しよう。コレが1番威力高そうだし。
地面に突き刺していたアロンダイトを引き抜いて、勢いそのままに槍の穂先を下からカチ上げて弾き飛ばす。飛んできた魔術は【斬魔剣】で斬り捨て、矢と剣と弾丸は影布で無力化、ミサイルは残りの紅蓮蜂で撃墜。
弾いた槍が縮んで戻って行こうとしていたので、柄の部分に捕まって一緒に引っ張られていく。本体までご案内願おうジャマイカ。
なんて横着してたら数秒もした所で槍が縮むのを止め、爆炎を切り裂いて6本腕の白髪が飛び出して来た。明らかに重さ違うんだし、そらバレるわな。
白髪が手に持つ6本の剣の内、右手と左の肩甲骨から生えている手の2刀からは凄まじく嫌な気配が漂っている。アレ多分
「ハァァァァァッッ!!」
気合一閃で左右の龍殺しで斬り付けてくる白髪。いきなり龍殺しかよ、ソレは駄目だろう。RXが開幕リボルケインしてくる様なモンだぞ。
流石に6本腕相手に手数じゃ勝てそうに無いので、アロンダイトを全力で降り下ろして迎撃。腕4本じゃ受け止めきれないと察知した白髪は攻撃を中止してガードに入った。うん、予想道理。
アロンダイトから手を離して、白髪の後ろで呪文を詠唱していた眼鏡に投擲。障壁を張られてしまったので仕留める事は出来なかったが、詠唱を妨害出来たので良しとしよう。素直に上段構えでガードしている白髪には、ガラ空きのボディに豪殺居合拳をプレゼントしておく。
「がハッ……!?」
おお、咄嗟に背中の腕2本使ってガードしおった、やるな白髪。まあ、ダメージは減らせて2割位だろうけど。
そのままササッと追撃して仕留めようとした所で、右から無数のミサイル、左と背後から無数の魔術、上から剣で出来たドラゴン、そして正面から聖なる光が向かって来た。うん、まあ、八方塞がりには遠く及ばないな。確実に仕留めるんだったら、追加でグレイプニルでも持って来い。
真上に跳躍し、ご丁寧に大口開けているドラゴンを【雷の投擲】を10本程叩き込んで串刺しにし、右のミサイル群に蹴り込む。ドラゴンは先頭のミサイルに命中して爆発四散、飛び散った破片が周囲のミサイルに当たって連鎖爆発。ドラゴン倒してミサイルも回避成功、一石二鳥だな。
「術式解放【奈落の業火】」
振り返りざまに左と背後の魔術を敵ごと【奈落の業火】でローストして迎撃。さて、お次は前方の聖なる斬撃だな。ぶっちゃけると、コレが1番大した事無い。当たればヤバいけど、こんな鈍足の攻撃に当たる程トロいつもりは無いからね。
虚空瞬動十九連で一気に槍使いの元に俺、参上。学ランの上に漢服を腰縛りにしてる槍使いは、突然現れた(かの様に見える)俺に愕然とした表情をしている。うん、話は署で聞くね、お休―――
「曹操!」
ランサー仕留めようとしたら、背後からパツキンのチャンネー(死語)が飛び掛かって来た。本来だったら絶対やらないんだけど、敵だし面倒だから顔面に後ろ廻し蹴りを叩き込んで撃墜。逃げ出さない様に影布と【魔法の射手 戒めの風矢】で拘束してから【石化の邪眼】で石にして空間倉庫に放り込む。よし、尋問用員確保。後はランサーを仕留め…あれ、いない。10秒も掛けてなかったんだが、何処に…
「―――奥の手を使っていなかったとは言え、俺達英雄派の精鋭をものともしない、か。なるほど、噂に違わぬその力、実に素晴らしいじゃないか!」
あ、ランサー見っけ。地面に刺した槍の穂先を伸ばして、石突の部分に片足立ちしながらコッチ見てる。なんだコイツ、凄いウザいわ。
「まずは突然の無礼を詫びよう、『赤龍帝』兵藤一誠。俺の名は曹操、『
「…当代『赤龍帝』兼、対テロ特殊部隊『D×D』戦技教導官兼、遊撃部隊隊長、兵藤一誠。七代遡っても一般市民だ」
本当は名乗る義理も義務も無いんだが、まあ、こういうのはノリだ。なんかアイツ、ちょっと煽てりゃ色々口滑らしそうな顔してるし、ここで一旦情報の整理も兼ねてボーイズトークでもするとしよう。ついでに、この隙にアロンダイトを回収して…遅延呪文も幾つか仕込んどくとしよう。
「ハハ、君も隊長をやっているのか。規模の違いはあれど、お互い大変だな!」
「あいにく、俺の部下はお前の所のチンピラと違って規律正しいんでな、苦労はしてないんだ」
「やれやれ、つれない返事だな…まあ良い、こうして君だけを連れてきたのは理由があるんだ。まどろっこしい、形式的な文句は省いて単刀直入に問おう―――兵藤一誠、俺達と共に英雄にならないか?」
アイタタター、コイツいい歳こいて厨二病かよ。いや、まあ、神器なんて持ってたら厨二病にもなるか。そもそも『英雄』ってなろうと思ってなるモンじゃ無いだろうが。
うーむ、コイツは予想外だ、まさかこんな馬鹿だとは思わなかった。まだ『世界征服しよう』とかの方がマシだぞ。まあ、とりあえず…
「断る」
「なっ…!?」
いや、何でそんな驚いてんだよ、受ける訳ねーだろうが。ソレ引き受けて俺に何のメリットがあると言うのか。
「何故だ、それだけの力がありながら、何故人外共に顎で使われている!? 何故その立場を甘んじて受け入れる!? 人間としての誇りは無いのか! 人の身でどこまで高みに到れるか、確かめたくは無いのか!?」
「そんなモン、別にテロリストにならなくても幾らでも挑戦出来るだろう。つーか、お前ら言ってる事とやってる事がメチャクチャなんだよ。人外共に挑むとか言っときながら、やってる事は神器持ちの一般人の拉致と冥界の市民への散発的なテロ行為ばかり。」
強さ的には相当な筈なのに、どうも中ボス臭がするんだよな、コイツら。何て言えばいいのかな…ああ、そうだ。中途半端なんだ。
現状、流されるままに戦技教導官なんぞ引き受けてる俺が言うのもなんだけど、コイツらには信念が感じられ無い。
英雄になりたい? 結構。人外に挑戦したい? 結構。
じゃあ何で『禍の団』に所属して『旧魔王派』と共同作戦やってんだよ。『英雄』自称してんだったら『
―――まあ、結論を言うと、だ。
「お前らは力と英雄の血に酔ってるだけの厨二病だ」
『英雄』とは『人々に賞賛される偉業を成した者』だ。チマチマとテロ行為ばっかりやってるチンピラなんぞ、『
「……そうか、残念だ。君ならばきっと英雄になれていただろうに」
そう言うと、曹操が俺に槍を向けてくる。もう話し合いは終わりだ、遅延呪文も十分仕込んだし、叩き潰してふん縛る。
まだ他の連中もそこそこいるし、まずはあのハリネズミ状態のキン肉マンから仕留めるか。曹操は後回しだ。
影分身を3体展開し、それぞれを曹操、白髪、眼鏡にけしかけ、
瞬動で懐まで入り、アロンダイトで逆袈裟に斬りつける。が、数センチ程度しか斬れない。予想以上に堅かった。コイツに斬撃は向いてないな、打撃と魔法で仕留めよう。
キン肉マンの全身ミサイルを、最近編み出した『水平瞬動』で回避。さて、何を撃ち込むべきか。最低限、中級以上じゃ無いと効かないだろうし。とりあえずオーソドックスに【雷の暴風】でいってみるか。
キン肉マンが全身のミサイルを撃ち終えた瞬間に上腕と鎖骨を掴んで背負い投げ。地面と熱いベーゼを交わしてもらう。怯んだ隙に右脚を垂直に持ち上げて【雷の暴風】を装填、頚椎に全力で踵落としをお見舞いする。正直オーバーキルな気がしないでも無いけど、追撃で【氷神の戦槌】も叩き込んで、トドメに【雷の投擲】装填パンチを20回程叩き込んでから石化して回収。コレで残りのリーダー格は三人。
「やれやれ、耐久力の無いジャンヌはともかく、まさか俺達の中で1番頑丈なヘラクレスまで墜ちるとは…恐ろしい限りだよ、赤龍帝の魔法は」
曹操と眼鏡、白髪がやって来た。流石に分身じゃあ倒せないか。まあ、キン肉マンを倒す時間が稼げたから良しとしよう。次は…白髪かな。
アロンダイトを構え白髪を仕留めようと駆け出した瞬間、『赤龍帝の鎧』が俺の意志とは無関係に勝手に解除された。なんだ、どういう事だ?
「『異能の棺』。自身の体力と精神力を極限まで消費する事で、対象の異能を一時的に封じる神器さ。コレで君の赤龍帝の籠手を封じさせて貰ったよ」
ドヤ顔で解説してくる曹操。すげぇイラッとする。周囲を見渡せば、どこに隠れていたのか数人の魔術師がこちらに杖を構えている。あの中の誰かが術者だろう。
「……面倒な物を…」
さて、どうするか。神器が使えない以上、使えるのはアロンダイトと魔法と気だけ。これだとちょっと三人同時に仕留めるのは骨が折れるな。まずは術者を仕留めないと…とりあえず、咸化法最大出力、発動。
発動と同時に某野菜人が金髪になった時のように周囲の地面が粉砕、陥没する。うん、最大出力で使うのは久々だな。
「な、この圧力は…!?」
「馬鹿な、神器は確かに封じたぞ!?」
白髪と眼鏡、驚き過ぎだろ。どうせ、魔法使いなら神器さえ封じればどうとでも出来るとか考えてたんだろうけど、生憎だったな。
赤松作品の魔法使いは接近戦の方が得意なんだよ。
咸化法のお陰で多少は戦闘能力が上がったが、コレだけではまだ手こずりそうなので更に一枚手札を切る。
全身を影布で包み込み、ピッチリと頭部まで全身タイツの様に覆う。一枚被せたら二枚目、二枚被せたら三枚目といった具合に、影布を次々に重ねて圧縮し、多重積層装甲を生成。身体中に鋭利な衝角を作り、背中には魔力ブースター、関節と急所部分には特に強固な装甲を展開する。
展開時間わずか17秒、神器が使用出来ない状況を想定し、2年掛けて編み出した【近接格闘影装:黒龍戦鎧】の完成。
発動時には多少の魔力を消費するが、一度発動してしまえば装甲の修復とブースター以外では一切魔力を使わない省エネ仕様だ。
アロンダイトを構え直して曹操達を見据える。この隠し球を見られたんだ、何が何でも取っ捕まえてやる。
「やれやれ、『赤龍帝の籠手』さえ封じれば何とかなると思っていたんだが、いささか見通しが甘かったようだ。一体幾つ引き出しを持っているのやら―――仕方ない、こちらも本気で行くとしようか。
凄まじく噛ませ臭のする台詞と共に曹操が禁手化、その周囲にボウリング位の大きさの球が7つ現れた。何だ何だ、まさか神龍とか呼び出すんじゃ無いだろうな?
「これが俺の禁手『|極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン》』だ。最も、まだ未完成なんだが……」
「ハイハイスゴイネー」
本来だったら能力が分からない相手に突っ込むのは危険極まりないが、今は時間が惜しい。悦に入りながらご丁寧に禁手の解説を始める等という、人の事を舐め腐っている曹操に縮地で肉薄して全力の【雷光剣】で消し飛ばす。え? 卑怯? 油断する方が悪い。
「―――おいおい、話の途中で攻撃するのは感心しないな」
仕留めたと思ったが、やはりそんなに甘くはなかった。纏めて消し飛ばした筈の三人が俺の背後に居たのである。と言うか、周囲の風景が変わってるから多分、俺を空間転移で後ろに飛ばしたんだろう。転移された瞬間がまるで分からなかったな…これじゃ不用意に接近戦が出来ない。全く持って面倒極まり無い。
この空間に引っ張り込まれてからおよそ7分30秒、下手すれば外と時間の流れが違うかもしれない。まずいな、もう四の五の言っていられない。
「その様子だと、何をされたのか気付いているようじゃないか。今のは
「曹操」
…頼むから、使わせてくれるなよ。火は生け捕りには向いて無いんだ。
「俺は今から、今の俺に出来る最大の一撃を撃つ。死にたくなければ投降しろ」
警告はした。さあ、どうする。
「フッ、確かに神器無しにしては頑張っているが、今の君の動きならば十分に目で追える。思い上がるのもそこまでにしたらどうだ?」
…投降の意思は無し、か。しょうがない―――この空間ごと灼き尽くす。
「双腕解放。右腕固定【燃え盛る炎の神剣】、左腕固定【燃える天空】――術式統合。装填、『
右腕に顕現していた大剣と、左腕の炎が1つに溶け合い、アロンダイトを依代にして新たな剣を生み出す。
「【神炎剣『灼世ノ杖』】」
顕れたのは、常軌を逸した熱を内包した、一本の赤い大太刀だ。存在するだけで俺以外の周囲の全てを灼いていく太刀を見た曹操は、慌てて極大の聖なるオーラを放ってくるが、もう遅い。
太刀を脇に構え、振り抜くと同時にその熱を解き放つ。何処にも逃げ場などは有りはしない。
「術式解放【
刀身が赤黒の炎と化し、この創られた空間を包み込み込んで、灰塵すら残さずに全てを灼き尽くした。
ハイ、と言う訳で第19話でした。
今までもチョコチョコと原作改変が起きていましたが、今回は一際大きく変わりましたね。
内容的には5、6、9、10、12巻を足して割った様な感じです。
今回の『旧魔王派』と『英雄派』による同時襲撃は、ウチの一誠君がこの時期(作中8月)において原作よりも遥かに脅威度が高かった事と、原作よりも数ヶ月早く『D×D』の結成が決定した為に起こりました。要は『ヤバいのがもっとヤバくなる前に潰しておこう』って事ですね。
戦闘中、一切倍加の音声が入っていませんでしたが、一誠君は常に最大まで倍加してから攻撃してます。正直、いちいち『Boost!』って書いてたらクド過ぎるので……
そしてサラッと流した初登場の百均ヴァルキリーのロスヴァイセさん(笑)
彼女やヴァーリ達の状況については次回以降になります。
今回一誠君が披露した必殺技【近接格闘影装:黒龍戦鎧】と【神炎剣『灼世ノ杖』】。
【黒龍戦鎧】についてはブラックウォーグレイモンx抗体をイメージして貰えれば大体OKです。
申し訳ないが、【神炎剣『灼世ノ杖』】については『何で太刀なんだよ、それじゃアホタルじゃねーか』と言うツッコミはNGでお願いしますこの通り! Orz 何でもしますから!
コレは現状、『ロンギヌス・スマッシャー』を抜きにすれば最大火力ですね。一応、豪獣鬼程度ならば文字通り塵一つ残さずに灼き尽くせます。因みに、屋外で使う際にはキチンと障壁を展開して逃げ場を封じます(笑)
それでは最後に一言。
頼りになる仲間が主人公勢だけの特権だと、何時から錯覚していた?(ニヤリ