ハイスクールD×Dに転生した   作:ユウタロス

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遅ればせながら、明けましておめでとうございます! 今年も1年、頑張って更新していきたいと思います!

あ、それと現在、活動報告にて当作『ハイスクールD×Dに転生した』の通算10万UA突破記念(ちょっとフライング)の番外編用のアンケートを実施しています。もし良かったらご協力お願いしますm(_ _)m

と言う訳で、第20話です



第20話 誰が喋って良いって言ったよ?

「アザゼル!」

 

 ミカエルは地面に倒れたアザゼルを抱き上げ、即座にVIP席の壁を突き破って脱出。その数秒後にVIP席は無数の悪魔と魔法使いと怪物の攻撃を受けて崩壊した。

 

「ある程度の襲撃は予想していましたが…!」

 

 アリーナの内外は既に戦場と化していた。護衛の部隊は100メートル以上の巨体を誇る怪物群の内、一際巨大な異形の怪物から無尽蔵に発生してくる小型の怪物の対処に精一杯になっている上に、セラフォルーとサーゼクスは超巨大怪物を撃破しようとしているのだが、周囲の味方のせいで全力が出せていない。

 故に『禍の団』の悪魔と魔法使いの相手が出来る者が少数しかいないのである。

 

「っと…!」

 

 地上からの攻撃を躱して光の槍で迎撃する。光の槍は無数の光の矢に分裂し、地上で暴れまわっている魔獣と旧悪魔勢を消し飛ばすが、即座に先程とは比較にならない量の反撃が飛んで来た。

 空中では体のいい的だと判断したミカエルは比較的戦況が穏やかな場所に着陸、懐から『フェニックスの涙』を取り出してアザゼルの傷に振り掛けた。傷はあっと言う間に塞がっていき、アザゼルの顔色も多少はマシになっていく。

 

「―――おっ、来た来た!」

 

「ッ!」

 

 ようやく深呼吸する暇が出来たミカエルが敵の迎撃に向かおうとした途端、虚空から新たな敵が現れた。

 

 朱槍を肩に担いだ長身の男、先程アザゼルを貫いた白銀の剣を持った全身鎧の騎士、銀の軽鎧を纏った美丈夫。

 

 その全員が最低でも上級悪魔が可愛く見える程の覇気を宿しており、下手をすれば最上級悪魔クラスの者さえもいる。とてもミカエル一人で対処しきれる人数では無く、加えてアザゼルはまだ意識を取り戻してはいない。

 

 状況は最低に近かった。

 

「…貴方達は?」

 

「ん? おおっと、こいつは失礼。俺は……そうだな、ランサーとでも呼んでくれや。『禍の団』英雄派の第二分隊に属してるぜ、一応な」

 

 禍々しい朱槍を携えた青年は、そう言ってニヤリと笑う。

 

◇◇◇

 

「クッ、このぉッ!」

 

 ロスヴァイセはアリーナの護衛の天使、悪魔と共に無限に湧いて出てくる小型と中型の魔獣の対処にあたっていた。自身の知り得る全ての攻撃魔法を常に放ちつつ、愛剣を振るって近くの魔獣を次々に斬り捨てて廻る。

 折角数年振りに一誠に会えると思って来てみれば、あの憎っくきヴァーリが常に一誠に張り付いていた為に挨拶程度しか交わせず、直後の襲撃のせいで離れ離れ。挙句の果てには、隙あらばヒトの尻を撫で回そうとする上司のエロボケジジィ(オーディン)が拉致られる。

 

 即ち、お付きであるロスヴァイセの責任問題。

 

「んもぉぉぉぉぉッ! なしてわだすばっか、こんな貧乏クジ引かされるさぁぁぁぁッ!?」

 

 アスガルドに帰った際の始末書やら減給やらを想像してしまい、いい加減にストレスでプッツンしてしまったロスヴァイセが方言丸出しで絶叫する。ストレスを晴らすかの様にありったけの魔法陣を展開し、オリジナル魔法のフルバーストで周辺一体の魔獣を根こそぎ消し飛ばした。

 

 が、日頃から色々とストレスを抱えているロスヴァイセのイライラはこの程度で晴れる訳も無く。

 ぺんぺん草も生えない程キレイに吹き飛ばした大地とロスヴァイセの憤慨ぶりにドン引きしている防衛部隊を一瞥すると、別の魔獣を求めて飛び立つ。

 

「…これ、戻ったら絶対ブリュンヒルデ様に怒られるよね……うぅ、減給待ったナシどころか左遷待ったナシかも…」

 

 肩を落として落ち込みながらも彼女の周囲には絶え間なく魔法陣が展開・発動され続け、下方では豪雨のように魔法が放たれ続けており、ちょっとした地獄絵図になっていた。

 

「フフッ…冥界で地獄絵図とは、笑えますね…」

 

 ささくれだったロスヴァイセが自分のいささか以上に不謹慎な思い付きを自嘲していると、不意にガラスが砕け散る様な音が響き渡り、

 

「――うーわ、結界抜け出して早々に嫌な女と顔合わせちゃった。ねえ、貧乏ヴァルキリー? イッセーくんどこに居るか知らない?」

「……こっちの台詞ですよ、アホ龍皇。一誠さんはどうしたんですか?」

 

 グッチャグチャの、辛うじてヒトの形を保った肉塊を片手に持った、白い鎧姿の少女――ヴァーリ・ルシファーが現れた。

 

 二人はお互いの顔を視認した瞬間、某ウザイ聖剣に絡まれた人の様な嫌悪感に満ちた顔をする。いつも通りメンチの切り合いからド突き合いに発展するかと思われた二人だが、流石に状況が状況なのでそんなことは無く。 

 

 「「まあ、まずはあのデカブツから潰しますか(そっか)」」

 

 この騒動の根源であると思われる超獣鬼達をロックオン。

 

『Half Distance!!』

 

 ヴァーリによって超獣鬼との距離が半減され、同時にロスヴァイセの周囲に灰色の雷を纏った巨大な槍が七本出現する。

 

「いっけえええええ!!」

 

 ロスヴァイセが叫び、槍は超獣鬼目掛けて飛翔。しかし、いかに巨大な槍とは言え、全長はせいぜい20メートル程。対する超獣鬼の全長は200メートル以上。

 サイズ差は熊と鉄串のような物だ、再生能力もあるし、大した効果は見受けられないだろう。そう思ったが故に、超獣鬼は無造作にロスヴァイセの槍を受けてしまった。

 そうして大槍が突き刺さった瞬間、異変が訪れた。槍の刺さった位置から周辺にかけてが、ペキパキと音を立てながら石化していくのである。

 

『■■■■■■■ッッ!?!?』

 

「うーん、やっぱり再生能力持ちには石化が一番ですね」

 

「相変わらずえげつないなぁ、この貧乏ヴァルキュリア」

 

 もはや声という範疇を超えた絶叫が轟きわたり、超獣鬼の周辺にいた小型魔獣や魔法使い、神器使いと悪魔達は根こそぎ吹き飛ばされる。

 

 しかし、障壁を展開しているロスヴァイセとヴァーリは微風でも受けているのかの様に平然としており、ヴァーリにいたっては半減の効果を凝縮した短槍を超獣鬼の石化していない部位に雨あられのように突き刺し続けている。二人の攻撃によって超獣鬼が弱っている事に気付いた悪魔と天使、堕天使の合同部隊はここぞとばかりにありったけの力を籠めた攻撃を放つ。

 

 一発一発の威力はそこまで高くも無いが、塵も積もればなんとやら。石化と半減への抵抗に殆どの力を費やしている超獣鬼はあっという間に磨り潰され、大きさは4分の1程度にまで縮小する。

 

「よし、貧乏ヴァルキュリアにばっかり活躍させるのは癪だし、ここは必殺技で華麗にトドメを刺そう!」

 

「……周囲に被害が出ない技にして下さいよ」

 

「お前と一緒にすんな」

 

 超獣鬼の上空に舞い上がったヴァーリが高々と右手を天に突き上げる。

 

「必殺……」

 

『DivideDivideDivideDivideDivideDivide!!』

 

 神器の効果音が響く度にヴァーリの左手に周辺からかき集めた魔力が収束していき、籠めた術式が全力で稼働していく。限界まで魔力が充填された事を確認したヴァーリは、高速で超獣鬼目掛けて落下し始める。

 

「ハイパーボリアァァァァ……」

 

「ちょ!? この馬鹿ッ……!」

 

 その手には白い炎が燦然と煌めいており、ヴァーリが何をしようとしているのか理解したロスヴァイセは大慌てで超獣鬼の周囲にいる迎撃部隊に防御結界を創り出す。

 

「ゼロ、ドライブッッッ!!!」

 

 超高速で放たれた絶対零度の手刀は超獣鬼を真っ二つに両断、氷結し、粉々に粉砕した。

 

「……決まった」

 

「『……決まった』じゃ、ないでしょォォォッ!!!」

 

「あ痛ッ!?」

 

 ビシッと手刀を振り下ろした体勢で呟いたヴァーリをグーで殴り飛ばしたロスヴァイセ。

 

「私言いましたよねぇ!? 周囲に気を付けてって言いましたよねぇ!?」

 

「違うよ、『周囲に被害が出ないような技にして下さいよ』って言ってたんじゃん。貧乏な上に記憶力も無いの?」

 

「一緒ですッ!! と言うかあの惨状をどうするつもりなんですか!?」

 

 超獣鬼が居た場所を片手で指差しながらヴァーリの胸ぐらをつかんでガックンガックン揺するロスヴァイセ。

 ロスヴァイセの指の先を見やれば、木々も大地も大気すらも氷結し、ロスヴァイセがギリギリで守った部隊員も凍り付いた障壁の中で身動きが取れなくなっている。まあ、愉快な氷像(オブジェ)と化している旧魔王派の悪魔達よりはマシであろうが。

 

「いや〜、ほら。皆無事だから良かったじゃんwww」

 

「わ・た・し・が! フォローしたからでしょうがッ!! 草生やすなァ!」

 

 ケラケラ笑うヴァーリにブチ切れたロスヴァイセ、ヴァーリ目掛けて【雷の暴風】級の威力の魔法を三点バーストで放つ。普通は至近距離で砲撃型の攻撃など避けられないのだが、そこは数千年生きたアルビオンをして“天才”と言わしめたヴァーリ。華麗に躱してお返しとばかりに魔力弾を叩き込む。

 

「なんの!」

 

「きゃーっち!」

 

 ロスヴァイセがそれ(魔力弾)を愛剣で切り捨て、勢い良く投擲するがヴァーリは容易く掴み取る。

 

「ハッハッハ、遅い遅い! 遅すぎてハエが止まりそ「【術式起動(アクティブ)】」アバばばバババ!?」

 

 兜を収納し、掴み取った剣を肩に担ぎながらロスヴァイセをおちょくろうとした瞬間、刀身の一部がスライドして放電を始めた。電撃をしたたかに浴びたヴァーリはまるで昔のアニメの様に全身黒焦げになり、透き通るように綺麗な銀髪もモッサモサのアフロ状態。

 

「うきゅぅ〜……」

 

 バッタリと仰向けに倒れたヴァーリ。目はグルグルと渦を巻き、口からはモクモクと煙を吐き出している。どう見ても戦闘不能状態だった。

 

「全く……ほら、起きなさい」

 

「あ〜、痛たたたた……ちょっと、何その剣!?」

 

「フフフフフ、良いでしょうコレ? 私の誕生日プレゼントに一誠さんが造ってくれたんですよ〜♪」

 

「ぐぬぬ……やたら痺れると思ったら…!」

 

 ヴァーリからひったくって取り返した剣を、両手で大事そうに抱えて、うっとりとした表情で頬ずりするロスヴァイセ。傍からみたら完全にブレードハッピーな危ない人だ。

 

「ッ!!」

 

「およ!?」

 

 異常なまでの精霊のざわめきを感知した2人が同時に顔を上げた瞬間。赤黒が虚空より現れ、冥界の紫掛かった空を炎で覆い尽くした。

 

「う〜わ〜……」

 

「う〜ん……アーシアでも無理だろうなぁ……」

 

 その炎が自身の意中の少年によるモノだと2人。ロスヴァイセはあまりの容赦の無さにちょっと引き、ヴァーリは相手から情報を引き出す事を諦めていた。

 

 冥界の空を覆い尽くした赤黒の炎は、一誠を閉じ込めていたであろう結界を灼き尽くしただけでは飽き足らず、そこら中を飛び回っていた飛行型魔獣と魔法使い、ついでにその辺の森も灼き払っていく。

 

「……やべえ、やりすぎた……」

 

「あ、イッセーくん!」

 

「無事だったんですね! 私、心配したんですから!」

 

 最初に炎が出現した場所からヴァーリ達目掛けて高速で飛んできた黒い人影――一誠が頭を抱えて呟く。2人は即座に一誠に抱き着くが、当の本人はそれどころではないようで、まるで気付いていない。

 

「やべえ、やべえよ。どうしよう? 火事もそうだけど、それ以上に【焦熱世界・激痛の剣(ムスペルヘイム・レーヴァテイン)】がバレたのが痛過ぎる。クッソ、まさかあの人が敵側だとは思いもして……」

 

「イッセーくん?」

 

「一誠さん?」

 

「え? あ、二人共、居たの?」

 

 心配そうに声を掛けられて、ようやく二人に抱きつかれている事に気付いた一誠。

 

「むぅ、せっかく心配してたのに。イッセーくん全然気付かないんだもん」

 

「何があったんですか?」

 

「…実は、『禍の団』の幹部達に逃げられちゃってな。切り札も二つばかりバレた」

 

「え!? 一誠さんから逃げ切ったんですか!?」

 

 一誠が敵を逃がした。しかも、切り札を使ったうえで一誠から逃れたと言う事に愕然とするロスヴァイセ。

 

「ああ、完全にしてやられた――相手は、カルナさんとプルートだ」

 

「……Perdon?」

 

 一誠の口から飛び出た名前に、思わず自分の耳に回復魔法をかけてから聞き直すロスヴァイセ。

 

「マハーバーラタの大英雄カルナと、最上級死神のプルートだ」

 

「……あっ、立ちくらみが……」

 

「イッセーくん、それって、つまり……」

 

「……多分、今回の襲撃の内通者は帝釈天インドラと冥王ハデスだ」

 

 ヴァーリの言葉に一誠が頷いた途端、ストレス値が限界突破してしまったロスヴァイセが卒倒する。

 倒れたロスヴァイセを片手で支えながら重々しく答えた一誠に、思わずヴァーリも米神を押さえて唸りだす。

 ハデスは一誠とヴァーリの二人がかりならばどうとでも出来るが、問題はインドラの方だ。インド神話の武神のチートっぷりは冗談抜きでシャレにならない。

 

「……ひとまず、アザゼルさん達と合流しよう。ヴァーリ、方角分かるか?」

 

「……そう、だね。うん、まずはそうしよう。えっと、アザゼルは……こっち!」

 

「……前々から思ってたんだけど、お前のポニテどうなってんの?」

 

 うぃんうぃんとパラボラアンテナの様に稼働するヴァーリのポニーテールを見た一誠が思わず呟くが、そんな事を気にしている場合ではないので急いでアザゼルの元へと向かう。

 

「……居た!」

 

 ヴァーリの指差す先で今まさにミカエルに向かって禍々しい朱槍を投擲しようとしていた青い全身タイツの様な戦装束を纏った青年に対して、残り少なくなった魔力を一気に消費して加速し、亜音速でもって急降下キックを放つ。

 

「『突き穿つ死翔の(ゲイ)……ッ!」

 

「ダラッシャアああああああッ!」

 

「うおっ!?」 

 

 直撃する寸前で身を捻って一誠の蹴りを回避したランサーと、勢いそのままに突っ込んでくる一誠を跳躍して回避した背後の二人。

 

「ちっ、横槍たぁ無粋な真似してくれんじゃねぇか。えぇ、赤龍帝?」

 

「こんな大乱戦で横槍も何もねーよ」

 

「ハハッ、それもそうか!」

 

 素早く後方に飛び退り、アザゼルとミカエルを背後に庇うようにランサー達と対峙する一誠。ふと見ると、ランサーの背後に佇んでいる二人が、目を丸くして一誠の方を見ている。

 

「……やれやれ、妙ちきりんなトコに呼ばれたと思ったら、まさかお前のトコだったとはなぁ……さて、ここは“久しぶり”と“初めまして”のどっちが相応しいのかねぇ……」

 

「あ? 何訳分かんねぇ事言ってんだ?」

 

 一誠の方を見ながらしきりに頷いている銀の軽鎧を纏った青年に、頭のおかしい人を見る目を向ける一誠。

 

「ああ、その様子を見るにまだ(・・)みてぇだな……じゃあ、こう言っておこう。初めまして赤龍帝、俺の名はライダーだ。以降ヨロシクな」

 

「……セイバーだ」

 

「おっと、そんじゃあ俺も自己紹介しておくか。俺はランサーだ、ヨロシクな赤龍帝の小僧!」

 

「兵藤一誠だ、小僧じゃねえ」

 

 じりじりとミカエル達を下がらせながらアロンダイトを構える一誠と、余裕の表情を保ちながらも一切の隙を見せつけないランサー。睨み合いでは埒が明かないと判断した一誠が距離を詰めようとした瞬間。

 

「――そこまでです。撤退しますよ、ランサー」

 

 両者の間に黒いローブを纏った男が現れた。認識阻害の魔術を使っているのか、ローブの中の表情は伺いしれない。

 

「はぁ? 撤退だと!? 巫山戯んな、これからようやく盛り上がれそうなんだぞ!」

 

「ランサー、作戦を忘れたのですか? 戦闘は赤龍帝と白龍皇が脱出するまでのはずですよ?」

 

「ちっ……そういう訳だ。悪いな赤龍帝、ここは引かせてもらうぜ。ウチのボスは腰抜けなんでな」

 

 ローブの男の言葉を受けたランサーが憎々しい表情で言って展開された魔法陣に飛び込んで姿を消し、残りの二人も同様に魔法陣に飛び込む。

 

「……では、赤龍帝殿。私もこれで失礼しま……」

 

「せいやあああああッ!」

 

「がげっ……!?」

 

 一誠が三人を見逃した為に、当然自分の事も見逃すだろうと勝手に思い込んだローブの男の背中に、上空から猛スピードで突っ込んできたヴァーリの飛び蹴りが突き刺さる。

 ボギリと、骨の砕ける音と共に海老反りになったローブの男が宙を舞い、追撃で飛んで来たロスヴァイセの魔法が直撃して地面に叩き落とされる。

 

「ごっ……あ……ッ!」

 

「ん。ヴァーリ、ロスヴァイセさん。ナイスショット」

 

 つかつかとローブの男に歩み寄った一誠がその後頭部を踏み躙りながらヴァーリとロスヴァイセに向かってサムズアップした所、二人共に無邪気にサムズアップで返してきた。

 

「ぐっ……下等な人間如きがァ……ッ!?」

 

「おい、誰が喋って良いって言ったよ?」

 

 怒気に満ちた言葉と共に起き上がろうとするが、一誠の足はぴくりとも動かず、それどころかどんどん頭部を地面にめり込まされて行くローブの男。

 

「メウス・ルブラム・ドラコ・カル 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の……」

 

「お……の、れェェえええええッ!!」

 

 取り敢えず重要参考人っぽいので石化して確保しようと詠唱を開始した瞬間、ローブの男の影が蠢き、そこから一誠目掛けて大量の魔獣が飛び出した。

 

「主よ……っと、危ね。【雷の斧】」

 

 一誠は即座に飛び退き【雷の斧】で薙ぎ払う。そのまま【石化の邪眼】で周囲一帯を根こそぎ石化させた一誠だが、粉煙が晴れた時には既にローブの男の姿はなかった。

 

「ちっ、また逃げられた……」

 

「すみません、一誠さん。私の探知魔法圏内にも見当たりません……」

 

「完全に逃げられちゃったねぇ……感触的に背骨逝ったと思ったんだけどなぁ……」

 

 不機嫌そうに舌打ちする一誠。それを見たロスヴァイセは申し訳無さそうに誤り、ヴァーリは口をωにしてポリポリと頭をかいている。

 一誠も逃がしてしまったものはしょうが無い、と思考を切り替え、ミカエルと目を覚ましたアザゼルの元へと歩み寄る。

 

「アザゼルさん、具合どうですか?」

 

「最悪さね、口ん中が鉄臭くてかないやしない。一誠、口直しの酒くれ」

 

「そんだけ減らず口が利けるなら大丈夫ですね」

 

 一誠は目覚めて早々に酒を強請る呑兵衛を軽くあしらい、現状の報告を始める。

 アザゼルは英雄(笑)派に『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』と『絶霧(ディメンション・ロスト)』、『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の使い手がいる事に驚愕していたが、それ以上に、英雄(笑)派を仕留めようとした際にカルナとプルートが介入してきた場面で声を荒げて激昂する。

 

「……実力差のせいで捕らえられなかったのかと思ったけど……やってくれたねぇ、雷神に腐れ骸骨が……っ!!」

 

「……あ、良い事思い付いた! メウス・ルブラム・ドラコ・カル おお、地の底に眠る死者の宮殿よ……」

 

 憤慨しているアザゼルを見ていた一誠だが、何かを閃いたのか、突如呪文の詠唱を始める。一誠の発動しようとしている魔法の詠唱を聴き取り、一誠が何をするつもりなのか気付いたロスヴァイセとヴァーリ、アザゼルの三人は嗜虐心に満ちた笑顔を浮かべる。

 

「…? 三人共、一誠くんは何を……?」

 

「しっ! いいから黙って見てな、ミカ坊」

 

 怪訝そうな表情のミカエルを気にする事無く、一誠は着々と術式を構築していく。

 

「……我らの下に姿を現せ! 【冥府の石柱】!」

 

 そうして一誠の詠唱が完了すると同時に、冥界上空に複数の巨大な石柱が現れる。唖然とするミカエルを余所に、石柱は残っていた巨大魔獣達に降り注ぎ、圧殺した。

 

 

◇◇◇

 

 

 ――こうして『禍の団』との初の大規模戦闘、通称『第一次混沌大戦』は幕を閉じたのであった。

 

 この戦いにおける死傷者数は、敵味方を合わせて数千人にも及ぶと言われ、中でも旧魔王派に属する上級悪魔が多数討伐された事による冥界の人口の減少は深刻な問題となっている。

 この為、少しでも悪魔の人口を増やそうと、『悪魔の駒』の授与資格である、上級悪魔への昇級条件の引き下げ等が検討中であると魔王庁から発表があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが、この戦闘の直後に冥府にあるハーデスの神殿が突如として崩落したと言う情報が三大勢力内に流れて来た。

 倒壊の詳しい原因は現在調査中だが、専門家の意見では神殿の主柱数本が消失した(・・・・・・・・・・・・)事によるバランスの崩壊が原因ではないか、という説が出ているが、何故そんな事が起きたのかは分かっていない。

 また、ハーデス神殿の倒壊と同時刻に冥府上空に複数の石柱が出現した、という目撃情報があるが、こちらとの関連性も不明である。

 

 〜冥界新聞 第6666回 より抜粋〜

 




ハイ、と言う訳で第20話でした。

今回は英雄派第二分隊の登場回と、魔改造済ロスヴァイセさんの本格登場回でした。

今回登場した英雄派第二分隊、通称:英雄カッコガチ。この人達、みんなマジモンの英雄様です。英雄(笑)達とは違って、ご本人様です。

前回の後書きでチョロっと書いた“頼りになる仲間”はこの人達の事ですね。

どうです? 頼りになるでしょう? 若干1名、信頼と実績の宝具キャンセル喰らってましたけど(笑)

そして本格登場、みんな大好き“百均ヴァルキリー”こと、ロスヴァイセさん(調教済)

どれ位魔改造されてるのかと言うと、小細工抜きでスコル&ハティを真正面から無傷で叩き潰せる位強いです。頑張ればロキも倒せます(笑)

一応、今回で襲撃事件については終了、次回からはまた日常(と言う名の無差別クロス)回に戻ります(笑)

前書きでも触れましたが、活動報告にて当作のアンケートを実施しています。良かったら参加してやって下さい。

p.s.7作目『仮面ライダーになった』の投稿始めました。初の非転生オリ主物です良かったら読んでやって下さい。それでは(^^ゞ




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