GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
「あっ...はい!本番ですか。
えーと、台場カノンです。
趣味はお菓子作りと...え?そういうのは良いんですか?
ハルさん!初めに言ってくださいよ!恥ずかしいじゃないですか!
もう...じゃあ、#18始まります!」
#18 ト
ブラッドの全員はサツキに連れられてサテライト拠点に来ていた。
「俺、こういう所初めて来た...ニュースでは見たことあるけど...」
ロミオが辺りを見回す。
いつ壊れてもおかしくないような住居が、所狭しと並んでいる。
「世界の人口は着々と増えているんですよ。それも、フェンリルのおかげなのは確か...
でも...こういう現状を生み出してるのも、またフェンリルなんですよ。」
その言葉にジュリウスが反論する。
「サテライト拠点の建設、フェンリルマークの備蓄食料...
こういった資材を提供しているのはフェンリルなのでは?」
サツキが無言で立ち止まり、ジュリウスを見る。
「ブラッドの隊長さん...あのおもちゃの機動要塞を作るコストで、
ここみたいなサテライト拠点がいくつ作れると思います?
第一、ここを気にかけてくれたのは...極東の皆さんとユノのお父さんだけでしたよ。」
ジュリウスも、オレ達も何も言えなくなってしまった。
空気を察したのか、サツキが口を開く。
「すいませんねえ、八つ当たりっぽくなっちゃって...
でも、貴方たちには期待してるんですよ?」
サツキがフォローするが、複雑な心境は変わらなかった。
「集中管理室...」
ベッドがずらりと並び、そこには黒蛛病の患者が寝かされていた。
「奥に行くほど、症状の重い患者です。」
サツキがそう補足する。
今居る部屋の最奥、そこにユノと少女が居た。
ユノは少女に絵本を読み聞かせている。
「サツキさん...あの子、親が...」
ナナが尋ねる。
「あ、気付きました?あの子の親はもう...」
サツキはそれ以上言わなかった。
彼女のように親を亡くした子は、ここに来るまで何人も見た。
「サツキ。それにブラッドの皆も...」
少女もこちらを見る。
アスナと、元気に自己紹介してくれた。
だが、腕には黒蛛病特有の、黒い蜘蛛のような痣があった。
こんな小さな子まで...そう思った。
クロサキがその子の頭を撫でようとする。
しかし、ジュリウスに無言で制止される。
「気持ちは分かりますけど...今はダメですよ。」
サツキが言う。
黒蛛病は接触感染でも爆発的に広がる。
だからこうして、感染者を隔離せざるをえないのだった。
「お兄ちゃん?」
純粋な目でこちらを見つめる。
オレ達は胸が締め付けられる想いだった。
討伐要請が発生し、皆が施設から出て行ったあと、
病室には、召集されていないジュリウスとユノだけが残った。
アスナは疲れて眠ってしまっていた。
「こうして見ると、普通の女の子なのにね...」
ジュリウスは黙って聞いている。
「...こうして、話すのも久しぶりだね。」
ユノがジュリウスに話しかける。
「そうだな...」
「養護施設に歌を歌いに行った時、以来かな...」
「ああ...それぐらい経つ。」
しばしの無言ののち、ジュリウスが口を開く。
「すまない...」
「え...?どうしたの、急に...」
突然の言葉にユノは驚く。
ジュリウスはユノから目線を逸らし、つづける。
「サテライト拠点のこと、ここの患者のこと...俺達は、何もしてやれてなかった。
...フェンリルは、全ての人を守る為に設立されたはずなのに...」
ジュリウスは拳を握りしめる。
だが、その手をユノがそっと握り、首を横に振る。
「そんなことない...貴方達は日夜、アラガミと戦い続けてる。
自分の命を犠牲にさらして、私達を守ってくれてくれてる...
それだけで...十分じゃないの?」
ユノの言葉に少しだけ救われた気分になった。
「....そう、だな...ありがとう...ユノ。」
そう言うと、ジュリウスは自らの手元に視線を下ろす。
「あ...ごめんなさい!」
ユノは真っ赤になり、慌てて手を放す。
その様子がジュリウスには、とても愛らしく見えた。
+++++
アナグラ ラウンジ
クロサキはラウンジで物思いにふけっていた。
サテライト拠点を見た後、ずっと複雑な感情を抱いていた。
(今、オレ達に出来ること...か。)
考えてもまとまらず、頭をかきむしる。
その時、後ろから声をかけられた。
「おお、考え事しているところ悪いな...」
ハルオミだった。
「ハルさん...どうしたんですか?」
「いや~ちょっとな、頼みたいことがあってな。」
そう言うと、ハルオミは一人の女性を連れてくる。
「もう知っているかもしれないが、こちらはブラッドの副隊長のクロサキだ!」
ハルオミが女性に説明する。
「あ、どうも...第四部隊の台場カノンです。」
彼女は自己紹介をすると、ぺこりと頭を下げた。
オレも、
「どうも...」
とだけ、挨拶をする。
全く状況を飲み込めないので、ハルオミの方を見る。
するとハルオミは二人を交互に見ると、大きくうなずいた。
「うん...良い組み合わせだ...」
そう言うと、カノンに向き直る。
「あのな、カノン。隠してたわけじゃないが...
この人が...今日から君の教官だ!」
ハルオミの言葉に二人が驚愕する。
「え!?ちょっ、ハルさん!?」
驚くオレを無視して、ハルオミが続ける。
「じゃ!任せたぜ!カノン、ブラッド流の戦闘術...しっかり習得するんだぞ!」
それだけ言い残し、ハルオミは去って行ってしまった。
唖然とするオレに、カノンが声をかける。
「あの...いまひとつ、状況が飲み込めませんが、
ハルさんもああ言ってることですし...」
案外乗り気のカノンに、オレも観念する。
ハルオミの行動には、カノンも慣れっこなのだろう。
「まあ、アドバイスぐらいなら...」
「は、はい!...えっと、それでは...!よろしくお願いします、教官先生!」
教官という響きに、少なからず悪い気はしないクロサキだったが、
この後、戦場でのカノンの本性をしって、ハルオミを恨むことになったのは言うまでもなかった。
いかがでしたか#18。
ジュリウスとユノの関係を独自に掘り下げてみました。
原作じゃほとんど語られませんでしたからね...こうあったら良いなという願望です。
さて、次回からはナナ編に突入します。
こうご期待!