GODEATER2  AnotherBlood   作:Vekterアイギス

37 / 105
最後の戦いに臨むクロサキたち。
その前に立ちはだかる変わり果てたジュリウス。
そして、世界を救う鍵となるユノ。
この戦いの先にあるのは…


#35 貴方に送るありがとう

オレ達の目の前には、巨大な機械がそびえ立つ。

一部が木の幹で浸蝕されているそれは、所々壊れて配線が剥き出しになっていた。

そして、その根元には

「あれ...?」

あった筈の繭が消えていた。というより、何かが羽化したように割れていた。

その時、上空から異常な気配を察知する。

「あ、あれ!!」

ナナが指さす方向、そこに姿を現したのは...

「ジュリウス...!」

上空から降臨するアラガミその頭部には、ジュリウスが飲み込まれていた。

ソイツはオレ達の目の前に、ゆっくりと降り立つ。

人のような体躯、純白のマント、背中の六本の剣...そして、青く光り輝くコア。

そんな異形な姿の特異点に、ジュリウスは成り果てていた。

「あんたは...こんなのに成りたかったのか...?」

クロサキはそう呟くと、神機を構えた。

「...行くぞ!」

最後の戦いが始まった。

 

+++++

 

 

サカキが外を見る。

最後の戦いを彩るかのように、赤い雨が降り出していた。

サカキが振り向き、ユノを見る。

「そろそろ時間だ。準備は大丈夫かい?」

ユノが立ち上がる。

ユノは今日の為に急遽準備したドレスを、身にまとっていた。

「はい、もちろんです!」

「うむ、良い返事だ。...あとは任せたよ...ブラッドの諸君!」

 

+++++

 

 

クロサキの号令で皆が動く。

シエルが後方で銃撃の雨を浴びせながら、残りの三人はそのまま切り込む。

中央からクロサキが飛び込み、残りのギルとナナはサイドから切り崩すという形だ。

しかし、ことはそう上手くは運ばない。

特異点は背中の剣を巧みに操り、それぞれの攻撃を受け流してしまう。

さらに今度は、六本の刃を突き立て突進してくる。

進路にいたギルは避けきれず、そのまま装甲を展開する。

勢いを殺し切れず、ギルが数歩分ノックバックする。

その威力に、全員が距離を取る。

特異点は動かず、そのまま立ち続けている。

「こっちから仕掛けなけりゃ、何もしないってのか...」

ギルが悔しそうに唇をかむ。

「このままでは...時間がありません...!」

(恐らく、それが狙いだろうな...)

クロサキは考えていた。

六本の剣を受け切るのは至難の業だ。

それに、通ったとしても、装甲が固すぎる。

狙いはあのコア...どうやって切り込む...?

クロサキは辺りを見渡す。

(.....!)

そして、見つけた。

廃棄された神機兵の山の頂上に、ソレはあった。

(迷ってる暇はないな!)

「ギル!ナナ!シエル!頼む、三十秒で良い時間を稼いでくれ!」

そう言ってクロサキは駆け出す。

「おい!...全く、仕方ねえな!」

「今は、隊長を信じましょう!」

「一分だろうと、二分だろうと稼いでみせるよ!」

三人の動きに反応し、特異点が再び動き出す。

動きだしの瞬間を狙って、ナナのハンマーがコアを捉える。

怯む特異点の背後に回ったギルが、コアに狙いを定める。

特異点もそれに気づき、刃を展開する。

が、シエルの銃撃が刃を打ち抜き、攻撃がそれる。

すかさず槍を持ち直し、コアを貫いた。

特異点はたまらず悲鳴を上げる。

(これなら...!)

油断があったのかもしれない。

特異点は空中に飛び上がる。

刃を一つに集め傘のように開くと、そこからエネルギー弾を発射した。

爆撃のように降ってくるエネルギー弾に、三人はガードする間もなく吹き飛ぶ。

弾幕が止むころには、床がひび割れ、壁もボロボロになっていた。

特異点が辺りを見渡し、そのまま着地した時だった。

無数の銃弾がその体を打ち抜く。

シエルのブラッドバレッドだった。

「まだ...終わってません...!」

シエルに気を取られていた特異点は、背後の影に気付かなかった。

ハンマーのブースト攻撃が脚部にヒットし、特異点は膝をつく。

そこにギルのチャージグラインドが腹部を貫く。

「ジュリウスを助けないと!」

「それに...隊長も待たなくちゃな!」

ボロボロになりながらも、三人はまだ諦めてはいなかった。

その姿に特異点が再び立ち上がり、咆哮する。

六本全ての刃が、一か所に集まった三人を狙う。

すさまじい光が三人を飲み込み、その体を切り刻む。

筈だった。

三人に向かっていった刃は全て弾かれていた。

 

『そうだ、クロサキ君。君にもう一つ伝えておくことがあった。』

 

目を開ける三人の前には、クロサキが立っていた。

「悪いな、遅くなって。」

 

『君の友人の血の力、勝手に"同化"と名付けさせてもらうよ。』

 

クロサキの手には自らの神機ともう一つ。

「お前、それは...!」

 

『あらゆる偏食因子を、自らに都合のいいものに一時的に改変する力。』

『まあ、簡単に言うと....』

 

「皆、休んでいてくれ。」

そう言って、クロサキは特異点の元に歩き出す。

特異点も刃を自らの元に呼び寄せ、クロサキを見据える。

クロサキは自らの神機と...

 

『他人の神機も使えちゃうわけだね。』

 

ジュリウスの神機を構えた。

二刀流の騎士は不敵に笑い、再び特異点と衝突した。

 

+++++

 

 

フライアのロビーでは、侵入したアラガミと極東の部隊とが交戦していた。

「どんどん増えるな....!」

コウタが呟いた。

小型のアラガミだけなのが唯一の救いだ。

その時、アリサが叫ぶ。

「コウタ!あれ、モニター!」

アリサがモニターを見て、指さしている。

モニターには、ブラッドが居る保管庫の様子が映し出されていた。

そして、特異点とぶつかる一人の姿。

「あれって...」

「ああ、本当にそっくりだ。」

二刀流で戦うその姿は、かつて極東で活躍していたある人物にそっくりだった。

 

+++++

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

迫りくる刃を二つの神機で受け流す。

四方から襲い掛かる刃は、さらに勢いを増した。

(まだだ....!)

こちらも先程よりスピードを上げる。

徐々に特異点が押されていく。

(もっと...もっと早くだ!)

クロサキの体を光が包む。

無我の境地...ゼロ・スタンスだ。

極限まで高められた反射能力から繰り出される連撃は、ついにその刃を切り裂いた。

しかし、特異点は最後の一撃を腕でガードする。

連撃が止まった一瞬の硬直を狙い、特異点の鋭い腕がクロサキを捉える。

特異点は勝利を確信したのだろう、クロサキの笑みに気付いていなかった。

神機を変形し銃身に切り替える。

そこから地面に放たれたバレットはモルターバレッド。

その爆発力はすさまじい推進力を生み、クロサキを前に押し出した。

「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ジュリウスの神機がコアに深く突き刺さった。

(今なら!)

悲鳴をあげ倒れこむ特異点の頭部に...ジュリウスの腕に手をかける。

「一緒に帰るぞ!!ジュリウスゥゥゥ!!」

 

+++++

 

 

誰かの声がする。

俺の名前を呼ぶ声だ。

ゆっくりと目を開ける。

「ジュリウス!」

「わーん!良かったよ!」

「はい!本当に良かったです!」

「心配させやがって...!」

懐かしい顔ぶれが俺のことを見つめていた。

なぜだか、涙が流れてきて止められなかった。

「うう...皆、ありがとう...」

 

+++++

 

 

特異点から引きはがしたジュリウスは無事目覚めた。

ついでに言っておくと、何故か服も再生された。

「よし、後は終末捕食を!」

直後、地面が揺れる。

ジュリウスを失った特異点が、いつの間にか機械の根元に戻っていた。

「アイツ...無理やりにでも起こすつもりか!」

オレ達はジュリウスを抱えながらユノの元へ急ぐ。

ユノはマイクの前に立ち、準備を終えていた。

「ジュリウス!」

「ユノ...!」

ユノはジュリウスの姿を確認すると、涙をこらえ歌いだした。

特異点の方はすでに終末捕食を引き起こそうとしていた。

木の幹がこちらまで伸びてくる。

全力でブラッドはその侵攻を食い止める。

-間もなく終末捕食が始まります!-

ユノの周りを赤い風が包む。

-ブラッド側でも終末捕食が発...-

通信が途中でノイズに変わる。

二つの終末捕食がぶつかり合ったからだ。

すさまじい力が流れ込む。

空間中に広がる偏食場パルスは互いに相殺しあい、押し合う。

しかし、ブラッド側の偏食場が急激に弱まる。

 

「これは...ユノ君にもう片方の偏食場が干渉しているのか!」

サカキが更新されるデータを見ながら叫ぶ。

 

ユノが苦しそうに呻く。

向こうの特異点から流れる偏食場がユノの偏食因子を刺激していた。

倒れそうになるユノを誰かが抱き留める。

「ジュリウス...!」

「俺ならば、どんな偏食場も因子も受け入れられる。」

ジュリウスはユノの手を握る。

ブラッド側の偏食場の乱れが収まる。

-今ならいける!クロサキ君!-

「分かりました!」

オレはユノとジュリウスの元に行く。

「ユノさん、ジュリウス...終わらせよう。」

二人は頷く。

オレもユノさん手を握る。

一際大きい光が三人を包み、それに伴って偏食場パルスも大きくなる。

だが、まだ終末捕食は止まらない。

今までの中で一番強力な偏食場パルスが三人を襲った。

 

+++++

 

 

「人の時代が...終わってしまうのか...」

サカキが嘆いた時だった。

「待ってください!これは...!」

フランが叫んだ。

サカキとフランも耳を澄ます。

地鳴りや軋みに交じってそれは聞こえた。

 

「皆、聞こえますか...この歌声...ユノ、聞こえてる...?」

サツキがユノに語りかける。

極東中、いや、世界中から歌声が流れてきていた。

子供の声。

大人の声。

世代も人種も超えて、その声が一つの歌として流れてきていた。

 

その声にユノは涙を流す。

いつかサカキが言った言葉。

歌が人の心を一つにする。

生きとし生けるすべての者の為にユノは再び歌いだす。

 

「世界中から...フライアに...偏食場パルスが流れ込んできています...」

フランが涙ながらに報告する。

「現象的には、ただの空気の振動に過ぎない。

でも、歌には...確かに力がある。

"人の思い"を増幅して、遠隔にも伝達し、限界を超える新たな力をうむ...そんな力が...」

 

ユノの歌声、そして世界中から流れる歌声が大きくなるにしたがって、

ブラッド側の偏食場が増幅し、特異点の偏食場を押し返す。

-ブラッドの諸君、聞いての通りだよ-

-いよいよ、ここからは先は...人知の及ばぬ領域だ-

回復した通信機からサカキの声が流れる。

「ああ、分かってる。」

クロサキはユノ、そしてジュリウスを見る。

重ねた手から赤い渦が巻き起こる。

「これがオレ達の答えだ!

オレ達は明日に進む!仲間と、友と、未来を掴む!」

まぶしい光が発せられ、全てを飲み込んでいった。

 

+++++

 

 

まだ、歌は聞こえる。

聞こえるというより頭に流れてくる感じだ。

しかし、辺りは真っ暗だ。

自分たちの居る所だけに光が当たっている。

「花畑...?」

オレはそう呟いた。

庭園のような花畑、そしてその少し先にはジュリウスが居た。

ジュリウスの元に行こうとするが、見えない壁に阻まれる。

見ると、そこを境に花畑は消えていた。

「一緒に...一緒に帰ろうよ、ジュリウス!」

ナナが壁に手をつきジュリウスに呼びかける。

「ありがとう、ナナ...だが、終末捕食を中断することは出来ない。

つまり...誰かがここに残る必要がある。」

「それが特異点...ですか?」

ユノが口を開く。

「ああ、そういうことだ。

お前たちは、帰るべきだ。この歌を歌う人たちを、これからも護る為に。」

ジュリウスは一歩前に出る。

「これは命令じゃない...俺の願いだ。」

ジュリウスはそう言うとフッと微笑んだ。

シエルとナナが泣き崩れる。

「分かってるよ...」

オレはかざされたジュリウスの手に自分の手を重ねた。

そこから白い光があふれる。

「ありがとう...」

ジュリウスは一歩下った。

「分かった、ジュリウス。向こうは任せてくれ...」

ギルは帽子を深くかぶりなおすと歩き出した。

「シエルちゃん...行こう。ジュリウスの言う通りだ...

ここで立ち止まっちゃ...いけない、って思った。」

「....そうですね....私たちが、前に進まないと...」

ナナとシエルも歩き出す。

「ジュリウス...」

「ユノ...」

ジュリウスとユノが見つめあう。

「ユノ....俺は君に惹かれていた。

最後の瞬間に君にもう一度会えてよかった。」

ジュリウスはそのまま振り返る。

向こうにはアラガミの影が群れをなしていた。

「ジュリウス...私はずっと、待ち続けます。

だから...ジュリウス...ご武運を。」

ユノが祈るように語りかけた。

その言葉にジュリウスは笑った。

ジュリウスはそのまま歩き出す。

オレ達は最後までその姿を見送った。

拳を突き上げたジュリウスの姿を見届けると、オレ達の意識は光の中に溶けていった。

本来ならば聞こえるはずない声の大きさだった。

それでもオレ達には、しっかりとジュリウスの最後の言葉が聞こえた。

 

さよなら...そして、ありがとう...

 

+++++

 

 

気がつくとオレ達は元の場所に戻っていた。

違うのは空に光が上っていたこと。

白と黒の触手絡み合い、徐々に何かを形成していく。

一本の木の幹のようだった。

それと同時に、ユノの体から黒い痣が飛び去る。

その痣は今までとは違う、光を放って行った。

それは世界中から集まり、触手のもとへ集まって行く。

直後、木の幹の頂部が大きな光を放つ。

巨大な手のような形になったそれは、優しい光を放っていた。

その光は赤い雲を掻き消していく。

雲の切れ間からさす太陽の光が、長い戦いの終わりを告げた。

 

+++++

 

 

あれから少し経った。

ジュリウスが残した巨大な木は、"螺旋の木"と名付けられた。

サカキ博士曰く、内部では終末捕食が繰り返されているらしい。

おかげで、赤い雨も黒蛛病も完全に消え去ったらしい。

 

ようやくオレ達にはいつも通りの日常が戻ってきたといえる。

いつも通りと言っても、アラガミの脅威は収まらず、

感応種もいまだに増えて行っている。

さらに、新種やら新興宗教やらで休むひまもない日常が戻って来ただけだ。

余談だが、

レア博士は本部に出頭し、査問会の審議を受けている。

重い罪にならないことを祈るばかりだ。

ついでに言うとグレムのおっさんも捕まった。

重い罪になることを祈るばかりだ。

 

あと変わったことと言えば...

 

「お兄様~!」

小さな少女がオレに抱き着いてくる。

「ナナ...また、追いかけっこか?」

オレは後からやって来たナナに声をかける。

「だって~髪切ろうとしたら、ラケルちゃんが逃げるんだもん!」

「私はこのままで良いんです!ねえ、お兄様遊びましょ!」

そういう訳で、オレに抱き着いて離さないのでいるのがラケル先生だ。

あの後、螺旋の木の下で小さな繭が見つかった。

その中に入っていたのが、少女の姿をしたラケルだった。

サカキ博士が言うには、ジュリウスの置き土産だとか。

幸い、彼女は黒ラケルではなく、純粋な少女として生まれ変わった為、

極東支部で預かることとなった。

何故かオレに異様に懐いてくるのは謎だが。

 

迫っていた危機はとりあえず去った。

しかし、オレ達が新たな脅威に気付くのはちょっと先の話。

 

 




終わったぁぁぁ!!
第三章完でございます。
実はこの後ちょっとだけ続いてから、第四章突入です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想お待ちしています。

さて、ミニラケルですが、
家族やブラッドなどの記憶はそのままで、邪悪な部分の記憶だけを除いた
純粋無垢で天真爛漫な子に進化しました。やったぜ!
これからも彼女共々クロサキ達を見守ってください。
それでは、サラダバー!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。