GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
夏休みに入ったら本気出す。
アナグラ ラウンジ
「シエルは?」
「大丈夫みたい。今は寝てるよ。」
腕に包帯を巻き、ナナが苦笑いしながら言う。
いつも通りを装っているが、内心落ち込んでいるのだろう。
表情とは裏腹に、声に覇気がなかった。
「そ、それにしてもシエルが無事で良かったな!」
「うん。」
「ナナもエリナも怪我が軽くて安心したし!」
「うん。」
「.....」
非常に気まずい。
ナナのため息がとても重く感じた。
俺はナナに気を遣って、部屋を後にした。
今は一人にした方が良いだろう。
+++++
アナグラ ロビー
俺はふと足を止め、あることを思い出した。
「そういえば...なんでシエルはあそこに...?」
彼女はサテライト居住区で見つかった。
正確には居住区の入口付近で倒れていたらしいが。
シエルが支部に担ぎ込まれた時、彼女は出血多量で意識を失っていた。
そんな彼女がここまで歩いてこれるだろうか?
いくら支部の近くとはいえ、歩くには距離が遠すぎる。
誰かが運んできた?なら、誰が?
疑問は堂々巡りを繰り返し、結局頭にモヤモヤが残るばかりだった。
「最近、分からないことばかりだな...」
難しい顔で考え事をしながら、突き当りの廊下を曲がった時だった。
「だぁっ!?」
「うわっ!?」
飛び出してきた影にぶつかり、俺は尻餅をついて倒れこむ。
「っててて...」
腰をさすりながら見ると、フードを被った青年が同じく腰をさすっていた。
よく見ると、ここでは見ない顔だった。
「悪い。大丈夫か?」
「あ...はい。大丈夫です...」
青年はボソボソと言いながら立ち上がると、俺に手を差し出してくる。
俺はその手を掴み立ち上がる。
「あ、名前言ってませんでしたね。
極東第三支部所属、結城マコトです。」
「俺は禊シュンヤだ。...って、第三支部?」
何故ここに他の支部の人間が?
「あれ...?聞いてないんですか...
僕たちはサカキ支部長に呼ばれてきたんですよ...?」
「サカキ博士が...」
「僕以外にも後三人います...多分あとで話があると思いますよ...」
「そうか...とりあえずよろしくな!」
「はい。...じゃあ、僕はこれで。」
そう言うと、ユウキはフードを被りなおし足早に去って行った。
+++++
アナグラ 支部長室
「失礼します。...って、あれ?」
「やあ。よく来てくれたね。」
サカキに呼ばれた俺を待っていたのは、サカキと見たことの無い顔の男女。
その内の一人は見覚えがあった。
確か、廊下でぶつかったあの青年だ。
ということは、残りの三人は...
「彼らは極東第二、第三支部のゴッドイーター達だ。
今回の作戦を支援してもらう為に、私が呼んだんだよ。」
サカキが言い終わると同時に、一人の男が前に出る。
「極東第二支部のテオドア・ボルサリーノだ。よろしく頼む。」
あごひげにピアスといったワイルドな男はその風体に似合わず、丁寧な物腰で挨拶し手を差し出してくる。
「禊シュンヤです。よろしくお願いします。」
テオの差し出した手を俺も握り返す。
「ねぇ。」
そこで、別の声が彼の後ろから聞こえてくる。
「ブラッドって貴方だけなの?
なんだか頼りない気がするんだけど。」
「おい、マリア!すまない。
彼女はマリア・デリンジャー。一応、俺の部下だ。」
「一応って何よ。」
不愉快そうにテオを睨む彼女に彼は苦笑いで返す。
「まあ良いじゃないか。マリアの言い分ももっともだと思うぞ。」
今度は大柄な男がテオの後ろから出てくる。
風も無いのに真っ赤な鉢巻がたなびいているのはどういう原理だろう。
キョトンとしている俺に気付いたのか、思い出したように彼は言う。
「おお、自己紹介がまだだったな!
俺は真田リュウ。第二支部の所属じゃ。
んで、後ろに居るのが結城マコトじゃ。
大人しい奴だが腕は立つからよろしく頼むぞ。」
そう言ってガハハと真田は豪快に笑う。
結城はというと、呆れたような顔でその様子を眺めていた。
彼にとってはコレは日常なのだろう。
「お前はもう少し声を抑えろ。彼が話せないだろうが。」
「うむ!済まなかった!」
俺は落ち着いた所を見計らって今の状況を話し始めた。
隊長の失踪、仲間の負傷、新種のアラガミ...そのすべてを。
ちなみに俺が今一人なのは、皆がシエルの病室に行っているからだ。
ギルに至っては、シエルが運ばれてきてから付きっ切りで寄り添っている。
「なるほど...だから俺達が呼ばれた訳ですか。」
テオはサカキの方を見て言う。
「どこの支部も人手不足だろうが、今は一刻を争うんだ。」
「?どういうことですか?」
「これを見てほしい。」
皆に見えるようにサカキはモニターにデータを映し出す。
「アラガミから発せられる特殊な感応波を数値化したものだ。
見たまえ、ここ最近この地域周辺の感応波が高まっている。」
「つまり、アラガミの群れがここに近づいているということですか?」
「それもあるが...」
サカキが手元の端末を操作すると、別のグラフが現れる。
そのグラフは先程のデータにぴったり重なった。
「この反応はアシュタロスのものだ。
つまり、その群れがこの地域に集まりつつあるということだ。」
サカキが厳しい口調で言い放つ。
皆が押し黙る中、俺は前に想像した光景を思い出す。
無数のアシュタロスに追い込まれる自分。
まさに地獄絵図だ。身震いがしてくる。
「もちろん、他のアラガミも混ざっているだろう。
しかし、かなりの総力戦になるのは確実だろうね。」
「だが、どうやって戦うじゃ?
俺達の神機じゃまるでダメージが入らんぞ。」
真田が困って言うのに対し、サカキは冷静に続ける。
「ふむ。極東一の頭脳と言われた私に出来ないことは無いよ。
任せたまえ。すでに策は出来ている。」
サカキの目の奥がキラリと光る。
この時のサカキはマッドか天才のどちらかなのだが、どうやら今回は後者らしい。
「まあ、その時になればちゃんと説明するさ。
せっかく久しぶりに極東に来たんだ。ゆっくりしていきたまえ。」
ニヤリと笑うサカキに少し不安を覚えながらも、俺達は部屋を後にした。
+++++
アナグラ 病室
病室に向かうとナナが廊下のソファーで寝息をたてていた。
恐らく昨日は不安で眠れなかったのだろう。
シュンヤは自分のジャケットをナナの肩に掛け、病室に入って行く。
「シュンヤか...」
チラッとこちらを見てギルは呟いた。
「寝ないといざって時に体が役に立ちませんよ。」
「いいんだ。寝てる間にコイツが居なくなっちまうような気がしてな。」
シエルはどうにか一命を取り留めたようだが、まだ意識を覚まさない。
ギルはそっとシエルの手を握る。
「柄じゃねぇな。こういうのは...」
-良いんじゃないですか...?たまには...-
ギルが顔を上げると、シエルがギルを見ていた。
「シエル...!お前大丈夫か!」
「はい...ご迷惑おかけしました...」
シエルは体を起こそうとするが、ギルがそれを抑える。
「まだ寝てろ。完全には回復してないんだ。」
「あ...はい...」
シュンヤは静かに病室をあとにする。
しばしの沈黙の後、シエルが口を開く。
「ごめんなさい...ギル。」
「何がだ?」
「また皆に迷惑かけたみたいで...自分が犠牲になるような真似を...」
「バカか...」
ギルは優しくシエルの額を小突く。
「迷惑かけられたなんて思ってる奴なんざいねえよ。
むしろあの状況でその判断が出来たのはスゴイと思うぜ。」
「そうでしょうか...」
「でもな。」
ギルはもう一度シエルの手を握りなおす。
「自分の命は大事にしろ。
お前が居なくなると悲しむ奴が居ることを忘れんな。」
「...やっぱり、ギルは優しいですね。」
「うるせぇ。寝ろ。」
照れ隠しをするように帽子を目深に被りなおすギルに、シエルは優しく微笑んだ。
遅くなってすいませんでした。
展開が思ったより進まなくて焦っております。
(じゃあ書けよ...)
本来なら七月中にこの章は終わっている予定だったのですが...
おかげでRの方で書こうと思っていたものが八月に持越しになってしまいました。
とにかく、夏休みに入れば更新ペースも上がるのでお待ちください!
では、サラダバー!!