GODEATER2  AnotherBlood   作:Vekterアイギス

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前回を最終回にしようとしたけど、とうとつに今回の話を思いついてしまった。
お疲れ様と感想をくれた方、もう少しお付き合いくださいな。


#90 空の上の少女

「えーっと、ここはどこだ。」

心地よい風の中でクロサキは目覚めた。

体を起こし辺りを見渡す。

緑の生い茂る山々、そしてどこまでも続く草花の大地。

極東や他の国でもここまで自然が豊かな所は見たことが無かった。

「....天国?」

クロサキは自分の体を触ってみる。

どこにも傷はなく痛みもない。

「オレ、やっぱり死んだのか...?

確か、終末捕食を止めようとして、それから繭に神機をブッ刺して...

そうだ...あの後、結局どうなったんだ?極東は?みんなは?」

問いかけても、当然返事はない。

少し考えて、辺りを散策し始める。

木々や草花にはちゃんと質感があり本物だった。

それでもここが現実なのか、クロサキはまだ考えあぐねていた。

「まじで、どこなんだここ...

てか、腕輪も神機も無いし...」

うっそうとした森を抜け開けた場所へと出る。

中心に立つように、一本の木が生えていた。

「あ....」

クロサキはつい声を漏らす。

その木の根元に人が立っていた。

顔立ちを見てクロサキはその人が少女だと分かった。

少女はクロサキの声に気づき、こっちに手を振った。

慌ててクロサキも振り返す。

(一応、友好的だな...てか、誰なんだ...?)

神機を持っていない自分。

もし、アレがアラガミの類だった場合、対処のしようがない。

警戒しつつ、恐る恐る少女の下へと向かう。

間近で見ると、少女はまだ幼いようだった。

白い髪に白い肌、それと対照的に着ている服は煌びやかなドレスだった。

「えっと...」

「そっかぁ~君が原因だったんだ。

びっくりしたなぁ、いきなりすごい音がしたと思ったらアレが落ちて来るんだもん。」

少女は独特な口調でマイペースに話を進める。

「いや、話がなんだかさっぱり...とりあえず、ここはどこなんだ?

本当に天国なのか、ここは?」

「天国?なんだそれ、オイシイのか?」

少女は首を傾げる。

どうやら冗談で言ってるわけではないらしい。

「いや、天国って食べ物じゃなくてだな...

じゃなくて、ここはどこなんだよ?」

「んー簡単に言っちゃうと...」

少女はおもむろに空を指差す。

つられてクロサキも空を見上げ唖然とする。

見上げる先には、"地球"があった。

ターミナルの情報でしかみたことがない地球全体が、空に星と共に浮かんでいた。

「つき。」

「あ、え?」

「ここは"月"だ。」

唖然としたままクロサキは少女の顔を見る。

少女は不思議そうにクロサキを見つめ返す。

「まぁ、詳しい話は歩きながらねぇ~

ほらほら~付いて来てよ。見せたいものがあるんだぁ。」

少女はそう言うと、クロサキを置いて歩き出す。

「ちょっ、待てって!てか、お前誰なんだよ!?」

慌てて少女の後を追うクロサキ。

少女はクロサキの呼びかけに足を止め振り返る。

「シオ。」

少女はニコリと笑って言った。

 

「私の名前はシオ。

大切な人がつけてくれた名前なの。」

 

 

+++++

 

 

クロサキはシオという少女に連れられ、先に見える小高い丘を目指す。

「つまり、オレは死んだわけじゃないんだな?」

「そうだよ~シオも生きてるもん。」

ここに来るまでシオの話から状況を整理した。

どうやら、ここが月なのは間違いないらしい。

そして目の前の少女。

彼女こそが、コウタやサカキ博士が言っていた月に行った特異点だった。

月の緑化の現象の話はよく覚えている。

まさかこの目で確認できるとは思わなかったが...

それでここにも空気があり、体に何も影響がないことにも納得がいった。

しかし、最後の疑問が残る。

「じゃあ、なんでオレは月に来たんだ?

特異点は自動的に月に送られるとか?」

「ん~ちょっと違うかなぁ。」

まぁ、それだったらラケル博士やアルバートもここに来てるか。

シオはこの月の世界に何年も一人で過ごしているらしい。

彼女曰く、いつも地球を見てるから寂しくはないそうだ。

「説明するとちょっと長くなりそうだからまずはアレを見てよ。」

丘の上に着き、そこから見える景色を眺める。

「....は?」

クロサキの目は湖を捉える。

正確には湖に浮かんでいるものに目を奪われた。

「この月にやってきたのは君だけじゃないんだ。」

広大な湖、その中央に半分水没した状態で(.)(.)(.)(.)が浮かんでいた。

「まぁ正しく言うと、君がアレを連れてきたんだけどね。」

「え!?オレが...?」

シオは草の上に腰を下ろすと、催促すろように地面を叩く。

クロサキはなすがままシオの隣に座る。

「君はあの時、終末捕食を止めるために自らを犠牲にした。

そのおかげで極東も世界も救われたんだけどねぇ。」

「あの最後の瞬間、一体何が起きたんだ?」

シオは少し考えた後に、一言で結論をまとめた。

「瞬間移動。」

「は?」

「昔コウタが言ってたんだぁ、モノが一瞬で遠くに飛んでいくんだって。」

「いや、それは知ってる。」

「あの時、君は終末捕食、そしてエイジスの中の偏食場パルスを、

オラクルに変換させて体内に全て吸収したんだよ。

え~っとそれで...ああ、エイジスは本来月へ飛ぶ為の箱舟だったんだ。

そのための装置が君の吸収したオラクルに反応して再起動したんだ。

そして、私と同じように終末捕食を安全な場所へ引き受けたってこと。」

「それで、エイジスが月までものすごい速さで移動した...と?

な、なんか空想すぎて全然わかんねぇな...」

クロサキは後ろに倒れこんで頭を掻く。

「まぁ、深くは考えすぎなくていいと思うよ。

結果的に皆が救われたんだし...」

「ハハッそうだな。」

クロサキは目を閉じる。

穏やかな風が吹きぬけ、草木の揺れる音が心地いい。

「それにしても、オレもこれで月の住人かぁ...

皆に会えないのは寂しいけど、皆無事ならそれで良いかなぁ...」

「?何言ってるの?」

きょとんとした顔でシオがクロサキを見る。

「んあ?」

 

「戻るんだよ、君は。」

 

 

+++++

 

 

体中に纏わりつく砂の感じでクロサキは目を覚ます。

どうやら砂漠のど真ん中らしい。

辺りは真っ暗で時間帯的には夜だと判断する。

仰向けのまま、空を見つめる。

満点の星空、そして大きな緑の月が浮かんでいた。

「本当に戻ってきたのか...」

 

「君は今、精神だけの存在といったかんじなんだ。

腕輪も神機も無いのはそのせい。

今頃、再分配を終えた肉体が再構築されてる頃だから、

その時がくれば自然に精神が肉体に還る。」

「じゃあ、今オレの手が透けてるのは...」

クロサキは右手を空にかざす。

徐々に手足が透け始め、ふわふわとした感覚に襲われる。

「そっかもうお別れなんだぁ~うん!久しぶりに人と話せて楽しかった!

地球に戻ったら極東の皆によろしくねぇ~」

「ああ、分かった。」

クロサキの体は完全に消え、顔も消え始める。

「あ、そうだ。忘れるところだったぁ。

体がアラガミに食べられてたら、本当に死んじゃうから気をつけてねぇ。」

「は!?」

「それと君の体、どこにあるか分からないから頑張ってねぇ。」

「ちょっ、待て!」

クロサキは言い終わる前にシオの前から消滅する。

 

「とりあえず生きてるようで良かったぜ...」

起き上がり足元の神機を拾い上げる。

「とりあえず歩くかぁ...いつか極東に着くだろ。」

クロサキは星空の砂漠を歩き出す。

空腹に倒れて老父に介抱されるのは少し先の話。

 

 

+++++

 

 

...サキ...クロサキ...

「ん?」

-クロサキ隊長、聞こえてますか?-

「ん、ああ悪いフラン。少し寝てた。」

通信機から聞こえてきたフランの声で目が覚める。

どうやら懐かしい夢を見ていたらしい。

-全く、貴方は相変わらずですね。入隊当時と全然変わらない...-

「フランはもうすっかりベテランだよな。

注意の仕方に貫禄が出てきたぞ。」

-褒め言葉として受け取っておきます。それではお気をつけて。-

フランの通信が切れるの同時に、足音が近づいてくる。

「お、来たか。」

今日はブラッドの新人の実地訓練だった。

少し緊張した面持ちで整列した新人の二人が、ビシッと敬礼する。

「フェンリル局地化技術開発局ブラッド所属、スタインベック・マクレイン。」

「同じく、ブラッド所属、禊トウヤ。

候補生二名揃いました。」

「ああ、良いよ良いよ。そんな固くならないで。

知らない仲でもないんだし...」

その言葉に二人は安堵したようで、二人から緊張が少し消える。

実際、二人のことは幼い頃から知っている。

変にかしこまらない方が任務にも支障は出ないだろう。

「改めて、ようこそブラッドへ。隊長のクロサキ・レイジだ。

てな訳で、これから実地訓練を執り行う。」

クロサキは崖下を指差す。

「アレが、人類を脅かす災い、駆逐すべき天敵...アラガミだ。

まぁ、アイツらを叩きのめして生きて帰ってくるのがオレ達の仕事だ。」

「はい!」

自分が彼らの位置に居たのは、もう10年も前のことだ。

あの時のことはずっと覚えている。

「それと、もう一つ。

まぁ、ある人が言ってたのをそのまま引用しただけなんだけど...」

ここでクロサキは軽く咳払いをする。

「古来から人間は強大な敵と対峙し...常にそれを退けてきた。

鋭い牙も、強靭な爪も持たない人類がなぜ勝利したか?

共闘し、連携し、助け合う"戦略"と"戦術"...人という群れを一つにする、強い"意志"の力...

"意志"こそが俺達、人間に与えられた"最大の武器"なんだ。それを忘れるなよ。」

「は、はい!」

呆気にとられた二人は我に返り、慌てて返事をする。

真面目な雰囲気からクロサキはいつもの調子に戻った。

「ちなみに今回の評価はお前らの両親にも伝えるから、まじで頑張れよ~」

「うわぁ...ミスったらお袋に怒られる...」

「お前の母さん怖いもんなぁ。

オレは...まぁ大丈夫だな。」

二人の様子を見てクロサキは楽しそうに笑う。

(アイツらもしっかり親やってるんだなぁ...)

捕食を終えたアラガミが声をあげる。

「さぁて、時間だ。」

クロサキは崖から飛び降り、アラガミの前に降り立つ。

これから先、アラガミとの戦いはずっと続いていくだろう。

でもきっと大丈夫。

何故なら、オレ達神機使いがいるからだ。

アラガミが居なくなり、世界に平穏が訪れるその時まで、オレ達は戦い続けよう。

「っしゃあ!行くぜ!」

二刀流の神機を振りかざし、クロサキはアラガミに立ち向かって行く。

これから先も...

 




というわけで、要するに補足回でした。
今回の話はどうしてもシオを出したかったのと、未来の話を書きたかったという理由でパッと書きました。

ちなみに、シオが賢いのは特異点として世界中の知識が詰め込まれたからじゃないですか?
たぶんフィリップみたいなものですよ、きっと。

感想も引き続きヨロシクお願いします!

追記2015/9/4
お久しぶりですアイギスです!
この度、活動を再開します!それに伴い、このAnotehrBloodを本話を持って完結と致します。休止中も閲覧してくださっていた皆さん!本当にありがとうございます!
それでは、新作でお会いしましょう!サラダバー!
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