GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
それぞれが思い思いに過ごしながら、運命の朝を迎える。
アナグラ 支部長室
作戦会議のあと、オレはサカキ博士に呼び出された。
「話ってなんですか?」
サカキは椅子に座ったまま話を始める。
「前回の突入作戦の際、あの場所では様々な偏食場パルスが入り乱れていた。
ブラッドの血の力、ジュリウス君の終末捕食...
ところが、そこで全く別の偏食場パルスが観測された。」
サカキ博士の言っている意味が分からなかった。
「別の...?でも、あの場所には誰も...」
いや、心当たりがあった。
「まさか、オレの右腕...?」
サカキは頷く。
「君はあの時、いつの間にか赤い神機を持っていたそうだね。
恐らくそれは君の右腕....いや、友人のユウト君の腕から発現した。私はそう思っているよ。」
オレは右腕に目を落とす。
そういえば、あの時無意識にユウトの名前を口に出していた。
「君の友人もブラッドに成り得る偏食因子を宿していたのかもしれないね。
極限状態で血の力が高まり、眠っていた彼の血の力が目覚めた。
つまり、今、君の体内には二つの血の力が共存しているわけだ。実に興味深いね。」
かつてオレを助けるために自らを犠牲にしてくれた親友。
そして、彼の腕を移植したことでゴッドイーターとしてここに居る。
「また...助けられちまったな...」
オレはボソッと呟いた。
+++++
オレは整備室に向かっていた。
最後の調整を彼女に頼むためだ。
整備室の扉を開けると、一生懸命に作業台に向かうリッカの姿があった。
「お疲れさん!」
後ろから声をかけると、リッカが振り向いた。
「あ、レイジ君!久しぶりだね...」
何となく前回の件があったからか、会うのが何となく恥ずかしかった。
「あーっと、その...神機の調整を頼みたいんだけど...」
「う、うん!任せて。」
リッカは神機を受け取ると、作業台に乗せる。
オレは近くの椅子に座り、作業風景を見ていた。
整備室に機械音のみが響き渡る。
(こうして見ると...同じぐらいの年齢なのに、凄い大人っぽく見えるよな...)
真剣に神機と向き合う姿は、まさに職人だった。
オレは、ずっと彼女を見ていたくなった。
(ああ、そうか...オレ、リッカのこと...)
「レイジ君?」
突然声をかけられ、椅子ごと後ろにひっくり返る。
「ちょっと!大丈夫!?」
「あー、平気平気。」
そう言って、笑いながら立ち上がる。
「神機の調整終わったよ。もう、完璧にチューニングしたから!」
リッカは誇らしげに腕を組む。
「よし...これで明日も大丈夫だな。ありがとうなリッカ!」
オレは礼を言って、部屋を出ようとする。
すると、
「待って!」
後ろから呼び止められ、袖を掴まれる。
「帰ってくるよね...?」
リッカの声は震えていた。
「私、嫌な夢見たの。皆が、レイジ君が二度と戻って来なくて...世界が飲み込まれていって...」
オレは振り向く。
リッカの目には、涙が溜まっていた。
「お願い、約束して...絶対に帰ってきてね。」
オレはリッカの手を握る。
「約束する。必ず、戻ってくるから...だから、待っててくれ。」
泣き続けるリッカの手をオレはずっと握り続けていた。
+++++
オレはラウンジに戻ってきていた。
ラウンジの扉を開いた瞬間、視界が閉ざされる。
(な、なんだ!?って、重っ!!)
突然の出来事と顔面への謎の重さに、そのまま後ろに倒れこむ。
すると、ラウンジの方から声が聞こえてきた。
「ほら、ギルが押さえてないからー!」
「俺のせいじゃないだろ!」
「とにかく、隊長を!」
ようやく重さから解放され、体を起こす。
「なんぞ、これ?」
オレの体に乗っているソイツは、もぞもぞと動いていた。
「カピバラ...?」
ラウンジで飼われているカピバラだった。しかし、大きさが尋常ではない。
小動物という枠には収まりきらないサイズに成長しきっていた。
「待てー!カルビー!」
「はあ?カルビ?」
逃げるカピバラを追いかけ、ナナはどこかに行ってしまった。
どうやら柵が壊れ、脱走したらしい。
「なんか、世界の終末って感じがしないな...」
さっきまでの自分が何となく、恥ずかしくなってしまった。
「まあ、しょうがねえよ」
ギルが手を貸す。
「極東らしくて、良いと思います。」
シエルは笑っていた。
このイメージはだいぶ極東に失礼だと思うが...
「ていうか、カルビってなんぞや?」
「...さあ?」
+++++
「ブラッドも大概だが、何してんの...?」
ラウンジの奥ではエミールが紅茶を振舞っていた。
「おお、クロサキ!君もどうだい?」
「エミールは紅茶だけは一流だから。」
「悪いな、うちも緊張感無くて。」
エリナとコウタも紅茶をすすっていた。
「こういう時こそ、紅茶を飲み、精神を統一し、戦いに備えることが大切なんだ!
という訳で...飲みたまえ!」
エミールは半ば強引に、カップを手渡す。
(紅茶苦手だって言ったの覚えてないのか...この男は...)
恐る恐る紅茶に口をつける。
「....あれ?上手いな...!」
「フッ...当然だ!紅茶が苦手な君でも飲めるように、
独特の風味を抑えて、甘みを強めた特製ブレンドだ!」
「へー。これは良いな...」
「そうだろう、そうだろう!紅茶というのは奥が深い...
人々の心を癒すこの至高の香りは、手間暇をかけ...」
語り出したエミールは止められないのは周知の事実だ。
「ゴメンな、こんなにゆるくて...」
コウタが申し訳なさそうに頭を掻く。
「いいや...なんか、落ち着いた。...ありがとうな。」
+++++
オレは自室に戻っていた。
「なんか、この緊張感の無さは...オレのせいかな...」
いつかジュリウスが言っていた言葉。
オレが皆を支えている。
「でも、それだけじゃない...皆もオレを支えてくれた。」
明日、全てが決まる。
気を引き締めつつ、心には余裕があった。
特にいうことはない!以上!
次回一応本編最終回!