GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
挿絵が出来ましたので
感想お待ちしてます
次回に続かせるつもりでしたが、
ここで第5章を終了したいと思います。
詳しくは活動報告にて
贖罪の街
「邪魔だ。」
目の前に立ちはだかる神機兵を両断し、シュンヤは地面に着地する。
神機兵が倒れ込む音を背に、スッと立ち上がると辺りを見回す。
あらかた片付けたと思ったが、まだ数体残っている。
いや、知らずうちに増援が来ていたのかもしれない。
倒しても倒しても神機兵達の方が数的有利だ。
それでも、シュンヤがこうして生きているのには理由があった。
一つ目はサカキが開発した装置。
これのおかげで神機の弱体化が起こらず戦闘を優位に進められた。
おそらく神機兵もアシュタロスと同じく、特殊な電磁波を発生させることが出来るように改造してあったのだろう。
初戦でシュンヤの居合が見切られたのもその為だ。
しかし、本調子の神機の前にはただの強めの神機兵といったところだった。
そして、二つ目。
それはシュンヤの感じていた違和感のことにも関係した。
数的有利であるにも関わらず、神機兵はこちらから仕掛けてこない限り遠方から狙撃してくるだけだ。
さきの廃墟での戦いもシュンヤから仕掛けたものだった。
(本当に妙だな...)
シュンヤはふと思う。
目の前の神機兵達は囮ではないのかと。
今回の侵攻には別の目的があるのではないかと、そう思い始めていた。
(こいつら、もしかして時間稼ぎが目的か...?)
シュンヤと神機兵はにらみ合ったまま動かない。
その時、頭上の物音に気付いた。
「ヘリ、か?」
はるか上空を黒い物体がプロペラの音を響かせて飛んでいく。
シュンヤはリンドウやソーマと同じことを思っていた。
「規制が敷かれて航空機は飛べないはず...
それに、あの方角にあるのは...」
「螺旋の木...?」
荒廃しかけたこの世界に、ふさわしくない光り輝く樹が目に付いた。
自然と足が動き、体がヘリの飛んで行った方向へと走っていた。
それを待っていたかのように神機兵がシュンヤに迫ってくる。
(やっぱりこいつ等...)
前に躍り出た神機兵を足元から切り崩し、体勢を狂わせる。
地面に座る込んだところに、すかさずその肩にのり跳躍した。
「でりゃっ!!!」
どうにか廃墟の縁を掴むことの出来たシュンヤは、神機を器用に使いそのままよじ登る。
「ふぃ~さて、とりあえず神機兵が追ってこない内にさっさと行きますか。
...あ、サカキ博士ですか。実は...」
+++++
アナグラ ロビー
「うむ。こちらでも確認した。
皆にも向かうように伝えておくよ。」
サカキはシュンヤからの通信を切った。
どうやら嫌な予感は的中したようだ。
すぐに他の二地点の部隊へと通信を繋ぐ。
「リンドウ君。聞こえるかい?」
-聞こえてますよ、博士-
「ん?その声はコウタ君だね。そちらの状況はどうだい。」
-どうもこうも、このっ!急にアラガミの数が増えて移動しようにも出来ないんですよ!-
「そうか...分かった。くれぐれも無理はしないでくれ。
隙を見て迎撃。それから螺旋の木へと向かって欲しい。」
-螺旋の木?...分かりました。-
そこで通信が切れる。
アラガミの数が増えたのは、恐らく足止めの為...
別地点の部隊にも連絡をいれるが、案の定。
-こちらもアラガミと交戦中です。迎撃にはもうしばらく時間がかかるかと-
確か新種の報告があったはずだ。
「ありがとうシエル君。無理をしないようにしてくれ。」
-了解です-
通信機を置きサカキは苦しい表情をする。
他の部隊は動けない。
防衛班も居住区近くのアラガミの討伐で精一杯だ。
シュンヤ君一人で向かわせたのは、私のミスだったかもしれない。
「サカキ博士。」
考え込んでいたサカキに、恐る恐るヒバリが声をかけた。
「ん、ああ。どうしたんだい。」
「あの通信が...」
ヒバリが指さす方を見ると、カウンターに置かれたサカキのパソコンのアラームが光っていた。
通常緑のランプが付く筈だが、今回は青色に光っていた。
(青のランプ...これは私用の専用回線だ。)
普段は本部の重役や他の支部長などと会談するための回線だが、
その回線を繋ぐためのコードはごく一部の人間しか知らないはずだった。
もちろん極東でも知っているのは隊長などの重要な役職のみだ。
サカキは警戒しながら通信を接続する。
「こちら、極東支部のペイラー・榊だ。」
-~~~~~~-
「!」
-~~~~~~~。~~~~~~~~-
驚いた表情で向こうの相手と話すサカキを、ヒバリとフランは不思議そうに眺める。
しばらくすると通信が切れた。
サカキは腕組みをしてしばらく考え込んだのち、二人の元へ戻ってくる。
「皆に目の前のアラガミの迎撃に専念するように伝えてくれるかい。」
「でも、シュンヤさんは...」
「大丈夫。その問題は解決済みさ。」
サカキの言葉に二人は顔を見合わせた。
+++++
螺旋の木
「ナルカミ博士、データの取得及びサンプルの採取完了しました。」
研究員の言葉に、螺旋の木を眺めていたナルカミが顔を向ける。
「ああ、それじゃ帰ろうか。」
機材などを撤去した研究員達が、荷物を手にヘリに乗り込んでいく。
ナルカミはヘリに向かう途中で足を止め、振り返り遠く見る。
「博士、いかがいたしましたか?」
「...ちょっと待っていてくれ。」
そう言ってナルカミはヘリから離れて行く。
しばらく歩くと足を止め、目の前の瓦礫の山を見上げニヤリと笑う。
その笑みは瓦礫の上に立っていた人物に向けられていた。
「やあ、初めましてかな。禊シュンヤ君。」
呼び掛けられたシュンヤはしばし彼を睨み付けた後、
瓦礫から飛び降り彼の前に立つ。
警戒を怠らず少し距離を置く。
「あんたがナルカミってヤツか...
なんでここにいる...?」
「ただのサンプルの採取だよ。
君達に危害を与えるつもりは無い。」
「神機兵で総攻撃かけといて良く言うぜ。
やっぱり、こっちを邪魔されたくなかったんだな。」
「...」
ナルカミは何も言わず、こちらを見ている。
いつでもその首を落とせるように、シュンヤは警戒して神機に手を掛ける。
「あんたは何がしたいんだ。」
「言っただろう。
世界の再構築、人類の殲滅」
「だからそれが訳わかんねぇって言ってんだろ!!」
シュンヤは声を荒げるが、ナルカミは一向に表情を崩さない。
「ふむ、やはり人間というものは好きになれない。
理解できないことを提示されるとすぐに否定する。
だから世界は救われないのだ。」
「とにかく来てもらうぞ。
アンタには聞きたいことがあるからな。」
そう言ってシュンヤが一歩踏み出した時だった。
パァーン!!
「っ!?」
シュンヤの視界がいつの間にか地面に向いていた。
何が起こったのか分からないまま地面に倒れ込む。
直後、自身の右足に突き刺すような激痛が走る。
「ぐぁっ...!!」
(なんだ、何をされた...!?)
痛みの元の足からは血が流れ出していた。
もがくシュンヤの様子をナルカミは静かに見下ろし呟いた。
「痛みを感じれるのもまた人間か。」
必死に顔を上げナルカミを睨みつける。
「驚いただろう。
これはピストルと言ってね。」
ナルカミは手に持っていた黒い物体を掲げてみせる。
「神機が使われる前に使用されていた武器なんだ。
オラクル弾なら、君たちはすぐに回復してしまう。
だが、ここから打ち出される"鉄の玉"は違う。
...しばらくそこで寝ていてもらうよ。」
倒れたままのシュンヤを背にナルカミはヘリに戻って行く。
苦しげな表情でその姿を睨みつけていると、不意にナルカミが振り返る。
「ああ、そうだ。
君の知り合いのアイギスという男。
今、私の研究所に居るよ。」
「何!?」
「まあ、それを聞いたところで、どうも出来ないけどね。
君には永遠に眠ってもらうから。」
ナルカミが再び歩き出すのと同時に地面が揺れる。
この振動が何を示すのか、よく知っている。
ヘリに乗り込むナルカミの姿が巨大な影に遮られた。
「キシャァァァァァァ!!!」
アシュタロスは一切の慈悲も無いといった様子でこちらを見下ろしていた。
「だしてくれ。」
操縦士は軽く頷くと、しばらくしてプロペラの駆動音が聞こえてきた。
同時にアシュタロスの叫び声も。
「先生。」
「ん?」
ナルカミを先生と呼んだ男は、彼の前に座りなおす。
「あのままで宜しかったんですか?
対抗する勢力があった方が面白いと言ったのは先生ですよ。」
男の言葉にナルカミはフッと笑った。
「心配ないさ。
彼はおそらく死なないよ。」
断言ともいえる言い方に、男は首を傾げるがすぎに黙り込む。
「それより、君の提案は良い結果をもたらしたようだ。
やはり、螺旋の木から採取したデータは役に立ちそうだ。」
「お役に立てて光栄です。」
男は軽く頭を下げる。
「極東支部への潜入、レトロ細胞の強奪、そして今回。
君の活躍は称賛に値するよ。」
「俺は先生のお役に立てればそれで良いんです。
それに...」
「ああ、分かってるよ。
研究所に戻ったらさっそく始めよう。」
ナルカミの言葉に、男の頬が若干緩む。
「そうですか、これで俺も、」
「人間を辞められるんですね。」
黒いヘリは研究所に向けて急速に速度を上げて行った。
+++++
「はぁっ。クソっ!」
神機を支えにして辛うじて立ち上がる。
動こうとするたびに足に激痛が走る。
これでは退避しようとしても出来ない。
「キチチチチチチ....」
耳障りな鳴き声を鳴らしながら、その巨大な体躯でシュンヤの周り包囲する。
いつでも捕食出来るといった所だ。
「なめんなよ...」
シュンヤは下着を引きちぎると、止血の為に足にきつく巻きつける。
そして、痛みをこらえながら神機を構えた。
そして、ふてぶてしくニヤリと笑う。
「さあ、来いよ。」
(悪い、皆...)
怪我をしていない方の足で踏みこみ、アシュタロス目がけて跳躍する。
さすがに予想していなかったのか一瞬怯んだ様子を見せたが、すかさず牙で迎え撃つ。
シュンヤの神機とアシュタロスの牙がぶつかり火花が散る。
しかし、効き足ではないと踏み込みが甘かったのかアシュタロスに神機を咥えられる。
「ぐっ、あああああ!!!」
神機で口内を切り裂いてやろうしたが、アシュタロスは神機をがっちり咥えこんで離さない。
そして、首を大きく振りまわす。
遠心力に耐えられずシュンヤは瓦礫の山に弾き飛ばされた。
全身に衝撃が走り同時に息が止まりそうになる。
「ごっは...!」
呼吸の代わりに血を吐き出す。
「肋骨、肩...それに腕も逝ったか...」
激痛が体中を走り回り指すら動かすのも精一杯だった。
アシュタロスは咥えていた神機を地面に落とすと、じりじりとその距離を縮め近づいてくる。
息も絶え絶えになりながらも一心に睨みつける。
おおよそ瀕死の状態とは思えないほど威圧感のある瞳だった。
相手がアラガミでなければ怯んでいただろう。
「キシャァァァァァァ!!」
アシュタロスは奇声をあげ、シュンヤに食らいつかんと牙を剥けた。
シュンヤはそっと目を閉じる。
「まだ、死ぬわけには...」
......
.....
....
...
..
『そうだな、死んでもらっちゃ困る。』
瞼の奥の暗闇の向こうでそう聞こえた気がした。
直後、何かが激しくぶつかりあう音、そしてアシュタロスの奇声が響いた。
「あ...?」
目を開けると何かが自分の前に背を向けて立ちふさがっている。
巨人にもアラガミにも見えるそれは、独特のカラーリングの神機兵だった。
神機兵の目線の先では、弾き飛ばされたアシュタロスが蜷局を巻いている。
「キシャァァァァァ!!!」
神機兵は背中に装備されていたもう一刀の神機を手に持つ。
いつかどこかで見たような型で、神機兵は二刀の神機を構える
そして、地面に踏み込み一気にアシュタロスの元まで飛び上がった。
高く飛び上がった神機兵は弧を描き下降すると、
そのままアシュタロスの頭部に神機を打ち付ける。
「キシャァァ!?」
突然の衝撃に一瞬怯む素振りを見せるが、すぐさま着地した神機兵に鎌を突きつける。
右、左と繰り出される鎌の攻撃を、二刀の神機で捌いていく。
アシュタロスが鎌を振り上げたところで、神機兵は懐に飛び込み片方の神機を腹部に突き立てた。
神機は深く刺さりこみ、アシュタロスはうめき声を上げる。
しかし、その直後振り上げていた鎌が神機兵の脇腹を貫く。
破損個所が火花を吹き始める。
このままではマズイと判断したのか、空いていたもう片方の神機を銃形態に変形させる。
そして、地面に向かって特大のバレットを発射した。
当然着弾地点から爆発を起こし、アシュタロス・神機兵共に吹き飛ばされた。
神機兵はそのまま地面を転がり、壁を背にするようにして廃墟へと叩き付けられた。
装甲やパーツが壊れ、関節や至る所がショートしている。
大型アラガミのぶつかりあいのような激しい戦いをシュンヤはただ茫然と見つめていた。
ふと神機兵の腹部のハッチが開いたのに気付いた。
「やれやれ、連戦で壊れかかってたか。」
ハッチの中の人物は頭を掻きながら出てきた。
「つーか、エアコンぐらい入れてほしかった。
暑くて服なんて着てらんねぇよ。」
上半身裸のその男は神機兵の中を探り始める。
「まあ、あいつが頑張って直してくれたからな。
あまり文句は言えないな。」
そして、男は"二刀の神機"を取り出し彼方で呻き声を上げているアシュタロスを見据えた。
シュンヤはいつの間にか泣いていた。
二刀の神機、そして彼の顔をその目で確認したからだ。
「さて、じゃあ行きますか。」
神機を構えた男は果敢に走り出した。
遠目でシュンヤはボソッと呟く。
「お帰りなさい...クロサキ先輩...」
始めに、遅くなりまして申し訳ありません
これまでのように週一ペースで更新していきます。
という訳で、アイツも復活した第五章。
今回で最終回です
気になるところではありますが、
クロサキ帰還で終わらせたかったというのもあります。
次の章はちょっとした番外編になりそうです。
それではサラダバー!