GODEATER2  AnotherBlood   作:Vekterアイギス

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大切な仲間を失い静まり返るフライアと仲間たち。
そんな中、ジュリウスはある決断を下す。
そして、舞台は新たな地へ…


#25 決意の王

フライア ロビー

 

フライアはいつにも増して静かだった。

誰も話さない、誰もその場を動こうとしなかった。

皆が、一人の戦士の死を悲しんでいた。

そんな中ジュリウスがオレに声をかけてきた。

「少し、出ないか?話があるんだ。」

ミッションの誘いだった。

こんな時にとオレは思ったが、ジュリウスの思いつめた顔に何も言い返すことが出来なかった。

 

+++++

 

簡単なミッションだった。

オレとジュリウスの力なら、数分もかからないはずだった。

だが、

「くっ...」

サリエルの光弾を受け、ジュリウスが吹き飛ぶ。

今日のジュリウスの動きには精彩がなかった。

その理由は分かる気がする。

しかし、ここは戦場。

少しの気の迷いが死を生む。

ジュリウスを庇いながら、最後はオレがトドメをさした。

 

「お疲れ様です。大丈夫ですか、隊長?」

ジュリウスはどこか上の空だった。

「...ああ、すまない。」

ジュリウスはしばらく考えると、こう切り出した。

「副隊長。ブラッドに来た日のこと覚えているか?」

オレは静かに頷く。

「もちろんです。あの日からずいぶん経ちますね...」

「そうだな...ブラッドは最初、俺一人だった。

...何年かして、ロミオがやって来た。」

 

『俺、ロミオって言うんだ!よろしくな!』

 

「正直、初めは慣れなかったよ...でも、何時からだったかな。

アイツの声がフライア中に響いているのが、うるさく感じなくなってたんだ。」

ジュリウスは懐かしむように遠い目をする。

「そして、お前とナナが配属された。

あの時、ロミオが居てよかった。

ロミオが俺とお前達を繋いでくれたんだ。」

そう言って、ジュリウスはオレに向き直す。

「あの人は優しくて、頼りになる先輩でした。」

「そうか...アイツはずっと、ムードメーカーだったからな。

...その後、ギルとシエルが来て、

皆、一人一人血の力に目覚めて行った。

それは...間違いなく、お前のおかげだ。」

「そんな...オレは何も...」

「今日は、これだけを伝えておきたかったんだ...ありがとう。」

そう言うとジュリウスは、再びうつむいた。

「だから...もう、俺が居なくても大丈夫だな...」

ジュリウスの言葉の意味をくみ取れなかった。

「え、それは...どういう...?」

「そのままの意味だ。俺はブラッドを抜ける。」

そう言うと、振り返りジュリウスは歩き始める。

「後のことは任せる。頼んだぞ...隊長。」

振り返りざまに見た彼の顔は決意を固めた男の顔だった。

クロサキはその顔に言い知れぬ不安を覚えた。

 

+++++

 

 

フライア 局長室

 

翌日、ブラッド全員に辞令が出た。

全員が極東支部に転属となった。

「...というわけだ。

ジュリウス・ヴィスコンティ大尉が、ブラッドの隊長を辞任した。

後任の隊長は...何だお前か...」

あからさまに嫌な顔をされた。

こっちも睨み返すと、グレムは無視して話を続ける。

「今後、フライアは神機兵の開発に注力する為、

往来の操業を一時中止する。」

「中止、ですか...」

「ああ、次の辞令があるまで、お前達は極東支部の指示に従え。

以上だ...下っていいぞ。」

だが、誰も動かない。

「なんだ?まだ、用があるのか?」

ギルがグレムに詰め寄る。

「おい、ジュリウスはどこに居る?」

「言った筈だ。大尉には神機兵の開発に協力してもらう。

今、お前たちに会っている暇はないんだ。

分かったら、とっとと下れ!」

半ば強引に、警備員に連れ出されてしまった。

 

+++++

 

 

同じ頃、ジュリウスは極東支部の出撃ゲートに居た。

「そろそろ時間か。」

皆が戻ってくる前にフライアに向かおうと歩き出した時だった。

「ジュリウス!」

後ろから、声をかけられた。

振り返ると、見知った女性がそこに居た。

「ユノ...どうして...」

ユノは息を整えると、ジュリウスを真剣な顔で見つめる。

「ブラッドを辞めたって、ホントなの?」

ユノの問いに無言で首を縦に振る。

「そんな...どうして!皆だってそんなこと...」

「違う、アイツらの為だ。

神機兵の開発が進み、戦場を支配するようになれば、

もう誰も傷つくことはなくなる。

皆が救われるんだ。」

それだけ言って、ジュリウスは再び歩き出した。

「待って!」

ユノは引き留めようと、ジュリウスの手を掴もうとする。

しかし、ジュリウスは慌ててその手を避ける。

「ジュリウス、その手...」

ジュリウスの手には黒い痣が出来ていた。

黒蛛病特有の黒い蝶のような痣だった。

「まさか...そんな、あなた黒蛛病に...?」

ジュリウスは忌々しげに自分の手を握りしめると、

「....すまない。」

とだけ言い残し、歩き去って行ってしまった。

ユノの呼びかけにも、二度と振り返ることは無かった。

 

+++++

 

 

アナグラ ラウンジ

 

極東に移って数日後、ブラッドの面々はラウンジに集まっていた。

目的はジュリウスと話をすることだった。

ラウンジにあるテレビには、テレビ会議用の通信回線が引かれている。

画面にジュリウスの姿が映る。

(何だ...神機兵の保管庫?)

ジュリウスの背後には開発中であろう神機兵の姿が見切れていた。

「これでも忙しい身でな...手短に頼む。」

ジュリウスの態度は数日前とは打って変わって、冷たいものだった。

ギルが一歩前に出て尋ねる。

「聞きたいことは一つだ。...なんで、ブラッドから逃げた?」

ギルの問いにジュリウスは淡々と答える。

「人はあまりにも脆い。

パーツ交換が可能な神機兵の方を生産する方が、合理的だと判断した。」

「ブリキの兵隊の王様気取りか?」

ギルが挑発する。

「異論があるなら実績で示せ。能書きなど戦場では何の役にも立たん。」

それだけ言うと、ジュリウスは一方的に通信を切ってしまった。

クロサキや他の皆にも、ジュリウスの言葉が本心でないことは分かっていた。

だが、誰も口を開くことが出来なかった。

 

+++++

 

 

通信を終えて、ジュリウスは咳き込む。

手には血が付いていた。

「ジュリウス、大丈夫ですか?」

ラケルが心配そうに尋ねる。

「心配せずとも、ブラッドとは縁を切ってあるさ。」

ジュリウスの返答にラケルは首を振る。

「いえ、ジュリウス。その黒蛛病の痛みのことです。」

ジュリウスの体にある黒い痣は、以前よりも増えていた。

「...問題ない、それより神機兵の教導を急ぎたい。」

そう言って、ジュリウスは作業を再開する。

その姿をみて、ラケルは静かに微笑んでいた。

 




という訳で第二章は完結です。
所々にオリジナル要素をちりばめましたが...
いかがでしたでしょうか?

さて、次回から第三章に突入します。
感想や評価お待ちしています。
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