GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
そこで待っていたのは…
無人のフライア内に、四人の足音だけが響く。
奥へと進み、そこで待っていたのは...
「ラケル博士...」
最後の扉の前に、ラケルが待っていた。
警戒を強める四人を、尻目にラケルは微笑む。
「安心なさい...さあ、こっちへ。」
同時に、ラケルの姿が消える。
「行きましょう。」
シエルの言葉に無言で頷き、扉を見据える。
静かに扉が開いていき、向こう側の景色がみえた。
「何、これは...?」
ナナが声をあげるのも無理はない。
全員が困惑していた。
扉の向こう、そこには晩餐会場が広がっていた。
奥の椅子にラケルが腰かけている。
見ると、人数分の食器やグラスが用意されていた。
警戒しながらも、部屋に入る。
ラケルが口を開いた。
「ようこそ...ここまで、大変だったでしょう?
さあ、座って。ご飯にしましょう?」
その言葉からは若干の狂気を感じた。
苛立つギルが声を荒げる。
「何ぃ...ふざけんな!!」
「待て、ギル!...ホログラフだ。」
ギルを制止し、テーブルに触れる。
その手は、そのまますり抜けてしまった。
ラケルがクスクス笑っている。
「ジュリウスはどこだ!ジュリウスを出せ!」
「しーっ...」
今度はラケルがギルを制止する。
「ジュリウスは今、ぐっすりと眠っているのです。
邪魔をしてはいけませんよ。」
ラケルは微笑む。しかし、その笑みは無機質だった。
いつか、感じた違和感を思い出した。
あの時には、もうすでに、ラケルは壊れていた。
「貴方たちと、久しぶりに会えてうれしいわ。
皆、元気そうで安心しました...」
ラケルが前に乗り出し、微笑む。
その笑みは見ていられなかった。
「あんたの目的はなんだ。狙いはなんだ!」
「フフフッ...ギル、それは愚問ですよ。
人が成すべきことは全て、"意志の力"によるものですよ?
あえて答えるなら、人類がぶつかる全ての試練に打ち勝つこと...それが目的です。」
「ラケル先生、質問があります。」
「あらシエル、ずいぶんと懐かしい尋ね方ね。...質問をどうぞ?」
シエルは真っ直ぐにラケルを見つめる。
「レア先生に色々とお聞きしました。
全てをジュリウスに捧げて、貴方は何をするつもりですか?
貴方はいつから、そんな邪悪な計画を思いついたんですか?」
核心を突く質問だった。
ラケルは満足げに微笑む。
「良い質問ね、シエル。ご褒美に昔話をしてあげる。
それは、アラガミと一つになった少女の物語...」
全ての謎が明かされようとしていた。
++++++
少女は一度死んだ。
でも、神の力で生き返った。
奇跡ともいえる回復力だった。
父も姉も心の底から喜んだ。
でも、少女は違った。
あれ以来、ずっと声が聞こえてくる。
クエ...クラエ...タベテシマエ...
優しい姉と一緒に楽しく遊んでも、
たくさんの人形に囲まれても、
大好きな父に抱きしめられても、
その声は止むことなく、少女の頭を蝕み続けた。
少女は考え続けた。
そして、少女は一つの答えに辿り着く。
全部食べてしまうのが良いのだと...
全てをきれいにやり直せばいいのだと...
こうして、少女は壊れた。
+++++
いつの間にかホログラフは消え去り、元の保管庫に戻っていた。
「荒ぶる神は、私にささやき続けてくれた。
弱肉強食の収斂、終末捕食を、この世に現せ、と...
そして、私はジュリウスを見出した。神に選ばれた...奇跡の子を...」
ホログラフのラケルが揺らぎ、背後の扉が開く。
皆がラケルを見据える。
「ジュリウスの目覚めが近い、最後の晩餐の下ごしらえをしましょう。」
ラケルの姿が消える。四人は扉の先に踏み出す。
そこに居たのは、少女の姿のラケル。そして、光り輝く繭。
「適者生存。それは...この世において、変わることの無い真理。」
目の前の少女が続ける。
オレ達は無視して前に進む。
近くで見ると、その繭はかなりの大きさだった。
ふと目をやると、部屋の中央に現在の姿のラケルが居た。
彼女は背を向けている。
「あれも、ホログラフかな...?」
ナナがつぶやくが、シエルが首を振る。
「いえ、あれは...」
シエルが言うよりも先に、ラケルの手が力なく垂れ下がる。
手に持っていたファイルが床に落ちる。
(遅かったか...)
ラケルの隣に少女が現れる。
「それは、もういらないお人形なの...ほら、見て...」
少女が天井を指さす。
(何か、居る...?)
ソレは降りてきた。
デミウルゴスの体、つぎはぎの皮膚、機械化した腕。
傍から見れば、出来損ないのような姿をした神機兵が四人の前に降り立った。
しかし、直感で分かった。
ソレから放たれる禍々しいオーラ、にじみ出る狂気。
(コイツは...ヤバい...!)
「貴方達ブラッドに最後の任務を命じます。
私と共に...ジュリウスの最初の贄となりなさい...」
神機兵が咆哮をあげ、その腕を振り上げる。
「そんな命令...従ってたまるかぁぁ!!」
クロサキの叫びと共に四人が散開する。
神機兵の攻撃を避けながら、隙を伺う。
しかし、その巨体からは考えられないスピードで、あっという間に後ろに回り込まれる。
腕を地面に打ち付ける度に地面が揺れ、立っているのもままならなくなる。
それぞれが攻撃を仕掛けるが、ダメージが通らない。
ならばと、ギルとナナがブラッドアーツを連続で叩き込むが、それでも怯ませる程度で決定打にならない。
シエルのブラッドバレッドに至っては、着弾する前に弾かれてしまった。
「コイツの体、どうなってんだ!?」
「攻撃が通らない...!」
「いったん下がりましょう!」
体制を立て直すため、距離を取った時だった。
(笑った...?)
神機兵が顔を歪ませ、笑ったように見えた。
「...!!まずい、罠だ!!」
気付いた時には遅かった。
開いた胸部から発射された衝撃波は、地面を伝い、
四人を吹き飛ばした。
「かっ...はっ...」
壁に、地面に、それぞれが打ち付けられる。
いち早く察知したクロサキは、神機で防御をすることができた。
しかし、
「くっ...」
「うぅ...」
三人は動ける状態ではなかった。
「くそ!」
さらに、クロサキの神機は後方に弾き飛ばされてしまっていた。
取りに向かおうとするクロサキの前に、神機兵の巨体が立ちふさがる。
彼に狙いを定め、神機兵が腕を振り上げた。
『隊長!!』
無慈悲にも腕は振り下ろされ、地面が揺れる。
ナナは目をつむる。
シエルは顔を背ける。
ギルは地面をたたく。
誰もがクロサキの死を想像した。
「ギギャァァァァァァァ!!」
突然の神機兵の叫びに、三人が顔をあげる。
振り下ろされた腕がズタズタに切り裂かれ、煙をあげていた。
そして、悶える神機兵の足元には...
「なめやがって...」
死んだはずの男が立っていた。
見たことの無い赤い神機を手にして、神機兵を睨むクロサキがそこに居た。
「第二ラウンドだ。力を貸してくれよ...ユウト!」
クロサキは叫ぶと、すさまじい速さで懐に入り込む。
神機兵にもギル達にも目視出来ないスピードで、
そのまま剣を突き立て、胸部から腹部を切り裂いていく。
一切の攻撃を通さなかった強固な皮膚が、ボロボロと崩れていく。
神機兵が悲鳴を上げ、顔を上に向けた。
神機を構えるクロサキの姿が、神機兵の目に飛び込んできた。
赤い神機から流れる力は、クロサキの身体能力を極限まで高めていた。
後ろに回り込んだクロサキは、すぐさま背中を駆け上がり、神機兵の眼前に躍り出ていたのだ。
「これで、最後だ。」
クロサキが冷静に言い放つ。それに神機兵が咆哮で返す。
剣道で言う"上段の構え"から神機を振り下ろし、神機兵の額を捉える。
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
クロサキの叫びと共に、渾身のブラッドアーツは神機兵の顔面を割り、
その巨体を切り裂き、そのまま神機兵を顔面から地面にねじ伏せた。
すさまじい地鳴りを響かせ、神機兵は活動を停止した。
三人は目の前で繰り広げられた光景に唖然としていた。
「やった...のか...」
ギルが呟く。
「あ!隊長!」
ナナが指さす。
ふらふらと歩くクロサキがいた。
手には先程の神機ではなく、自らの神機を持っていた。
「よお...終わったぜ...」
それだけ言うと、クロサキはその場に崩れ落ちる。
「隊長!」
体を引きずりながら、三人が駆け寄る。
その時だった。
地面が大きく振動する。
奥の繭から幹のようなものが、異常な速さで部屋中に伸びてきていた。
瞬く間に部屋を飲み込んでいく。
シエルがあるものを見つけ、目を見開く。
「ラケル先生...」
地に伏した神機兵の上にラケルが立っていた。
「終末捕食はつつがなく進んでいます...
そこに、人知の及ぶ範囲は無いのです...」
ついに、伸びた幹が神機兵を飲み込んでいく。
「私は、先に休ませてもらいます...
新しい"秩序"の中でまた会いましょう...」
ラケルを微笑む。
皮肉にも今までの中で、一番人間的な笑みだった。
「起きなさい、ジュリウス...」
そうしてラケルは飲み込まれていった。
それと同時に繭が、蕾のようにゆっくりと開く。
「ジュリウス...!」
そこには、ジュリウスがいた。
半分、繭と同化している。
(本当に特異点に...)
-ブラッドの諸君、聞こえてるか?-
「サカキ博士!」
通信機からサカキの声が流れる。
-大きな偏食場パルスの乱れを確認した。-
-すぐに、そこから撤退したまえ!-
-終末捕食の完遂まで猶予がある。一旦、戻って対策を練ろう。いいね?-
「隊長!極東支部に戻りましょう!」
「ああ、行こう!!」
今にも幹が部屋を飲み込もうとしていた。
「悪い...ギル、おぶって?」
「全く、お前は!」
飲み込まれる寸前のところで、クロサキ達はフライアを脱出した。
巨大な幹はフライアの外壁を破り、外部に露出したところで、一旦止まった。
+++++
フフフッ...ついにこの時が来ました...
貴方ならきっと、新たな世界を...新たな秩序を統べることが出来る...
誰が、何をしようと...終末捕食は止められない...
最後の時を迎え入れ...王の贄となるのです...
貴方達に...この世界に...良き終末が訪れんことを...
やってしまった、書きすぎた。
色々書きたいものを詰め込んだら、4000超えてました。
読みにくかったらすいません。
クロサキの力については、また今度。
次回は説明回になりそうだな...
(最後のセリフ分かる人いるかな?)