GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
ジュリウスの本心も分からぬま帰還しようとするが、その途中でクロサキが出会ったのは意外な人物だった。
病室の前を行ったり来たりするシエルを、オレはずっと目で追っていた。
シエルにとってレアは大切な恩師、心配なのは分かるのだが…
「なあシエル、一回座らないか?
かれこれ1時間歩きっぱなしだぞ。」
「そ、そうですね…」
ようやくシエルはベンチに腰かける。
が、結局立っては座りを繰り返すのだった。
(こりゃ相当だな…)
その時、病室からサカキ博士が出てくる。
シエルがサカキに詰め寄る。
「サカキ博士!れ、レア先生の容態は!」
「まぁ、落ち着きたまえ。
ひとまず目を覚ましたから、彼女から話を聞くといい。」
その言葉を聞くとシエルは病室に駆け込む。
オレも病室に入ろうとすると、博士に呼び止められる。
「仮にも、目が覚めたばかりだからね。
無理はさせないようにね。」
オレは頷くと、病室に入った。
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「さて、話聞かせてもらいますよ。」
「隊長。」
厳しい口調で言うオレを、シエルが咎める。
「良いのよ、シエル。それぐらいされて当たり前だもの。」
そう言うレアの顔は、憔悴しきっていた。
「レア先生…ご無事でなによりでした。」
「もう"先生"なんて呼ばれる資格なんてない…
こんなことになったのは、私のせい…」
「私にとっては…いつまでも先生です。」
「…そう、ありがとう。」
ここまで聞いていたクロサキが、前に出る。
「フライアの現状は見てきた。
ジュリウスとラケル博士が、フライアを乗っ取ってるのもよく分かった。
でも、分からないのはラケル博士の…彼女の目的だ。」
少なくとも、神機兵の量産ではないはずだ。
「……そうね、それを語るには…
少し昔話を聞いてちょうだい。」
そう言うとレアは、自らとラケルの過去について語りだした。
子供の頃の私はとても活発で、反対にラケルは寡黙でとても無口だった。
私はその態度にイラつきを覚えて、よく手をあげてたわ。
あの日もそうだった…
『ラケル!どうしていつも私の人形を勝手に持ってくの!!』
でもラケルは黙ったまま、私を見つめていた。
『どうしてずっと黙ってるの!!何か言いなさいよ!!』
それでもラケルは黙ったまま、あろうことか笑ったのよ。
私はラケルのその顔に、ついに我慢の限界が来てしまった…
『信じらんない!!あなた、どうして笑ってるの!?
もう、ラケルなんて知らない!!』
私はつい、カッとなってラケルを突き飛ばしていた。
ラケルの後ろは、階段になっていたこと忘れてね…
気づいた時には、ラケルは階下まで転がり落ちていた。
ラケルはその後、すぐに病院に運ばれたわ 。
でも、意識不明の重体…いわゆる脳死状態だった。
私はずっとラケルの側で懺悔する事しか出来なかった。
「それが全ての始まり…全て、私のせい…」
レアはうわ言のように呟く。
「レア博士…シエル、しばらく様子を見ててくれ。
落ち着いたらまた、話を聞きにくるから。」
シエルが頷いたのを確認すると、オレは病室を後にした。
+++++
外に出ると、ギルとナナが待っていた。
「レア博士は…?」
ナナが心配そうに尋ねてくる。
「今、シエルがみてる。」
オレはここまで聞いたことを二人に伝えた。
しばらくすると、シエルが呼びに来たのでオレはまた病室に戻った。
+++++
オレ達は再びレアから話を聞く。
「ラケルが助かるには…偏食因子を投与する、
危険な手術我慢の必要だった…
でも、父には選択の余地なんて、無いも同然だった。
"富める者は、人類の未来に奉仕する義務がある"…
父の口ぐせだったわ……」
そこまで言うと、レアはこちらを見て微笑む。
「不思議ね…貴方達と話してると
胸を締め付ける思い出に、耐えられそうな気がしてくる…
考えないようにしてたことも、今なら…」
必ず、日は昇る…誰の意図にも構わずね…
ラケルが倒れてから、1ヶ月…彼女は目を覚ました。
その時は、とても嬉しかった…前よりも、話しかけてくれるようになって…でも、その時からすでに…
私は罪の意識に繋がれて、彼女に支配されていた。
『ラケル、良かった!!』
手術から戻ってきたラケルに思わず私は抱きついた。
『ラケル、一人でずっと寂しかったでしょ!』
『いいえ、お姉様、やっと気づいたの…
私は、一人じゃないって…』
私はその言葉に感激して、ラケルに泣きついた。
その言葉の、本当の意味も知らずにね…
『ああ、ラケル…』
ラケルの足は直ることがなかった。
でも、父にとっては私とラケルが仲睦まじくしているのが、何よりの奇跡だった…
私にとっても、ラケルが戻って来てくれたことが
何よりの奇跡だったわ…
だから、私はあんなことを…
『あの、ラケル…私…』
『良いのよ、お姉様…赦してあげる…』
『ああ、ラケル…私のもの全部あげる!!
一生…ラケルが欲しいもの全部あげる!!』
その言葉が、私を縛り付けてしまった…
『ありがとう、お姉様…約束よ?』
「お願い…今日はもう終わりにして…」
レアが頭を抱えて、懇願する。
その姿にオレ達は退室せざるを得なかった。
+++++
後日、今度はレア博士から、話をしたいと呼ばれた。
「オレ達を呼んだってことは、最後まで話す覚悟が出来た、と…そう、受け取って良いですね?」
レアは静かに頷き、語り始めた。
「私の生きた日々は…働いて、研究して
泣いたり、笑ったりしたことは…全部、ラケルの為だった。
だけど、あの子にとって価値があるものは、
人の営みの中には、何もなくって…
時々、分からなくなるの…あの子、どんな顔してたっけって…」
私とラケルは成長して科学者となった。
私は神機兵のの研究、ラケルは養護施設の運営を行っていた。
でも、ラケルの研究は人道的とは言えなかった。
ある時、父にそれが露見したの…
『ラケル!何故、お前は罪のない子供達を人体実験に使った!!何が目的だ!!
適合していない子供達に、偏食因子を投与するなど
人間の所業では無い!!』
父の剣幕に、ラケルは全く動じず淡々と話を続けた。
『人間の所業では無い…おっしゃる通りですわ…』
『…この蛮行に正当な理由があるのかね?』
『もちろん、全ては…
来るべき"晩餐"の下ごしらえですわ…』
ラケルの発言に、父はラケルを見放した。
そのことがラケルに、一線を超えさせてしまった。
父はそのまま査問会に向かったわ。
でも、父は帰らぬ人となった…
「帰らぬ人って…事故にでもあったのか?」
「事故…そうね、それならいくぶんか良かったかも知れない。」
レアの声は震えていた。
「ラケルがやったの…神機兵に父を襲わせてね…」
レアの発言にオレ達は声が出なかった。
自らの目的の為にそこまでするなんて…
「聞かせてくれ…彼女は何をするつもりだ…」
レアは少し考えると、口を開いた。
「ラケルは、新たな"秩序"を作り出そうとしてる。
全ての偏食因子を受け付けるジュリウスと、
自らを特異点としてね…」
オレは愕然とした。
シエルも困惑している。
当然だ…そんなこと馬鹿げている。
そう思うと、急に憤りがこみ上げてくる。
「そんなことの為に、大勢を犠牲にしようとしてんのかよ!!」
オレは椅子を蹴り飛ばす。
シエルに制止され、冷静さを取り戻す。
その様子を見ていたレアは、クロサキの腕を掴め懇願する。
「お願い!あの子を助けてあげて!!
決して、悪い子じゃないの!!だから…!」
レアの目には涙が溜まっていた。
クロサキはため息をつくと、レアの両肩に手を置く。
「心配するな…必ず、止めてやる。
だから、あんたはしっかり休め。」
そう言って、オレとシエルは病室を後にした。
病室ではレアが泣きつづけていた。
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アナグラ ラウンジ
オレとシエルがラウンジに戻ると、皆がテレビに釘付けになっていた。
ナナがこちらに気づく。
「あ、隊長!シエルちゃん!早く早く、フライアが大変だよ!!」
オレとシエルは顔を見合せ、テレビの前にいく。
『予定を変更して、独立機動支部フライアのクーデター事件のニュースをお送りしています。』
「クーデターだと!?」
『先日お伝えした、ジュリウス・ヴィスコンティ容疑者による、フライア乗っ取り事件について進展がありました。
ジュリウス容疑者はフェンリルからの独立を宣言。
さらに、黒蛛病患者の受け渡しを要求しており…』
たまらずギルが、テレビを消す。
「あのバカ野郎…」
「でも、ジュリウスに協力しようって声も増えてるみたいだよ…」
コウタが嘆く。
「黒蛛病患者の収容問題の回避、神機兵による半永久的な防衛力…その両方が一度でかなう。
小を殺して、大を生かすのは当たり前かも知れませんね」
シエルの言葉に、皆が押し黙る。
「だめだよ…ジュリウスは間違ってる…」
ナナが口を開いた。
「間違ってる友達は…止めなきゃダメだよ!!」
ナナの言葉に皆が頷き、立ち上がる。
「ここで待ってても仕方ねぇな…」
「ナナさんの言う通りです。隊長…!」
オレは皆の顔を見渡す。
「よし!じゃあ、力ずくでもジュリウスをブラッドに連れて帰ろうぜ!」
ここに二度目の突入作戦が決まった。
書きすぎた...言われなくても分かってる。
区切りよくしたらこんなことに...