GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
複雑な思いとは裏腹に、日常は過ぎていく。
リッカさんの件は俺とサカキ博士だけの秘密となった。
ちなみに、極東の皆の中ではクロサキ先輩のことは暗黙の了解で話題に出すのを避けている。
それが少しだけ寂しかったのは、きっと俺だけじゃないはずだ。
...そんなことで、極東はいつも通りの日々が続いている。
少しもの足りなくも騒がしい日々が...
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アナグラ ロビー
そんな回想に浸っていた俺は、不用意に口に含んだ熱湯で現実に戻ってきた。
「あっつ!?」
「ちゃんと冷まして飲みたまえ。紅茶が驚いているぞ?」
どういうことだよ...
俺の前で優雅に紅茶を飲み干しているのは、自称"極東の騎士"エミールだ。
シリアスな雰囲気をぶち壊す極度のKYでもある。
(良い奴なんだけどな...)
呆れながら見ている俺のことなどつゆ知らず、エミールは髪を掻き上げこちらを見る。
「ところで、今回君を呼んだ理由なのだが...」
「断る。」
「まだ何も言っていないぞ!?」
慌てふためく様子が面白かった。
もちろん断るには理由がある。
この男に関わるとロクなことが無いことを知っているからだ。
極東で関わるのを避けた方が良い人第二位だ。
一位は...まあ、言わずもがなアノ人だ。
「話だけでも聞いてくれぇ!!」
エミールは食い下がって俺の肩を激しく揺らす。
「た、頼むから揺らすのを止めろ!こ、紅茶が戻ってくるから!」
ようやく解放された俺は気持ち悪さを抑えながら、エミールに向き直す。
エミールは似合わない気難しい顔をしていた。
「実はだな........」
「ああ、早く言え。」
「トラップの使い方を教えてほしいのだ。」
俺は盛大に肩から崩れ落ち、椅子から転げ落ちそうになる。
散々溜めて出した言葉がこれかよ!?
俺はフラフラと立ち上がりエミールの肩に手をかける。
「ん?」
何故俺が呆れてるのか分からないエミールは首を傾げる。
そんな悪気の全くない顔に狙いを決めて腕を引く。
そして、この会話を聞いていたら誰もが言うであろう言葉を叫びながら、俺は拳を突き出した。
「今更かぁぁぁぁあ!!!」
的確に顎を捉えた右ストレートは、エミールを壁際まで吹っ飛ばした。
「あ、やり過ぎた。」
多分あれぐらいでは死なないだろう...多分。
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黎明の亡都
「で、なんで私まで付き合わないといけないのよ?」
ご立腹のエリナはジト目で俺を睨んでくる。
まあ、非番の彼女を無理やり引っ張り出してきたのだ、無理もない。
「悪い悪い。エリナはエミールと付き合い長いだろ?
だからアイツの特性もよく知ってるだろうと...」
「なんでアイツの為に...」
エリナはブツブツと文句を言い続けている。
俺は諦めず両手を合わせてお願いする。
「頼む!お礼はするから。」
その言葉にエリナの眉がピクッと上がる。
どうやら交渉の余地はあるようだ。
「じゃ、じゃあ...一つだけ...」
「お、おう!言ってみろ。」
エリナはモジモジしながら言おうか迷っていた。
「...そ、ソーマさん。」
「は?」
「だから!ソーマさんの好きなお菓子知りたいの!だから聞いてきて!」
拍子抜けすると同時に、笑いが込み上げてきた。
その様子にエリナは目を丸くし、次第に顔を真っ赤にする。
「わ、笑わないでよ!」
「はぁ~エリナもお年頃だなぁ...」
「う・る・さ・い!!」
俺がエリナをからかって遊んでいると、遅れてエミールがやって来た。
まだ赤く腫れている頬をさすりながらガックリと肩を落としている。
「やっぱりやるのだろうか...?」
「お前がやるって言ったんだろ...」
引き気味なエミールに俺は呆れてしまう。
「僕は考えたんだ。やはり、騎士たる者正々堂々戦うべきなのではないかと。
トラップなどを使うなど...騎士の風上にも置けないのではないか!?」
エミールは見びり手振り力説する。
「頭大丈夫か?」
「これが正常よ...」
エリナもさすがに呆れ、オレも何度目か分からないため息をつく。
面倒くさくなった俺はエミールの襟元を掴み引きずって行く。
「ほれ、行くぞ。」
「待ってくれ!まだ心の準備がぁ!」
エミールの叫びも空しく、トラップの使用訓練が始まった。
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岩陰からヴァジュラの様子を伺う。
コチラには気付いていないようだ。
「よし。合図したらそのトラップを設置して発動させろ。」
エミールはようやく腹をくくったのか小さく頷く。
「俺が前線で注意を引くから、エリナは銃撃でバックアップしてくれ。」
エリナもエミールに続いて小さく頷く。
「じゃあ行くか!」
俺は岩陰から飛び出しヴァジュラの前まで走り出す。
コチラに気付いたヴァジュラも咆哮し俺に向かってくる。
鋭い爪が俺に向けられるが、寸前の所で身を翻し後ろに回り込む。
「ほらぁ!こっちだぁ!」
「ギャォォォォォ!!」
高速の居合切りでヴァジュラの尻尾を細切れにし、そのままバックステップで距離をとる。
振り向きざまに、今度はヴァジュラの顔面にエリナの狙撃弾が炸裂する。
倒れこむヴァジュラ越しに俺にピースするエリナがみえた。
余談だが、エリナはシエルさんから直接指導を受けたらしい。
(よし、後はエミールの居る路地に誘い込めば...)
俺はヴァジュラに背を向け目的の路地へと走り出す。
ヴァジュラも身を起こすと、狙い通りに俺を追いかけてくる。
「よし!かかった!」
路地はヴァジュラが通れるギリギリの幅の一本道になっている。
つまり、そこなら誰が仕掛けようと必ずアラガミはトラップに引っかかるのだ。
「頼むぜエミール!」
俺はそう呟き路地裏に入り込んだ。
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アナグラ 病室
「本当にすまない!!僕は、僕はどう罪を償えばぁ!!!」
腕に包帯を巻いてベッドに座る俺に向かって、エミールは土下座で謝っている。
エミールの足元は涙で水たまりが出来そうだった。
「だ、大丈夫だって。とりあえず落ち着け。な?」
ようやく顔をあげたエミールの顔は涙と鼻水でぐしょぐしょだ。
さて、なぜこうなったのかというと、理由は簡単。
エミールがトラップを仕掛けなかったからだ。
本人曰く、最後の最後で決心が鈍ったらしい。
おかげでトラップが発動すると思って立ち止まった俺は、そのままヴァジュラの突進を受けてしまった。
「本当よ!シュンヤが頑丈だから良かったけど...私だったらどうするのよ!!」
矢継ぎ早にエミールを責め立てるエリナも背後にはハンニバルが見えた。
エミールは堪らず、
「騎士として失格だぁぁぁぁあ!!」
と、叫んで病室を飛び出して行ってしまった。
病室では静かに!と書かれた張り紙が目に入り、俺はため息をついた。
「エリナ...エミールも悪気があった訳じゃないからさ。
まあ、許してやれよ。」
「全く、何が騎士道よ。肝心な所で何もできなかったら意味ないじゃない。」
「人にはそれぞれペースがあるんだよ。それにアイツも頑張ってるしな。」
俺の言葉にエリナは不満そうに首を傾げる。
「そお?紅茶飲んでるイメージしかないけど。」
「そうだな...エリナ。アイツのこと任せた。」
「は!?何で私が!」
エリナは不満を爆発させ、今にも俺に掴み掛りそうだ
「だって付き合い長いだろ。それに俺眠いし、あと頼むわ...」
「ちょっと!!」
エリナの声を聞き、俺はさっさと眠りについた。
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「なんで私が...」
不満を漏らしながらエリナはトボトボと歩いていた。
今日は声を上げ過ぎて疲れ切っていた。
「第一アイツはどこに居るのよ。もう、本当にイライラさせるわね...」
ふと、通路に明かりが漏れているのに気付いた。
目で追うと訓練室からだった。
「こんな時間に...」
時刻はもうすぐ十時をまわろうとしている。
不信に思いながら訓練室の入口に近づくと、聞きなれたあの声が聞こえてきた。
「ええい!もう一度だ!」
気付かれないように様子を伺うと、訓練用の擬似アラガミに向かっているエミールがいた。
その手にはトラップが握られている。
「もしかして、昼間からずっと...?」
エミールはトラップを設置し起動させようとするが、上手くできずアラガミに吹き飛ばされる。
どうやら使い方自体をよく理解していないようだった。
それでもエミールは諦めずにまた向かっていく。
そんな姿をエリナは静かに見つめていた。
『それにアイツも頑張ってるしな』
「はぁ...本当にイライラするわね。」
エリナはフッと笑い訓練室に入って行った。
「エミール!いつまでやってんのよ!」
エミールは頑張り屋さん。
それでいいじゃない。
では感想をお待ちしております。
ちなみに週2投稿にかえました。
よろしくお願いします。