GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
そんな中、ジュリウスはある決断を下す。
そして、舞台は新たな地へ…
フライア ロビー
フライアはいつにも増して静かだった。
誰も話さない、誰もその場を動こうとしなかった。
皆が、一人の戦士の死を悲しんでいた。
そんな中ジュリウスがオレに声をかけてきた。
「少し、出ないか?話があるんだ。」
ミッションの誘いだった。
こんな時にとオレは思ったが、ジュリウスの思いつめた顔に何も言い返すことが出来なかった。
+++++
簡単なミッションだった。
オレとジュリウスの力なら、数分もかからないはずだった。
だが、
「くっ...」
サリエルの光弾を受け、ジュリウスが吹き飛ぶ。
今日のジュリウスの動きには精彩がなかった。
その理由は分かる気がする。
しかし、ここは戦場。
少しの気の迷いが死を生む。
ジュリウスを庇いながら、最後はオレがトドメをさした。
「お疲れ様です。大丈夫ですか、隊長?」
ジュリウスはどこか上の空だった。
「...ああ、すまない。」
ジュリウスはしばらく考えると、こう切り出した。
「副隊長。ブラッドに来た日のこと覚えているか?」
オレは静かに頷く。
「もちろんです。あの日からずいぶん経ちますね...」
「そうだな...ブラッドは最初、俺一人だった。
...何年かして、ロミオがやって来た。」
『俺、ロミオって言うんだ!よろしくな!』
「正直、初めは慣れなかったよ...でも、何時からだったかな。
アイツの声がフライア中に響いているのが、うるさく感じなくなってたんだ。」
ジュリウスは懐かしむように遠い目をする。
「そして、お前とナナが配属された。
あの時、ロミオが居てよかった。
ロミオが俺とお前達を繋いでくれたんだ。」
そう言って、ジュリウスはオレに向き直す。
「あの人は優しくて、頼りになる先輩でした。」
「そうか...アイツはずっと、ムードメーカーだったからな。
...その後、ギルとシエルが来て、
皆、一人一人血の力に目覚めて行った。
それは...間違いなく、お前のおかげだ。」
「そんな...オレは何も...」
「今日は、これだけを伝えておきたかったんだ...ありがとう。」
そう言うとジュリウスは、再びうつむいた。
「だから...もう、俺が居なくても大丈夫だな...」
ジュリウスの言葉の意味をくみ取れなかった。
「え、それは...どういう...?」
「そのままの意味だ。俺はブラッドを抜ける。」
そう言うと、振り返りジュリウスは歩き始める。
「後のことは任せる。頼んだぞ...隊長。」
振り返りざまに見た彼の顔は決意を固めた男の顔だった。
クロサキはその顔に言い知れぬ不安を覚えた。
+++++
フライア 局長室
翌日、ブラッド全員に辞令が出た。
全員が極東支部に転属となった。
「...というわけだ。
ジュリウス・ヴィスコンティ大尉が、ブラッドの隊長を辞任した。
後任の隊長は...何だお前か...」
あからさまに嫌な顔をされた。
こっちも睨み返すと、グレムは無視して話を続ける。
「今後、フライアは神機兵の開発に注力する為、
往来の操業を一時中止する。」
「中止、ですか...」
「ああ、次の辞令があるまで、お前達は極東支部の指示に従え。
以上だ...下っていいぞ。」
だが、誰も動かない。
「なんだ?まだ、用があるのか?」
ギルがグレムに詰め寄る。
「おい、ジュリウスはどこに居る?」
「言った筈だ。大尉には神機兵の開発に協力してもらう。
今、お前たちに会っている暇はないんだ。
分かったら、とっとと下れ!」
半ば強引に、警備員に連れ出されてしまった。
+++++
同じ頃、ジュリウスは極東支部の出撃ゲートに居た。
「そろそろ時間か。」
皆が戻ってくる前にフライアに向かおうと歩き出した時だった。
「ジュリウス!」
後ろから、声をかけられた。
振り返ると、見知った女性がそこに居た。
「ユノ...どうして...」
ユノは息を整えると、ジュリウスを真剣な顔で見つめる。
「ブラッドを辞めたって、ホントなの?」
ユノの問いに無言で首を縦に振る。
「そんな...どうして!皆だってそんなこと...」
「違う、アイツらの為だ。
神機兵の開発が進み、戦場を支配するようになれば、
もう誰も傷つくことはなくなる。
皆が救われるんだ。」
それだけ言って、ジュリウスは再び歩き出した。
「待って!」
ユノは引き留めようと、ジュリウスの手を掴もうとする。
しかし、ジュリウスは慌ててその手を避ける。
「ジュリウス、その手...」
ジュリウスの手には黒い痣が出来ていた。
黒蛛病特有の黒い蝶のような痣だった。
「まさか...そんな、あなた黒蛛病に...?」
ジュリウスは忌々しげに自分の手を握りしめると、
「....すまない。」
とだけ言い残し、歩き去って行ってしまった。
ユノの呼びかけにも、二度と振り返ることは無かった。
+++++
アナグラ ラウンジ
極東に移って数日後、ブラッドの面々はラウンジに集まっていた。
目的はジュリウスと話をすることだった。
ラウンジにあるテレビには、テレビ会議用の通信回線が引かれている。
画面にジュリウスの姿が映る。
(何だ...神機兵の保管庫?)
ジュリウスの背後には開発中であろう神機兵の姿が見切れていた。
「これでも忙しい身でな...手短に頼む。」
ジュリウスの態度は数日前とは打って変わって、冷たいものだった。
ギルが一歩前に出て尋ねる。
「聞きたいことは一つだ。...なんで、ブラッドから逃げた?」
ギルの問いにジュリウスは淡々と答える。
「人はあまりにも脆い。
パーツ交換が可能な神機兵の方を生産する方が、合理的だと判断した。」
「ブリキの兵隊の王様気取りか?」
ギルが挑発する。
「異論があるなら実績で示せ。能書きなど戦場では何の役にも立たん。」
それだけ言うと、ジュリウスは一方的に通信を切ってしまった。
クロサキや他の皆にも、ジュリウスの言葉が本心でないことは分かっていた。
だが、誰も口を開くことが出来なかった。
+++++
通信を終えて、ジュリウスは咳き込む。
手には血が付いていた。
「ジュリウス、大丈夫ですか?」
ラケルが心配そうに尋ねる。
「心配せずとも、ブラッドとは縁を切ってあるさ。」
ジュリウスの返答にラケルは首を振る。
「いえ、ジュリウス。その黒蛛病の痛みのことです。」
ジュリウスの体にある黒い痣は、以前よりも増えていた。
「...問題ない、それより神機兵の教導を急ぎたい。」
そう言って、ジュリウスは作業を再開する。
その姿をみて、ラケルは静かに微笑んでいた。
という訳で第二章は完結です。
所々にオリジナル要素をちりばめましたが...
いかがでしたでしょうか?
さて、次回から第三章に突入します。
感想や評価お待ちしています。