GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
かくして、ヘリは飛び立った。
機内にはどんよりと重い空気が流れていた。
クロサキはヘリの窓からフライアを眺める。
要塞とまで言われた牙城は黒煙に包まれ崩れ去ろうとしていた。
時期にして一年も満たないが、あそこは確かに自分達の居場所だった。
それに、あの場所には置いてきたモノが多すぎた。
そこを飛び立つ際、やはり戻ることも考えた。
まだ間に合うのではないか?、という希望的観測。
今でも後悔が残る。
シエルが通信機で極東支部と連絡を取っている。
顛末を報告する彼女の言葉にはやはり辛いものがあった。
仲間の死、それも二人。
その事実がズシリと心にのし掛かる。
(慣れねぇもんだな...)
通信機から時折漏れるすすり泣く声がより一層、後悔の念を強くしたのだった。
誰も一言も口を開くことなく、ヘリは極東支部に帰港した。
その中でクロサキは後悔すると共に、ある決意を固めた。
今までの知識、見聞、そして経験。
それら全てを動員して考え付いた一つの
恐らく、誰も考え付かない。
そして、誰も望むことはない決意。
きっと口に出せば、皆が叱責し失望しそして救われるだろう。
クロサキは帰りの道中、後悔と共にそれを熟考し続けた。
+++++
フラフラとした足取りで壁に寄りかかり、そのまま崩れるように座り込む。
目の前にはまるで廃棄場のように、神機兵の残骸がところせましと散らばっていた。
天井を見上げる。
いつの間にか揺れは収まり、鬱陶しかった瓦礫ももう落ちては来なかった。
もっとも生き埋めになっていることに変わりはないのだが。
無事にここから出ることが出来ただろうか、あいつらは。
もし途中で埋まってら、俺のカッコつけ損じゃないか。
そんなことを考えていたら、フッと意識が飛びそうになった。
寄りかかっていた壁には血がこびりついていた。
(ああ、切られたんだっけ...)
神機を振り回すことに気を取られて、痛覚を忘れてしまっていたらしい。
こうなったらもう本当に化物だなと、アイギスは自虐的に笑う。
「何笑ってるんですか...?」
アリサが少し呆れた様子でアイギスのもとへ来る。
彼女もまたおぼつかない足取りだった。
寄り添うような形でアリサはアイギスの隣に座り込んだ。
「いや、よくコイツら全部潰せたなぁ、って」
「これだけ居たら、制作費で居住区の防壁をもっと強化出来ます。
まぁ、今さら言っても仕方ないですけど...」
長い沈黙に入った。
音のしない広大な空間に二人の呼吸が辛うじて響く。
ちらっと横目でアリサを見る。
彼女が押さえていた腹部は赤く滲んでいた。
「なぁ、アリサ。」
「何ですか?」
「ごめんな。」
頭を下げる気力すらない。
それでも精一杯の謝罪だった。
「言いたいことは山程あるはずなのに、それしか言葉が出ないんだ。
俺はお前に何もしてやれなかった。
一人にして、迷惑かけて...生かせてやれなくて、本当にごめんな。」
アリサはアイギスの言葉を黙って聞いていた。
そして、そっと彼の手を握った。
「それでも私は貴方が好きです。
一人にされても、迷惑をかけられても、生きられなくても、私は貴方を愛していますから。」
彼女は優しく、そして囁くようにそう言った。
その一言だけで十分過ぎるくらいだった。
アイギスは短く、そうかと呟き目を閉じる。
やはり敵わないなと思った。
こういうときに強いのはやはり女なのだと、誰かに言われたような気がする。
アリサは文字通り強い女性なのだと思う。
だからこそ俺は彼女を愛しているのだ、好きで居続けたのだ。
彼女はクスクスと笑った。
「それに、謝ってもらうことならもっとありますからね。
私が極東に居ないとき、職員の子に手を出してたこと、私ちゃんと知ってるんですよ。」
やはり敵わないと、アイギスは苦笑する。
「それはことの成り行きでだな...」
「男らしくないですよ。言い訳は聞きません。
貴方の乱れた生活には、さすがにドン引きです。」
(久しぶりだな、ドン引き。)
さて、どう釈明しようかといったところで、唐突に眠気が襲ってきた。
アリサとはもっと話していたいのに、なんだか疲れてきた。
必死に意識を保ちながら、アイギスはアリサに尋ねる。
これだけは聞いておかなくてはならなかった。
「なぁ、アリサは幸せだったか?
こんな俺を好きになって、こんな俺と一緒に過ごして、こんな俺と最期を迎えようとして。」
アリサはその問いに少し考える素振りを見せた。
即答しないのがお前らしいよ。
でも答えは分かってる。
この問いに対する俺の答えがそうなら、きっと彼女もそうなんだろう。
何て都合の良い話で、この問いは終わりで良い。
答えを聞かずに終わりで良い。
俺はそれで
「そうですね...あえて言うなら」
答えようとしたとき、不意に目の前を影が横切る。
アイギスがアリサの膝に倒れこんでいた。
膝枕なんしてあげたことなかったなぁ、とアリサは思った。
「答えを最後まで聞かずに寝ちゃうなんて、貴方らしいですね。」
アリサはそっと彼の頭を撫で、優しく唇にキスをした。
「貴方とこれからの世界を生きられないのは不幸せです。でも...」
アリサはアイギス抱き締めるようにして目を閉じる。
『貴方に出会えたことは幸せでしたよ。アイギス。』
+++++
アナグラ ラウンジ
ブラッド以外誰も居ないラウンジ。
ここまで静かだと逆に新鮮だった。
サカキに直接報告しにいっていたシエルが戻ってきた。
その表情はやはり暗い。
「結局、俺達は何をしたんですかね...?」
シュンヤが多少投げやりに呟いた。
フライアに突入して、
アイギスを助け出して、
そして、二人失って戻ってきた。
ただそれだけのことだったが、あえて
「さぁな...」
とだけ答えた。
シュンヤも食い下がるようなことはしなかった。
「いつまでも沈んでても意味ねぇだろ。」
そう言って、ギルが立ち上がる。
「こうなったら俺達が目指す場所は一つだ。
エイジスへの通路は出来てる、あとは終末捕食を止めるだけだろ?
なぁ、隊長。」
「...ああ。」
やっぱり頼りになるよお前は。
最高の兄貴分で、最高の仲間だ。
だから、俺はもう良いよな?
「なぁ、皆...」
クロサキが口を開いた時だった。
ズンッと響くような揺れが極東全体を襲った。
この感じは前にも覚えがあった。
「今のは...!?」
直後、支部内に警報が鳴り響き、緊急放送が流れる。
ー第一次非常警戒発令!全神機使いは神機を所持し居住区の守護、及び居住者の誘導にあたってください!ー
今までにない程の事態らしかった。
「これは一体...!?」
「おお!お前たち!」
ラウンジに駆け込んできたのはリンドウだった。
その表情からするに事は一刻を争うらしかった。
「リンドウさん!これは一体...?」
「ついにおっ始めやがったんだよ、アイツが...!」
リンドウは外を指差す。
バルコニーに出たクロサキ達はは外の光景に目を見開いた。
エイジスから光の柱が天高く伸びていた。
前まで行く手を阻んでいた赤い光はそのままにだ。
それはまるで最終決戦の合図でもあるようだった。
そして、危機的な状況はまだ続く。
リンドウの話によると、居住区に向けてアラガミの一団が向かってきているらしい。
すでに防壁の間近まで迫っているために、ここまでの警戒態勢が敷かれたそうだ。
コウタ達は先に居住者の支部への誘導を始めている。
リンドウはクレイドルの隊員共にアラガミの殲滅に向かうらしく、
話し半分でラウンジから出ていってしまった。
「俺達も早く行きましょう!」
「そうですね。
今は居住区に向かってきているアラガミを止めるのが先です。」
「間に合うよね、きっと。」
「当たり前だ。さっさと片付けて今度こそ止めるんだ。」
決意も新たにブラッドは立ち上がる。
しかし、立ち上がっていたのは全員ではなかった。
クロサキはソファーに座り込んだままだ。
皆が彼に視線を向ける。
その視線を気にすることもなく、彼はソファーに寝転がる。
クロサキはそのまま姿勢で、そのままの態勢で、
言い淀むことなくハッキリと、確固たる意志をもって言った。
「オレ、やめるわ。」
とくに言うことはないのでまた次回!!
サラダバー!
感想待ってまーす!!